チャットボットとは、チャット上に寄せられたユーザーからの質問に対して、自動で回答を行えるツールです。あらかじめシナリオを設計しておくか、AI技術を活用することで、機械が自動的に適切な回答を提示してくれるため、人間による問い合わせ対応や顧客対応の手間を抑えられます。
しかし、チャットボットを導入する際は初期費用や運用コストが必要なので、「なるべく費用を抑えたい」と考えている方も多いでしょう。このような場合は、無料で導入できるチャットボットを検討するのがおすすめです。
本記事では、無料チャットボットの選び方のポイントや、おすすめの製品について詳しく解説します。チャットボットを使って業務効率化を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
無料のチャットボットを選ぶ際の6つのポイント
無料のチャットボットには幅広い種類の製品があり、それぞれ特徴や強みが異なります。そのため、自社に合った製品をスムーズに選べるよう、適切な選定基準を設けることが大切です。一般的な選定基準を紹介するので、参考にしてください。
チャットボットの種別
チャットボットは、大きく「ルールベース(シナリオ)型」と「AI型」の2種類に分かれます。
ルールベース型のチャットボットは、事前に想定されたシナリオをもとに構成されており、ユーザーに複数の選択肢を提示しながら、知りたい情報を選んでもらうシステムです。会話はあらかじめ用意されたフローチャートに沿って進み、最終的には適切な回答や必要なアクションへと誘導されます。
AI型のチャットボットは、対話の履歴データをAIが機械学習し、それをもとに返答を行う仕組みです。ユーザーがフリーワードで質問を入力すると、過去に蓄積された多くの対話ログをAIが解析し、最も適切と判断される回答を提示します。人間との会話に近い自然なやり取りが可能なため、スムーズなチャット体験を提供できる点が特徴です。
ルールベース型でシナリオを設計するか、それともシステムに搭載されたAIを活用するかは、製品によって異なります。そのため、どちらが自社にとって適切なタイプか、事前に検討しておきましょう。
無料で利用できる機能・利用期間
チャットボットの多くの製品は、無料プランと有料プランに分かれて提供されています。無料プランは有料プランに対して、一部の機能が制限されているケースも珍しくありません。また、無料トライアルを利用できる製品は、その期間が定められていることもあります。
このような点から無料のチャットボットを選ぶ際は、無料で利用できる機能と利用期間をよく確認しましょう。将来的に無料プランから有料プランにアップグレードすることも考えられるため、無料プランだけでなく、総合的な機能を勘案して製品を選ぶことが重要です。
また、チャットボットのなかには完全無料で利用できる製品もあります。ただし、この場合でも有料製品に比べて機能が少ないこともあるため、ほかの有料製品と機能性や使い勝手を比較すると良いでしょう。
付加機能
チャットボットのなかには、メッセージのやり取りを行うという基本的な機能以外に、付加機能を備えたものもあります。
例えば、顧客対応を行う際には、状況に応じてチャットボットから有人対応へスムーズに切り替える必要があります。そういったケースでは、電話やメールを介さずに、同じ画面上でオペレーターへ引き継げる有人チャット機能があると便利です。
また、マーケティングを目的としてWebサイト上で利用するのであれば、訪問者のデータを収集・分析し、それにもとづいて最適な商品を表示できるWeb接客機能が備わっていると効果的です。このように、状況に合わせて基本機能を補完できる製品を選ぶのが望ましいでしょう。しているため、ツールの導入によってより柔軟なアプリ開発ができます。
運用時のコストや負担
チャットボットの導入後には、回答の精度を高めるための運用も欠かせません。運用方法はチャットボットの種類や使用するツールによって異なるため、どの程度の運用負担がかかるのかを把握するため、あらかじめ必要な手順や作業量を確認しておきましょう。
ルールベース型であれば、シナリオの設計や見直しに時間や手間がかかりがちです。効果的な会話を設計するには一定のノウハウが必要で、知識や技術が不足している場合は、シナリオ設計のサポートを提供しているベンダーを選ぶと安心です。
AI型の場合、回答の精度を向上させるためには、教材となるデータの準備やチューニング作業(丸付け)が求められます。ただし、最近では学習済みのAIが搭載された製品も多く、導入時の手間が大幅に軽減されているものも見受けられます。
外部システムとの連携範囲
チャットボットに外部ツールを連携させることで、機能を多様に拡張することが可能です。
例えば、CRMシステムや顧客データベースと連携することで、顧客の購入履歴や過去の問い合わせ内容を把握でき、よりパーソナライズされた対応が行えるようになります。さらに、外部のナレッジベースやFAQデータベースと接続することで、より正確でスピーディな回答を提供できます。
