Google Cloud(旧GCP)の導入を検討している方のなかには、サービスの料金体系について詳しく知りたいという方がいらっしゃるのではないでしょうか。Google Cloud(旧GCP)は、低コストで導入でき、利用者が継続的に使用しやすい料金に設計されていますが、サービスごとに異なる料金体系を複雑に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では「Google Cloud(旧GCP)の概要」「サービスごとの料金体系」「料金が決まる仕組み」「支払い方法」「コストを抑えるポイント」「料金計算シミュレーション」「AWSとの料金比較」についてわかりやすく解説します。Google Cloud(旧GCP)の料金体系を詳しく把握できる内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
Google Cloud(旧GCP)とは Google 提供のクラウドサービス
Google Cloud(旧GCP)は、Googleがインターネットを通じて利用者に提供しているクラウド型サービスです。Google Cloud(旧GCP)に近いサービスとしては、Amazonが提供しているAWS(Amazon Web Services)や、Microsoftが提供しているMicrosoft Azureがあります。
Google Cloud(旧GCP)の特徴は、異なる機能を持った複数のサービスが集まっている点と、ビッグデータ分析や機械学習に特化したシステムを利用できる点です。Google Cloud(旧GCP)には、Googleの社内で実際に使われているテクノロジーやインフラが活用されています。
Google Cloud(旧GCP)の料金が決まる仕組み
Google Cloud(旧GCP)の料金に関する特徴は、以下の3つです。
- 初期費用は不要
- 使った分だけ課金される従量課金制
- 解約金はなし
特徴を確認して、料金が決まる仕組みを正しく理解しましょう。
初期費用は不要
Google Cloud(旧GCP)は、導入の際に初期費用がかからないサービスです。オンプレミス型(※1)のサービスでは、機器の購入費用やシステム構築にかかる人件費など、高額な初期費用がかかりますが、Google Cloud(旧GCP)の場合は必要ありません。導入の際の初期費用がゼロに抑えられて、コストの大幅な削減が可能です。
また、サービスの利用開始手続きは、インターネット上に必要情報を入力するだけで完了します。オンプレミス型と比較して導入の際の手間が少ない点も、Google Cloud(旧GCP)の特徴の1つです。
※1. オンプレミス型:自社のオフィスにシステムの関連機器を設置して運用する利用形態
使った分だけ課金される従量課金制
Google Cloud(旧GCP)の料金体系は、サービスの利用量に応じて料金が決定する従量課金制です。利用した分だけ料金がかかる仕組みであるため、月額固定制のサービスと比較して、無駄なコストを削減できます。
また、Google Cloud(旧GCP)には、利用料金の予算超過を防止できる「予算アラート」という機能もあります。設定した予算を超過した際に通知してくれるため、利用者の希望する範囲でサービスを使用可能です。
Google Cloud(旧GCP)のコスト管理ツールも、無駄のないサービスの活用に役立つ機能の1つです。コスト管理ツールでは、プロジェクトやサービス単位でかかっている料金や今後の料金予測ができるため、さらに無駄を削減してサービスを使用できます。
解約金はなし
Google Cloud(旧GCP)では、解約金は一切かかりません。利用を停止する際は、設定画面で「サービスの無効」を選択すれば、即時設定が反映されます。サービスの利用開始から解約にいたるまで、無駄なコストが一切かからず、利用者のタイミングでいつでも解約できる点は、Google Cloud(旧GCP)を利用する大きな利点です。
Google Cloud(旧GCP)で利用できる4つの代表的なサービスの料金
Google Cloud(旧GCP)のなかから、以下の4つのサービスにおける料金体系を解説します。
- Compute Engine
- Cloud SQL
- Cloud Load Balancing
- Cloud Storage(GCS)
サービスごとの具体的な料金体系を理解して、Google Cloud(旧GCP)の理解を深めましょう。
Compute Engine
Compute Engine(GCE)では、以下の3つの使用状況によって料金が決定します。
- インスタンス:稼働時間が秒単位で計測される
- ネットワーク:仮想マシン同士で転送されたデータ量と、インターネット間で転送されたデータ量が計測される
- ストレージ:ストレージ内の保存データ量が計測される
