近年、ChatGPTへの注目が高まり、AI技術を業務に活用する企業が増えています。中でも「生成AI」は、新しいコンテンツを簡単に作成できるAI技術として、業界を問わず広く利用されています。生成AIを活用すれば、業務効率化やアイデアの創出につながり、社内の生産性向上に大きく貢献するでしょう。
本記事では、生成AIの概要やできること、生成AIでできないこと、生成AIに用いられているモデル、活用できる業務例、メリット、注意点、活用事例を解説します。生成AIについてわかりやすくまとめている内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
生成AIとは自動で新たなコンテンツを作り出す技術
生成AIとは、膨大な量のデータから学習して、オリジナルのコンテンツを生成する技術です。AIを駆使してクリエイティブな成果物を生み出せるのが特徴で、画像や動画、テキスト、音声、プログラミングのコードなどのあらゆるものを短時間で生成できます。
生成AIは、AI自身が答えを見つけるために学習する「ディープラーニング(深層学習)」を使って構築された機械学習モデルです。AIの中でも比較的新しいモデルで、近年注目が高まっています。
生成AIでできること5選
生成AIでできることは、以下の5つです。
生成AIでできること | 詳細 | 代表的なサービス |
テキスト生成 |
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関数・プログラミングのコード生成 |
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画像生成 |
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動画生成 |
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音声生成 |
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それぞれの技術に適した活用方法を選択すれば、これまで人の手で行っていた業務を大幅に効率化できたり、今まで思いつかなかったアイデアを形にしたりできます。生成AIを用途に応じて適切に活用し、自社のビジネスに活かしましょう。
テキスト生成
テキスト生成AIは、利用者がテキストボックスに質問や指示を入力して、AIが内容に応じてテキストを生成するシステムです。利用されている言語モデルによって精度は異なりますが、中には人が考えて回答しているかのような高精度なものもあります。特に「ChatGPT」は、生成するテキストの精度の高さが注目されており、テキスト生成AIの代表的なサービスと言えます。
関数・プログラミングのコード生成
生成AIを活用すれば、入力したテキストに応じたプログラミングのコードを生成可能です。コード提案機能を利用して部分的に記述されたコードを生成させたり、特定のプログラミング言語から別のプログラミング言語に翻訳したりできます。エンジニアとしてプログラミングをする場合は、生成AIの活用によって業務効率を大幅に向上できます。
画像生成
画像生成AIは、入力したテキストに応じてオリジナルの画像を生成するシステムです。学習データをもとに、数秒から数十秒程度で新しい画像を生成できます。商品・サービスの広告や、イベントポスターの作成といった業務に役立ちます。業務のサポートや新しいアイデアの創出などで期待されている技術です。
動画生成
動画生成AIは、画像生成AIと同様に、入力した指示や質問に応じた動画を生成するシステムです。通常の動画作成では、専門のツールや技術を持った人材が必要で、完成までに多くの時間がかかります。
動画生成AIでは、ブログやニュース記事などの学習データをもとに、短時間で視覚的にわかりやすい動画を作成可能です。動画編集スキルや専門のツールがなくても、素早く高品質な動画を生成できる点が大きな特徴です。
音声生成
音声生成AIは、読み込ませた音声データをもとに、音声の特徴を学習して、オリジナルの音声データを生成できるシステムです。一度学習した音声データに含まれる声は、テキスト読み上げモデルの作成に活用でき、感情に沿ったあらゆる表現もできます。
音声生成AIの活用によって、特定の人物の声を使ってナレーションを生成したり、素材として利用したりでき、さまざまな用途に活用可能です。
生成AIでできないこと
生成AIでできないことは、以下の4つです。
生成AIでできないこと | 詳細 |
感情理解・表現 |
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日本語文法の理解 |
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前例の少ない分野への対応 |
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複雑な構造の再現 |
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倫理的判断 |
