コストやサーバー管理の手間を抑えてアプリケーション開発したい方に役立つサービスが、「FaaS」です。FaaSを用いればサーバーレスの状態でアプリケーション開発が可能なため、サーバーのメンテナンスに必要なコストや労力を削減できます。
本記事では、FaaSの基本やメリットに加えて、代表的なFaaSサービスを4つ紹介します。低コストでアプリケーション開発を行いたい方は、ぜひ参考にしてください。
FaaSとは?概要やサーバーレスの意味もあわせて解説
まずはFaaSの概要を把握しましょう。ここでは、FaaSの意味や重要概念である「サーバーレス」の意味を解説します。
FaaSとは
FaaS(Function as a Service)とは、サーバーの管理をベンダーに任せた状態で、アプリケーション開発を実施できるクラウドサービスです。利用者は自社でサーバーを構築・運用する必要がなく、必要な機能だけを呼び出して使用できます。そのため、開発にかかる負担やコストを削減しつつ、効率的にアプリ開発を進められます。
そもそもサーバーレスとは
FaaSを理解するうえで重要な概念が「サーバーレス」です。サーバーレスとは、「サーバーが存在しない」のではなく「アプリ開発者がサーバー管理をする必要がない」状態を意味します。実際のサーバーはベンダーによって運用・管理されているため、開発者はサーバーの保守や運用に手を取られることなく、アプリケーション開発に注力できます。
FaaSの代表的な2つの特徴
FaaSの特徴を把握すれば、FaaSの意味をより深く理解できるでしょう。ここでは代表的な特徴を2つ解説します。
オートスケーリング
オートスケーリングとは、サーバーの利用状況に応じて処理能力を自動調節できる機能です。アクセスが集中しているタイミングなど、使用負荷が大きい場面では自動でリソースを増やし、処理の遅れを防ぎます。反対に、利用が少ないときにはリソースを減らすため、無駄なコストを抑えつつ安定した稼働を実現できます。
イベントドリブン
イベントドリブンとは、特定のイベントをトリガーにして、自動で処理を開始できる機能です。例えば、ボタンクリックやファイルアップロードなどをトリガーとして、メッセージ送付やデータ保存などの処理を実行できます。イベントが発生したときだけ稼働するため、サーバーを常時稼働させる必要がなく、効率的で柔軟なアプリケーション開発が可能になります。
FaaSと比較される用語5選
FaaSの意味を正しく理解するには、似た用語との違いを把握することが有効です。ここではそれぞれの意味や特徴を解説します。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaSは、インターネット経由でストレージ・サーバー・ネットワーク・OSといった基盤インフラを利用できるサービスです。ベンダーが必要なインフラを用意してくれるため、自社でハードを調達する必要がなく、申し込みや設定だけで迅速に利用開始できます。スペックの変更やカスタマイズも容易で、柔軟な運用が可能です。
PaaS(Platform as a Service)
PaaSは、IaaSで使える機能に加え、プログラミング言語やミドルウェア、開発管理ツールなどの機能も利用できるクラウドサービスです。開発に必要な環境をクラウド上で揃えられるため、初期コストを抑えつつ効率的にアプリ開発が可能です。従量課金制が多く、必要なリソースだけ利用できるのもメリットです。
SaaS(Software as a Service)
SaaSは、すでに開発されているソフトウェアを、インターネット経由で利用できるサービスです。サブスクリプション型が主流で、初期費用を抑えながら必要なときに必要な機能を必要な分だけ使えます。導入後の運用・管理負担が軽く、場所や端末を選ばず利用できる点も強みです。
iPaaS(Integration Platform as a Service)
iPaaSは、複数のシステム上に保存されている情報を、まとめて連携・管理できるサービスです。通常、異なるシステムを連携させるにはAPIやCSVを取り込み、RPAなどが必要でコストがかかりますが、iPaaSであればSaaS・オンプレミス問わずシステム同士をスムーズに接続し、情報連携を自動化できます。システムが増えるほど効果を発揮するサービスです。
DaaS(Desktop as a Service)
DaaSは、クラウド上に仮想デスクトップ環境を提供するサービスです。従来のVDIでは自社サーバーで管理が必要でしたが、DaaSでは、ベンダーがクラウド上で一括管理します。これにより、インターネットさえあればどの端末からでも自分のデスクトップ環境にアクセス可能です。PCごとのOSインストールや更新作業も不要になり、管理負担を大幅に軽減できます。
FaaSの3つのメリット
FaaSを利用することで、サーバーレスで効率的なアプリ開発が可能です。ここでは、FaaSの導入によって得られる代表的な3つのメリットを解説します。
開発コストの削減
