皆さんは「データ分析」と聞いて、何をイメージされますか?最近では、今特に注目されている職業の一つにデータサイエンティスト(データ分析の専門家)が選出されたりと、いろいろな場面でデータ分析がビジネスのトレンドになっています。それと同時に、データ分析に対する誤解も広く浸透してしまったように感じます。データ分析を「何でもできる魔法のツール」だと考えている方も多いですが、実際は違います。守備範囲や役割が明確に決まっていますし、正しい手法も確立しています。何より、データ分析はあくまで「手段」であって、「目的」ではありません。この点をはき違えてしまうと、思うように分析が進まない、分析した結果をビジネスに反映できないなどの問題が起きてしまいます。
本稿では、これからデータ分析へ取り組もうとしている方に向けて、その基礎とも言える「データ分析の目的や狙い」を解説します。「なぜデータ分析が必要なのか?」改めてその目的に立ち返り、データ分析を業務に役立てるための基礎を作りましょう。
データ分析の目的
データ分析を実施する目的に関しては、あれこれと説明する必要はありません。答えはいたってシンプル。「より良い決定を下すため」です。
ビジネスに限った話ではありませんが、物事は決断の連続です。その都度どのような決断をしたかによって、最終的な結果は無数に枝分かれしていきます。その中で最も大切なことは「より良い決断を下すこと」です。持続的に良い決断を下せれば、最終的な結果も良いものになります。つまりは、売上拡大や新規顧客獲得、ブランドイメージ向上など会社の利益に繋がるような結果が待っています。
そしてもう1つ大切なことがあります。それが、「素早く決断を下すこと」です。世界のビジネス市場は刻一刻と変化しており、一企業の決断をいつまでも待ってはくれません。たとえばそれが正解でなくても、時には良い決断を下すことよりも素早く決断を下すことの方が重要な場合があります。
これら2つのタイプの意思決定をサポートするのがデータ分析の本来の目的です。ビッグデータブームが到来して以来、膨大な量のデータの中から今まで気づかなかったインサイト(洞察)を得ることがデータ分析の意義のように説明されてきましたが、それはあくまでデータ分析の側面に過ぎません。
本当に大切なことは、データ分析とは「より良い決定を下す」「素早く決定を下す」という2つの決断をサポートすることにあります。データ分析に失敗する企業の多くは、データから新しいインサイトを得ることばかりに注力してしまい、データ分析本来の目的を理解していない傾向にあります。
データ分析は決して「魔法の杖」ではありません。ビジネスやここに設定した目的達成に向けて正しい方向へと導くためのより良い決断と素早い決断をサポートする、「コンパス」のようなものです。
データ分析の狙い
では、データ分析を実施することで具体的にどういった効果が生まれるのでしょうか?データ分析の狙いを整理していきましょう。
1. 予測
ビジネスにおいて最も価値ある情報とは「未来の情報」です。たとえば、「現在の在庫は3ヶ月後の○月○日に枯渇する」といった情報があれば、余計な苦労や無駄に在庫をため込む事もなく生産計画を進めることができます。
しかし、そうした未来の情報を得られるようなファンタジーは決して起こりません。だからこそデータ分析を用いて、将来的な事象を「予測」します。それは売上予測だったりトレンド予測だったり、展開するビジネスや目的によって異なるでしょう。
高度な予測結果が得られれば、ビジネスはずっと楽になるはずです。
2. 意思決定
ビジネスの世界では常に無数の選択肢が用意されています。それらを取捨選択し、正しい意思決定を下すことが成功の条件です。そのためには、どの選択肢がどれくらいのインパクトを持つのか?を正確に把握することが大切です。
また、有効な選択肢を感覚や直感に頼るのでなく、データの裏付けをもって定義することも可能となり、「想定外の事態」を最小限に止めることも可能となります。
3. サジェッションとレコメンド
サジェッションは「提案」、レコメンドは「勧める」という意味です。売上を効率よく上げるには、正しいタイミングで適切な商品やサービスを提案し勧めることが大切です。インターネットの世界(特にECサイトなど)では、関連する情報や商品、顧客の趣向や行動などに基づき、サジェストしたりレコメンドすることは当たり前になってきています。
これは、データ分析を元にして利用者が興味を示しそうな情報や商品を自動的に表示するロジックにより実現されています。
4. 分類(クラスタリング)
膨大な量のデータの中から、それぞれの特性を整理した上で同じグループに分類することもデータ分析の狙いの1つです。いわゆるクラスタリングと呼ばれる作業になります。
人がデータを眺めるだけでは気づかない、データとデータの相関関係や因果関係などが隠れている場合があります。ビッグデータ分析により新しいインサイトを発見できるのは、分類からだと言えます。
単純なカテゴライズと異なり、最近のマシンパワーを使うことで、より深い層までデータの特性やタスクのパターンを読み解く技術まで進むと深層学習となり、いわゆる自動運転や異常検知などに利用される、AIの領域へと広がっていきます。
以上のように、データ分析の狙いを知ることで、自分が今取り組もうとしているデータ分析にどういった狙いがあるのかを整理して、正確な分析を実施することの助けになります。
データ分析でやってはいけない3つのこと
データ分析に失敗する企業は後を絶ちません。それまで費やして時間や資金がすべて無駄になってしまうので、失敗は避けなければいけません。では、どうすれば回避できるのか?最後に、データ分析でやってはいけないことをご紹介します。
1. 「なんとなく」で取り組んでしまう
「データ分析の成功事例が多いから」「取引先がデータ分析に取り組んでいるから」「トレンドだから」といった、「なんとなく」の理由でデータ分析に取り組まれる企業が多いです。しかし目的なきデータ分析はほとんどの場合、失敗します。まずはやってみるという気持ちは大事ですが、何かしらの目的を持って取り組むことを推奨します。
2. 「手段」が「目的」になっている
データ分析はあくまで「手段」ですが、時にデータ分析を実施すること自体が「目的」になってしまっているケースがあります。そうなると、データ分析によって得られた結果をビジネスに繋げることができず、失敗に陥ります。
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3. 仕事をした気になってしまう
データ分析は楽しい作業でもあるので、気が付くと時間が過ぎています。しかしそれだけでは、何かが分かって気になれても、実際には何も残っていません。単に「雑学を覚えた」程度のことです。危険なのはそれで仕事をした気になってしまうことです。結局はビジネスに繋がらなければ、データ分析も意味は無いということです。
いかがでしょうか?データ分析を実施するためのツールが多数提供されており、データサイエンティストでなくても分析できる基盤が整っています。しかし、データ分析の目的や狙いを理解していないと、いくら環境が整っていてもそれを生かすことはできません。この機会に、自社が実施するデータ分析について改めて見直してみてはいかがでしょうか。
また、データ分析を行うためには、データの収集から格納、解析など各種関連するシステムとの連携やデータを保管するための環境を構築する必要があります。電算システムは、データインテグレーターとして、コンサルティングからデータ収集・加工、可視化などのデータ分析の一連のプロセスに加え、分析基盤の構築、システム化まで一貫してご提供致します。
是非お気軽にご相談ください。