「IEのサポートが終了する」とのニュースを耳にし、慌てている企業のIT担当者の方は少なくないでしょう。サポートが終了しても利用は可能ですが、さまざまなリスクを招くおそれがあるため、どのような影響があるのか理解しておく必要があります。本記事では、IEのサポート終了による影響や、利用を続けるリスクについて解説します。
IEのサポート終了までのスケジュール
「IE(Internet Explorer)」は、いわずと知れたMicrosoft社のWebブラウザです。長らく愛されてきたIEですが、2020年から徐々にサポートが縮小され、ついには2021年5月の発表にてサポートを終了しMicrosoft Edgeへ順次移行する旨が予告されました。
【OSバージョン別】IEのサポート終了はいつ?
Windows8.1より前のOSは、すでにサポートが終了しています。そのWindows8.1も2023年1月に終了が予定されているため、現在使用中の企業は注意が必要です。
Windows10のLTSBおよびLTSC以外は、2022年6月にサポートが終了します。Ent.2015 LTSBは2025年10月、Ent.2016 LTSBは2026年10月、Ent.2019 LTSCは2029年の1月までとなっています。
なお、LTSBやLTSCは法人を対象としたやや特殊なバージョンであるため、注意しましょう。企業に属する個人が使用する端末の場合、2022年6月がリミットです。
OSバージョンの確認方法
OSのバージョンによってサポート終了時期が異なるため、事前に確認しておかねばなりません。確認を怠ってしまうと、気づいたときにはサポートが終了していた、といった状況に陥ってしまうおそれもあります。
確認方法は簡単で、[Windowsキー]と[R]を同時にタイプするだけです。もしくは、スタートメニューで[ファイル名を指定して実行]を選択し、名前欄に「winver」と入力すると、現在のバージョンを確認できます。
応急策の「IEモード」
「IEモード」は、すぐにブラウザの乗り換えができないユーザーのために、Microsoft社が提供している救済策です。Microsoft Edgeに実装されている機能であり、使用するとIEでしか表示できないWebページをEdge上で閲覧できます。
つまり、Microsoft EdgeでIEのように使える機能です。IEモードは、Edgeで簡単な設定を行うだけで利用できます。ただし、これはあくまで一時しのぎの救済策に過ぎないため、最終的にはブラウザの乗り換えが必要です。当のIEモードに関しても、2029年までしかサポートされないため注意しましょう。
IEのサポート終了に伴う影響とは
IEのサポート終了後、IE 11 デスクトップ アプリケーションを利用しようとすると Microsoft Edge にリダイレクトされます。そのまま使い続ける場合、さまざまなリスクを招くおそれがあるため注意しましょう。
たとえば、システム管理者の場合には画面表示の崩れやシステムの不具合などが発生し、対応に追われる可能性があります。とりわけ過去に構築された古いシステムでは、不具合の発生によってUXが低下するおそれもあります。こうした不具合が生じるたびに対応しなければならず、管理・運用の非効率化や負担増加が懸念されます。
また一般ユーザーも、IEモードを利用すればMicrosoft Edgeで今までと同じように利用できますが、先述した通りこちらもサポート期間に期限があります。そのため、結局はブラウザを移行しなくてはなりません。
IEのサポート終了後も使い続けるリスクとは?
