生成系AIがもはや日常的なツールになりつつある時代、業務にもAIを取り入れて効率化したい、、でもAIとか分からないし難しそうだし、敷居が高そうなどそんな悩みをお持ちの方が多いのではないでしょうか。こうした場面に便利なサービスとして、Google CloudのVertex AI searchをオススメします。Vertex AI searchを使用すれば、専門スキルがなくても、誰でも簡単にハイレベルの検索システムを作れます。
この記事では、Verex AI searchを初めて利用する方や使い方がわからない方でも迷わず設定できるよう、ステップバイステップで丁寧に解説していきます。
Vertex AI Search とは
Vertex AI Search とは、Googleの検索技術をベースに、生成AIが搭載された検索システムです。特定のデータ群の中から、ユーザーが探している情報にピッタリ合った検索結果を返してくれます。
このデータ群は自身で選ぶことができ、データ群の拡張や縮小も自由です。データについても、ドキュメントやテキストデータなどの構造化データだけでなく、写真や動画などの非構造化データやウェブサイトなども検索対象とすることが出来ます。
また、Vertex AI Searchの特長として、セマンティック検索が可能です。
セマンティック検索とは、検索キーワードの意図や文脈を理解して検索結果を抽出する、あいまい検索のような検索技術です。従来の検索技術(フルテキスト検索)は検索キーワードと完全に一致する検索結果のみを抽出していたのに対し、セマンティック検索は検索キーワードがどのような文章で使われるかを理解し、より関連性の高い情報も抽出できます。
もう1つの特長として、LLM(大規模言語モデル/Large Language Models)という機械学習の自然言語処理モデルで構築されています。そのため、インプットするデータ量が多ければ多いほど、ユーザーが検索システムを使えば使うほど学習精度が向上し、より正確にユーザーが求めている検索結果を返せるようになります。
例えば、Vertex AI Searchで「映画の人気ランキング」について検索するとします。
従来の検索では、「映画」や「ランキング」というキーワードを含む結果しか表示されません。しかし、Vertex AI Searchで検索した場合、映画の興行収入や観客動員数だけでなく、ランキング上位の映画の監督や出演者の他の作品といった情報や、ユーザーの視聴履歴やアクセス履歴に基づいたユーザー好みの作品情報なども表示される可能性があります。
Vertex AI Searchでまずは情報を検索できる環境を整理
Vertex AI Searchは Google Cloud サービスの一部であるため、他の Google Cloud サービスと連携することが可能です。
本章では、Vertex AI Searchを使う上で欠かせない、親和性の高いサービスや拡張機能について解説します。
データを用意してGoogle Cloud Storageに保存する
Vertex AI Searchを使用した検索システムを作りたい場合、大量のドキュメントファイルを用意する必要があります。その場合、まずはドキュメントをCloud Storageに保存するのが最適です。
Cloud StorageはGoogleが提供しているストレージサービスです。ペタバイト規模のデータも保存できるため、大量のドキュメントの保管に向いています。また、セキュリティ管理機能が豊富なため、データの安全性も確保できます。
また、Cloud Storageは従量課金制のサービスです。そのため、使用した分にのみ料金を支払うことで、コストを最適化できます。ストレージタイプも複数あり、より低コストでの保管も可能です。
そして、Vertex AI Searchとの連携が可能です。Vertex AI Searchは Cloud Storageに直接アクセスできるため、スムーズに活用することが出来ます。
Agent Builderのコンソールでアプリを作る
Vertex AI には、拡張機能として Vertex AI Agent Builderというサービスがあります。
Agent Builderとは、生成AIを使ったエージェントやアプリをGUIで作成することができるサービスです。プログラミングの知識がなくても、視覚的に操作するだけで簡単にAIアプリを構築できます。
Agent Builderで作成できるAIアプリは、以下4つのタイプから選択可能です。
・「検索」は、特定のデータソースで高度な検索システムを構築し、ユーザーが欲する情報を探してくれるアプリを作成できます。
・「チャット」は、質問に回答してくれる会話アプリを作成できます。