Compute Engine(GCE)には、通常よりもお得な料金でサービスを利用できる割引制度があります。Compute Engine(GCE)の割引制度は、以下の通りです。
- 確約利用割引:事前にリソースと利用期間を確約して利用できる割引制度
- 継続利用割引:インスタンスの稼働率に応じて適用される割引制度
継続利用割引は、リソースの実行時間が1ヶ月の25%以上に達した場合に、メモリとCPUに対して自動で適用されます。割引率は実行時間が長いほど高くなり、1ヶ月に100%稼働した場合は、最大で30%割引されます。
Cloud SQL
Cloud SQLの料金体系は、割り当てたvCPUコア数、メモリ、ストレージによって料金が決まる従量課金制です。Cloud SQL for SQL Serverの場合は、vCPUコア数、メモリ、ストレージに加えて、ライセンス料金も発生します。ライセンス料金は、起動時間を計測し、1時間単位で料金が変動する仕組みです。Cloud SQL for MySQLとCloud SQL for PostgreSQLには、以下の2つのエディションが用意されています。
- Enterprise
- Enterprise Plus
Enterprise Plusは、vCPUとメモリの単価が高い分、以下のような優れた点があります。
- 99.99%のSLA
- 高い可用性
- 短いダウンタイム
- キャッシュ用ストレージが利用可能
Cloud SQLを実際に利用した場合の料金イメージは、以下の通りです。
サービス | プラン | スペック | 1ヶ月間フル稼働した場合の料金 |
Cloud SQL for PostgreSQL | Enterprise | vCPUs: 2 / RAM: 8GB | 約21,864円 / 月 |
(2023年7月時点、東京リージョン、140円/ドル、ストレージは100GB SSD)
Cloud Load Balancing
Cloud Load Balancingの料金体系は「Application Load Balancer(ALB)」かそれ以外かで異なります。Application Load Balancer(ALB)の料金は、以下の3つの軸をもとに計算されます。
- 転送ルール数 × 利用時間 の従量課金
- 内向き(Inbound = Ingress)のデータ処理量(GB)に応じた従量課金
- 外向き(Outbound = Egress)のデータ処理量(GB)に応じた従量課金
(上記は、ロードバランサの料金を計算するためのものです。実際は上記に加えてGoogle Cloudのネットワーク外向きの転送料金がかかります)
1つ目の料金軸にある「転送ルール(Forwarding rules)」は、わかりやすく言えば「ロードバランサの入り口」です。転送ルールの料金は、ロードバランサを構築した後、存在し続けている限り発生すると考えられます。
Cloud Storage(GCS)
Cloud Storage(GCS)の料金体系は、従量課金制です。料金は、以下の5つの軸をもとに計算されます。
- 読み取りオペレーション回数
- 書き込みオペレーション回数
- データ保存ボリューム(GB / 月)
- 取り出し料金 (GB)
- ネットワーク利用 (ダウンロード方向のみ、GB)
Cloud Storage(GCS)の料金は「ストレージクラス」ごとに異なります。
Google Cloud(旧GCP)料金の支払い方法
Google Cloud(旧GCP)の料金を支払う方法は、以下の2つです。
- クレジットカード払い(USドル建て)
- 請求書払い(日本円での支払い可能)
支払い方法は以下のようにサービスの契約方法によって異なります。
Google Cloud(旧GCP)の契約方法 | 支払い方法 |
Googleとの直接契約 | クレジットカード払い(USドル建て) |
Google Cloudのパートナー企業との契約 | 請求書払い(日本円での支払い可能) |
2つの契約方法の大きな違いは「サービスの導入」と「システム開発」におけるサポートの有無です。「パートナー企業との契約」を選択した場合、Google Cloud(旧GCP)を円滑に導入できるように、パートナー企業がサポートしてくれます。また、システム開発の企画から実装までのサポートが受けられる点も、大きなメリットです。
「パートナー企業との契約」ではさまざまな特典が受けられますが、希望する支払い方法ができるかどうかも重要なポイントです。Google Cloud(旧GCP)の契約方法は、自社の都合を考慮して慎重に検討しましょう。「パートナー企業との契約」を選択する場合は、以下のページからパートナー企業をご確認ください。
Google Cloud(旧GCP)のコストを抑える4つの方法
Google Cloud(旧GCP)のコストを抑えたい場合は、以下の4つの方法がおすすめです。
- 300ドル分を90日間利用できる無料トライアルを活用する
- 特定プロダクトが利用できる無料枠を活用する