このような連携によって、顧客満足度の向上や業務の効率化が期待できます。そのため、製品選びの段階で外部システムとの連携有無やその範囲、連携方法などを検討することが大切です。蓄積された情報を有効活用することで、より高度なサービスの提供が実現できるため、外部ツールとの連携は重要な要素といえるでしょう。
サポート体制
チャットボットを導入する際には、ルールベース型であれば質問への回答パターンの分岐設定や、AI型であればQ&Aデータの登録といった初期設定が必要です。設定が煩雑だと感じる場合は、Q&Aの登録やシナリオ作成など、初期設定を支援してくれるベンダーを選ぶと良いでしょう。
なお、チャットボットは導入するだけで効果が出るものではありません。ルールベース型なら内容の見直し、AI型なら回答精度を高めるための継続的なチューニングなどが求められます。自社にこうした運用の知識や経験がない場合は、サポート体制の充実度を事前に確認しておくことが大切です。
無料で利用できるおすすめチャットボット9選
チャットボットには、無料プランや無料トライアルが用意されている製品、完全無料で利用できるサービスなどがあります。なかでも、特におすすめの無料チャットボットを紹介します。
チャネルトーク
チャネルトークは、株式会社Channel Corporationが提供しているチャットボットです。チャットボットやWebチャットを活用して顧客からの問い合わせに対応できます。有料プランのほかにも無料プランが用意されており、費用をかけずに導入できるのが特徴です。
Webチャットやビジネスチャット、電話の3つの機能があり、Webサイトを訪問した顧客とリアルタイムでのやり取りが可能なので、オンライン上での接客に適しています。よくある質問などはチャットボットによる自動応答に任せることで、対応の負担を軽減できるのが利点です。
また、チャネルトークでは、顧客情報やWebサイト訪問者の行動履歴なども一括して管理できるため、社内の業務効率向上にもつながります。蓄積されたデータはさまざまな条件で検索が可能です。さらに、Webサイトから離脱したユーザーに対して、SMSやメールによって通知を送信できるため、休眠顧客へのアプローチやリターゲティングとしても効果を発揮します。
IZANAI
IZANAIは、無料で利用できるフリープランを提供しているチャットボットです。直感的に操作できるため、専門的な知識がなくても簡単に導入できます。あらかじめ用意された会話フローテンプレートを活用すれば、コードをコピー&ペーストするだけで実装が完了します。
特に、誰でも手軽にチャットボットを作成できるのは大きな利点です。会話フローの設定は、ウェルカムメッセージや質問、サンクスメッセージを入力するだけとシンプルな構成になっています。複雑なツリー形式ではなくステップ形式を採用しているため、設定も容易です。用途に応じた会話テンプレートが用意されているので、初心者の方でも安心して利用できます。
また、ユーザーリスト機能を活用すれば、接客したユーザーをステータスやフラグ、回答内容などで細かく分類できます。分類の基準は自社の要件に合わせて柔軟にカスタマイズできるため、ユーザーごとの対応状況を的確に把握し、スムーズなサポートやフォローアップを行うことが可能です。
HubSpot
HubSpotは、システム上で顧客のデータを一元管理できるCRM(顧客管理システム)です。あわせて、無料で作成できるチャットボットも提供しています。
HubSpotのチャットボットは、WebサイトやSNSなど、さまざまなプラットフォームに設置可能です。設置されたチャットボットを活用することで、訪問者とのやり取りを自動化・カスタマイズできます。
また、直感的に操作できるインターフェースと多彩なテンプレートが用意されており、初心者でも安心してチャットボットの設定やカスタマイズを行えます。HubSpotには手厚いサポート体制と活発なユーザーコミュニティが存在しており、困った際にはサポートへ問い合わせたり、コミュニティ内で解決策を探したりできるのが特徴です。
Tayori
Tayoriは、株式会社PR TIMESが提供する、無料で導入できるカスタマーサポートツールです。このツールは、株式会社PR TIMESのカスタマーサポートチームが抱えていた課題を解決することを目的に開発された経緯があり、実際の現場ニーズに即した機能が搭載されています。フォーム・受信箱やFAQ、アンケート、AIチャットボットの4つの機能で構成されています。
AIチャットボットの機能では、自社のWebサイトに簡易的な操作のみでチャットボットを設置できます。また、Tayoriのほかの機能とも連携が可能です。例えば、アンケート機能と組み合わせることで、チャット開始前にユーザーにアンケートへ回答してもらい、その内容に応じてより的確な対応や接客を行えます。
カスタマーサポートの現場にとどまらず、営業やバックオフィス、企画、広報など、さまざまな部門でも幅広く活用されています。
OfficeBot
