近年、ChatGPTへの注目が高まり、生成AIを導入する企業が増えています。中でも生成AIチャットボットは、問い合わせ対応の自動化や社内のナレッジ共有などで活用できるため、あらゆる業界の企業が活用しやすいプログラムです。業務効率や顧客満足度の向上に大きく貢献すると期待されています。
この記事では、生成AIチャットボットの概要やできること、活用するメリットなどを解説しています。生成AIチャットボットについてわかりやすくまとめた内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
生成AIチャットボットとは人工知能を搭載した自動回答プログラム
生成AIチャットボットとは、生成AIを活用して、与えられた質問に自動で回答するプログラムです。生成AIとは、AI(人工知能)の種類の1つであり、学習データをもとに新たなコンテンツを生成できる技術を指します。生成AIには、以下のような種類があります。
- 文章生成AI:指示に応じて、文章を生成する
- 画像生成AI:指示に応じて、新たな画像を生成する
- 動画生成AI:指示に応じて、新たな動画を生成する
- 音声生成AI:指示に応じて、新たな音声データを生成する
生成AIは、自然言語処理(※1)によって、人が話しているような自然な言葉で与えられた質問に対する回答が可能です。生成AIチャットボットには、この生成AIの技術が活用されており、自然な言葉で迅速にユーザーへ回答します。また、生成AIチャットボットには学習機能が備わっており、質問への回答を繰り返す過程で学習し、回答の精度を向上できる特徴もあります。
※1. 自然言語処理:人が話したり書いたりする言語(自然言語)をプログラミング言語に変換する技術
生成AIチャットボットとAIチャットボット・シナリオ型チャットボットの違い
生成AIチャットボットは、AIを活用したチャットボットの中でも比較的新しいプログラムです。生成AIチャットボットの登場以前からある従来型のチャットボットには、以下のようなものがあります。
- AIチャットボット
- シナリオチャットボット
生成AIチャットボットとAIチャットボット・シナリオチャットボットの違いを確認して、AIを活用したチャットボットにはどのようなものがあるのか把握しましょう。
AIチャットボットとの違い
AIチャットボットとは、入力された質問に応じて、事前に用意された回答から最適なものを自動で表示するチャットボットです。人によって作成・確認された回答が表示されるため、回答の正確性が高い特徴があります。
AIチャットボットを社内に導入する際は、回答の作成・確認が必要になり、プログラムを管理する担当者の負担が大きくなります。生成AIチャットボットであれば、AIが回答を自動生成するため、担当者の負担が少なく、迅速な回答が可能です。質問の読み取り、回答の作成・確認・表示など、AIチャットボットよりも広い範囲の業務を自動化でき、社内の大幅な業務効率化に貢献します。
シナリオ型チャットボットとの違い
シナリオ型チャットボットとは、事前に設定された会話の流れ(シナリオ)をもとに、ユーザーと自動でやり取りを行うチャットボットです。ユーザーの入力内容に応じて、決められた会話パターンから適切な回答を案内できます。
シナリオ型チャットボットでは、ユーザーは質問文を自由に入力できないため、求める回答が得られない場合があります。事前に設定された会話パターン以外のことができない点で、回答の柔軟性が高いとは言えません。また、ユーザーの質問を想定して回答までの流れを事前に設計する必要があり、AIチャットボットと同様に担当者の負担は大きくなります。
生成AIチャットボットでは、膨大なデータから学習した生成モデルが回答を生成するため、想定外の質問にも柔軟に対応可能です。生成AIチャットボットは、柔軟な対応力と業務の自動化の点で優れているプログラムです。
生成AIチャットボットができる3つのこと
生成AIチャットボットは、業務効率化や顧客対応の強化に貢献するツールであり、業務上では以下のことができます。
- 社員・顧客の問い合わせ対応
- 社内のナレッジ共有
- 顧客データの収集
生成AIチャットボットができることを把握し、自社の事業でどのように活用するかをイメージしましょう。
社員・顧客の問い合わせ対応
生成AIチャットボットは、社員と顧客の問い合わせ対応に活用可能です。社員の場合は社内ルールや事務手続きの方法を確認でき、顧客の場合はサービスの使い方やトラブルの解消方法の確認ができます。
加えて、社員と顧客の疑問や不明点をAIが自動で解決してくれるため、問い合わせ対応の担当者の負担軽減も可能です。生成AIチャットボットを活用すれば、社員と顧客、担当者のすべてにメリットをもたらし、社内の業務効率化が実現します。
社内のナレッジ共有
生成AIチャットボットは、社内ナレッジの共有に便利なプログラムです。社内ナレッジの蓄積や共有にイントラサイト(※1)やマニュアルを活用する企業は多いものの、求める情報を見つけ出すのに時間がかかり、生産性を下げてしまっているケースがよく見られます。
そこで、生成AIチャットボットを社内ナレッジの共有に活用すれば、求める情報をチャット形式で質問するだけで、AIがすぐに見つけ出し、表示してくれます。生成AIチャットボットによって社内ナレッジの共有が迅速化し、社内の生産性向上が可能です。
