「リモートワーク」と「テレワーク」、どちらもコロナ禍以降よく耳にするようになった言葉ですが、違いが分からないという方もいらっしゃるかもしれません。結論としては、ほぼ同義として使われる言葉になります。ですが、これで終わってしまうのも寂しいので、以下、少しだけ説明させてください。
リモートワーク と テレワーク はどう違う?
英語の接頭辞:tele- と 形容詞:remote
英語の接頭辞:tele- と 形容詞:remote 、どちらも『遠くの、遠隔の』という意味を持っていますので、tele + work も remote + work も、日本語に翻訳すればどちらも『オフィスから離れて働く』という意味になります。
“ remote ”は、もともと IT 用語における“社内の”を意味する“ local ”の対義語として、社外(からのアクセス)というニュアンスで使われてきた背景があります。 一方で、テレワークはテレコミュート(telecommute:遠隔通信技術を利用してオフィスに行かず在宅で勤務する)という言葉とともに生み出された造語であり、その生みの親である Jack Nilles 氏によって研究と普及が進められました。アメリカでは、テレワーク推進法(Telework Enhancement Act※)において、「“テレワーク”または“テレワーキング”とは、従業員が、他の方法で仕事をする場所とは別の承認された職場で、当該従業員の地位の義務と責任、およびその他の許可された活動を行う、仕事の柔軟性のある取り決めを指します。」と定義されています。また、日本の総務省の公式webサイト※※では、「テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。」と定義しています。
「リモートワーク」と「テレワーク」、アメリカやイギリスのネイティブスピーカーでは若干ニュアンスが違い、区別することもあるようですが、ほぼ同義で使用されることが多いため、厳密に使い分ける必要はないようです。
※出典:https://www.congress.gov/111/plaws/publ292/PLAW-111publ292.pdf
※出典:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/18028_01.html
在宅勤務を英語で言うとリモートワーク?テレワーク?
「リモートワーク」と「テレワーク」、厳密に言うとどこで働くかの情報は付随していません。場所については、ただオフィスから離れた場所であることだけを示唆します。
英語では、在宅勤務の表現として「 work from home 」が一般的に使われており、日本でも外資系企業にお勤めの方が、よくこの表現を使っているように思います。とはいえ、無料の翻訳サービスや辞書サービスでは「リモートワーク」も「テレワーク」も在宅勤務としている場合が多いので、厳密に区別したい場合はお気をつけください。
ワーケーション は和製英語なのか
リモートワーク、テレワークの亜種ともいえる「ワーケーション」も和製英語でしょうか?
実は、「 ワーク ( work ) 」と「 バケーション ( vacation ) 」を組み合わせたこの造語は、比較的新しいながらも辞書にも採用されている一般名詞です。「 Workcation 」という綴が一般的ですが、日本では「 Workation 」「 Worcation 」など表記揺れが散見されます。英語圏の方とやり取りする際には、「 Workcation 」表記が無難のようです。
国内では、企業が地方自治体と一緒に一つのプロジェクトとして実施している場合もありますが、個人で実施している方のブログなどもたくさん見つかると思います。地方へ移住したり、自宅と別荘を往復したり、旅行気分で観光地へ行ってしばらく滞在しながら仕事をする方もいれば、気分転換に近場のホテルに宿泊するなど、場所もやり方も様々。福利厚生として、また生産性にどう寄与するかの実証実験としてなど、一度実験的に自社員に推奨してみてはいかがでしょうか?
在宅勤務のメリットとデメリット、そしてリスク
在宅勤務制度の導入を検討する際、やはり最初に経営層や担当者が気にすることといえば、メリットとデメリット、そしてリスクではないかと思います。
メリット
- 社員のワークライフバランスの向上
- オフィス縮小や交通費抑制などのコスト低減効果
- 雇用条件の改善によるリクルーティングへの良い影響・・・など
テレワークが週に1日もない会社は転職先として検討しない!と思っている方も一定数いるようです。優秀な人材確保や人材流出の抑制のためにも、雇用条件としての在宅勤務の導入は、一考の価値があります。
デメリット
- 社員の勤務態度や一日の仕事の質・量を管理することが困難
- 情報共有の遅滞やコミュニケーションロスが発生しやすい
- 環境整備(ICT投資)におけるコストと管理負荷の発・・・など
『 勤務中に社員が遊んでしまうのではないか? 』『 日報の提出を義務付けたものの、仕事の量や質、進行具合などの精査が難しく、管理職の負担が増えた! 』『導入したい気持ちはあるが、今は、ICTへの投資や検討をしている余裕はないので、緊急事態宣言下でもオフィスへの出社を義務付けている』と言ったお声をよくお聞きします。運用でカバーするのか、コストをかけてソリューションを導入するのか、はたまた何もしないのか・・・企業間での格差も拡大しているように見受けられます。
リスク
- 盗難・紛失・複製保存など情報漏洩等セキュリティレベルの低下
- 勤務中の社員の不適切な行為の横行
- 貸与 PC の持ち歩き時の故障・・・など
デメリットとともに、やはりリスクも浮上してきます。Chromebook 商談のなかでは、特に、情報漏えいの防止がコスト低減と同じくらい高い優先順位で導入目的に入ってきている印象です。また、大手企業で BYOD 、特にPC端末での BYOD を推奨している企業は少ないように感じます。
制度導入に必要なモノ・コトとは?
