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<Google Next '26> 現地レポート:
自律型AI「データエージェント」が切り拓くデータ分析の未来

 2026.04.27  株式会社電算システム 牧野 竜樹

今年はまさに「エージェントAIの年」です 。セッションでは、Gartnerの予測として「2027年までにビジネス上の意思決定の50%以上が自律的になる」という衝撃的なデータが示されました 。Googleは、この自律化の波を顧客に届けるため、データユーザーのあらゆるニーズを満たすエージェントへの投資を3つの領域(アシスト機能、データエージェント、独自エージェントの構築)に分けて進めています 。


アシスト機能による生産性の飛躍:コーディングを
「Vibe(直感)」の速さへ

Googleが掲げる投資領域の第一歩は、すべてのデータ実務者の作業効率を底上げする「アシスト機能(Assistive)」です。
その中核を担うのが、
BigQuery Studioに統合された「BigQuery Assistant」です。

単なるコード補完に留まらない、その進化のポイントは以下の3点に集約されます。

  • 「Vibecode」という新しい体験: セッションでは、自然言語で対話しながらSQLを組み上げていくスタイルを「Vibecode」と表現していました。まるで熟練のエンジニアが隣に座ってペアプログラミングをしているかのように、BigQuery Studioの単一インターフェース内で、SQLの作成から修正、複雑なエラーのトラブルシューティングまでをシームレスに行えます。
  • コンテキストを維持した「マルチターン対話」: 従来のチャットツールと異なり、現在の作業環境やデータ構造の文脈(コンテキスト)を維持したまま、複数回のやり取り(マルチターン)が可能です。「さっきのクエリに、昨日の売上データを結合して」といった曖昧な指示でも、環境を理解しているGeminiなら的確に応答してくれます。
  • パフォーマンスの最適化までサポート: SQLを書くだけでなく、ジョブの実行状況やクエリのパフォーマンス分析もチャットを通じて実施できます。「なぜこのクエリは時間がかかっているのか?」という問いに対し、AIがボトルネックを特定し、最適化の提案まで行ってくれる点は、エンジニアにとって大きな救いとなります。

これらの機能は、単なる「便利なツール」の域を超え、すでにビジネスの現場で爆発的に普及しています。スライドで公開された統計によると、BigQueryにおいてGeminiを使用して処理されたデータ量は、前年比で30倍以上に増加しました。この数字は、AIによる支援が実験的な段階を終え、世界中のデータチームにとって「なくてはならない標準的なインフラ」へと急速に置き換わっていることを明確に示しています。まさに、AIがデータ活用のアクセルを全力で踏み込んだ結果と言えるでしょう。

タスクに特化した「データエージェント」

2つ目の領域は、各専門家のタスクに特化したデータエージェントです。新たに複数のエージェントが一般提供となり、データ活用の民主化を大きく前進させます。

  • データエンジニア向けエージェント : 自然言語による仕様駆動(Spec Driven)の指示だけで、BigQueryの洗練されたデータパイプラインをわずか数分で構築・修正できます。データ準備だけでなく、既存パイプラインのトラブルシューティングや修正といった複雑なワークフローも強力に支援します。
  • データサイエンスエージェント : Colab上で動作し、データフレームの取り込みやクリーニング(データラングリング)、探索的分析を自動化します。一般的なPythonライブラリを用いた学習だけでなく、TimesFMなどの最先端モデルを活用した予測、さらには本番導入に向けたモデル評価までサポート。これにより、これまで数週間から数ヶ月かかっていた作業が数分で完了するようになります。

  • 対話型アナリティクスエージェント : LookerおよびBigQuery向けに提供されます。LookMLによる「信頼できる唯一の情報源」や、堅牢なガバナンスとセキュリティを維持したまま、ビジネスユーザーが自然言語でデータと直接対話できるようになります。単に過去のデータを照会するだけでなく、「今後6ヶ月間の収益を予測して」といったプロアクティブで高度な分析も安全に実行・共有することが可能です。

独自エージェント構築のための強力なツール群

3つ目の領域は、開発者が自社専用のカスタムエージェントを自社のエコシステムに構築・統合するためのAPIとツール群です。

  • 会話分析API : 企業は、目的別に構築されたAI APIを活用して、会話型のアナリティクス機能を自社のカスタムアプリケーションに直接組み込むことができるようになりました。BigQueryやLookerのセマンティックレイヤーに直接接続することで、情報の正確性を担保しつつ、組織全体に最適化されたデータエージェントを迅速に展開できます。