OfficeBotは、RAG(Retrieval Augmented Generation)の技術を採用した、生成AI時代に対応した次世代型チャットボットです。RAGとは、ユーザーの質問に対し、あらかじめ用意されたデータベースから関連情報を検索し、その取得した情報をもとに生成AIが回答を作成する一連の流れを指します。
OfficeBotのシステムの基盤には、生成AIサービスを代表するChatGPTのアルゴリズムが採用されています。ChatGPTの持つ優れた解釈力と文章生成の能力を活用し、自社固有の情報をもとに業務に関するあらゆる質問へ高度な表現で応答できるのが特徴です。
その高い解釈力により、問い合わせ対応やナレッジマネジメントの高度化を実現します。また、業務知識にもとづいた文章生成能力によって、企画や広報など、創造性が求められる業務までサポートが可能です。さらに、紙の資料やPDF、イラスト、写真などをテキストに変換できるため、多様な形式の資料をそのままRAGに活用できます。
RICOH Chatbot Service
RICOH Chatbot Serviceは、Excelで作成したFAQを読み込むだけで、容易にチャットボットを構築できるサービスです。有料製品ではあるものの、30日間のみ無料トライアルを利用できます。
同製品の特徴としては、連携可能な外部システムの範囲が広いことです。LINEやLINE WORKS、kintone、Microsoft Teamsなどの外部システムに対応しています。連携することで、そのシステム上にチャットボットを構築できる仕組みです。
例えば、kintoneと連携すれば、スケジュール管理やタスク管理といった社内コミュニケーション機能に加え、そのインターフェース上にチャットボットを設置できるため、社内ヘルプデスクの問い合わせ対応として活用できます。また、LINEと連携すると、メッセージアプリ上にチャットボットを構築でき、公式アカウントへの問い合わせ対応やマーケティング支援ツールとして活用が可能です。
CB3
CB3は、NDIソリューションズ株式会社が提供しているチャットボットです。30日間の無料トライアルが用意されており、期間中に操作性や機能性を詳しく検証できます。
CB3は、AI型のチャットボットに該当します。AIにさまざまなデータを学習させることで、ユーザーの質問を理解したうえで自動的に適切な回答を行えるのが特徴です。学習データは、社内マニュアルやFAQ、製品資料といったファイルをアップロードするだけで済むため、手間をかけずに独自のAIモデルを構築できます。
また、学習データ支援サービスやチューニング支援サービスなど、サポート体制が充実しているのもポイントです。「学習やチューニングのリソースが足りない」「PDCAの方針が定まらない」といった疑問を抱えている場合でも、高度な知見を持つ担当者が適切なアドバイスを行ってくれます。
daab
daabは、ビジネスチャットツールのdirectに搭載されているチャットボット機能です。
directは、現場に特化し、法人利用を主な目的としたビジネスチャットツールで、中小企業から大企業に至るまで多くの導入実績があります。チャット上で写真や図面などを手軽に共有できるため、社内にいる従業員と現場にいる従業員の間で迅速な情報のやり取りが可能となり、業務の効率化に寄与します。
daabはdirect上にしか設置できないものの、無料で導入できるため、すでにdirectを利用している場合は手軽にチャットボットを構築できるメリットがあります。ビジネスチャット機能と組み合わせることで、社内ヘルプデスクにおける問い合わせ対応の効率化やナレッジベースの構築などに効果を発揮します。directには無料プランが用意されているため、いっさい費用をかけずにチャットボットの構築が可能です。
LINE Messaging API
LINE Messaging APIとは、LINE公式アカウントに付随するオプション機能の一つで、LINEアカウントを通じてユーザーと双方向のコミュニケーションを実現するためのAPIです。APIとは、異なるソフトウェアやアプリケーション同士が情報をやり取りしたり、機能を利用し合ったりするための仕組みのことで、LINE Messaging APIを導入するとLINE上で提供可能なほかのサービスとの連携が可能になります。
LINE Messaging APIは、ボットサーバーとLINEプラットフォームの間でデータをやり取りする仕組みです。そのため、例えば、ユーザーに対して好きなタイミングでメッセージを送信したり、画像やアンケート、選択肢などを表示したり、スタンプや位置情報を送信したりと、SNS上のチャットボットとして活用できます。
ユーザーとの双方向でのコミュニケーションが実現するため、マーケティングにおけるナーチャリング(見込み客の購買意欲を醸成するための活動)やサービスの予約受付、コミュニティサイトとしての活用など、さまざまな形で発展が可能です。
無料のチャットボットを導入する際の3つの注意点
無料のチャットボットを利用する際は、次のポイントに注意が必要です。
- 機能が制限されやすい
- 無料トライアルは期間が定められている
- セキュリティに不安がある
