社内システムを見直して、自社の業務を効率化したいと考えている方のなかには、どのようなサービスを導入すべきか悩んでいるという方が、いらっしゃるのではないでしょうか。業務効率化を進めて、より大きな成果を上げるには、クラウドコンピューティングの導入がおすすめです。クラウドコンピューティングは、社内の情報共有やデータ管理の効率化に役立ちます。
そこで本記事では、クラウドコンピューティングの概要や仕組み、メリット・デメリット、選び方を詳しく解説します。クラウドコンピューティングについて網羅的に把握できる内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
クラウドコンピューティングとは?仕組みやできることを解説
クラウドコンピューティングの概要を、以下の項目に沿って解説します。
- クラウドコンピューティングとは
- クラウドコンピューティングでできること
概要を確認して、クラウドコンピューティングの基礎知識を身につけましょう。
クラウドコンピューティングとは
クラウドコンピューティングは、インターネットをはじめとしたネットワークを通じて、クラウド型のサービスを運用・提供している事業者のコンピューティングサービス(※1)を利用する仕組みです。導入コストや運用・管理の手間を削減できる新たな仕組みとして、多くの企業から注目を集めています。
クラウドコンピューティングが普及するまでのコンピューター機能には、以下のようなデメリットがありました。
- アプリやソフトウェアを業務で使用する場合、自社で購入・アップデートなどをしなければならない
- システムの運用には、自社でのサーバーやOS、メモリなどの選定・購入・管理を要する
クラウドコンピューティングを活用した場合、コンピューター機能を利用するために必要なハードウェアとソフトウェアは、クラウド型サービスの提供事業者が設置します。そのため、自社におけるアプリやソフトウェアやサーバーなどの選定・購入・設置・アップデート・保守管理業務をなくせる場合があります。
※1. コンピューティングサービス:サーバーやソフトウェア、ストレージなどのコンピューター機能を利用できるサービス
クラウドコンピューティングでできること
クラウドコンピューティングは、あらゆる領域での活用が可能です。具体的には、以下のようなことができます。
- メールの送受信
- 資料作成・保存
- ファイルの保存・共有
- データ分析
- アプリ開発
- バックアップ など
例えば、資料の作成業務をクラウド型のアプリケーションで行えば、場所や時間の制限を受けずに、いつでも作業を始められます。アプリケーションを利用するために必要なのは、デバイスとインターネット環境の2つのみです。また、万が一デバイスが故障しても、データが紛失するリスクはありません。
クラウドコンピューティングを活用すれば、システムの導入・運用・管理コストを抑えながら、企業や部署の目標達成に向けた取り組みを円滑に進められます。業務効率化や生産性向上といった多くのメリットが得られます。
クラウドコンピューティングの仕組み
クラウドコンピューティングは、クラウド型サービス提供事業者のシステム構築や整備などによって成り立っています。サービス提供事業者は、ユーザーのニーズを調査・分析・把握した後に、コンピューティング資源を不足なく準備します。
柔軟性に優れたクラウドコンピューティングを支えるのが「仮想化」と呼ばれる仕組みです。仮想化は、物理サーバー上に複数の仮想サーバー(仮想的なサーバー)を構築することを指します。仮想化では、物理サーバーは1台しかないため、メモリやCPUも1つずつしかありません。仮想化を活用すれば、仮想サーバー別にメモリ容量やCPU処理量を振り分けて、複数の仮想サーバーをそれぞれ独立したサーバーのように動かせます。
クラウドコンピューティングのメリット6選
クラウドコンピューティングのメリットは、以下の6つです。
- 環境構築の必要がない
- マルチデバイス環境で利用できる
- 初期費用がかからない
- 情報共有やデータ取得をスムーズにできる
- 状況に応じてスケーリングできる
- 安全なセキュリティ環境下で使用できる
メリットを確認して、クラウドコンピューティングの理解を深めましょう。
環境構築の必要がない
クラウドコンピューティングは、自社でシステムを構築・運用するオンプレミス型のシステムとは異なり、システム構築を自社で担う必要がありません。システムのアップデートが必要な場合でも、サービス事業者が更新作業を行うため、利用者側のシステムも自動で最新のバージョンへとアップデートされます。
