AI技術への注目が高まっている近年、企業や自治体では積極的にAIを導入する動きが活発になっています。中でも生成AIは、多くの企業が導入し、業務効率化やサービス品質向上といった成果をあげているAI技術の1つです。企業の課題解決や新たなビジネスチャンスの創出に大きく貢献しています。
この記事では、生成AIの概要や導入効果、費用の相場、導入事例などについてわかりやすく解説しています。生成AIの導入を検討する際に役立つ情報を網羅しているので、ぜひ最後までご覧ください。
生成AIとは機械学習でゼロから新しいコンテンツを生成する技術
生成AIは、膨大な量のデータを学習して、ゼロから新たなコンテンツを作る技術です。従来のAI技術は、質問に対して学習済みのデータの中から答えを見つけて回答するものが主流でしたが、生成AIを活用すれば、データをもとにオリジナルのコンテンツをゼロから生成できます。コンテンツの生成にかかる時間も短時間であるため、業務の大幅な効率化が可能です。生成AIは、以下の4つの種類に大きく分けられます。
生成AIの種類 | 特徴 | 代表的なサービス |
文章生成AI | 入力された指示や質問に応じて、文章を生成する |
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画像生成AI | 入力された指示や質問に応じて、新しい画像を生成する |
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動画生成AI | 入力された指示や質問に応じて、新しい動画を生成する |
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音声生成AI | 与えられた音声データをもとに、新しい音声データを生成する |
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生成AIを活用できる場は、クリエイティブな業務だけにとどまりません。医療現場での診療補助や生産ラインの最適化、カスタマーサポートの自動化など、さまざまな業務に活用されており、今後さらに幅広い分野での活躍が期待されています。
生成AIの導入で期待できる5つの効果
生成AIの導入で期待できる効果は、以下の5つです。
- アイデアの整理
- 分析能力の向上
- AI技術の教育コストの削減
- 24時間体制での顧客対応
- 業務効率化による労働力不足解消
導入効果を確認して、生成AIがもたらすメリットを把握しましょう。
アイデアの整理
生成AIの導入は、業務に役立つ断片的なアイデアの整理に効果的です。複数のアイデアやキーワードをもとに、生成AIが革新的なコンテンツを生み出します。また、生成AIは多種多様な学習データからオリジナルのコンテンツを生成できるため、今までになかった新しいアイデアを得るきっかけにもなるでしょう。
例えば、商品のキャッチコピーを検討する際に生成AIを活用すれば、複数のアイデアから重要なもののみを抽出したり、アイデア段階のキャッチコピーをブラッシュアップしたりできます。生成AIのサポートによって、より優れたキャッチコピーの生成が可能です。生成AIを活用すれば、新しいアイデアの発見や、クオリティと業務効率の向上につながり、ビジネスの成長に大きく貢献するでしょう。
分析能力の向上
AIは、膨大な量のデータを短時間で分析できます。分析業務にAIを活用すれば、手動で分析を行なった場合に比べて、大幅な業務効率化が可能です。分析結果の活用により、売上の向上につながる有益な情報も得られるため、ビジネスの成長に大きく貢献します。
例えば、売上データをAIに分析させれば、サービスや商品の需要予測が可能です。特定のサービスや商品がどのような条件で多く売れているのかを把握でき、売上を高める効果的なアプローチができます。売上データと併せてAIに季節や天気のデータを与えれば、より精度の高い分析も可能です。
また、AIを活用して得られた分析結果は、顧客の行動心理を理解する目的にも役立ちます。顧客の行動心理をもとに効果的なマーケティング戦略の方向性が決めやすくなり、売上の向上が期待できます。
AI技術の教育コストの削減
生成AIは、AI技術に関する専門的なスキルがなくても利用できるため、多くの人がビジネスに活用できます。AI技術に知見のある人材を確保したり、一から従業員に教育したりする必要がないため、大幅な教育コストの削減が可能です。
また、生成AIを活用すれば、あらゆる人が優れたコンテンツを短時間で生成できるため、新たな分野への挑戦やアイデアの創出がしやすくなり、ビジネスチャンスを広げられます。
24時間体制での顧客対応
生成AIの導入により、従業員のみでは難しい24時間体制での顧客対応が可能です。従業員が24時間の顧客対応を行う場合、複数人で交代しながら対応する必要があり、多くの人件費と労力がかかります。
AIが人に代わり顧客対応を行うことで、24時間365日のサポートサービスを提供でき、顧客満足度の向上につながるでしょう。深夜や大型連休なども関係なく、安定したサポートサービスを提供できるため、サービスや企業への信頼も高まります。
24時間365日のサポートサービスは、クレジットカードやアパートの鍵の紛失、ツールのシステムエラーなど、迅速な対応が必要な際には特に重要な役割を果たします。
業務効率化による労働力不足解消
生成AIの導入は、労働力不足の解消にも効果的です。従業員が行っていた業務をAIが担うため、業務効率が向上し、少ない人数でも業務を進行できます。人手が足りていない場合や、従業員の負担が大きい過酷な労働現場で特に役立つでしょう。