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生成AIは近年急激に進化していますが、できないことや苦手なこともあります。特に感情に関わる分野では、人間の持つ専門性には届かない部分が多くあります。
生成AIに用いられている4つのモデル
生成AIは、いくつかの生成モデルを活用してコンテンツを生成しています。生成AIに用いられている代表的な生成モデルは、以下の通りです。
- VAE(variational autoencoder)
- GAN(Generative Adversarial Networks)
- 拡散モデル
- GPT-3とGPT-4
生成モデルの特徴を把握して、生成AIの理解を深めましょう。
VAE(variational autoencoder)
VAEとは「variational autoencoder」の略称で、画像生成AIに活用されている生成モデルの1つです。「デコーダー」と「エンコーダー」の2種類のモデルを並べて、入力画像の圧縮と復元を行い、新しい画像を生成します。VAEを活用して生成される画像は、解像度が低めで、ぼやけた印象の画像になりやすい点が特徴です。
GAN(Generative Adversarial Networks)
GANとは「Generative Adversarial Networks」の略称で、敵対的生成ネットワークとも呼ばれている生成モデルです。画像生成AIで活用されているモデルで、2つのAIモデルを敵対させて学習する仕組みになっています。
AIモデルの1つは画像を生成し、もう一方のAIモデルは、生成された画像がリアルなものかどうかを判別します。AIモデルによる判別が繰り返されて、2つのモデルの学習が進み、高精度の画像が生成される仕組みです。
拡散モデル
拡散モデルは、画像生成サービスで近年活用される機会が増えている生成モデルです。拡散モデルでは「画像を復元するネットワーク」と「ノイズを追加する関数」の2種類を活用して学習を行います。拡散モデルは、生成する画像の幅が広い点が特徴です。
GPT-3とGPT-4
GPT-3とGPT-4は、膨大な量の文章を読み込み、単語同士の関連度を学習する生成モデルです。GPT-3は、テキストボックスに入力された質問や指示を素早く解析して、回答します。人間が作成したような自然な文章を生成できる点が特徴です。
GPT-3を活用したテキスト生成AIの代表的なものとして、OpenAIが開発した「ChatGPT」が挙げられます。長文の要約や新しいアイデアの創出、リサーチ時間の短縮化といったあらゆる用途での活躍が期待されています。
GPT-4は、OpenAIが開発・提供している大規模言語モデルの1つです。GPT-3の性能をはるかに上回る成果をあげており、GPT-3よりもより高精度でテキストの出力が可能です。
生成AIを活用できる業務例5選
生成AIを活用できる業務例を、以下の5つ紹介します。
生成AIを活用できる業務例 | 詳細 |
製品開発の促進 |
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商品説明文の自動作成 |
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カスタマーサポートの自動化 |
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医療現場での診療補助 |
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記事作成の自動化 |
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業務例をもとに、自社における生成AIの活用方法を具体的にイメージしましょう。
製品開発の促進
生成AIは、製品の開発スピードの促進に活用できます。製品開発には多くのプロセスがあり、手間と時間を要しますが、生成AIの活用によって、従業員の負担軽減と開発スピードの促進が可能です。
生成AIは、顧客の要件やフィードバックを学習し、分析結果に基づいた新製品のコンセプトやアイデアを生成できます。アイデア出しやデザイン検討の段階で、生成AIを活用すれば、より製品開発がスムーズに進みます。
商品説明文の自動作成
生成AIは、商品説明文の作成業務に活用できます。商品写真からAIが特徴を把握し、適切な説明文を生成します。従業員が商品説明を考える手間と時間を削減しながら、顧客に伝わりやすい文章を作成可能です。
カスタマーサポートの自動化
生成AIは、カスタマーサポートの自動化にも活用可能です。人の代わりにAIが顧客とコミュニケーションをとるため、従業員の負担を軽減しながら、24時間365日にわたって問い合わせに対応できます。カスタマーサポート業務の一部をAIが担当して、複雑な問い合わせにのみ人が対応すれば、より高品質で素早いサービス提供につながるでしょう。
医療現場での診療補助
医療現場での診療補助にも、生成AIは活用されています。医療現場は、慢性的な人手不足と長時間労働が課題になっていますが、生成AIによって事務作業を効率化できれば、医療従事者の負担軽減が可能です。
