近年、自然災害やサイバー攻撃などのリスクがますます高まっています。こうしたリスクによって事業が停止してしまうと、企業は大きな損害を被ることになります。
そこで重要になるのが、BCP(事業継続計画)の策定です。BCPとは、緊急事態が発生した場合に、事業を継続するための計画です。
厚生労働省にて、介護事業者におけるBCP策定が義務化(介護報酬改定)されたことにより、他の業界でも注目されてきています。
BCP対策を策定しておくことで、緊急時の事業継続は勿論のこと、事業停止による損害を抑えたり顧客や取引先からの信頼を維持することも可能です。
本記事では、BCP対策の概要、必要性、メリット、そしてGoogle Workspaceの活用方法について解説します。BCP対策を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
BCP対策の概要を解説
BCP対策とは、自然災害やサイバー攻撃などの緊急事態が発生した場合に、事業を継続するための計画です。BCP対策を策定しておけば、緊急事態が発生した場合でも事業を継続させることができます。
BCP対策の対象となる主な事項は、以下のとおりです。
- 情報システムの復旧
- 業務の移管
- 従業員の安全確保
これらを踏まえ、BCP対策を進めていく必要があります。
具体的な策定には、以下のステップが必要です。
- 自社の事業内容やリスクを把握する
- BCPの対象となる中核事業を明確にする
- リスク発生時の被害を想定・分析する
- 復旧に向けた対応策を立てる
- BCPを定期的に更新する
また、BCP対策を進めるにあたって、担当者は事業活動が停止するパターンも想定しておく必要があります。
事業活動が停止する際には、以下の5つのパターンが考えられます。
- 情報システムの停止
- 業務拠点の損壊
- 従業員の被災
- 取引先の被害
- 社会的混乱
BCP対策では、これらのパターンを想定し、対応策を検討する必要があります。
BCP対策4つの必要性(解説)
BCP対策は、企業の事業継続を図るための重要な経営課題です。近年そのリスクは高まっており、万が一の際には情報システムが停止してしまう可能性があります。
以下ではBCP対策の必要性を、背景からご説明します。
事業継続計画(BCP)対策が注目された背景には
BCP対策の概念は、1970年代にアメリカで生まれました。当時は、コンピュータシステムの台頭に伴い、システム障害やデータ消失などのリスクが懸念されていました。そこで、これらのリスクに備えて、事業継続のための計画を策定する取り組みが始まりました。
日本では、1980年代にBCP対策の概念が導入されました。しかし、当時はBCP対策はまだ一般的ではなく、一部の大企業を中心に取り組まれていました。
BCP対策が本格的に注目されるようになったのは、2001年のアメリカ同時多発テロ以降です。同時多発テロでは、多くの企業が被害を受け、事業活動に大きな影響を与えました。この事件をきっかけとして、BCP対策の重要性が認識されるようになりました。
また、2011年の東日本大震災も、BCP対策の重要性を再認識させるきっかけとなりました。東日本大震災では、多くの企業が被災し、事業活動に大きな影響を与えました。この事件を受けて、BCP対策を策定する企業が増えました。
現在では、BCP対策は、すべての企業にとって重要な経営課題となっています。
企業におけるリスクマネジメントへの必要性
企業は、事業活動を行う上でさまざまなリスクにさらされています。これらのリスクを適切に管理することが、企業の継続的な成長と発展のためには不可欠です。
リスクマネジメントには、リスクの特定、リスクの評価、リスクの対応策の策定、リスク対応策の実施、リスク対応策の評価の5つのプロセスがあります。
BCP対策は、これらのリスクマネジメントの一つとして位置づけられます。
BCP対策を整えることで、企業は、緊急事態が発生した場合でも、事業を継続するための体制を構築することができます。
立地や企業規模を問わず重要である理由
BCP対策は、立地や企業規模を問わず、すべての企業にとって重要です。
自然災害やサイバー攻撃などのリスクは、地域や企業規模に関係なく発生する可能性があります。そのため、すべての企業がBCP対策に取り組む必要があります。
手順の策定だけでは機能しない