※1. イントラサイト:社内向けのお知らせや自社で使用するツールなどが集約された社内専用のウェブサイト
顧客データの収集
生成AIチャットボットによる問い合わせ対応では、顧客からのあらゆる疑問や悩みを情報として収集できます。また、顧客管理システムとの連携に対応したチャットボットを活用すれば「顧客の年齢や性別、購入履歴といった個人情報」と「チャットボットにおけるやり取り」の一元管理が可能です。
生成AIチャットボットを活用する4つのメリット
生成AIチャットボットを活用するメリットは、以下の4つです。
- 問い合わせ対応にかかるコストを削減できる
- 業務効率化につながる
- 24時間365日体制で顧客満足度の向上につながる
- 蓄積したデータを他の業務に生かせる
メリットを把握し、自社の業務にどのように活かせるかを考えてみましょう。
問い合わせ対応にかかるコストを削減できる
生成AIチャットボットを活用すれば、社員や顧客からの問い合わせ対応にかかるコストの大幅な削減が可能です。生成AIチャットボットでの対応が難しい質問以外は、チャットボットが自動で回答してくれるため、手動での問い合わせ対応の時間が減り、コストを削減できます。
少ない人員での問い合わせ対応が可能になり、人手不足を解消できるだけでなく、新しい人材の採用コストや研修コストを含めた人件費の削減が可能であるというメリットもあります。
業務効率化につながる
生成AIチャットボットは、機械学習や高度な自然言語処理により、複雑で細かい質問であっても柔軟に回答できます。加えて、手動での対応よりもほとんどの質問において早く正確に回答可能です。オペレーターの負担を軽減でき、社内の業務効率向上につながります。
24時間365日体制で顧客満足度の向上につながる
生成AIチャットボットは、24時間365日体制で質問への回答が可能です。常に安定した精度の高い回答を提供できるため、顧客は自身の質問に対する回答を即座に得られ、問題や疑問を素早く解消できます。時間の制限がない迅速かつ正確な回答によって、顧客満足度の向上につながります。
蓄積したデータを他の業務に生かせる
生成AIチャットボットを活用すれば、顧客情報やユーザーとのやり取りをデータとして蓄積できます。蓄積されたデータを分析することで「顧客ニーズの発見」や「既存サービスの改善」などに活用でき、商品企画やマーケティングなど他の業務にも役立てられる点が大きなメリットです。
生成AIチャットボットは、チャット形式でメールや電話よりも気軽に利用できるという特徴があるため、顧客の本音が得やすく、より信頼性の高いデータを収集できます。
生成AIチャットボットを選ぶときの3つのポイント
生成AIチャットボットを選ぶ際には、自社の用途や状況を考慮する必要があります。単にAIを活用するだけでなく、運用しやすく、業務の効率化や顧客満足度向上につながるかを見極めるのが重要です。ここでは、最適な生成AIチャットボットを選ぶ際の3つのポイントを解説します。
使用用途
生成AIチャットボットを選ぶ際には、自社の使用用途に適したものを検討しましょう。生成AIチャットボットには、社内業務のヘルプに向いているものや、カスタマーサポート向けのものなど多様なサービスがあり、それぞれの使用用途に特化したデザインや機能を採用しています。
そのため、生成AIチャットボットを選ぶときは、使用用途を明確にした上で、「必要な機能が備わっているか」「扱いやすいかどうか」などを確認してから導入しましょう。
カスタマイズ性
生成AIチャットボットを選ぶ際は、カスタマイズ性も重要なポイントです。自社の業務に合わせて設定が可能な生成AIチャットボットを選ぶことで、導入後の柔軟な運用が可能になります。カスタマイズ性の低いチャットボットを導入した場合、後から変更しようとしても、追加コストが発生するケースがあるため、事前に確認してから導入しましょう。
特に、ローコードやノーコードのチャットボットは、自社で簡単に設定を変更できます。専門的なプログラミング知識がなくても運用できるため、初めて生成AIチャットボットを導入する企業でも扱いやすいのが特徴です。
一方、プログラミングが必要なチャットボットは、専門スキルを持った人材の確保が必要です。社内に適任者がいない場合は、人材の採用もしくは育成が必要になり、多くのコストと時間がかかります。
ローコードやノーコードのチャットボットなら、操作に慣れれば誰でも運用可能です。担当者が変わる場合でも、スムーズに引き継ぎができ、継続的な運用に適しています。
費用
生成AIチャットボットを選ぶときは、事前に費用面も十分に確認しましょう。導入費用やランニングコストを抑えられるサービスであっても、別途でサポート費用がかかるものもあります。また、生成AIチャットボットを導入した後のシステム構築費用や運用・保守費用など、チャットボットの導入にはあらゆる費用がかかります。
全体の費用が自社の予算内に収まるかをよく確認して、ROI(投資対効果)を考慮しながら、コストパフォーマンスの高い生成AIチャットボットを選ぶことが大切です。
生成AIチャットボットを活用する際の3つの注意点