では、在宅勤務のメリットを最大化して、デメリットとリスクを最小化するためには、どのようなICT環境を整備すれば良いのでしょうか?難易度・緊急度と一緒に対応策を考えてみました。難易度は、手間とコストを加味しています。
啓蒙・教育( 難易度:★☆☆☆☆ 緊急度:★★★★★ )
- 情報倫理・個人情報保護等についての定期的な社員教育
- マルウェアやソーシャルエンジニアリングへのマニュアル作成・周知徹底
- その他 IT リテラシー全般に対する定期的な社員教育・・・など
まずは、社員に知識と倫理観をもってもらうことが必要です。個人情報の流出やSNS での不適切投稿がニュースになっている今、どの企業でもこの手の人為的リスクを背負っています。在宅勤務を実施する・しないを別にしても、定期的に行っていただくことをオススメします。
制度・規約の改定( 難易度:★★☆☆☆ 緊急度:★★★★★ )
- 就業規則の見直し
- 会社貸与の端末盗難・紛失時の対応マニュアル作成と周知徹底
- 職務や職級に応じたアクセス権限の見直し・・・など
こちらは、上述の啓蒙・教育と車の両輪のようなもので、制度や規約だけ決めても、認知・意識が向上しなければ形骸化してしまいます。ぜひ、セットで実施してください。また、懲戒などの可能性を具体例と一緒に伝えることで、抑止効果 UP にもつながります。
ネットワーク環境の整備( 難易度:★★★☆☆ 緊急度:★★★★☆ )
- VPNの構築または帯域の拡大
- 社員への通信費補助・・・など
在宅勤務での生産性に最も関係してくるもののひとつが、ネットワーク環境の好悪です。VPN については、安全な接続を約束するものでありながら、帯域幅を大量消費することで通信を不安定にしたり、ソーシャルエンジニアリングやマルウェアによる攻撃で、社内 LAN への悪意あるアクセスをより深部に、より長時間の滞在を許してしまう可能性があります。最新のゼロトラストセキュリティやアクセス制限ソリューションなど、セキュリティ関連のサービスも要チェックです。
クラウドサービス導入( 難易度:★★☆☆☆ 緊急度:★★★☆☆ )
- クラウド型グループウェアの導入・リプレイス
- web 会議サービスの導入
- 社内システムのクラウド化
- 各種業務ツールのクラウド化・・・など
リモートデスクトップや VDI が利用できれば、どうしても必要という訳ではありませんが、 VDI 内での web 会議システムの利用や動画視聴は無駄に社内ネットワークの帯域幅を消耗する可能性があり、動作においてもユーザーの環境によっては著しくパフォーマンスが低下してしまう恐れがあります。また、セキュリティ上、VPN にあまり穴を開けたくない・・・というお考えの企業様もあるかと思いますので、これを機に、クラウドサービス導入のご検討を始めてみてください。費用対効果は、★★★★★です!
ハードウェアまたは仮想環境の整備
( 難易度:★★☆☆☆〜★★★★★ 緊急度:★★★★★ )
- 端末準備
- 社内利用 PC の持ち帰り許可
- 在宅勤務専用端末の配布
- BYOD の制度導入
- リモートデスクトップサービスの導入
- VDI または DaaS 環境の整備・・・など
在宅勤務の対象者となる方の多くが、メインの業務ツールとして PC をご利用かと思いますので、ネットワークと共に必須となるのが PC 端末やデスクトップ環境でしょう。会社でデスクトップ型の PC をご利用中の場合、新たに在宅用端末を買って貸与するか、BYOD を許すか、会社の PC をノート PC にリプレイスするかの三択になるかと思います。
会社でノート PC を利用中の場合は、在宅勤務前に会社から持って帰る運用を選択されるお客さまが多いようですが、在宅用に別途貸与しているという企業も決して少なくはありません。自社のポリシーや対象となる従業員の扱う情報の種類、予算等を総合的に考えて、その時に選択可能な “ 最適 ” をみつけてください。なお、VDI の導入はコスト的にも、情報システム部門側の負荷も高くなりますので、緊急度が高い場合は、一時的にリモートデスクトップを選択するという手もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?「リモートワーク」と「テレワーク」、どちらも『オフィスから離れて働く』ということになり、厳密に使い分ける必要はありません。
日本では「在宅勤務」という制度の導入において、何をどう用意するかは、多様な選択肢があり、コストや手間もそれぞれです。また、ハード面( ICT ソリューション)だけではなく、ソフト面(教育・制度)を整えることも重要となります。
当社では、在宅勤務に関する各種ご相談を承っておりますので、何かございましたらお気軽にお問い合わせください。特に、PC は Chromebook をオススメしております。
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