DNSサービスにはさまざまな種類がありますが、なかでもCloud DNSは、低レイテンシや可用性の高さに特徴があります。Googleが提供する高度なDNSサーバーをクラウド上で利用できるのが強みです。
コンテンツやサービスを一般公開する際、DNSサーバー側での設定が必要ですが、Cloud DNSを利用することで作業の効率化が可能です。また、安定性にも優れるため、「大容量のリクエストを処理したい」といったニーズにも柔軟に対応できます。
本記事では、Cloud DNSの仕組みや特徴、使い方などを詳しく解説します。メールサーバーの運用やWebアプリケーションのリリースなどを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Cloud DNSとはGoogleが提供する権威DNSサービス
Cloud DNSとは、Googleが提供するDNSサービスです。Googleが保有する権威DNSサーバー(ドメイン名にかかわる完全な情報が保存されたサーバー)を利用し、自身のドメインの名前解決が可能です。
独自ドメインを使ってメールサーバーを運用したり、自社サービスを公開したりする場合、DNSサーバー側でレコードの作成や編集といった設定を行う必要があります。Cloud DNSを利用すれば、このような設定がクラウド上で完結します。さらに、GoogleのDNSサーバーは、低レイテンシかつ高い可用性を誇るため、本番環境用のDNSサーバーとして、安心して利用できるのが利点です。
Cloud DNSの5つの特徴
Cloud DNSの特徴は次の通りです。
- 低レイテンシでDNSサーバーを利用できる
- 高い可用性を実現できる
- 大容量のゾーンでも効率良く処理できる
- オートスケールに対応している
- DNSSECによりセキュアなDNSサービスを利用できる
DNSサーバーにはさまざまな選択肢があるため、Cloud DNSならではの特徴を理解し、自社との相性を検討することが大切です。
低レイテンシでDNSサーバーを利用できる
Cloud DNSでは、IPアドレスの指定や割り当てを行うアドレッシングの一種である、エニーキャストという手法が採用されています。エニーキャストは、世界中でゾーンがサポートされており、リクエストを送信すると、自動的に最も近いロケーションにルーティングできます。これによりレイテンシを最小限に抑えられるのが利点です。
レイテンシとは、リクエストからデータ受信までの間に生じる遅延時間を表します。つまり、低レイテンシで利用できるCloud DNSは、リクエストを送信すると即座に回答結果を得られるということです。
高い可用性を実現できる
Cloud DNSは100%の可用性を保証しています。つまり、DNSサーバーを利用するにあたり、常に安定したアクセスが可能だということです。
可用性が高いのは、Googleが世界各地で保有しているDNSサーバーを利用できるためです。対象範囲が広いことから、仮に一つの地域で問題が発生しても別の地域でカバーできるため、あらゆる地域での名前解決をサポートしています。
大容量のゾーンでも効率良く処理できる
DNSサーバーを利用する際は、特定の組織や管理者ごとに管理される、ゾーンと呼ばれるネームスペースを設定する必要があります。しかし、DNSサーバーそのものの容量が少ないと、大規模なゾーンを処理できません。
一方、Cloud DNSはGoogleの大規模なインフラを用いたDNSサービスなので、たとえ100万単位のゾーンでも効率良く処理できます。もちろん大容量のDNSレコードにも対応可能です。そのため、メールの送受信数やコンテンツの総数が多い企業は、Cloud DNSを活用するのがおすすめです。
オートスケールに対応している
オートスケールとは、作業負荷に応じて自動的にクラウドサーバーのスケールアウト(サーバー台数の増加)やスケールイン(サーバー台数の削減)を実行することです。トラフィックが増加すれば台数を増やし、減少すれば台数を減らすことで、DNSサーバーの安定性が向上します。
また、物理的なDNSサーバーを稼働する際は、スケールアウトやスケールインにあたって機器の手配や、サーバーの拡張作業などが発生し、時間や手間がかかります。オートスケールに対応したCloud DNSなら、自社の運用負荷を最小限に抑えられるでしょう。
DNSSECによりセキュアなDNSサービスを利用できる
DNSSEC(Domain Name System Security Extensions)とは、データの作成元や完全性を確認できるセキュリティ機能です。偽装したデータをいち早く検知できるため、DNSキャッシュポイズニングのような外部からの攻撃を防げます。
DNSキャッシュポイズニングは、DNSサーバーのキャッシュを利用して偽サイトに誘導し、ドメインを乗っ取ったり、フィッシングを図ったりする攻撃手法です。攻撃を受けると機密情報の流出といったリスクが高まります。DNSSECが備わったCloud DNSであれば、攻撃を受ける前にドメインを保護できます。