- パートナー企業が配布する利用割引を活用する
- 必要な機能を明確にする
コストを抑える方法を確認して、サービスを導入する際の参考にしてください。
300ドル分を90日間利用できる無料トライアル
Google Cloud(旧GCP)には、300ドル分のサービスを90日間利用できる無料トライアルがあります。無料トライアルは、以下の条件に該当すれば、誰でも利用可能です。
- 無料トライアルに登録したことがない
- Google Cloud(旧GCP)、Google Maps Platform、Firebaseを有料で使用したことがない
無料トライアルは、300ドル分のクレジットを使用するか、90日を過ぎた時点で終了します。無料トライアルが終了しても、支払い手続きをしなければ料金は発生しないため、安心して利用できます。無料トライアルは、次に紹介する「無料枠」とは異なるサービスです。
特定プロダクトが利用できる無料枠
Google Cloud(旧GCP)では、特定のプロダクトを月々の使用料上限まで0円で利用できる無料枠が用意されています。無料枠で利用できるプロダクトの例は、以下の通りです。
- BigQuery(1TBのクエリ(1ヶ月あたり)、10GBのストレージ(1ヶ月あたり))
- Cloud Storage(5GB 月のRegional Storage(米国リージョンのみ))
- Compute Engine(1つのe2-micro VMインスタンス(1ヶ月あたり)、30GB-月の標準永続ディスク)
無料枠は、ほかのプロダクトでも利用可能です。無料枠が利用できるプロダクトは、以下のページから確認できます。
パートナー企業が配布する利用割引
パートナー企業を通じてGoogle Cloud(旧GCP)を導入するメリットは、請求書払いができる点だけではありません。パートナー企業によっては、Google Cloud(旧GCP)に利用できる割引サービスを提供している場合があります。パートナー企業を検討する際は、割引サービスの有無とサービス内容を、サイトや問い合わせなどで確認しましょう。割引サービスの内容は、パートナー企業によって異なります。
必要な機能の明確化
Google Cloud(旧GCP)を導入する際は、自社に必要な機能を明確にするという事前準備が大切です。自社の要件が明確になっていないままGoogle Cloud(旧GCP)を導入した場合、不要な機能にも手を出してしまい、無駄なコストが発生する可能性があります。Google Cloud(旧GCP)のどの機能を利用するのか明確にしておけば、必要最低限のコストでサービスを導入可能です。
Google Cloud(旧GCP)の料金計算シミュレーション
Google Cloud(旧GCP)の導入を検討する際は、サービスを利用した場合の大まかな利用料金が把握できる「Google Cloud Pricing Calculator」の活用がおすすめです。Google Cloud Pricing Calculatorは、利用予定の機能や使用容量、インスタンス数などの入力により、1ヶ月の利用料金の概算を算出できます。Google Cloud Pricing Calculatorの使い方は、以下の通りです。
- Google Cloud Pricing Calculatorにアクセスする
- 「Add to estimate」をクリックする
- 利用予定の機能をクリックする
- 必要事項を入力する
- 1ヶ月の利用料金が表示される
Google Cloud Pricing Calculatorは、簡単な操作ですばやくGoogle Cloud(旧GCP)の利用料金を算出できるため、積極的に活用しましょう。Google Cloud Pricing Calculatorは、以下のページからアクセスできます。
Google Cloud Pricing Calculator
Google Cloud(旧GCP)とAWSの料金比較
Google Cloud(旧GCP)とAWSのサービス別の料金比較をまとめました。比較するサービスは、以下の5つです。
- コンピューティングサービス
- データ転送
- リレーショナル・データベース
- ロードバランサー
- ストレージサービス
サービス別の料金比較を確認して、導入を検討する際の参考にしましょう。(料金比較で使用する条件は「OS: Linux / リージョン: 東京」です)
コンピューティングサービス
コンピューティングサービスであるGoogle Cloud(旧GCP)のGCE(Google Compute Enging)と、AWSのAmazon EC2を料金で比較した場合の結果は、以下の通りです。
プラン | スペック | |
マシンタイプ | n1-standard-2 (vCPU ×2、メモリ7.5 GB) |
m5.large (vCPU ×2、メモリ8 GB) |
1時間あたりの料金 | 0.122ドル | 0.124ドル |
1ヶ月あたりの料金 (従量課金) |