生成AIによる業務効率化が進めば、コスト削減や従業員の負担軽減につながり、企業の利益増加が期待できます。
生成AIの導入費用の相場と内訳
生成AIの導入費用の相場は、以下の通りです。
種類 | 初期費用 | 運用費用 | |
AIチャットボット | 5万〜10万円 | 10万〜100万円(月額) | |
画像認識AI | AI外観検査ソフトウェア | 20万〜80万円 | |
大規模外観検査システム | 約2,000万円 | ・導入支援、教育開発費用:約1,000万円 ・ライセンス費用:200万〜300万円 |
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需要予測AI | 300万〜600万円 | ||
音声認識AI | 100万円以上 |
生成AIの導入費用は、導入するツールによって異なります。上記の費用は、あくまで目安として把握しておきましょう。生成AIの導入費用は、以下の3つに大きく分けられます。
- 人件費
- データ収集や加工
- ソフトウェアやハードウェア
上記は、いずれも生成AIを導入する際に欠かせないものです。各費用の詳細を確認して、生成AIを導入する際の参考にしましょう。
内訳:人件費
生成AIの開発から導入までのプロセスで最も大きな費用は、人件費です。導入方法によって費用は異なりますが、生成AIの外部サービスを利用するのではなく、一からシステムを開発・構築・運用する場合は、より多額の費用がかかります。
生成AIの開発・構築・運用には、エンジニアやデータサイエンティスト(※1)などのAIに関する専門スキルを持った人材が必要です。人材を外注するか自社で雇用するかなどの条件によって費用は異なりますが、IT人材は社会全体で不足しているため、人材の確保には多くの労力と資金が必要になるでしょう。無駄な費用を削減し、人件費を抑えて生成AIを導入するには、適切な人材戦略の立案と実行が重要です。
※1. データサイエンティスト:企業や団体などで意志決定をする人が、データ分析の結果をもとに合理的な判断ができるようサポートする専門家
内訳:データ収集や加工
生成AIは、AIが学習するためのデータを作成する「アノテーション」と呼ばれる作業によって、はじめて正常に機能します。アノテーションの費用は生成AIの規模や種類によってさまざまですが、決して安くはありません。アノテーションをはじめとした学習データの収集・加工・ラベル付けといった作業にはまとまった費用がかかるため、予算を決める際は注意しましょう。
内訳:ソフトウェアやハードウェア
開発する生成AIのシステムの種類がソフトウェアかハードウェアかによって、導入費用は大きく異なります。例えばソフトウェアの場合、サーバートラブルの通信障害やアプリケーションのバグの対応が必要になり、その都度費用がかかります。ハードウェアの場合は、データの管理やバックアップ、ワークステーションの管理などに費用がかかります。
【Google Cloud活用】生成AIの企業や自治体への導入事例4選
生成AIを活用して業務効率化や売上の向上を図りたい方には「Google Cloud」の導入がおすすめです。Google Cloudには、ビッグデータ解析ツールや機械学習サービスといったAI技術を利用できる複数のサービスが備わっており、多くの企業や自治体が導入しています。ここでは、実際にGoogle Cloudを導入した企業の事例を紹介します。導入事例を確認して、自社で検討する際の参考にしましょう。
freee株式会社
freee株式会社は、SaaS会計システム、人事労務、勤怠管理、会社設立手続きといったバックオフィス業務の効率化を図るプラットフォームを提供する企業です。freee株式会社の利用していたデータ分析システムには、以下のような3つの課題がありました。
- 分析結果を出力するまでの時間が長く、分析担当者の集中力低下を招いていた
- パフォーマンスの改善のために小まめなチューニングをしなければならなかった
- データへのアクセス方法が限られており、利便性に欠けていた
freee株式会社は、上記の課題解決を図るために、データ分析システムをGoogle Cloudの「BigQuery」に移行しました。BigQueryは、AI技術を利用したデータ分析ができるクラウドサービスです。BigQueryへの移行により、データ分析のパフォーマンスが向上し、分析結果の出力にかかる時間が大幅に短縮されました。
また、データへアクセスしやすくなり、パフォーマンス改善のためのチューニングが必要なくなった点も、BigQueryがもたらした大きなメリットです。加えて、BigQueryはあらゆるGoogle関連サービスと連携できるため、データ分析システムそのものの活用方法も多様化しました。
株式会社コメ兵ホールディングス
株式会社コメ兵ホールディングスは、13のグループ会社をもち、リユース事業をはじめとしたさまざまな事業を運営している企業です。店舗での販売や買取、EC、宅配買取を連携させて、顧客の買い物体験を向上させる取り組みに力を入れています。株式会社コメ兵ホールディングスの利用していたBIツールには、以下のような2つの課題がありました。
- 長期間の利用に伴ってデータが肥大化し、処理速度が遅くなっている
- ツールへのアクセスは特定のデバイスに限定されており、データ活用を推進できない
