近年、AI技術である機械学習とディープラーニングはさまざまな業界で活用されており、これらを取り入れ業務効率化や新しいビジネスの創出、属人化の解消などの成果を得ている企業も多く見られます。
機械学習とディープラーニングを導入するには、まずはAIと機械学習、ディープラーニングの関係性を知り、それぞれにどういう特徴があるのかを正しく理解する必要があります。3つの特徴を理解して、どの技術が自社に適しているのかを把握してから、AI技術を効果的に業務で活用しましょう。
この記事では、AIと機械学習、ディープラーニングの概要や違い、使い分けるポイント、ディープラーニングを取り入れたAIの活用事例を解説しています。専門知識がない方でも、AIと機械学習、ディープラーニングの違いがわかる内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
AI(人工知能)とは?概要を解説
AI(人工知能)は、業務のサポートや技術の発展などのさまざまな目的に活用されており、現代社会に大きな影響を与えている技術です。AIの概要を確認して、どのようなものかを具体的に把握しましょう。
AI(人工知能)の定義
AI(人工知能)とは、Artificial Intelligenceの略で、1950年代から研究が進められてきたコンピューターサイエンスの1つです。AIに明確な定義はなく、学者によっても意見は異なりますが、一般的には、コンピューターが学習データをもとに人の知的行動を再現する技術を指します。
AIができることは多岐にわたり、画像分析や需要予測、問い合わせ対応などに活用可能です。AIの活用によって、業務の効率化やヒューマンエラーの防止といった効果が得られます。
AI(人工知能)の種類
AIは、以下のような2種類に大きく分けられます。
- 特化型人工知能
- 汎用型人工知能
種類を確認して、AIの基礎知識を身につけましょう。
特化型人工知能
「特化型人工知能」とは、画像認識や音声認識、自動運転技術などのある1つの作業に特化したAIを指します。ANI(Artificial Narrow Intelligence)とも呼ばれており、特定の分野で優れた能力を発揮しますが、事前に設定されたタスク処理以外は実行できません。現在実用化されているAIは、すべて特化型人工知能に分類されます。
汎用型人工知能
「汎用型人工知能」とは、自ら考え判断して課題解決ができるAIを指します。AGI(Artificial General Intelligence)とも呼ばれており、柔軟で優れた対応力があるため、さまざまな場面で活用可能です。現在はまだ実用化されていませんが、今後の技術発展で実用化されると期待されています。
ディープラーニング(深層学習)とは?概要を解説
ディープラーニング(深層学習)は、AIの優れた能力を支える学習方法の1つです。ディープラーニングを具体的に理解して、AI分野の基礎知識を身につけましょう。
ディープラーニング(深層学習)の定義
ディープラーニングは、人の脳の仕組みをモデルにしたニューラルネットワークという技術を使って高度な学習ができる学習方法です。機械学習の一種で、手動でデータの特徴量を設定しなくても、自らデータをもとに学習可能です。
ディープラーニングは、人が気づきにくい特徴を見つけられるため、複雑で高度なデータ分析に活用されています。現在は、自動運転や医療研究、翻訳などの分野で利用されており、専門性の高い領域で活躍しています。
ディープラーニング(深層学習)の仕組み
ディープラーニングに利用されているニューラルネットワークは、人間の脳にある「ニューロン」という神経細胞の仕組みをモデルにした技術です。入力層・隠れ層(中間層)・出力層という3種類の層で構成されており、隠れ層の数が何十層にもなっていて深い構造であるため、複雑なデータ分析ができます。入力層・隠れ層・出力層のそれぞれの役割は、以下の通りです。
- 入力層:コンピューターの判断のもととなる情報を入力する
- 隠れ層:入力されたデータの分析や情報で重視すべきポイントの設定を行う
- 出力層:分析結果にもとづいた最終判断を行う
AI(人工知能)・ディープラーニング(深層学習)・機械学習の違い
ディープラーニングと混同されやすいものに、機械学習という手法があります。機械学習とは、コンピューターが膨大な量のデータを学習し、アルゴリズムにもどづいて情報を分析することで、データの識別や予測を行う仕組みです。
データの分析・学習を繰り返すことで機械学習モデルが構築され、入力データに対して学習結果にもとづいた出力を行えるようになります。分析精度は常に100%とは限りませんが、繰り返しデータ分析を行うことで、精度の向上が可能です。
ディープラーニングは、この機械学習の学習方法の1つであり、機械学習はAIを実現するための技術の1つです。つまり、AIの中に機械学習があり、機械学習の中にディープラーニングがあるという関係にあります。
さらに、機械学習とディープラーニングは、分析するプロセスにおいても違いがあります。どちらも取得したデータに含まれる要素の内、どの要素が結果にどう影響しているのかを分析しますが、機械学習ではその判断や調整を人間が行い、ディープラーニングでは機械が自動で行います。
ディープラーニング(深層学習)と機械学習を使い分ける4つのポイント
ディープラーニングと機械学習にはそれぞれに異なるメリットがあり、効果的に活用すれば、目的の早期達成や開発システムの精度向上が期待できます。2つを使い分けるには、以下の4つのポイントが役立ちます。
- 学習にかかる時間
- ハードウェアにおけるスペック
- 処理するデータの種類・量
- 説明責任の有無
ポイントを確認して、ディープラーニングと機械学習を効果的に活用しましょう。
学習にかかる時間
一般的に、機械学習はディープラーニングよりも学習時間が短く済むため、短期間で成果が求められるプロジェクトでは有効です。汎用性も高いため、業界を問わずあらゆる場面で活用できます。一方、目的に向けてどう学習させればよいか検討が必要な状況では、ディープラーニングで時間をかけて取り組む方法が効果的です。
ハードウェアにおけるスペック