62.34ドル (継続利用割引を適用した場合) |
89.28ドル |
1ヶ月あたりの料金 (年間契約の場合) |
48.54ドル | 56.94ドル |
コンピューティングサービスでは、 Google Cloud(旧GCP)のGCEの方が低コストで利用できます。
データ転送
データ転送サービスであるGoogle Cloud(旧GCP)のGCEと、AWSのAmazon EC2を料金で比較した場合の結果は、以下の通りです。
GCE (Google Cloud) |
EC2 (AWS) |
|
1GBあたりの料金 | 0.14ドル | 0.114ドル |
1TB分 利用した場合の料金 |
140ドル | 114ドル |
データ転送においては、AWSのAmazon EC2の方が低コストで利用できます。また、Google Cloud(旧GCP)とAWSは、データ転送のルートによって、無料か有料かどうかが変わります。
- インターネットからクラウドへデータ転送した場合:無料
- クラウドからインターネットへデータ転送した場合:有料
リレーショナル・データベース
リレーショナル・データベースであるGoogle Cloud(旧GCP)のCloud SQLと、AWSのRDSを料金で比較した場合の結果は、以下の通りです。
Cloud SQL (Google Cloud) |
RDS (AWS) |
|
インスタンスタイプ | n1-standard-2 (vCPU ×2、メモリ7.5 GB) |
m5.large (vCPU ×2、メモリ8 GB) |
1ヶ月あたりの料金 | 290.65ドル | 380.2ドル |
(両サービスとも利用するデータベースの容量は100GBとする)
リレーショナル・データベースにおいては、Google Cloud(旧GCP)のCloud SQLの方が低コストで利用できます。
ロードバランサー
ロードバランシングサービスであるGoogle Cloud(旧GCP)のCloud Load Balancingと、AWSのELBを料金で比較した場合の結果は、以下の通りです。AWSのロードバランシングサービスは3種類(ALB、NLB、CLB)ありますが、今回はALB(Application Load Balancer)を選択した場合で比較します。
Cloud Load Balancing (Google Cloud) |
ALB (AWS) |
|
1時間あたりの料金 | 0.038ドル | 0.0243ドル |
1ヶ月分 利用した場合の料金 |
27.74 ドル | 17.74ドル |
ロードバランシングサービスにおいては、AWSのELBの方が低コストで利用できます。
ストレージサービス
ストレージサービスであるGoogle Cloud(旧GCP)のCloud Storageと、AWSのAmazon S3を料金で比較した場合の結果は、以下の通りです。
Cloud Storage (Google Cloud) |
Amazon S3 (AWS) |
|
1GBあたりの料金 | 0.023ドル | 0.025ドル |
1TB分 利用した場合の料金 |
23ドル | 25ドル |
ストレージサービスにおいては、Google Cloud(旧GCP)のCloud Storageの方が低コストで利用できます。AWSには、1ヶ月につき500TB以上利用した場合に、1GBあたりの料金が0.023ドルに割引されるサービスがあります。割引サービスを活用すれば、使用容量によっては、Google Cloud(旧GCP)のCloud Storageと同料金で利用可能です。
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Google Cloud(旧GCP)にはさまざまなサービスがあり、サービスによって料金体系が異なるため、初めて利用する場合は、パートナー企業への見積り作成とサービス説明の依頼をおすすめします。パートナー企業は、Google Cloud(旧GCP)に関してノウハウがあるため、サービスに関する疑問や不明点を解消できます。
パートナー企業と契約する場合は、Google Cloud(旧GCP)の割引サービスが利用でき、サービスの導入サポートも受けられます。信頼できるパートナー企業を見つけて、賢くGoogle Cloud(旧GCP)を利用しましょう。
どのパートナー企業にすればよいか悩んでいるという方には、Google Cloudプレミアパートナーである電算システムがおすすめです。電算システムは、200個のGoogle Cloud認定資格を持っており、豊富な実績をもとに、Google Cloud(旧GCP)の導入をサポートします。パートナー企業を決めかねている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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