  • BigQuery MCP Server & ADK統合 : BigQueryへの直接アクセスを提供するフルマネージドのリモートサーバー(MCP:Model Context Protocol)が登場しました。これにより、開発者は煩雑な「グルーコード(接続用のコード)」を書く手間やインフラ管理のオーバーヘッドから解放されます。実際、BigQuery MCPサーバーの使用量は過去6か月で20倍以上に急増しており、開発効率を劇的に高める標準ツールとしての地位を確立しつつあります。
  • Google Cloud Data Agent Kit : 開発者のエクスペリエンスを再構築し、ワークフローを劇的に簡素化するキットです。データの探索から開発、デプロイまで、エンドツーエンドのデータライフサイクルを単一のインターフェースでオーケストレーションできます。自然言語で指示するだけで、パイプラインの構築やモデル比較などを自動実行できるため、運用システムと分析システムを跨いだ高度なエージェント開発が容易になります。

 

分析ポータルの進化とディープリサーチ:
すべてのデータ資産への統合された入り口

エージェントの進化に伴い、ユーザーがデータを探索し、インサイトを得るための環境そのものも大きな変革を遂げています。

  • Data Studioへの進化: 馴染み深いLooker Studioは、新たに「Data Studio」へとリブランディングされます。これは単なる名称変更ではなく、Agentic Data Cloudにおける「普遍的な発見(ディスカバビリティ)」とアドホックなセルフサービスを支える中核ポータルとしての進化を意味します。データチームがBigQueryで作成した対話型エージェントや、Colabノートブックで構築されたデータアプリ、そして従来のレポート群を1か所でシームレスに閲覧・活用できる統合環境へと生まれ変わります。

  • エンタープライズデータ向けディープリサーチ: さらに注目すべきは、ナレッジカタログによって強化された「ディープリサーチ」機能の登場です。これは、組織内に散らばる内部ドキュメント、BigQueryの構造化データ、そしてLookerのセマンティックレイヤーを横断し、多層的な調査を安全かつプロアクティブに実行するものです。ユーザーが複雑な問いを投げかけた際、AIが自律的にサイロ化された情報を繋ぎ合わせ、表面的な集計を超えた深い洞察(Deep Reasoning)を提供します。

これにより、情報の分断が解消され、専門家でなくても組織全体のデータ資産を最大限に引き出せる環境が整いつつあります。

顧客事例:Virgin Media O2 (VMO2) が証明する実力

セッションの後半では、英国最大級のモバイルおよびブロードバンドネットワークを統合し、4,500万以上の接続を提供する通信事業者「Virgin Media O2」の実践的な事例が共有されました。顧客ニーズを第一に考えるデータ駆動型企業へと変革を進める同社は、「Verity」と呼ばれる独自のAI搭載エージェントフレームワークを導入し、組織全体で大きな成果を上げています。

  • 専門家の解放とインサイトの加速: 同社が対話型アナリティクスを導入した大きな目的は、日常的なクエリ処理をAIに任せ、データ専門家が高価値で戦略的な作業に集中できるようにすることでした。自然言語で即座に回答を引き出せるようになったことで、データからインサイトを得るまでの時間が「数日」から「数秒」へと劇的に短縮されました。
  • 誰もがデータを活用できる「発見の民主化」: データ操作の障壁が大幅に下がったことで、データアナリストだけでなく、深い技術的専門知識を持たない幅広いユーザーグループであっても、信頼できるデータソースから自由にデータを探索できるようになりました。
  • エージェント作成の民主化と継続的な改善: 同社の「Verity Agent Framework」では、専用のエディタから作成されたエージェントが自動化されたパイプラインを通じて組織内のユーザー(Gemini Enterprise)に展開されます。さらに、ユーザーからのフィードバックやAIが生成したクエリはBigQueryに蓄積され、自然言語からSQLへの変換プロセスを継続的に評価・改善する仕組みが構築されています。

  • プロトタイプからエンパワーメントへの驚異的なスピード: テスト開始から機能するプロトタイプの実装までわずか2週間。さらに法務・調達・セキュリティの承認プロセスを1か月で通過し、最初のエージェント本番稼働までわずか5か月という驚異的なスピードでプロジェクトを推進しました。並行して社内のイノベーションデーを通じて100名以上の従業員をスキルアップさせ、全社的なデータのエンパワーメントを急速に拡大させています。

まとめ

Google Cloud Nextで語られた「エージェント時代」は、単なる概念ではなく、強力なAPIやツール群によってすでに現実のものとなっています 。データエンジニアのインフラ構築から、ビジネスユーザーの意思決定に至るまで、すべてのプロセスが自然言語とAIによってシームレスにつながる世界が来ています 。自社のデータ戦略にこれらのデータエージェントをどう組み込んでいくか、今まさに検討を始めるべき絶好のタイミングと言えるでしょう。

執筆者紹介

株式会社電算システム 牧野 竜樹
株式会社電算システム 牧野 竜樹
<プロフィール>
入社2年目。エンジニアとしての活動を評価され2026年には Cloud Partner Top Engineer を受賞しました。
普段は、Google Workspace のAppSheetの導入支援をメインで担当しています。

<保有資格>
・Associate Google Workspace Administrator
・Professional Data Engineer
Professional Data Engineer