例えば、生成AIを活用して、診療中の会話からカルテ原稿を自動作成し、カルテの作成業務の手間を大幅に削減できます。医療従事者は、カルテ原稿をもとに効率よく診療内容を記録でき、他の業務に集中できます。
記事作成の自動化
生成AIは、記事作成業務のさまざまな場面で役立つ技術です。検索意図の分析やタイトル・構成案の提案、文章の代筆など、従来人の手で行っていた多くの業務を、生成AIがサポートできます。
短文や長文といった作成する記事の特徴によってテキスト生成AIツールを使い分ければ、業務効率の向上やコスト削減において、より高い効果が期待できるでしょう。テキスト生成AIツールは、記事作成に適した豊富なテンプレートが実装されているため、効率よく高い精度で記事を作成可能です。
生成AIを活用する5つのメリット
生成AIを活用するメリットは、以下の5つです。
生成AIを活用するメリット | 詳細 |
作業の効率化 |
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新しいアイデアの創出 |
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顧客満足度の向上 |
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クオリティの担保 |
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コスト削減 |
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メリットを確認して、導入を検討する際の参考にしてください。
作業の効率化
生成AIを活用すれば、テキストを入力するだけで、希望する画像や動画などのコンテンツを短時間で生成できます。生成されるコンテンツの完成度は高く、ビジネスにも問題なく活用できる場合がほとんどです。
生成されたコンテンツをもとに仕上げの編集だけを人の手で行えば、作成効率が飛躍的に向上し、品質の向上が期待できます。また、生成されたコンテンツをそのまま成果物として活用できれば、従業員が他の業務に費やす時間を確保できます。
新しいアイデアの創出
生成AIは、1つの問題において多様な解決策を提供できる技術です。生成AIをアイデア出しに活用すれば、より多角的な視点でアイデアを創出できるでしょう。生成AIによって得られた新しい視点やアプローチは、ビジネスの可能性を広げるきっかけにもなります。
顧客満足度の向上
生成AIは、顧客の行動や購入履歴などを分析し、分析結果をもとにパーソナライズされた商品やサービスを顧客ごとに提案可能です。それぞれの顧客に適した提案が可能になるため、顧客満足度の向上につながります。
また、顧客の求めるコンテンツの提案により、顧客体験価値が高まり、長期的なロイヤルティの獲得やリピート利用も期待できます。
クオリティの担保
生成AIは、常に安定したクオリティのコンテンツを生成可能です。人が業務を行う場合、気分や体調などによって仕事のパフォーマンスにはムラが生じますが、生成AIは、一定以上の高いパフォーマンスを維持できます。生成AIを業務に活用すれば、成果物の安定した品質確保が可能です。
生成AIが生み出すコンテンツのクオリティは、年々向上しています。今後もさらにクオリティが向上すれば、生成AIを活用している企業は、商品やサービスの品質確保がしやすくなります。
コスト削減
生成AIの活用により、さまざまなコストの削減が可能です。人の代わりにタスクを素早く行うため、人件費や専門ツールの利用料といったコストを削減できます。例えば、以下のような活用方法で、業務における外注費や人件費といったコストの削減が可能です。
- 自社商品のPR動画や新卒採用に向けた会社案内動画を生成AIで作成する
- 動画内で使用する楽曲を生成AIで作成する
- 会議や打ち合わせの音声データをもとに生成AIで議事録を作成する
業務によっては、多くの人員と膨大な時間をさいていた作業を短時間で実行でき、人員配置やコストの最適化を図れます。将来的には、すべてのコンテンツ作成をAIが担うという声も出てきており、今後さらに生成AIが担う業務範囲は拡大していくと予想されています。生成AIを活用できる業務が増えれば、より大幅なコスト削減が可能です。
生成AIを活用する際の3つの注意点
生成AIを活用する際の注意点は、以下の3つです。
生成AIを活用する際の注意点 | 詳細 | 対策 |
事実の真偽性 |
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著作権問題 |
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セキュリティ対策 |
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注意点を確認して、生成AIを安全に業務で活用しましょう。
事実の真偽性