BCP対策は、手順の策定だけでは機能しません。BCP対策を有効に機能させるためには、以下の4つのポイントを押さえることが重要です。
1.経営層のコミットメント
BCP対策は、経営層のコミットメントがなければ、有効に機能しません。経営層がBCP対策の重要性を理解し支援することで、BCP対策の策定・運用が円滑に進みます。
2.全社的な取り組み
BCP対策は、全社的な取り組みが必要です。経営層だけでなく、従業員一人ひとりがBCP対策の重要性を理解し取り組むことで、BCP対策の効果を高めることができます。
3.定期的な見直し・更新
BCP対策は、定期的に見直し・更新する必要があります。環境や事業内容の変化に合わせて、BCP対策を適宜見直すことで、BCP対策の有効性を維持することができます。
4.訓練の実施
BCP対策が実際に機能するかどうかは、訓練によって確認することができます。BCP対策を策定した後は、定期的に訓練を実施してBCP対策が実際に機能することを確認しましょう。
上記4つのポイントを押さえながらBCP対策を推進しましょう。
BCP対策によるメリット3選
BCP対策を整えておくことで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。
ここでは、その中でも特に重要な3つのメリットを紹介します。
緊急時でも動じないための強固な経営基盤ができる
BCP対策を準備しておくことで、緊急事態が発生しても慌てることなく迅速かつ適切に対応することができます。
具体的には、以下のメリットが期待できます。
- 事業継続率の向上
- 事業復旧までの時間の短縮
- 事業復旧費用の削減
BCP対策を実施していない企業は、緊急事態が発生した場合、事業を停止せざるを得ない可能性があります。また、事業を再開する場合も時間と費用がかかり、大きな損害を被る可能性があります。
BCP対策の策定・運用によってこれらのリスクを軽減し、企業の事業継続をより確実なものにすることができます。
企業の競争力を高めることができる
BCP対策は、企業の信頼性や価値を高める効果もあります。BCP対策に力を入れている企業は、以下のようなメリットが期待できます。
- 顧客からの信頼の獲得
- 取引先からの信頼の獲得
- 投資家からの信頼の獲得
顧客や取引先、投資家は、BCP対策を実施している企業に対して、以下のようなメリットを期待します。
- 緊急時でも安定したサービスを提供してくれる
- 事業を継続する可能性が高い
- リスク管理に積極的な企業である
BCP対策を用意しておくことでこれらのメリットを顧客や取引先、投資家にアピールすることができ、企業の価値や信頼性を高めることができます。
自社の強みや弱みが明確になる
BCP対策を策定・運用する過程で、自社の事業内容やリスクを把握する必要があります。この過程で、自社の強みや弱みが明確になります。
具体的には、以下のメリットが期待できます。
- 事業の強みや弱みを把握できる
- リスクを洗い出し、対策を検討できる
- 事業の改善につなげることができる
BCP対策を進めていく過程で自社の強みや弱みを明確にし、事業の改善につなげることができます。
企業が盛り込むべき3つの対策
BCP対策では、自然災害や外的要因、内的要因などさまざまなリスクを想定して対策を講じることが重要です。
ここでは、BCP対策に盛り込むべき3つの対策について、それぞれ詳しく解説します。
【対策1】自然災害の対策:地震災害、火山災害、風水害など
日本は自然災害の多い国です。地震・火山・風水害などの自然災害は、企業の事業活動に大きな影響を与える可能性があります。
自然災害対策として、以下の事項を検討する必要があります。
事業継続に必要な事業拠点や設備の耐震化
事業継続に必要な事業拠点や設備は、耐震化によって、地震や風水害などの自然災害による被害を軽減することができます。
具体的には、免震構造や制震構造の採用、耐震基準以上の強度の確保などが考えられます。
事業継続に必要な情報システムの冗長化
事業継続に必要な情報システムは、冗長化によって、自然災害によってシステムが停止した場合でも、事業活動を継続することができます。具体的には、複数のデータセンターの設置、バックアップデータの保管などが考えられます。
事業継続に必要な人材の確保
事業継続に必要な人材は、非常時にも対応できる体制を整えることで、事業活動を継続することができます。具体的には、非常時対応マニュアルの作成、非常時対応訓練の実施などが考えられます。
