OpenAIやStable diffusionといった生成AIが注目を集めるなか、ビジネスシーンで生成AI技術を活用したい方も多いのではないでしょうか。生成AIには、テキスト系や画像系、動画系などの種類がありますが、なかでも画像生成はクリエイティブ業務の効率化に効果を発揮します。
ビジネスシーンで画像生成の仕組みを採用するには、技術的な基礎知識や注意事項をしっかりと理解することが重要です。本記事では、AIを用いた画像生成の仕組みや種類、注意点を解説します。ビジネスにおける活用例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
AIを用いた画像生成とは機械がオリジナル画像を自動作成する技術
そもそも生成AIとは、人間による指示によってAIがオリジナルのコンテンツを生成する技術です。生成AIには、テキスト生成や動画生成、音声生成などの種類があります。なかでも画像コンテンツの生成に強みを持つものを、画像生成といいます。
画像生成に関するAIサービスとしては、Stable diffusionやMidjourneyなどが代表的です。このようなサービスを利用する際は、プロンプトと呼ばれる指示文を与えます。例えば、「dog、chair、sitting」のプロンプトを提示した場合、「椅子に座った犬の画像」が出力される仕組みです。
ビジネスシーンにおける画像生成は、プレゼン資料の背景や動画制作の素材、Webサイトのアイコンなど、さまざまな場面で活用できます。効率良く画像コンテンツを作成できるため、クリエイティブ業務の効率化につながります。
AIによって画像が生成される仕組み
AIによる画像生成には、次のような技術が採用されています。
- VAE(変分オートエンコーダ)
- GAN(敵対的生成ネットワーク)
- CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
- TransGAN
- StyleGAN・StyleGAN2
それぞれの技術によって画像生成の仕組みが異なります。技術が異なると、できることやデータの出力精度が異なるため、それぞれのポイントを押さえましょう。
VAE(変分オートエンコーダ)
VAE(変分オートエンコーダ)とは、訓練データを採用した生成モデルです。AIが訓練データの特徴・傾向(特徴量)を捉え、それとよく似たデータを出力します。例えば、手書きのテキストを訓練データとして与えると、AIが文字の書き方や形状の違いを理解したうえで、もとの画像に近いデータを生成する仕組みです。
本来はデータの特徴量を理解するための細かいプログラムが必要ですが、VAEではAIが自動的に学習します。プログラム構築だけでなく特徴量を抽出する作業も省略できるため、開発効率の向上につながります。
GAN(敵対的生成ネットワーク)
GAN(敵対的生成ネットワーク)もVAEと同様、訓練データを学習して画像コンテンツを生成します。データの入出力の役割を持つGeneratorと、生成したデータの真偽性を明らかにするDiscriminatorの2つのブロックで構成されます。
VAEと異なるのは、生成する画像の品質と学習の安定性です。VAEは、学習時の安定性に優れ多様な種類のコンテンツを生成できますが、低画質で出力されることも珍しくありません。一方のGANは、高画質の画像を生成できる反面、学習時の安定性に欠ける傾向があります。
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)とは、人間の神経細胞を模したニューラルネットワークの仕組みを活用した生成モデルです。ニューラルネットワークを構成する3つの層のうち、最も深いディープニューラルネットワークを採用しています。
CNNの特徴は、二次元の画像データを一次元のベクトルに変換できることです。しかし、本来はベクトルを変更すると、画像内の物体の位置が変わるとAIが誤認識する恐れがあります。CNNの場合、全結合層と呼ばれる箇所で、データに不変性を付与できます。結果、高度な識別や予測が可能になるため、顔認証や医療検査などで活用が進んでいます。
TransGAN
TransGANは、CNNと対照的な仕組みで開発された生成モデルです。CNNでは畳み込みの技術を採用する一方、TransGANの場合は畳み込みの代わりに、Transformerと呼ばれるエンコーダを用いて画像コンテンツを生成します。
このような特徴により、CNNに比べてTransGANは、より広い範囲の特徴量を捉えられるのが強みです。また、遷移工程をシンプルにまとめられるため、CNNよりも妥当性の高い画像を生み出せます。自然言語処理や音声処理など、さまざまな場面でTransGANが活用されています。
StyleGAN・StyleGAN2
StyleGANとは、低解像度から高解像度まで、徐々に訓練データの質を高めていく生成モデルです。
また、StyleGANでは、CNNのような畳み込みの処理に加え、人間の髪の毛といった細かい要素を表現するためのランダムノイズを採用しています。このような仕組みによって品質を高められるため、よりリアリティのある画像コンテンツの生成が可能です。
StyleGANの後継モデルとなるStyleGAN2では、ランダムノイズのバラつきを調整する技術を採り入れています。結果、StyleGANで出力した画像の不自然さを取り除けます。
画像生成技術の主な活用シーン