生成AIチャットボットを効果的に活用するにはいくつかの注意点を理解しておく重要があります。ここでは、生成AIチャットボットを活用する際に押さえておきたい3つの注意点を解説します。
導入・運用に時間とコストがかかる
生成AIチャットボットは、導入と運用において多くの時間とコストがかかります。生成AIチャットボットの導入には、一般的に以下をはじめとしたさまざまな準備が必要です。
- 管理担当者の確保
- FAQの整備
- シナリオの作成
- AIに与える学習データの収集・選定
上記の作業が完了して初めてチャットボットとして運用できるようになるため、導入には数ヶ月以上かかる場合がほとんどです。また、生成AIチャットボットは、場合によって専門スキルを持った人材を新しく採用する必要があります。
生成AIチャットボットを活用する際は、できる限り細かく必要な時間とコストを見積もって、自社で十分に準備してから導入に取り掛かるようにしましょう。
問い合わせ対応を完全に無人化するのは難しい
生成AIチャットボットは、入力された質問に対して安定した精度の高い回答ができるプログラムです。しかし、すべての質問に回答できるわけではありません。
生成AIチャットボットで回答できなかった質問は、オペレーターの対応が必要です。生成AIチャットボットを問い合わせ対応に活用する際は、問い合わせ対応の人件費をゼロにするという目的ではなく、あくまでオペレーターの負担軽減や業務効率化を目的として、導入するようにしましょう。
オペレーターが問い合わせに対応する場合は、チャット上でオペレーター対応へ切り替えを行うか、チャットボットの回答から電話へ誘導する方法が有効です。
基本的に複数の質問に対して一度で答えられない
ほとんどの生成AIチャットボットは、問い合わせ対応時に複数の質問を同時に受けても、一度に1つの質問しか処理できません。メールや電話による問い合わせであれば、複数の質問に対してまとめて回答できますが、生成AIチャットボットによる問い合わせ窓口の場合、顧客は複数の質問があっても1つずつ入力する必要があります。
質問の多さによっては、生成AIチャットボットへの問い合わせを不便に感じ、顧客満足度の低下を招く恐れがあります。生成AIチャットボットを活用する際は、一度に複数の質問が来た場合にメールもしくは電話へ誘導するよう対策しておくと良いでしょう。
企業における生成AIチャットボットの活用事例
生成AIチャットボットが企業で実際に活用された事例を紹介します。事例を確認して、自社での活用イメージをより明確にしましょう。
顧客からの問い合わせ対応に生成AIチャットボットを利用した事例
システムのコンサルティングやDX化の支援を行っているA社は、年末調整における各種控除申告をオンライン上で完結できるサービスを運用しており、よりサービスの利便性を向上させるために、顧客が気軽に問い合わせできる生成AIチャットボットを導入しました。
導入後は、メールや電話での問い合わせの代わりに生成AIチャットボットを利用する顧客が月3,000件近くになり、目的の達成を実現しました。
バックオフィスへの問い合わせ対応に生成AIチャットボットを活用した事例
在宅医療機器や医療用医薬品を主軸とした保険の分野で活躍しているB社では、自社のイントラサイトから必要な情報を見つけられずに問い合わせする社員が増え、バックオフィスの担当社員の業務が逼迫する状況を改善するために、生成AIチャットボットを導入しました。
導入後には、社員が簡単に必要な情報を確認できるようになったため、社内からの問い合わせ対応に追われていたバックオフィスの担当社員は、本来注力すべき業務に集中できるようになりました。
社員の知識習得に生成AIチャットボットを活用した事例
オフィス家具や物置を生産しているC社は、膨大な製品数と資料確認の手間が原因で、顧客から問い合わせが来る度に営業社員が開発部門に電話確認することが常態化していました。この問題の解決のために、生成AIチャットボットを導入しました。
導入により、開発部門に確認しなくても営業社員が顧客への質問に回答できるよう改善されています。営業社員を対象とした社内アンケートでも「自社製品の知識が高まった」「質問への回答スピードが上がった」という意見が多く見られて、高い成果を得られました。
生成AIチャットボットを活用して業務効率化を実現しよう
生成AIチャットボットとは、生成AIを活用した自動回答プログラムです。優れた学習機能を備えており、質問に対する回答を繰り返す度に、回答の精度を向上できる特徴があります。
生成AIチャットボットは、社員の代わりに問い合わせに対して自動で回答してくれるため、業務効率化や顧客満足度向上に貢献します。また、顧客とのやり取りの内容はデータとして蓄積でき、分析によってあらゆる用途に利用可能です。
生成AIチャットボットの中には、ローコードやノーコードで利用できるものもあります。専門知識がなくてもシステムを運用できるため、初めて生成AIチャットボットを導入する企業におすすめです。
生成AIチャットボットを導入して、社内の業務効率化を実現したい方や、生成AIについてさらに知りたいという方は、以下のページからダウンロードできる資料をぜひご覧ください。
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