昨今、データ利活用の需要が大変高まっています。
企業で集めているデータを可視化する方法に悩んでいる方や、更なるワンステップ先のデータ活用を行いたいと考えている方も多いことでしょう。
データ活用にはBIツールの選定が重要となります。BIツールによって、データ活用の幅が変わると考えても過言ではないでしょう。
本記事ではデータ可視化のみならず、可視化以前の加工までも行うことができる『Looker』という Google Cloud 製品をご紹介いたします。
『Looker』という名前を初めて聞いた方も、『Looker』を既にご存知の方も、『Looker』をより知れる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
Lookerとは【次世代型BIツール】
Lookerは、収集したデータを集約、加工から可視化まで行えるクラウド型のBIツールです。
一貫してデータの可視化を行えることや、複数データベースとのConnection、集約、データの一元管理等、豊富な機能を備えていることから、データプラットフォームや次世代型BIツールとも言われています。
Lookerを活用することによって、可視化は勿論、データ定義の管理コストの低下や権限管理のコスト低下を見込むこともでき、データ活用が進んだ先を見据えた、データ運用が可能になります。
また、Lookerは元々は Google Cloud サービスではなく、Looker社の製品でした。
2020年にGoogleに買収され、Google Cloud サービスになりました。
他のGoogle Cloudサービスと併せて使うことで、より強力なデータ活用を行うことができるでしょう。勿論、マルチクラウド環境での利用でも十二分に効果を発揮するでしょう。マルチクラウドの考え方をGoogle及びLooker社は持っています。他社クラウドサービスとの連携も抜群です。
更に、Lookerは、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」を満たしており、政府認定のクラウドサービスとなりました。
ここまでで気になる料金プランですが、Lookerの料金プランは、Googleの営業担当者と共に考えていくことになります。
利用用途や運用規模を相談しながら、最適なソリューションを提案してもらえます。
2023年にLooker(Google Cloud core)がリリースされた
Google Cloudサービスに加わったことから、Google Cloudコンソールから起動できる「Looker(Google Cloud core)」が2023年5月にリリースされました。
Looker(Original)とLooker(Google Cloud Core)と差別化して呼ばれていますが、機能に殆ど差はありません。基本の機能は全く同じです。しかし、Looker(Google Cloud Core)の方が、Google Cloudとのコラボレーションに優れています。
Google Cloud環境でのLookerの運用をシンプルに行うことができます。
また、Google CloudコンソールからLookerインスタンスを構成および作成が可能になっています。
30日間の無料トライアルがついているため、自社の環境でGoogleの最先端のBIソリューションを手軽に試してみることが可能になりました。
Lookerでできる7つのこと
Lookerは、とても多機能なBIツールです。
その中でも特徴的といえる7つの機能をご紹介いたします。
データの可視化
BIツールとして当然欠かせないデータの可視化機能「ダッシュボード」「Look」があります。
この可視化機能は、ただの可視化機能ではありません。
後述するLookMLの記述によって、動的なダッシュボードやLookを作成することができます。
リアルタイムな分析を行うことができるので、大変有用です。
ダッシュボードの作成・編集は、ブラウザ上で、クリック操作で行うことができます。
そのため、直感的に作成・編集を行うことができるので、専門知識がなくとも簡単にダッシュボードを作成することができます。
LookMLを利用したデータ管理
Lookerは『LookML(Lookerモデリング言語)』という言語を利用して、データの項目や、集計、計算、データの関係を記述することができます。
この『LookML』こそがLooker最大の強みともいえるでしょう。
LookMLによって、データを自在にモデリングすることが可能です。管理コストの低減もLookMLによって可能です。
LookMLで記述されたデータ定義は、使いまわすことが出来ます。定義した内容を呼び出して、複数の項目で利用ができます。また、記述したデータ定義に変更があれば、そのデータ定義を引用している項目は、参照しているデータ定義が変更されているため、定義が変更されます。
例えば、税率の変化や掛率の変化があったとして、その定義の値を変更すれば全ての金額に変更を与えることができます。LookMLによって、データの一元管理が可能です。
またLookMLによって、データの閲覧制限をかけることも可能です。
同じ指標を使いながらも、部署によって表示したいデータ/したくないデータがあればそれらの切り分けが可能です。
さまざまなデータソースやツールとの連携
Lookerはさまざまなデータソースやツールとの連携が可能です。