IEのサポート終了後、リダイレクト先のMicrosoft Edgeで使い続けることは可能ですが、さまざまなリスクを伴うのであまりおすすめはできません。以下、考えられるリスクをピックアップしてご紹介します。
セキュリティが更に脆弱になる
サポートが終了すると、アップデートも行われなくなります。そのため、セキュリティの脆弱性が増してしまいます。サイバー攻撃はセキュリティの脆弱性を突いて行われるため、セキュリティリスクを抱えることは避けられないでしょう。
サイバー攻撃の手口は年々巧妙化・多様化しており、どのような企業でもターゲットとなりえます。IEには、ほかのブラウザに実装されているような高度なセキュリティ機能もないため、サポート終了に伴いさらに防御力を低下させてしまうのです。実際、2014年にはIEをターゲットとしたゼロデイ攻撃が行われており、みずほ銀行やゆうちょ銀行の利用者が被害に遭ったと報告されています。
サポートが終了したまま使い続けていると、いつこのようなサイバー攻撃の被害に遭うのかわかりません。自らリスクを引き寄せるおそれがあるため、注意が必要です。
非対応サイトが増加する
すでにMicrosoft社は、IEからMicrosoft Edgeへの移行を呼び掛けています。サポート終了に伴い、YouTubeやTwitterなどもIEでは開けなくなっているためです。
サポート終了の期限が近づくにつれて、IE非対応のサイトやサービスが増加していくと考えられます。閲覧できないサイトが増えていくほど、IEの使用に伴う不便も大きくなるでしょう。
ブラウザが更に重くなる
IEは処理速度が遅いといわれていますが、それは事実です。それを証明するデータも公表されています。理由はシンプルで、IEはすでに開発が終了しているため、最新の技術に対応できていないからです。
https://www.anandtech.com/show/16078/the-2020-browser-battle-surfing-with-speed/2
インターネットの世界は日々進化しており、次々と新しい技術が登場しています。しかしIEは、そのような環境の変化に対応できていないため、Microsoft EdgeやGoogle Chromeなど現行の他ブラウザと比べて、どうしても処理速度で見劣りします。
今後も次々と新たな技術が誕生すると考えられるため、IEの処理速度はますます遅くなるでしょう。重いブラウザを使い続けることは、業務のスムーズな進行の妨げとなるうえ、従業員のストレスにもつながりかねません。
IEのサポートが終了する前にやるべきこと
ブラウザの乗り換えを考える上で、IE以外なら何でもよいと考えるのは早計です。今やビジネスはWebが前提となり、SaaSサービスもさらに広がりを見せると予測されるため、それを踏まえて何を利用するか考える必要があります。
IEの利用を止め、ブラウザを乗り換える
IEモードを利用すれば継続して使用できますが、セキュリティや動作に不安や不具合が生じます。そのため、まず考えるべきはブラウザの乗り換えです。
企業の場合、個々の従業員に乗り換えを一任するのではなく、組織主導で進めましょう。利用するブラウザがそれぞれ異なると、現場の混乱を招きかねません。利便性や安全性も考慮したうえで、乗り換え先の候補を絞り込んでいきましょう。
IEでしか動作しないシステムが無いか確認する
IEで動作させることを前提に開発したシステムの場合、ブラウザの乗り換えにより使用できなくなる可能性があります。システムが利用できなくなり、業務の遅滞やサービスの停止などを招くおそれがあるため、事前に必ず確認しておきましょう。
導入しているすべてのシステムをチェックし、IEでしか動作しないものはないか抽出してください。万が一漏れがあると、対応が後手に回ってしまい、上述したようなリスクを招いてしまいます。該当するシステムがあれば、早急に対応を進めていきましょう。
IEのサポートが終了する前にブラウザを移行しましょう
サポート終了が決定しているIEを、この先も使い続けるのはリスキーといわざるを得ません。サイバー攻撃による被害や不具合の発生などの考えられるリスクは多々あるため、なるべくサポート終了前にブラウザの移行を考えましょう。
おすすめの代替ブラウザはGoogle Chromeです。アップデートが自動で行われるため、常に最新の状態を維持でき、セキュリティ面も安心です。処理速度も速いため、ストレスフリーに使用できるでしょう。
また、さまざまな拡張機能を無料で利用できるため、より使いやすくカスタマイズが可能です。Googleアカウントと連携すれば、さらに便利な使い方ができます。企業向けのChrome ブラウザを導入すれば、個々のブラウザやデバイスの管理も行えます。
まとめ
IEのサポート終了は決定しており、そのまま使い続けるにはさまざまなリスクを伴います。しばらくはIEモードでも対応できますが、IEモードのサポート期間も限られています。対応を先延ばしにするほど、利用できないサイトやサービスが増え、処理速度も遅くなるなどのデメリットが増えていくでしょう。
まずは自社のシステムを確認し、IEでしか動作しないシステムへの対応を進めましょう。そのうえで、Google Chromeへの乗り換えを本格的に検討することをおすすめします。
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