Google Compute Engine (GCE) でWindows ServerのVMインスタンスを作成した場合、デフォルト設定は英語です。日本語で利用するためには設定変更が必要です。日本語のWindows Serverを複数使用したい場合、毎回同じ作業を繰り返すのは手間がかかります。
そこで本記事では、Windows ServerのVMインスタンスを日本語化する方法に加え、日本語化された状態のクローンデータ(マシンイメージ)を作成して、VMインスタンスを複製する方法について解説します。これにより、新しいVMインスタンスを作成する際に、日本語設定などの初期設定を一から行う必要がなくなり、作業効率が大幅に向上します。
GCEを利用している方、またはこれから利用を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
VMインスタンスの作成とRDP接続
VMインスタンスの作成
初めにGoogle Cloud ConsoleのCompute EngineからVMインスタンスを作成してください。本記事では、以下のスペックで作成したWindows Serverを使用して解説します。
- シリーズ: E2
- マシンタイプ: e2.medium
- OS: Windows Server 2022 Datacenter
- vCPU: 2
- メモリ: 4GB
- ブートディスク: 50GB
※VMインスタンスの詳細な作成手順は、別記事にて詳しく解説しています。初めてVMインスタンスを作成する方や、サービスや用途に合わせて他の設定を変更して作成したい方は、URLをご参照ください。
RDP接続
リモートデスクトッププロトコル(RDP)を使用して接続する手順は以下の通りです。
1. VMインスタンスの一覧を表示します。
2. 「RDP」の右にある「▼」から、「Windowsパスワードを設定」を選択します。
3. ユーザー名を入力して設定します。ユーザー名には、小文字・数字・アンダースコアを使用でき、先頭は小文字にする必要があります。
4. ログインパスワードが表示されます。閉じると再確認できないため、コピーして保管してから閉じてください。
5. 「RDP」の右にある「▼」から、「RDPファイルをダウンロード」を選択します。
6. リモートデスクトップ接続ファイル「(VMインスタンス名).rdp」がダウンロードされます。実行して、設定したユーザー名と表示されたパスワードを入力して接続してください。
7. VMインスタンスへリモートデスクトップ接続が出来ます。
Windows Serverを日本語&日本時刻に設定
GCEで提供されるWindows OSはデフォルトで英語言語・UTC時刻設定です。日本語および日本時間のWindows Serverを使用したい場合、以下の手順を行ってください。
言語パックのインストール
言語パック(日本語)のインストール手順は以下の通りです。
1. Windowsロゴから「Settings」を選択します。
2. 「Time & Language」を選択します。
3. 「Language」から「Add a language」を選択します。
4. 言語の一覧から「日本語」を選択し、「Next」を選択します。
5. すべてのチェックボックスを有効にし、「install」を選択します。
6. 言語パックのダウンロードとインストールが完了するまで待ちます。
7. 完了後、サインアウトを促す表示がされるので「Yes, sign out now」を選択しサインアウトします。RDP接続が切断されます。
8. 再度、RDP接続をして言語が日本語になった事を確認して下さい。
ようこそ画面や新規ユーザーの言語を日本語に設定
ここまでの手順で、RDP接続しているユーザーの言語は日本語に設定されました。しかし、ようこそ画面や新規ユーザー作成時の言語は英語のままです。これらの言語を日本語に設定するには、以下の手順を行ってください。
1. Windowsロゴから「設定」を選択します。
2. 「時刻と言語」を選択します。
3. 「国または地域」から「日本」を選択します。
4. 「言語」から「管理用の言語の設定」を選択します。
5. 「設定のコピー」を選択します。
6. 「現在の設定のコピー先」のチェックボックスを有効にします。ようこそ画面と新しいユーザーの言語と場所が変更されたら「OK」を選択します。
7. 再起動を促すウィンドウが表示されますが、GCEの仕様で「今すぐ再起動」を選択しても実行されませんので、通常の再起動操作を行ってください。
これで、ようこそ画面や新規ユーザーの言語も日本語に設定されました。
タイムゾーンの設定
タイムゾーンはデフォルトでUTC+0:00に設定されています。日本時刻に変更する場合、以下の手順を行ってください。
1. サーバーマネージャーのローカルサーバーから、タイムゾーンを選択します。
2. 「タイムゾーンの変更」を選択します。
3. 日本時刻の場合、「(UTC+09:00)大阪、札幌、東京」を選択し「OK」を選択します。
4. コンピューターの日付と時間が日本時刻になったことを確認して下さい。
これで、VMインスタンス内の日時が日本時刻に設定されました。 他にも必要なサービスやソフトウェアがあれば、インストールと初期設定を行ってください。
マシンイメージを作成して、VMインスタンスを複製する
作成とセットアップが完了したVMインスタンスを複製するために、マシンイメージを作成します。Google Cloud Consoleでの操作を以下の通り行います。