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
機能が制限されやすい
無料のチャットボットは、有料の製品に比べて機能が制限されているのが一般的です。
例えば、チャットボットを導入するプラットフォームが、特定のツールやアプリケーションに限られていることも少なくありません。さらに、登録可能なFAQの数が限られている場合もあります。多くのチャットボットは、登録されたFAQにもとづいてシナリオを構築しますが、FAQの数が少ないと、それだけ対応できる問い合わせの種類や数が少なくなり、効果を実感できないことにもなりかねません。
また、無料プランでは個別のサポートが提供されないこともあります。もし、チャットボットの導入や運用に不安がある場合は、サポートがしっかりと提供されている有料のチャットボットを検討するのが良いでしょう。
無料トライアルは期間が定められている
チャットボットのなかには、無料トライアルが提供されていることもあります。無料トライアルは無料プランと異なり、有料版に搭載されているすべての機能を無償で利用できるのが特徴です。
しかし、永年利用できる無料プランと違い、無料トライアルには期間が定められています。無料トライアルの期間は15~30日程度に設定されているのが一般的です。期間が過ぎると自動的に有料版に切り替えられるケースも多く、想定外の費用が発生する可能性も考えられます。
とはいえ、無料トライアルは、期間中に無償でツールの操作性や機能性を確認できるチャンスでもあります。期限切れのリスクをうまくコントロールさえできれば、そのチャットボットの使い勝手を詳しく検証できるため、無料トライアルの仕組みを上手に活用するのがおすすめです。
セキュリティに不安がある
無料のチャットボットは、有料版と比べてセキュリティ機能が限られているケースが多く、特にビジネスシーンでの利用には注意が必要です。なかには、入力した情報が第三者に共有されるケースもあるため、顧客情報や機密データを扱う際には適切な運用ルールの整備が欠かせません。
このような点から、金融業やサービス業などセキュリティ基準が厳格な業界では、無料版の利用がリスクにつながることもあります。万一の情報漏えいのリスクを避けるには、エンタープライズ向けの有料版の導入を検討することが望ましいでしょう。
Google Cloudを使って独自のチャットボットを作成してみよう
「チャットボットを導入する際になるべく費用を抑えたい」「無料版だと機能が物足りない」といった悩みを抱えている場合は、Google Cloudを活用してみてはいかがでしょうか。
Google Cloudは、AIモデルの開発やデータ分析基盤の構築、クラウドコンピューティングなどに関する、さまざまなサービスが搭載されたプラットフォームです。そのなかには、AI型のチャットボットを作成できるサービスが含まれています。
例えば、自然言語処理や大規模言語モデルを用いてAI型のチャットボットを構築できる「AI chatbot」や、チャットボットのフローを形成するための「Dialogflow」、学習用のデータを一元管理できる「Datastore」などのサービスが搭載されています。データ基盤やUI、AIモデル構築と、AI型チャットボットの作成に必要な環境がすべてそろっているのがGoogle Cloudの特徴です。
Google Cloudの特徴や機能、使い方などに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。チャットボットの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目的を明確にしたうえで無料チャットボットを導入しよう
無料のチャットボットは、費用をかけず手軽に導入できるメリットがあります。チャットボットは問い合わせ対応や予約受付、マーケティング支援など、さまざまな分野で活用できるため、導入することで業務効率化や生産性向上といった効果が期待できます。
ただし、有料製品に比べ、機能性やサポート内容が見劣りすることも珍しくありません。また、無料といっても無料プランや無料トライアル、完全無料など、製品によって料金プランの枠組みが異なる点にも注意が必要です。試用のために無料製品を導入するのか、それとも限定的な範囲のみで無料製品を使い続けるのかなど、事前にしっかりと導入目的を定めることが重要です。
電算システムでは、Google Cloudのスターターパックサービスや技術コンサルティングサービスなどを提供しています。Google Cloudには「Vertex AI Studio」や「AutoML」など、さまざまなAI関連サービスが搭載されており、独自のAIモデルを開発したり、既存のAI技術を活用したりできるのが特徴です。Google Cloudの活用方法については以下の資料で紹介しており、無料でダウンロードできるので、ぜひ参考にしてください。
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