FaaSでは、サーバーの準備や運用を自社で行う必要がなく、ベンダーに任せられます。そのため、設備投資や管理工数が削減でき、開発コストの圧縮につながります。また、処理を実行した分だけ課金される従量課金制のため、常時稼働が不要で、無駄なコストが発生しません。結果として、利用量に応じた柔軟で効率的なコスト管理が可能です。
開発への注力
FaaSを利用しない場合、アプリケーション開発と同時にサーバー管理を行う必要があり。開発スケジュールの遅延につながる可能性があります。
一方でFaaSを用いると、サーバーのアップデートや運用管理をベンダーが代行するため、開発者はインフラを気にせずアプリケーションの開発に専念できます。その結果、リリースまでのスピードが向上し、迅速なサービス提供を実現できます。
拡張性の高さ
FaaSは利用状況に応じて処理能力を自動的にスケールアップ・ダウンできるため、負荷が集中するタイミングでも安定した動作を保てます。
また、既存のシステムやアプリケーションとAPIを介して連携させることも容易で、新しい機能を段階的に追加することが可能です。そのため、利用量に応じて必要な分だけリソースを柔軟に調整でき、余計なコストをかけずに拡張性の高いアプリ開発を実現できます。
FaaSを活用するときの3つのデメリット
FaaSには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、FaaSを活用するときに押さえておきたい3つのデメリットについて解説します。
運用に知識を要する
FaaSは多種多様なプログラミング言語に対応可能で、自由度が高いことが特徴です。ただ、その分開発環境の構築やコードの追加・変換には専門的な知識が求められます。また、FaaSでは複数サービスを連携して利用するケースも多いため、システム全体のモニタリングや障害対応が複雑化しやすい点に注意が必要です。
データ処理に遅延が発生する可能性がある
FaaSは、インターネットを介して処理が行われるため、アクセス集中やネットワーク状況によっては処理が遅延するリスクがあります。そのため、処理スピードが業務に直結するシステムでは、導入前に実運用を想定した負荷テストや監視体制の検討が不可欠です。
サービスを活用しきれない可能性がある
FaaS自体は広がりを見せているものの、サーバーレスに関係する技術や、その仕様の標準化は十分に進んでいません。そのため、あるベンダーのサービスを利用して開発したアプリケーションは、他社のFaaSに容易に移行できない場合があります。また、ベンダーがサービスを終了した場合には、大きな移行コストや再開発の負担が発生するリスクもあります。
FaaSの3つの活用シーン
FaaSは、すでに幅広いビジネスシーンで導入が進んでいます。ここでは、代表的なFaaSの活用シーンを3つ紹介します。
自動でのデータ処理
FaaSは、大規模データ処理やバッチ処理の自動化に使えます。IoTデバイスから送信される膨大なログデータをリアルタイムに変換・集計できるほか、バッチ処理の自動化にも有効です。これにより、人手を介さず継続的にデータを処理でき、業務効率化と精度向上を同時に実現できます。
イベント駆動型での処理
FaaSはイベントドリブン型のシステムと相性が良く、特定のイベントをトリガーにして処理を発動できます。例えば、Webアプリで画像がアップロードされた瞬間に自動で圧縮やサムネイル生成を実行する、といった仕組みを容易に構築可能です。サーバーを常時稼働させず、必要なときだけ処理を行える点も大きな利点です。
フォームの処理
FaaSは、問い合わせフォームや申込フォームのバックエンド処理にも活用できます。具体的には、入力データをデータベースに保存し、同時に確認メールを自動送信したり、CRMシステムに登録したりする一連のフローを自動化可能です。これにより、手作業の削減と顧客対応の迅速化を両立できます。
代表的なFaaSサービス4選
さまざまなFaaSから、ここでは代表的なサービスを4個紹介します。利用プランや機能も一覧で解説するので、参考にしてみてください。
▼代表的なFaaSサービス一覧
| サービス名 | 利用プラン | 主な機能 |
| AWS Lambda |
※詳細は「料金見積」をリクエスト |
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| Cloud Run Functions |
※詳細は「料金ツール」でシミュレーション |
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| Azure Functions |
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| IBM Cloud Code Engine | コスト見積もりツールで算出 |
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AWS Lambdaとは、Amazon社提供のAWS(Amazon Web Services)上で利用できるFaaSサービスです。クラウド上でプログラムを実行できるため、開発スピードを高められます。また、仮想サーバーの運用保守が不要で、大幅な人的コストの改善が見込めるでしょう。Java・Python・Rubyなど有名な言語がサポートされていますが、サポートされていない言語でもカスタムランタイム機能を活用することで実装が可能です。