Cloud DNSの料金体系
Cloud DNSは、利用するクエリとゾーンごとに課金されます。ここでは、それぞれの利用料を詳しく解説します。
クエリの利用料
クエリの利用料は次の通りです。
クエリ数 | 通常のクエリ | ルーティングポリシークエリ |
---|---|---|
10億クエリ未満 | 100万クエリあたり$0.40/月 | 100万クエリあたり$0.70/月 |
10億クエリ以上 | 100万クエリあたり$0.20/月 | 100万クエリあたり$0.35/月 |
Cloud DNSでは、一般公開や限定公開、転送といったゾーンタイプを設定できますが、その種類にかかわらず、すべてのゾーンの料金が集計される仕組みです。
ゾーンの利用料
ゾーンの利用料は次の通りです。
ゾーン数 | 利用料 |
---|---|
0~25 | ゾーンあたり$0.20/月 |
26~10,000 | ゾーン数が25を超えると追加ゾーン1つあたり$0.10/月 |
10,001~ | ゾーン数が10,000を超えると追加ゾーン1つあたり$0.03/月 |
このようにCloud DNSは従量課金制のサービスです。利用した分のみ課金されるため、費用の最適化につながりますが、想定外の高額な請求額になる可能性も考えられるため、Google Cloud コンソールを使って適切に支払管理を行いましょう。
Cloud DNSの使い方
Cloud DNSでは、次の手順に沿ってサービスを利用します。
- ゾーン設定
- レコード設定
プログラミングなどの高度な知識がいらず、簡単な操作で設定できるのがCloud DNSのメリットです。それぞれの設定手順を詳しく解説します。
1. ゾーン設定
初めてCloud DNSにアクセスすると、ゾーン一覧画面が空白状態になっています。そのため、画面下部にある[ゾーンを作成]をクリックしましょう。
任意のゾーン名、DNS名を入力します。DNS名には取得したドメイン名を入力してください。
それ以外の項目は空白かデフォルトの状態で構いません。最後に[作成]ボタンをクリックすると完了です。
2. レコード設定
ゾーンを作成すると、レコードセットにドメインのSOAレコードとNSレコードが追加されます。続いてレコードを設定するため、レコードセット内の[標準を追加]をクリックします。
DNS名を入力し、レコードタイプを選択します。例えば、「www.sample.com」のAレコードを追加する場合、DNS名に「www.sample.com」と入力し、レコードタイプは[A]を指定しましょう。
設定が完了すれば[作成]ボタンをクリックします。以上がCloud DNSの基本的な操作・設定方法です。
Google Cloudの複数のプロダクトを組み合わせよう
Cloud DNSは、Google Cloudに搭載されているプロダクトの一種です。Google Cloudには、ほかにも100種類以上のプロダクトが用意されており、それぞれを組み合わせて柔軟に独自の開発環境やクラウド環境を構築できます。
例えば、Cloud DNSと同じネットワーク系のプロダクトとしては、コンテンツ配信ネットワークのCloud CDNや、ドメインの一元管理が可能なCloud Domainsなどの種類があります。このようなプロダクトを併用すれば、スムーズかつ柔軟なドメイン運用が可能です。そのほか、データ分析基盤構築やクラウドストレージ、AI開発などに関するプロダクトも利用できます。
Cloud DNSを活用してスピーディかつ安全な名前解決を行おう
Googleが提供するCloud DNSは、低レイテンシや可用性の高さに特徴があるDNSサービスです。大容量のゾーンでも効率良く処理できるほか、オートスケールにも対応しているため、スピーディかつ安全な名前解決が可能です。
Cloud DNSは単独のプロダクトとしても利用できますが、Google Cloudの各種プロダクトと組み合わせるのも良いでしょう。特にCloud CDNやCloud Domainsと互換性が高く、複数を併用すれば、スムーズかつ柔軟なドメイン運用につながります。
電算システムでは、環境構築やコンサルティングなど、Google Cloudの導入支援サービスを提供しています。専門領域に精通した数多くのエンジニアが在籍しているので、スピーディかつ質の高いサポートを行えるのが強みです。さらに、電算システムのリセールサービスを活用すれば、Google Cloudの利用料に関する請求書発行や割引などを利用できます。Google Cloudと電算システムについては以下の資料で詳細を紹介しているので、参考にしてください。
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