そのため、システムの構築やアップデートにかかる手間と時間をかけずに、必要な機能を利用可能です。ほとんどのサービスは、複雑な契約や書類を準備しなくても、インターネットを通じて利用申請と支払い手続きをすれば、すぐに利用を開始できます。自社で専門機器を用意したり、メンテナンスや不具合対応をしたりする必要もありません。
マルチデバイス環境で利用できる
クラウドコンピューティングは、インターネット環境さえあれば、スマートフォンやパソコン、タブレットなどのデバイスの種類に関係なく、さまざまな機能を利用できます。社内にいなくても業務に必要な機能が使えるため、リモートワークの導入にも大きく貢献するでしょう。
クラウドコンピューティングは、作業履歴の保存においても、便利な機能があります。オンプレミス型のシステムでは、基本的に他のパソコンへ作業履歴は引き継ぎできません。クラウド型のサービスであれば、デバイスにかかわらず、作業履歴をクラウド上にあるサーバーへ保存できるため、作業途中であってもスムーズに作業を再開できます。
初期費用がかからない
クラウドコンピューティングを活用すれば、初期費用をかけずに希望するサービスの利用が可能です。クラウドコンピューティングでは、自社で必要な設備を用意せずに、サービス事業者が提供するシステムをそのまま使用します。オンプレミス型のシステムを導入する場合は、サーバー機器の購入や設置費用などの初期費用がかかりますが、クラウド型のシステムであれば必要ありません。
また、買い切りのソフトウェアを導入する場合に発生する、パッケージ購入費用も不要です。クラウドコンピューティングは、月々の利用料金を支払えば、初期費用なしでサービスを即日導入できます。通常必要な初期費用が不要で、希望するサービスの機能を利用できるのは、企業にとって大きなメリットです。サービスを導入するハードルが低くなり、万が一導入後に利用を停止する場合でも、企業に与える損害はほとんどありません。
情報共有やデータ取得をスムーズにできる
自社でサーバーをはじめとしたシステムの運用・管理をしている企業の場合、以下のようなデメリットがあります。
- データ管理を各従業員に任せており、個人のローカル環境で保管されているデータの紛失や、情報漏えいが起きるリスクがある
- オフィスに行ってサーバーにアクセスしなければ、データを取得できない
- 従業員間で相互に情報共有できる環境が整っていない
クラウドコンピューティングは、クラウド上の仮想環境でデータを管理する仕組みであるため、デバイスや場所に左右されず、必要な情報へのアクセスが可能です。クラウドコンピューティングによって、自社の情報共有やデータ取得をよりスムーズにできます。
状況に応じてスケーリングできる
クラウドコンピューティングを活用すれば、状況に応じたスケーリングが可能です。スケーリングは、求められているデータ処理量に応じて、システムの処理能力や性能を増減させる機能を指します。自社でサーバーを運用・管理している場合は、データ処理量が限界を超えれば、サーバーの変更や新たな機器の購入が必要です。
クラウドコンピューティングの場合、スケーリングのためにサーバーの変更や新たな機器の購入は必要ありません。利用しているサービスプランに設定されたデータ処理量を超える場合は、プランをアップグレードすれば、一時的にデータ処理の負荷が大きくなっても、システムの遅延や停止を防げます。
安全なセキュリティ環境下で使用できる
クラウドコンピューティングでは、安全性の高いセキュリティ環境でデータ管理をするため、セキュリティリスクの低減に役立ちます。クラウド型サービスを提供している事業者は、不正アクセスや情報漏えい、災害などのセキュリティ対策が整ったデータセンターでシステムを管理しており、さまざまなリスクからデータを安全に保護しています。
データのバックアップや分散保管(※1)の技術も採用しているため、トラブルが起きてもデータ紛失のリスクは極めて低いでしょう。自社でシステムを運用・管理していて、地震や津波などの自然災害でサーバーが故障した場合は、データ紛失の可能性が高くなります。
また、自社でセキュリティ対策を講じるとしても、多額のコストや新しい人材が必要です。一方、クラウドコンピューティングの場合は、自社でセキュリティを強化するよりも、コストを削減して運用できます。
※1. 分散保管:データを複数のサーバーに分けて保管すること
クラウドコンピューティングのデメリット3選
クラウドコンピューティングのデメリットは、以下の3つです。
- 自由にカスタマイズできないケースがある
- 社内システムとの連携が制限される場合がある
- サービスが突然終了するリスクがある
デメリットを確認して、導入を検討する際の参考にしましょう。
自由にカスタマイズできないケースがある