また、AWSの各種サービスと連携できるのも大きな特徴です。例えば、Amazon S3でデータが更新された際に、そのイベントをトリガーにAWS Lambdaを起動して処理を実行できます。これにより、システム全体を効率的に連携させ、柔軟なアプリケーション設計を実現できます。
| 利用プラン |
※詳細は「料金見積」をリクエスト |
| 主な機能 |
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| 公式サイト | https://aws.amazon.com/jp/lambda/ |
Cloud Run Functions

Cloud Run Functionsは、Google社のGoogle Cloud Platform(GCP)で提供されているFaaSサービスです。オートスケール機能を有しており、アクセス数などを負荷に応じて変動させられるため、事前にサーバー容量を決めておく必要はありません。また、従量課金制のため、想定よりも利用量が少ない場合でも余計なコストが発生しない点もメリットです。
さらに、GCPのログ集約サービス「Cloud Operations」と統合されているため、モニタリング・ロギング・デバッグなどの設定を一元的に管理できます。そのため、複数のプログラミング言語を組み合わせた柔軟なシステム設計が可能になるだけでなく、本番環境で障害が発生した際にも、ユーザーへの影響を即座に確認して対処できます。
| 料金体系 |
※詳細は「料金見積」をリクエスト |
| 主な機能 |
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| 公式サイト | https://cloud.google.com/functions?hl=ja |
Azure Functions

Azure Functionsは、Microsoft社が提供しているMicrosoft Azure上で使えるFaaSサービスです。コードの実行時間に応じてリソースが消費されるため、コストを抑えて利用できます。また、イベントドリブン型のサービスであるため、HTTP要求などさまざまなトリガーをきっかけに処理を実行させることが可能です。
さらに、自動でリソースが拡張されており、スケーラブルなシステム構築にも適しています。小さな機能単位のプログラム(関数)を作成できるため、マイクロサービスアーキテクチャの構築に向いている点や、Microsoft製のさまざまなクラウドサービスとも簡単に連携できる点も特徴です。
| 料金体系 | |
| 主な機能 |
|
| 公式サイト | https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/functions |
IBM Cloud Code Engine

IBM Cloud Code Engineは、IBM社が提供しているIBM Cloud上で使えるFaaSサービスです。アプリケーションのコードを解析し、自動的にコンテナイメージの作成とデプロイを実行できます。現在、日本国内では東京と大阪の両リージョンに対応しています。
ビルドで利用したリソース量だけ料金が発生するため、利用しない部分に余計なコストが発生する心配はありません。また、インフラ管理せずとも柔軟にスケール変更が可能なので、過不足なくリソースを活用できるでしょう。
| 料金体系 | コスト見積もりツールで算出 |
| 主な機能 |
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| 公式サイト | https://www.ibm.com/jp-ja/products/code-engine |
FaaSでコストを抑えて開発に注力
FaaSとは、サーバーレスの状態でアプリケーション開発を実行できるクラウドサービスです。FaaSのサーバー管理はベンダーが行うため、自社にサーバーがない企業でもアプリ開発を実行できます。
コスト削減や開発への注力、拡張性の高さなどがメリットですが、運用に知識が必要なこととベンダーの仕様やサービス継続に依存するリスクがある点には注意が必要です。具体的な活用シーンとしては、自動データ処理やイベント駆動型の処理、フォーム送信後の自動フロー構築などが挙げられます。
代表的なクラウドサービスであるGoogle CloudでもFaaS(Google Cloud Functions)を利用可能です。電算システムでは、その導入から運用までをサポートしているため、安心して活用を始められます。Google Cloudについてより深く知りたい方は以下にアクセスしてください。
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