生成AIで作成されたコンテンツには、事実とは異なる情報が含まれている可能性があります。特に、テキスト生成AIでは、誤情報が含まれる場合が多いため、使用する際には注意が必要です。
現在のテキスト生成AIは、文字を組み合わせて精度の高い自然な文章を作成できるようになっていますが、情報の正確性をAI自ら判断できません。企業で生成AIを活用する際は、生成されたコンテンツの内容が正しいかどうかを細かく確認しましょう。
著作権問題
生成AIを活用する場合、気づかないうちに他人の著作権を侵害する恐れがあります。生成AIをはじめとしたAIは、学習データをもとに新しいコンテンツを生成します。そのため、学習データの中に他人の作品や商品、サービスの情報が含まれていれば、著作権法の違反につながる可能性があるため、利用する際には注意しなければなりません。
生成AIによって作成されたコンテンツを業務に活用する場合は、他人の著作権を侵害していないかどうかの確認が必要不可欠です。現在は、生成AIに対応した法整備が十分ではなく、著作権法の違反をはじめとしたさまざまな問題が発生しています。生成AIで作成したオリジナルのコンテンツであっても、他人の著作権を侵害する恐れがあるため、使用する際は慎重に判断しましょう。
セキュリティ対策
生成AIを業務で活用する際には、情報セキュリティに関しても注意が必要です。特にクラウドベースのAIサービスを利用する場合、情報漏洩のリスクが高くなります。例えば、生成AIでコンテンツを作成するために、顧客情報の含まれる内容をサービス内で入力すれば、情報がデータベースに自動で記録され、他のユーザーの目に入る形で利用される可能性もあります。
生成AIのサービスで入力した情報は、AIの学習データとして自動的に活用される可能性が高いため、機密情報の入力は控えましょう。また、生成AIが作成したコンテンツが、自社のセキュリティポリシーに違反する可能性もあります。利用する際は、事前にセキュリティポリシーに違反していないかどうかの確認が必要です。
国内での生成AIの活用事例3選
生成AIは、海外だけでなく、国内の企業もすでに活用しています。国内での生成AIの活用事例を、以下の3つ紹介します。
- コカ・コーラ(広告制作)
- パナソニック(社内向けAIアシスタントサービス)
- LINEヤフー(ソフトウェア開発)
活用事例を確認して、自社で利用する際の参考にしましょう。
コカ・コーラ(広告制作)
コカ・コーラ社は、OpenAIのDALL-EとGPT-4を組み合わせた「Create Real Magic」というプラットフォームを公表しました。生成AIを使ってアート作品を生成できるプラットフォームで、コカ・コーラのロゴやボトルを作成可能です。コカ・コーラ社は、最先端のAI技術によるマーケティングの強化や、事業の効率化を図る取り組みを積極的に行っています。
参考:Coca-Cola Invites Digital Artists to ‘Create Real Magic’ Using New AI Platform
パナソニック(社内向けAIアシスタントサービス)
パナソニックは、従業員のAIスキル向上と業務効率化を目的として開発された社内向けAIアシスタントサービス「ConnectAI」を開発しています。ConnectAIでは、社内の情報提供に加え、必要な情報の検索、得られた回答の真偽を確認可能です。また、セマンティック検索技術と呼ばれる技術を採用し、キーワード検索の精度の向上に成功しています。
LINEヤフー(ソフトウェア開発)
LINEヤフーは、生成AIをソフトウェア開発に活用し、エンジニアの作業時間短縮を実現しています。LINEヤフーが利用している生成AIは、自社開発のものではなく、Microsoft子会社であるGitHubが提供している「GitHub Copilot」です。
GitHub Copilotは、人が入力・送信した文章をもとに、コードの自動生成が可能です。GitHub Copilotの活用により、エンジニアの作業時間を大幅に削減できました。
参考:LINEヤフーの全エンジニア約7,000名を対象にAIペアプログラマー「GitHub Copilot for Business」の導入を開始|LINEヤフー株式会社
生成AIは正しい知識を持って活用しよう
生成AIは、さまざまなデータから学習して、画像や動画、音声などのオリジナルのコンテンツを生成する技術です。医療やデザイン、製品開発などの仕事に活用されており、業務効率の向上やアイデアの創出に貢献しています。
生成AIを業務に活用すれば、特定の作業を効率化できるだけではなく、新しいアイデアの創出や顧客満足度の向上、クオリティの担保、コスト削減にもつながります。さまざまな面でメリットのある生成AIですが、利用する際には、著作権法の違反やセキュリティ問題に注意が必要です。
生成AIが活用した学習データに他人の作品や商品、サービスが含まれる場合、著作権を侵害してしまい、トラブルに発展するケースもあります。生成AIによって作成したコンテンツを使用する場合は、著作権法やセキュリティポリシーに違反していないかどうかを必ず確認しましょう。
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