クラウドコンピューティングのシステムは、オンプレミス型のシステムと比較して、カスタマイズの自由度は高くありません。クラウドコンピューティングでは、サービス事業者によって、サービス内容やカスタマイズできる範囲が決められているため、個々の企業に合わせたカスタマイズには不向きです。
クラウドコンピューティングのサービスのなかでもカスタマイズできる範囲は異なります。そのため、自社に合ったカスタマイズがしたい場合は、サービスのカスタマイズができる範囲を事前に調べて、なるべく要件を満たすサービスを選びましょう。
社内システムとの連携が制限される場合がある
クラウドコンピューティングは、カスタマイズ範囲の制限と同様の理由で、社内システムとの連携にも一定の制限があります。自社の社内システムと連携できるかどうかは、導入するサービスによって異なります。サービスを導入する前に、事前に社内システムとの連携可否を確認しましょう。
サービスが突然終了するリスクがある
クラウドコンピューティングのサービスを使用した場合、突然サービス提供が終了するリスクがあります。ケースとしては珍しいですが、サービス事業者の企業が倒産してしまったり、企業の都合でサービス提供が停止したりすれば、ユーザーは継続してサービスを利用できません。サービスを選ぶ際は、必ず企業の実績や規模などを確認して、信頼できるかどうかを確認しておきましょう。
適切なクラウドコンピューティングの選び方4選
クラウドコンピューティングの選び方は、以下の4つです。
- 必要な機能が搭載されているか
- 内容と料金が見合っているか
- 十分なセキュリティ対策を行っているか
- サポート体制が整っているか
選び方を把握して、自社でサービスを選ぶ際の参考にしましょう。
必要な機能が搭載されているか
クラウドコンピューティングのサービスを選ぶ際は、クラウド型のシステムに移行する目的や、自社に必要な機能の整理が大切です。仮に必要な機能が備わっていないサービスを導入した場合、時間やコストが無駄になります。導入の目的や機能を整理して、自社の体制や状況に合ったサービスを選びましょう。
内容と料金が見合っているか
クラウドコンピューティングのサービスを検討する際は、コストパフォーマンスも重要なポイントです。サービスを導入する前に、サービス内容と料金のバランスがよいかを確認しましょう。複数のサービス事業者が同じようなサービスを提供している場合、企業によって料金が異なる場合があります。サービスを選ぶ際は、複数のサービスで比較検討する方法がおすすめです。
十分なセキュリティ対策を行っているか
企業は多くの機密情報を扱うため、利用するサービスにおいてセキュリティ対策は必要不可欠です。自社で設定しているセキュリティレベルを確認して、要件を満たすサービスを選びましょう。
クラウドコンピューティングのサービスに限りませんが、インターネットを通じてサービスが提供される性質上、オンプレミス型のシステムと比較して、情報漏えいや不正アクセスのリスクは高まります。クラウドコンピューティングのサービスを選ぶ際は、できる限り強固なセキュリティが築けるサービス選びが大切です。
サポート体制が整っているか
クラウドコンピューティングのサービスを検討する際は、サポート体制の充実度も重要なポイントです。メールや電話、チャットなどのさまざまな方法で問い合わせができたり、24時間365日対応できる窓口が設置されていたりすれば、利用方法における不明点をすばやく確認でき、トラブルが発生した際にも迅速に対応できます。不明点の解消やトラブルの解決が早ければ、サービスを安定して利用でき、より効果的に活用可能です。
自社にあったクラウドコンピューティングを選択しよう
クラウドコンピューティングは、インターネットを通じてクラウドサービスを提供している事業者のコンピューティング資源(ハードウェア、ソフトウェア、記憶領域、処理性能、ファイル、データ、機械学習など)を利用する仕組みです。
クラウドコンピューティングのサービスは、デバイスとインターネット環境があれば、場所や時間にかかわらず利用できるため、自社の業務効率化に大きく貢献します。自社に最適なサービスを導入し、業務効率化や生産性向上を実現するためにも、クラウドコンピューティングの目的やメリット・デメリット、選び方を正確に把握しておきましょう。
Google Cloud(GCP)は、企業の業務効率化に役立つクラウドコンピューティングを利用したサービスの1つです。Googleがクラウドを通じて提供しているサービスの集合体であり、データ解析やWeb開発、機械学習などの幅広い分野で活用できます。
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- カテゴリ:
- Google Cloud(GCP)
- キーワード:
- クラウド コンピューティング