・「レコメンデーション」は、ユーザーの好みを学習して、ユーザーに合った商品やサービスをオススメしてくれるアプリを作成できます。
・「エージェント」は、上記3つを組み合わせたより高度で複雑なアプリを作成できます。
アプリに読み込ませるデータを設定する
アプリを作成するためには、データストアの準備も必要です。
データストアとは、Vertex AI アプリの検索対象となるデータを格納する場所です。アプリはデータストア内のデータしか読み込まないため、少なくとも1つ以上のデータストアをあらかじめ作成する必要があります。また、検索の精度と検索網の関連性に影響する部分であるため、データストア内のデータの質と量によって、アプリの性能が左右されます。
データストアは格納できるデータについて、多種多様なデータソースをサポートしています。
以下が選択可能なデータソースです。ネイティブソースとWorkspaceソースの2種類に分かれています。
・ネイティブソース:ウェブサイトのコンテンツ、BigQuery、Cloud Storage、Healthcare API(FHIR)、API、Cloud SQL、Spanner、Bigtable、Firestore、AlloyDB
・Workspaceソース:Google ドライブ、Google Gmail、Google サイト、Google カレンダー、Google グループ
【専門スキル不要】 生成 AI アプリケーションを誰でも作成することができる
Vertex AI の拡張機能を使用したり、他 Google Cloud サービスと連携したりすることで、誰でも簡単にAIアプリを作成できます。
本章では、Vertex AI の拡張機能である Agent Builder および Agent Builder で作成できる4つのタイプのAIアプリについて深堀りしていきます。
Vertex AI Agent Builder
Vertex AI Agent Builder(旧:Vertex AI Search and Conversation)とは、Google Cloud コンソール上のGUIで生成AIアプリやエージェントを作成できるサービスです。
最大の特長は、ノーコードで簡単に構築できるという点です。
また、Vertex AI Agent Builder では、以下の4種類のAIアプリを作成できますが、それぞれ特徴や使用用途が異なります。
- 検索:特定のデータソースに限定した高度な検索システムを構築できます。社内ドキュメントやマニュアルから、社員が業務や事務作業に必要な情報を見つけ出すのに役立ちます。また、専門的な論文やレポートから、専門家や研究者が高度な情報を探し出すことも可能にします。
- チャット:人間のように自然な会話ができるチャットボットを構築できます。カスタマーサポートやヘルプデスクに導入すれば、ユーザーからの問い合わせに24時間365日対応可能ですし、チャットボットが自動応答することで、待ち時間を削減し、顧客満足度向上に貢献します。
- レコメンデーション:AIがユーザー情報を学習し、ユーザーごとにパーソナライズされたサービスを構築できます。ECサイトでは、ユーザーの購入履歴や閲覧履歴から商品をオススメしたり、動画配信サービスでは、ユーザーの視聴履歴や高評価した動画から動画をオススメしたりすることが可能です。さらに、転職サイトでは、求職者にはスキルや経歴に合った求人を紹介したり、企業には最適な候補者を紹介したりすることが出来ます。
- エージェント:各アプリタイプの機能を組み合わせることで、その名の通り、ユーザーの代理人として様々なタスクをこなすサービスを構築できます。例えば、旅行予約エージェントであれば、ユーザーの要望を自然な会話でヒアリングし、最適な旅行プランを検索、提案、予約してくれます。ホテルや航空券の予約だけでなく、観光スポットの案内やレストランの予約など、旅行に関するあらゆる要望に対応できます。
【STEP別で紹介】実際にVertex AI Search を使って生成AIアプリケーションを作成
ここまで、Vertex AI Search の概要について説明してきました。本章では、デモ画面を使いながら、実際に Vertex AI Search を使ってAIアプリを作成する手順を解説します。
今回は社内規程ドキュメントを基にした検索アプリを以下の4ステップで作成してみます。
1.データの準備
2.ドキュメントのアップロード
3.アプリケーションの作成
4.プレビュー
【STEP1】データの準備
まずはインプットするドキュメントを用意します。このステップが最初にして最も重要な工程です。なぜなら<aiアプリの精度はインプットするデータの量と質に大きく影響される strong="">からです。</aiアプリの精度はインプットするデータの量と質に大きく影響される>