AIによる画像生成は、主に次のようなシーンで活用が可能です。
- デザイン案作成
- 広告クリエイティブ制作
- Webコンテンツ制作
このようにクリエイティブ業務で活用する機会が多いといえます。業務効率化や生産性向上につながりやすいため、業務内容に合わせて活用方法を検討しましょう。
デザイン案作成
自社製品の画像をAIに学習させることで、コンセプトに近いデザイン案を作成できます。AIによる画像生成では、テキストで指示を与えるほかにも、ラフのようなサンプル画像を読み込ませて、それに近いコンテンツを生成することが可能です。デザイナーやデザイン会社に依頼せず、手軽に高品質のデザイン案を作成できるため、制作効率の向上や外注コストの削減につながります。
広告クリエイティブ制作
画像生成技術は、バナーをはじめとする広告クリエイティブを制作する際にも役立ちます。学習させる内容に応じて、柔軟にコンテンツの方向性やコンセプトを変更できます。広告運用中は頻繁にクリエイティブを作成する必要がありますが、画像生成技術があれば作業時間の短縮が可能です。
Webコンテンツ制作
Webサイトやメールマガジン、SNSなどのコンテンツ制作にも、画像生成技術は有効です。ユーザーの興味や嗜好に合わせてコンテンツを生成することで、パーソナライズ化されたWebサイトやメールマガジンなどが完成します。また、ブログ記事のアイキャッチ画像として活用するのも一案です。
画像生成技術を利用する際の2つの注意点
AIによる画像生成は、権利侵害のリスクやデータの偏りなど、いくつか注意点が存在します。場合によっては大きなトラブルに発展する恐れもあるため、事前に適切な対策を立てておきましょう。
権利侵害や損害賠償のリスクが発生する
AIによって画像を生成するには、一般的に、予め膨大な量のデータを読み込ませ、モデルを学習する必要があります。学習データのなかには、著作権を持つ一般公開されたコンテンツも含まれるため、利用方法を間違えれば権利侵害や損害賠償に発展しかねません。
例えば、生成した画像が一般公開されている画像と類似している場合、著作権者からクレームを受ける可能性があります。また、著作権の所持者本人が気付かない場合でも、SNSなどによって情報が拡散され、炎上につながる可能性も否定できません。
今日ではこのようなリスクに対して、まだ法整備が進んでいないのが現状です。生成した画像を一般公開する際は、既存のコンテンツと類似していないか、事前にしっかりと確認しましょう。
学習データが偏る可能性がある
Stable diffusionやMidjourneyなど、画像生成サービスを利用する際は、学習データが偏っている場合があります。例えば、「サッカー選手」の画像を生成すると、男性の画像ばかりが出力されるようなケースです。
学習データが偏ると、プロンプトの調整に手間がかかるため、かえって効率性を阻害しかねません。また、一般公開したコンテンツにも偏りが生まれ、性別や人種などの差別問題に発展する恐れもあります。画像生成サービスで目的の画像を生成できないようなら、自社で機械学習の仕組みを構築するのも一つの方法です。
画像生成技術を採り入れるならGoogle Cloudがおすすめ
AIを用いた画像生成技術を最大限に活用するなら、Google Cloudの導入を検討してみてはいかがでしょうか。Google Cloudとは、100種類以上のサービスが搭載されたクラウドプラットフォームです。
Google Cloudには、「Imagen」と呼ばれる画像生成サービスが用意されています。そのほか、機械学習環境を構築できる「Vertex AI」や、テキスト生成技術をシステム内に組み込める「Gemini API」といったAI関連サービスがあり、複数を組み合わせて活用できるのが特徴です。
AI以外のサービスとしては、ビッグデータ解析のBigQueryや、AIの機械学習用のAutoMLなどが代表的です。それぞれのサービスは従量課金制で、利用した分しか料金が発生しないため、予算配分の最適化につながります。自社独自のAIシステムを構築する、あるいはクラウド環境を整える場合は、Google Cloudを利用するのがおすすめです。
画像生成技術を活用して画像制作や素材収集の業務を効率化しよう
ビジネスシーンでAIの画像生成技術を活用すると、クリエイティブ業務の効率化やコスト削減が可能です。単に独自の画像を生成するだけでなく、デザイン案作成や広告クリエイティブ制作など、幅広いシーンで活用できます。
ただし、画像生成といっても、さまざまな種類のサービスがあります。もし、ワンストップで効率良く画像生成サービスを利用したいなら、Google Cloudを導入すると良いでしょう。Google Cloudでは、画像生成サービスやAIシステムの構築など、100種類以上のサービスを組み合わせて活用できます。
Google Cloudの特徴や機械学習の仕組みについては、こちらの資料で詳しく紹介しています。AIによる画像生成技術を最大限に活用したい方は、ぜひ参考にしてください。
監修者

<保有資格>
・Professional Data Engineer

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- Google Cloud(GCP)
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- 画像 生成