Looker Action Hubというものを使用して、サードパーティアプリとの連携ができます。
また、Looker StudioやConnected Sheets、TableauやPower BIといった他BIとも連携ができます。
LookMLでデータ定義を一元管理できることから、Lookerをモデリングレイヤーとして扱い、TableauやPower BI、Looker StudioからLookMLで定義されたデータを見ることも可能です。
Looker以外のどのBIから見ても、同じ定義が適用されるため同一の指標で確認ができます。認識のすり合わせを行う必要が無くなり、独自の計算方法を持つことも無くなり、スムーズなデータ活用を実現します。
データベースへの直接アクセス
従来のBIではBI自身でデータを持つことがありました。そのため、重くなることもしばしばありました。しかし、Lookerはデータを持ちません。データベースに直接アクセスしSQLを発行し、データを抽出します。そのため、データベースのパワフルなパフォーマンスを十分に活かすことができます。Looker自身でデータを持たないため、セキュリティの担保もできます。
アクセス可能な範囲も細かく決めることができるため、用途に合わせて接続を作成することができます。
Git管理
Lookerは、変更の記録とファイルのバージョン管理のために、Git管理をサポートしています。
Looker DashboardやLook、Explorerを構成するLookMLプロジェクトはGitでソースコードの管理を行います。
LookMLプロジェクトひとつにつき、ひとつのGitリポジトリで管理をします。
リモートのGitリポジトリを作成していない場合や、設定を迅速に行いたい場合は、Lookerのベアリポジトリという機能があります。
Lookerサーバーにリポジトリを作成して、Git履歴を記録します。
後から、Git履歴のないリポジトリに接続が可能なので、後ほど設定を行ってください。
また、Gitでのバージョン管理ができるため、既存LookMLプロジェクトのインスタンス間移動も容易という利点があります。
スケジュール配信
Lookerはスケジュール配信をサポートしています。定期的なレポートの自動配信を行うことができます。アラートを設定し、既定の値を達成したり下回ったりした場合のメール配信や、配信時刻を設定し、定刻になればレポートを自動配信する機能があります。データの形式は、PDF、CSV、PNGを選ぶことができます。また、宛先はメールアドレスのみならず、SlackやAmazon S3、Google Cloud Storage、Google Drive等も設定可能です。Webhookも設定できるため、配信先は多岐に渡らせることができるでしょう。このような配信機能を使って、Lookerのライセンスを持たないユーザーに対してダッシュボードの共有も可能です。
外部公開
Lookerは外部公開にも優れています。
Lookerで作成したダッシュボードや分析結果を、SaaSサービスに埋め込んで情報共有が可能です。
例えば iFrame で埋め込みを行ったり、APIを利用してLookerからデータを取得して外部公開も可能です。または、Lookerのコネクタを利用して、誰でも見えるLooker StudioやPowerBIを構築すれば、Lookerを利用していない人であれど分析結果を確認することが出来ます。
Lookerを導入する際の2つの注意点
Lookerの利点を最大限に活かすためには、注意しておくべき点があります。
セキュリティ対策を行う
Lookerを利用して、機密データやビジネス上の重要なデータを分析するケースは多々あります。
その際に、注意すべきこととして、セキュリティ対策が挙げられます。
BigQueryをデータベースとして利用しているのであれば、データの暗号化やセキュリティポリシーの設定をBigQuery側で厳格に行いましょう。
また、Lookerではそのデータにアクセスできる人を制限したり、表示するデータの制限をかける事が可能です。
ダッシュボードやフォルダ単位にもアクセス制限をかけることが出来るため、不用意にデータを参照してしまうことが無いように、Lookerの優れたデータガバナンスを活かした運用を行いましょう。
PDCAサイクルによる持続的な改善を行う
Lookerを活用する・しないに関わらず、データを活用していく上で、PDCAサイクルは重要なフローです。
データを分析・活用するのが目的ではありません。分析した先でどのような判断を行うのか。データを活用して、何を成し遂げたいのかを明確にして、データを活用していきます。
想定通りの成果を得られているか、利用ユーザーと共に評価を行って、システムやプロセスを適宜改善していきましょう。
また、更なる要件やニーズに対応して、持続的な改善を心掛けましょう。
Lookerには、拡張フレームワークという機能があります。これらを活用して、アプリケーション開発も可能です。
例えば、社内プラットフォームアプリケーションの構築であったり、外部アプリケーションに埋め込むためのアプリケーションであったり、柔軟性に非常に富んでいます。
新たな要件やニーズに対応すべく、これらの機能を扱うのも良いでしょう。
LookerとLooker Studioとの違い
Lookerと聞いて、Looker Studioが浮かぶ人は多いのではないでしょうか。