株式会社コメ兵ホールディングスは、上記の課題解決を図るために、Google Cloudの「BigQuery」と「データポータル」の利用を開始しました。データポータルは、あらゆるデータソースへの接続や迅速なレポート共有ができるクラウド型BIツールです。
株式会社コメ兵ホールディングスは、BigQueryとデータポータルを活用して自社専用のBIツールを開発し、業務に利用しています。新しいBIツールは、従来のツールに比べて処理速度が格段に速く、さまざまなデバイスからのアクセスが可能です。
また、多角的な視点でデータ分析ができるようになり、従業員がリアルタイムなデータを確認しながら顧客に提案できる体制も構築できました。利便性やアクセス性の高さから、ツールは社内でスムーズに定着し、100ページを超えるデータ分析のレポートが作成されています。
花王株式会社
花王株式会社は、化粧品、ヘルスケアなどのB2C事業や、B2Bのケミカル事業を展開する企業です。花王株式会社では、もともと外部データをマーケティングに利用していましたが、社内のみでは取り扱いが難しく、データの収集や前処理を行う基盤の構築が必要でした。
そこで、データ分析の基盤構築のために導入されたのが、Google Cloudです。Google Cloudの導入により、さまざまな外部データを収集でき、多角的な視点でデータ分析が可能になりました。また、内製化を視野に入れて、データ分析基盤の構築と同時に人材教育にも力を入れて、クラウドサービスによるシステム構築ができる体制を整備しました。
株式会社ダイナックホールディングス
株式会社ダイナックホールディングスは、飲食店ブランドや道の駅、ゴルフ&リゾートレストランを運営する企業です。この企業では、売上データと食材の仕入データの集計をExcelで行なっていましたが、Google Cloudでデータ集計を半自動化し、作業の効率化に成功しました。
また、 Google Apps Scriptで月別のスプレッドシート作成を自動化し、集計されたデータの確認作業の効率化も実現しています。株式会社ダイナックホールディングスがGoogle Cloudの導入によって得られた具体的な成果は、以下の通りです。
- 営業担当者の作業ボリュームが1/10に減少した
- 8時間かかっていた情報システム部の作業時間が3時間に短縮した
Google Cloudは、導入と運用のどちらも低コストに抑えられるため、コスト面でも大きく貢献しました。
生成AIを導入する際の3つの課題
生成AIを導入する際の課題は、以下の3つです。
- 著作権法の侵害
- 偽情報の発信
- 個人情報の漏洩
課題を確認して、自社で生成AIを利用する際の参考にしましょう。
著作権法の侵害
AI開発では、AIが学習するために膨大な量のデータが必要です。AIの学習に活用されるデータには、著作権法に違反しているものが含まれている場合が多く、海外では訴訟に発展したケースもあります。
著作権法には、非享受利用(※1)の場合は許可なく著作物を使用できると規定されていますが、限度を超える使用は違反になります。AI開発を行う際は、ライセンスが記載されたデータや公開されたデータセットを使い、著作権法を遵守しなければなりません。
※1. 非享受利用:著作物に表現された感情や思想を自身が享受したり、他人に享受させたりすることを目的としない利用
偽情報の発信
生成AIが生み出したデータは、すべて正しい情報とは限りません。場合によっては間違った情報が含まれる場合もあり、仮に業務への活用や外部への発信をした場合、トラブルに発展する可能性があります。間違いが許されない業務はもちろん、通常の業務であっても、生成AIが生み出した情報を慎重に精査して、正しいものか確認が取れてから利用しましょう。
個人情報の漏洩
AIは、与えられた情報を悪意なく外部に流出させる可能性があります。例えば、AIに企業の機密情報を入力・送信すれば、他のユーザーの回答に利用されるかもしれません。企業が個人情報をはじめとした機密情報を外部に漏洩した場合、社会からの信用を大きく損なうだけでなく、損害賠償請求を受ける恐れもあります。データを安全に保護するために、AIへの機密情報の入力・送信は控えましょう。
自社への生成AI導入ならGoogle Cloudの活用を
Google Cloudは、Googleが開発・提供しているクラウドサービスです。複数のサービスが含まれており、生成AIを活用したサービスが利用できます。例えば、Vertex AIは、基盤モデルを操作・カスタマイズして、自社のアプリケーションに組み込めます。また、Vertex AI Search and Conversationを使用すれば、生成AIを活用したチャットボットや検索エンジンの構築が可能です。
Google Cloudの生成AIサービスや機械学習について詳しく知りたい方は、以下のページから無料でダウンロードできる資料をぜひご覧ください。
業務効率化や生産性向上のために生成AIの導入を検討しよう
生成AIは、企業の業務効率化に貢献する優れた技術です。業務に活用すれば、アイデアの整理や分析能力の向上、顧客満足度の向上などに役立ちます。生成AIは、サービスによって機能や料金が異なります。生成AIの導入は、機能と料金のバランスを確認しながら、予算内に収まるよう計画的に行いましょう。
電算システムは、多くの企業に対してGoogle Cloudの導入サポートを行っており、企業の悩みに合わせたサポートが受けられるプランも提供しています。Google Cloudの導入を検討されている方は、電算システムにぜひご相談ください。
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