【対策2】外的要因の対策:サイバー攻撃や取引先の倒産など
企業の事業活動は、取引先や顧客などの外的要因に大きく影響を受けます。取引先の倒産やサイバー攻撃などの外的要因が発生した場合、事業活動に大きな影響を与える可能性があります。
外的要因対策の具体例
具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。
取引先のリスク評価
取引先のリスク評価とは、取引先の倒産やサイバー攻撃などのリスクを評価することです。
取引先のリスク評価を実施することで、自社に与える影響を把握することができます。
サイバー攻撃への対策
サイバー攻撃への対策とは、サイバー攻撃による被害を防止または軽減するための対策です。
サイバー攻撃は、企業の事業活動に大きな被害を与える可能性があります。サイバー攻撃への対策を実施することで、被害を防止または軽減することができます。
【対策3】内的要因の対策:不祥事や人的ミス発生したリスクを予測する
不祥事や人的ミスも、企業の事業活動に大きな影響を与える可能性があります。
内的要因の対策として、以下の事項を検討する必要があります。
人的ミスへの対策
人的ミスは、誰にでも起こり得るリスクです。
人的ミスによるリスクを軽減するためには、従業員への教育・訓練やマニュアルの整備等が必要です。
不祥事への対策
不祥事は、企業の社会的信用を失墜させるだけでなく、事業にも大きな影響を与える可能性があります。不祥事によるリスクを軽減するためには、コンプライアンス教育の実施や内部統制の強化を行いましょう。
経営者や役員の意識改革
経営者や役員がBCP対策の重要性を認識していない場合、BCP対策は単なる「お飾り」となってしまう可能性があります。またBCP対策を経営戦略に組み込んでいない場合、BCP対策は事業継続に必要なリソースや人員が確保されず十分な効果を発揮することができません。
自然災害対策、外的要因対策、内的要因対策を総合的に検討することで、企業の経営をより安定させることができます。
BCP対策を取り組むためのポイント3選
BCP対策を実施する前に、自社の事業内容やリスクを十分に把握しておくことが大切です。
その後、テンプレートを活用したり、実施しやすいことから取り組むことで効果的なBCP対策を策定しましょう。
ここではBCP対策の取り組みに向けたポイントを3つに絞ってご紹介します。
社内の現状を確認する
まずは自社の現状を把握することが重要です。
具体的には、以下の項目について確認します。
- 事業内容
- 業務プロセス
- 情報システム
- 人材
- BCPの実施状況
これらの情報を整理することで、自社にどのようなリスクが存在し、どのような対策が必要なのかを把握することができます。
自社の現状を把握する方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- ヒアリング
- アンケート
- ワークショップ
- 現地調査
自社の規模や状況に合わせて、適切な方法を選択しましょう。
テンプレートを活用する
BCP対策の策定・実施には、多くの時間と労力が必要です。そのため、テンプレートを活用して効率的に進めることも検討しましょう。
テンプレートには、以下のようなものが挙げられます。
- BCP策定マニュアル
- BCP対策事例
- BCPチェックリスト
テンプレートを活用することで、BCP対策における基本的な流れや必要な項目を把握することができます。また、事例を参考にすることで、自社の状況に合わせた対策を検討しやすくなります。
なお、テンプレートはあくまでも参考資料であり、自社の状況に合わせて適宜修正する必要があります。
比較的容易な対策から取り組む
BCP対策は、一気にすべてを実施しようとすると、挫折してしまう可能性があります。
そのため、比較的容易な対策から取り組むことが重要です。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- BCPの基本的な考え方や重要性について、社員への周知・教育
- BCPの基本的な体制の構築
- 緊急時連絡体制の整備
- 事業継続に必要な情報の収集・保管
まずは、これらの取り組みから始めてみて、徐々に範囲を広げていきましょう。
なお、BCP対策は、一度実施しても環境やリスクの変化に応じて常に変化します。