逆に言えば、現在どのようなデータを持っているかを把握することも重要です。持っているデータをそのまま強みに変換し、このデータからどのようなアプリが作れそうか、という発想からスタートするのも一つの手だと考えられます。
また、インプットするドキュメントは後から簡単に追加・削除することが出来ます。そのため、一通りドキュメントが揃った時点でとりあえずアプリを作成してみる、と考えるのもアリだと思います。
今回は弊社の社内規程を使用するため、複数のPDFファイルを用意しています。
【STEP2】ドキュメントのアップロード
ドキュメントの準備ができましたら、クラウドのストレージにアップロードします。今回はPDFファイルを使用するため、Google Cloud Storageに保存します。
バケットがない場合、Google Cloud コンソールから Google Cloud Storageのメニューを開き、「バケットを作成」からガイドにしたがってバケットを作成します。
バケット作成後、使用するバケットを選択し、「ファイルをアップロード」ボタンを押します。ファイルの選択ダイアログが表示されるため、アップロードするファイルを選択します。
【STEP3】アプリケーションの作成
AIアプリはAgent Builderを使用して作成します。Google Cloud コンソールから Agent Builder を開きます。
「アプリを作成する」または「新しいアプリを作成」ボタンを押し、ガイドに従って作成していきます。
アプリの種類は「検索」を選びます。
次に、アプリ構成を設定します。
次に、データストアを選択します。データソースが未作成の場合、この画面の「データストアを作成」ボタンから作成することが出来ます。
データソースは、インプットするファイルが格納されている「Cloud Storage」を選択します。
次に、インプットするデータを設定します。今回は、データの種類に「非構造化ドキュメント(PDF、HTML、TXT など)」を、インポートするファイルに先程作成したバケットのURLを選択します。選択するファイルは、項目右側にある「参照」ボタンを使うことで、簡単に見つけることが出来ます。
次に、データストア構成を設定します。
データストア名を入力後、「作成」を押すと、データストアが作成されます。
データストアを作成したら、インプットするデータストアを選択し、「作成」ボタンを押すと、データのインポートが開始されます。しばらく経つとインポートが完了し、検索アプリが完成します。
アプリに読み込んだデータは「データ」メニューから確認できます。
【STEP4】プレビューで確認
アプリが完成したら、「プレビュー」メニューで検索機能を試してみましょう。画面上部の検索バーに検索文字を入力すると、回答と、検索内容から連想される質問、関連ドキュメントの一覧が出力されます。
Vertex AI Searchを使って社内の利用を広げよう
本記事では、Google が提供する生成 AI 搭載アプリ開発用プラットフォーム「Vertex AI Search」について、その機能と簡単な社内ドキュメント検索システムの作成手順を解説しました。
本記事で解説した社内規程の検索システム以外にも、Vertex AI Search は様々な企業内ナレッジの活用に役立ちます。例えば、顧客情報、製品情報、技術文書など、社内に散在する様々な情報を統合し、Vertex AI Search のケースに当てはめて更なる社内利用を広げることで、業務効率化を促進できます。
Google Cloud は長年にわたりAI研究に投資しており、Vertex AI Search をはじめとするAIサービスは今後も進化を続けていくでしょう。より高度な機能や、より使いやすいインターフェースが提供されることで、企業のAI活用はさらに加速していくと期待されます。
Google Cloud (旧GCP) 、生成AIに関する課題やご興味のある方はぜひ電算システムにお問い合わせください。手厚いサポートをさせていただきます。
執筆者紹介
<保有資格>
・Associate Cloud Engineer
・Professional Cloud Developer
・Professional Cloud Architect
・Professional Cloud DevOps Engineer
・Professional Cloud Database Engineer
・Professional Cloud Security Engineer
- カテゴリ:
- Google Cloud(GCP)
- キーワード:
- Verex AI search