ディープラーニングを利用するには、スペックの高いハードウェアが必要です。安価なハードウェアを使用した場合では、専用のハードウェアを導入したときと比べてデータ処理に何倍もの時間がかかります。
一方、機械学習にはGPUというプロセッサが必要で、スペックの高いGPUは100万円を超えることもあります。ディープラーニングに比べれば機械学習の方がコストは抑えられるため、予算を十分に確保できない場合は、機械学習がおすすめです。
処理するデータの種類・量
ディープラーニングでは、複雑なタスク処理を行うために多くのデータが必要です。データの質と量は、ディープラーニングか機械学習かにかかわらず重要なポイントですが、ディープラーニングは機械学習よりも膨大な量のデータを収集しなければなりません。
膨大な量のデータ収集が難しい場合は、機械学習が向いています。機械学習であれば、利用するアルゴリズムによっては、少ないデータ量でも十分に学習できる場合があります。
説明責任の有無
機械学習では、コンピューターがどのデータを使ってどのように学ぶかをエンジニアが把握・コントロールできるため、AIの回答の根拠を確認できます。一方、ディープラーニングでは学習過程がブラックボックス化されてしまい、AIの回答の根拠を確認できません。自動車や医療などの生命に関わる分野で問題が起きても、被害者に原因を説明できないため、ディープラーニングの利用は危険とされています。
ディープラーニング(深層学習)を取り入れたAIの活用事例
ディープラーニングの活用事例を、以下の5つ紹介します。
- 画像認識
- 音声認識
- 異常検知
- 自然言語処理
- 需要予測
ディープラーニングは精度の高さから画像認識や異常検知などの用途でよく利用されています。活用事例を詳しく確認して、ディープラーニングの活用方法を具体的にイメージしましょう。
画像認識
画像認識とは、ディープラーニングが得意とする作業の1つです。従来は目視でしなければならなかった作業を、ディープラーニングを活用したAIシステムが代行できるようになりました。例えば、工場でディープラーニングを活用すれば、不良品確認の自動化が可能です。安定した精度で24時間の不良品検知ができるため、手動での作業に比べて業務を大幅に効率化できます。
また、ディープラーニングは、空港の入国手続きでも利用されており、顔認証による本人確認の自動化で業務効率化に貢献しています。顔認証の仕組みは、ゲートで入国者を撮影した後、パスポートにある画像データと照合して本人確認を行います。ディープラーニングを利用すれば、化粧や表情などによる見た目の変化があっても、高い精度で顔を認識できるため、迅速かつ正確な顔認証が可能です。
音声認識
音声認識とは、人が話す声をテキストに変換できる技術です。ディープラーニングを活用した音声認識は、高い認識精度と自然な言語処理を実現できるため、音声データの文字起こしやスマホのアシスタントアプリなどのさまざまな用途で利用されています。
ディープラーニングを活用した音声認識は、製造業でも活躍しており、機械の異常な音と正常な駆動音を判別して、故障の前兆をいち早く管理者に通知します。機械の故障による製造停止を未然に防げるため、工場の安定した稼働が可能です。
異常検知
異常検知とは、正常なデータやパターンとは違う異常なものを自動検出する技術です。設備管理やセキュリティ監視、製品の品質管理などの用途で利用されており、異常検知にディープラーニングを活用して、より高い精度を誇るシステムも開発されています。
ディープラーニングを活用した異常検知は、クレジットカードの不正利用や詐欺行為の防止にも利用されています。コンピューターに過去の不正取引を学習させれば、実際の取引で不正が見られた際に、素早く管理者に通知して犯罪行為の防止が可能です。人が手動で取引を監視する場合に比べて、安定した高い精度を実現でき、24時間稼働での不正取引の自動監視で従業員の負担も軽減できます。
自然言語処理
自然言語処理とは、人の自然な言語をコンピューターが処理する技術です。文章・会話の自動生成や自動翻訳などで活用されています。従来の自動翻訳では、翻訳元と翻訳先に含まれる単語や文法を照らし合わせて置き換える方法でしたが、違和感のある文章になっていました。
ディープラーニングの自然言語処理では、文章の文脈や意味を正確に理解できるため、自然な翻訳が可能です。自然言語処理は、文字を使うあらゆる機能を支える技術であり、今ではさまざまな分野で活躍しています。
需要予測
需要予測とは、サービスや商品における将来の需要量を予測することです。在庫管理や生産計画、販売戦略をする上で重要な指標となるため、需要予測をしてビジネスを行う場合は、精度の高さが求められます。
ディープラーニングを利用した需要予測は、高度なデータ分析をもとに精度の高い結果が得られます。需要予測の信頼性が高く、在庫の削減や生産計画の最適化、欠品リスクの低減に活用可能です。ディープラーニングによる需要予測の具体的な活用事例としては、コンビニやスーパーなどの発注業務や飲食店の来客数予測が挙げられます。
ディープラーニングを取り入れたAIを導入して生産性を向上させよう
AIとは、1950年代から研究が進められてきたコンピューターサイエンスの1つで、コンピューターが与えられたデータをもとに人の知的行動を再現する技術を指します。
また、機械学習とは、コンピューターがデータをもとにした学習を経て、アルゴリズムにもとづいて情報を分析する手法のことです。機械学習の一種で注目されている技術に、ディープラーニングがあります。ディープラーニングは、ニューラルネットワークという技術を使った高度な学習ができる学習方法で、コンピューター自らデータをもとにデータの特徴量を学習可能です。
AIを実現する技術として機械学習があり、機械学習の学習方法の1つとして、ディープラーニングがあります。ディープラーニングは必ずしも機械学習より優れているとは限りません。コスト面や開発期間、用途などに応じて、機械学習かディープラーニングかを適切に選択し、開発を行いましょう。
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