そもそも、LookerとLooker Studioは同じものである、という認識の方もいるかもしれません。
これらの2製品はよく混同されます。
LookerとLoooker Studioの違いを押さえておきましょう。
まず、LookerはLooker社が開発したツールです。2020年にGoogleに買収されたことにより、LookerはGoogle Cloud製品の仲間入りをしました。
Looker Studioは、Googleが開発している独自のBIツールです。Looker Studio以前の名前は、Google Data PotalやGoogle Data Studioがありました。
以下、分かりやすいように表で違いをまとめています。
Looker | Looker Studio | |
用途 | データ活用基盤の構築・分析・可視化
データプラットフォーム |
データ分析・可視化 |
モデリング | インスタンス全体で一元管理 | 各レポートのデータソース毎に定義 |
データソース | データベース | 500以上のデータソース
(CSVやGoogle Spreadsheetsなど) |
データディクショナリ | LookMLで定義可能 | なし |
権限設定・
セキュリティ |
ユーザー・グループ単位で
アクセス制限可能 |
GoogleDriveの共有設定 |
バージョン管理 | Git | 自動(変更履歴) |
データ連携 | SaaSへの埋め込み
IFame埋め込み Rest APIなど |
IFrame埋め込み
URL埋め込み |
アラート | メールやSlackに通知設定可能 | なし |
スケジューリング | メール、ウェブフック、Google Drive、
Amazon S3などへ定期配信 |
メールへの定期配信 |
利用料金 | 有償 | 無償 |
Lookerとその他のBIツールとの違い
Lookerの他にも便利なBIツールは多数存在しています。
今回はその中でも、TableauとPower BIと比較してみます。
まず、Lookerは独自の言語『LookML』を持つのが最大の特徴です。これは他社の製品にはありません。LookMLでデータモデリングを行うことによって、定義の一元管理が可能になっており、データ活用の促進を支えます。
それぞれのBIツールの特徴を理解して、適したBIツールの選定を行いましょう。
tableauとの違い
Tableauは、SalesForce社が販売しているBIツールです。
ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、分析の方法の詳細が分からずとも、データの深堀が可能です。誰でも手軽に分析を行うことが可能です。
対して、LookerはLookerの強みを最大限に活かす際に『LookML』の習得が必須となります。
そのため、ある程度のスキルを要します。
ダッシュボード作成に関しては、手軽に行えますが、作成するためのプロジェクト作りや計算式の考え方等で技術が必要になってきます。
Power BIとの違い
Power BIは、Microsoft社が販売しているBIツールです。
Power BIは、Microsoft社が販売していることもあり、他のMicrosoft製品との統合に優れています。
また、対応範囲が広いことも特徴です。更に、高度なデータモデリング機能も備えていて、DAX言語を用いたデータ加工が可能です。
LookerはGoogleに限らないクラウドデータベースとの統合に優れているため、クラウドデータベースを利用する際に有用ですが、既にMicrosoft製品を中心としていて、幅広いコネクタが必要であればPower BIが向いていると考えられます。
Lookerの活用で業務効率化を目指そう
Lookerは、会社のデータを分析・活用するためのクラウド型BIツールです。
外部のデータを取り扱って、外部に提供するシステムの構築も勿論可能です。
利用することによって、データの一元管理が可能になり、日々のデータ管理の業務の効率化を図れます。また、データ活用の幅が広がるほか、レポーティング業務等の効率化も図ることができます。
電算システム「初めてのLooker」では、他のBIツールとLookerの違いや特徴を詳しくまとめています。社内のデータ分析方法に悩んでいる方は、ぜひ一度、資料をダウンロードしてみてください。
執筆者紹介
入社4年目。データエンジニアとしてデータ分析・活用に関するプロダクト、特にLookerに関する一連の構築や支援に携わる。何事も先ずはやってみよう、の精神。
顧客に寄り添い伴走する支援を心掛けています。気軽にご相談ください!
<保有資格>
・Associate Cloud Engineer
・Professional Data Engineer
・Professional Cloud Security Engineer
・Professional Cloud Database Engineer
・Professional Cloud DevOps Engineer
・Professional Cloud Developer
・Professional Cloud Network Engineer
・Professional Machine Learning Engineer
- カテゴリ:
- Google Cloud(GCP)
- キーワード:
- looker