マシンイメージの作成
VMインスタンス一覧から、複製したいVMインスタンスの詳細ページを開き、「マシンイメージを作成」を選択します。
マシンイメージを作成するための設定項目が表示されます。
- 名前
マシンイメージの名前を設定できます。使用できるのは、英小文字・数字・ハイフンのみで、名前の先頭は小文字にする必要があります。マシンイメージ作成後は変更ができません。 - 説明
マシンイメージについての説明を任意で設定できます。言語やタイムゾーン、ソフトウェアの設定が済んでいる等の状態をメモしたり、担当者名や日付をメモすることができます。 - ソースVMインスタンス
マシンイメージの元となるVMインスタンスです。複製またはバックアップしたいVMインスタンス名を選択してください。 - ロケーション
マシンイメージの物理的な保存場所を選択します。
・マルチリージョン
大陸で区分された各国にある複数のデータセンターを利用します。複数の場所にデータを保存し、障害が発生しても自動的に他の場所からアクセス可能です。
・リージョン
各国にあるデータセンターのうち1ヶ所を利用します。データを一つの場所に保存するため、コストが低く、法規制にも対応しやすくなります。データとアプリケーションが同じ場所にあるため、アクセスが速くなります。 - 暗号化
不正アクセスから保護をするためにデータを数値または文字列で暗号化します。その暗号を解く鍵を選択します。
・Googleが管理する暗号鍵
Googleが完全に制御する鍵です。使用者は鍵の管理に関与する必要が無いため、簡便さがありセキュリティも確保されます。
・Cloud KMS鍵
使用者が所有する鍵ですが、Googleのサービスである「Cloud Key Management Service」を使って管理します。使用者は鍵の生成や管理を自分で行いながら、Googleのサポートを受けられます。
・顧客指定の暗号鍵(CSEK)
使用者が完全に管理する鍵です。Googleが管理をしないため、データの管理に最大限の制御を希望する場合に適しています。
それぞれのニーズに応じて、設定項目を選択したら、最下部の「作成」ボタンを選択します。
しばらく待つとマシンイメージが作成され、マシンイメージの一覧に表示されます。
「マシンイメージを作成」と「同様のものを作成」の違い
VMインスタンスの詳細ページに、「同様のものを作成」の選択肢があります。
「同様のものを作成」は既存のVMインスタンスの設定や構成を再利用して、VMインスタンスを作成します。マシンタイプ、ディスクサイズ、ネットワーク設定などのハードウェア構成や環境設定が含まれますが、OSや内部データは含まれません。そのため、同様のハードウェア設定が適用されますが、OSやアプリケーションは新たにセットアップする必要があります。
- マシンイメージを作成
VMインスタンスの全体の状態(OS、ディスク、アプリケーション、設定など)を保存し、そのままの状態で復元できます。 - 同様のものを作成
VMインスタンスの設定(ハードウェア構成やネットワーク設定)を元に、新しいインスタンスを作成しますが、ブートディスクの内容は含まれません。
マシンイメージからVMインスタンスを作成
マシンイメージの一覧から、使用するマシンイメージの名前を選択すると、作成したマシンイメージの詳細が表示されます。上部にある「インスタンスを作成」を選択してください。
「インスタンスの作成」のうち「マシンイメージからの新しいVMインスタンス」が選択されたページが表示されます。新規VMインスタンスを作成する手順と同様に、名前やリージョンなどを任意で設定できます。今回は、複製したことが分かるよう名前の末端に-cloneを付与しました。
各項目の設定をしたら下部の「作成」を選択します。
しばらく待つとVMインスタンスが作成され、VMインスタンスの一覧に表示されます。
VMインスタンスへRDP接続をして、コンピューター名や状態がマシンイメージの元となったVMインスタンスと同じ(今回は日本語化がされている)ことを確認して下さい。
以上で、マシンイメージを使ったVMインスタンスの複製ができました。
まとめ
本記事では、Google Compute EngineでWindows ServerのVMインスタンスを日本語化し、その状態を保持したまま複製する方法を解説しました。これにより、新しいVMインスタンスを作成するたびに日本語設定やタイムゾーン設定を一から行う手間が省け、作業効率が大幅に向上します。また、マシンイメージの作成と利用により、設定済みの状態で簡単に複数のインスタンスを展開できるため、管理の手間を減らし、安定した環境を迅速に提供することが可能です。さらに、この方法はLinux系のシステムにも応用できるため、GCEを活用する全てのユーザーにとって有用です。ぜひ本記事を参考に、効率的なGCE活用を進めてください。
執筆者紹介
入社4年目。株式会社電算システム所有のデータセンターに所属し、クラウドサーバーサービス "BizGr@nd" などを運用している。データセンター業務の知識も活かしながらGoogle Cloudの
事業推進を図る。
Google Cloud Professional認定資格の取得に向けて日々勉強中。
<保有資格>
・Cloud Digital Leader Certification
・Associate Cloud Engineer Certification
- カテゴリ:
- Google Cloud(GCP)