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Gemini API のレート制限変更

 2025.12.09  株式会社電算システム

Gemini API のレート制限の変更について

12月7日、Google のGemini API に関するレート制限(利用上限)に重要な変更が適用されました。この変更により、これまで開発や検証目的で広く利用されてきた無料枠が大幅に制限されることになりました。

(参考① 2.5 Flash の場合 変更前:1日250回まで → 変更後:1日20回まで)
(参考② 2.5 Flash-Lite の場合 変更前:1日1000回まで → 変更後:1日20回まで)

この変更は、単なる利用上限の見直しに留まらず、開発の初期段階から本番運用までを見据えた技術選定を開発者に迫る、重要な岐路となります。本記事では、この新しいレート制限システムの詳細を解説するとともに、本格的なビジネス用途での開発における最適な代替策として、なぜVertex AI への移行が推奨されるのかを具体的に説明します。

何が変わったのか?Gemini API の新しいレート制限システム

今回の変更で、Gemini API のレート制限には新たに「使用量ティア」制度が導入されました。これにより、プロジェクトの利用状況に応じてレート制限の上限が変動する仕組みになりました。

参考情報: 公式ドキュメント(「レート制限 | Gemini API | Google AI for Developers」)によると、使用量ティアは以下の階層で構成されています。

  • 無料
  • Tier 1
  • Tier 2
  • Tier 3

特に重要なのは、「Tier 1」へ移行し、無料枠を超えるリクエストを行うためには、有料の請求先アカウントをGoogle Cloudプロジェクトにリンクする必要があるという点です。

これにより、これまで請求情報を紐づけずに利用できていた寛容な無料枠は事実上なくなり、最低限の検証を超える利用には、たとえ少額であっても課金が発生しうるGoogle Cloud プロジェクトとの連携が必須となりました。

この「請求先アカウントのリンク」という要件こそ、個人での検証フェーズと、組織としての本格利用を明確に分ける一線となり、後者においてVertex AI がなぜ最適かを理解する上で重要な鍵となります。

開発者が知るべきGemini 利用の2つの選択肢:Gemini API とVertex AI

Gemini モデルをAPI経由で利用するには、大きく分けて2つの方法が存在します。それぞれのサービスは提供元と対象ユーザーが異なり、用途に応じて選択する必要があります。

  • Gemini API (Google for Developers 提供
    主に個人開発者やコンシューマ向けのサービスです。手軽に試せる一方、ビジネスで求められる高度なセキュリティやサポート体制は対象外となります。
  • Vertex AI API (Google Cloud 提供)
    主にエンタープライズやビジネス向けのサービスです。Google Cloud の堅牢なインフラ上で提供され、セキュリティ、ガバナンス、サポートが充実しています。

なぜビジネス用途ではVertex AIが推奨されるのか?

Gemini API とVertex AI API には、ビジネス利用において決定的な違いがいくつかあります。以下の比較表は、両者の主な違いをまとめたものです。

gemini-api-rate-limit-changes-1
上記の比較からわかるように、ビジネス用途でVertex AI が推奨される理由は明確です。特に以下の2点は、企業のコンプライアンスやデータガバナンスの観点から非常に重要なメリットとなります。

  • セキュリティ(IAMによる権限管理)
    Vertex AI では、Google Cloud のIAM(Identity and Access Management)を利用して、誰がどのモデルにアクセスできるかを詳細に制御できます。これにより、不正アクセスや意図しない利用を防ぎ、セキュアな開発環境を維持できます。
  • 学習利用(入力データが学習に利用されない)
    Vertex AI API を介して送信された顧客データや機密情報が、Google のモデルの学習に利用されることはありません。これは、データプライバシーを重視する企業にとって不可欠な条件です。

APIキーの管理ミスによる情報漏洩リスクや、入力データが意図せずモデル学習に利用される懸念は、エンタープライズ利用において許容できるものではありません。Vertex AI は、これらのリスクを設計思想の段階から排除しています。

まとめ

Gemini API に最近導入されたレート制限の変更により、開発や検証目的での無料枠の利用は以前よりも厳しくなりました。

セキュリティ、データプライバシー、そして手厚いサポート体制といった観点から、Google Cloud のVertex AI はビジネス要件を満たすための最適な選択肢です。

企業組織でのGemini を使ったアプリケーション開発には、ぜひVertex AI のご利用をご検討ください。

監修者

新 直哉
新 直哉
入社5年目。データエンジニアとして、BigQueryを主としたデータ分析基盤の提案・導入支援や、ウェブセミナーの講師などを務める。現在はプリセールスエンジニアの卵として奮闘中。

<保有資格>
・Professional Data Engineer
Professional Data Engineer