定期的に見直しを行い、適宜内容を更新する必要があります。
以上、BCP対策に取り組むためのポイント3選について説明しました。
これらのポイントを押さえることで、対策の有効性を高めることができます。
BCP対策の策定時に気をつけること5選
BCP対策の必要性やメリットについてお伝えさせていただきました。
以下の項目からは策定時に気をつけることを5つに絞ってお伝えいたします。
自社の事業内容を踏まえて独自の対策を構築する
BCP対策は、自社の事業内容やリスクに合わせて、独自の対策を構築する必要があります。そのため、自社の事業内容やリスクを十分に把握した上で、対策を検討する必要があります。
そのためには必要な情報や資産をメンバーへ共有する事も大事です。
社内・社外と連携して策定を行う
BCP対策は、社内だけで完結するものではありません。社内外の協力体制を構築し、万が一の際にも円滑に対策を実施できるようにしておきましょう。
社内外の協力体制を構築することで、より円滑な実施を図ることができます。
優先する事業を確定後に各事業の対策を決める
すべての事業や業務に対して同じ対策を講じることは、現実的ではありません。優先する事業や業務を明確にし、それらに対する対策を重点的に検討しましょう。
事業や業務の優先順位付けをすることで、BCP対策の効率的な実施を図ることができます。
あらかじめ損失を予測する
BCP対策を実施したことで、どれだけの損失を回避できるのか、あらかじめ損失の分析を行い効果的な対策を検討しましょう。
損失の分析を行うことで、効果的な対策の検討に役立てることができます。
実施基準と手順を明確にする
BCP対策を実施する際には、実施基準と手順を明確にしておく必要があります。
万が一の際に、スムーズに対策を実施できるようにしておきましょう。
実施基準と手順を明確にすることで、解像度高く行動に移すことができます。
BCP対策にGoogle Worksapce導入をしよう
前項では、BCP対策を策定する際に気をつけたいポイントについて解説しました。これらのポイントを踏まえて、Google WorkspaceをBCP対策に導入することで、以下のメリットが得られます。
事業継続に必要な情報やシステムをクラウド上で一元管理できる
GoogleWorkspaceは、メール、ドキュメント、スプレッドシート、プレゼンテーション、カレンダー、チャットなど、ビジネスに必要な機能をクラウド上で提供しています。そのため、BCP対策としてこれらの機能を活用することで、事業継続に必要な情報やシステムをクラウド上で一元管理することができます。
災害時でも業務を継続できる
GoogleWorkspaceは、インターネット環境があればどこからでもアクセスして利用することができます。そのため、災害などでオフィスが利用できなくなった場合でも、インターネット環境があれば自宅や別の場所から活動を継続することができます。
コストを削減できる
オンプレミスで利用するオフィスソフトやサーバーなどに比べて、Google Workspaceは低コストで利用できます。また、クラウドサービスであるため、メンテナンスや更新作業の手間も省くことができます。
具体的な活用方法としては、以下のようなものが考えられます。
- メールやドキュメント、スプレッドシートなどのデータは、Google Workspaceのクラウドストレージに保存しておき、災害時に備える
- Google MeetやGoogle Chatなどのツールを活用して、災害時でも円滑なコミュニケーションを図る
- Google Cloud Platformなどのサービスを活用して、災害時でも業務を継続するためのシステムを構築する
Google Workspaceは、BCP対策に必要な機能を備えており、低コストで導入できるため、BCP対策の選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
BCP対策は、企業にとって重要な経営課題です。Google Workspaceを活用することで、BCP対策を効率的かつ効果的に実施することができます。ぜひ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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