クラウドやAI、IoTなど、さまざまな方法を通じてビッグデータを取得できる昨今において、そのデータを経営の意思決定やマーケティング戦略の策定といった領域で、より効果的に活用したい方も多いのではないでしょうか。しかし、「そもそもデータベースが整理されていない」「必要な情報のみを抽出するのが難しい」という理由で、一歩を踏み出せないケースも珍しくありません。
このようなケースで活用したいのが、「RDB(リレーショナルデータベース)」です。RDBとは、表形式でデータを格納する点に特徴があるデータベースの一つです。蓄積したデータそれぞれに関連性を付与できるため、データの正規化や処理コストの削減につながります。
本記事では、RDBの仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説します。また、RDBと比較されることの多いNoSQLの特徴やそれぞれの違いを紹介していますので、データベースの構築方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
RDBとは?種類についても解説
データベースには、以下の3つの種類があります。
- 階層型データベース
- ネットワーク型データベース
- リレーショナルデータベース
そのうち、リレーショナルデータベース(以下RDB)は、格納したデータを表形式に整理し、それぞれの情報に関連性を付与できるのが特徴です。ここでは、RDBの特徴や仕組みについて詳しく解説します。
RDBとは表形式のデータを扱うシステム
そもそもデータベースとは、幅広いシステムに散在したデータを1ヶ所に集約し、取り出しやすく整理したプラットフォームです。単なるデータの集合体ではなく、検索性(必要情報のみを容易に抽出できるか)や一元性(個別の変更箇所が全体に反映されるか)の要件を備えたもののみ、データベースと定義されます。
なかでも、格納されているデータが表形式で整理されているデータベースを、RDBと呼びます。RDBでは、テーブル(一つひとつの表)ごとの関連要素を見つけ、そこから必要な情報のみを抽出することが可能です。
例えば、従業員データベースを管理するに際して、次の2つのテーブルを作成するとします。
- テーブル1:従業員の属性データ(従業員コード・従業員名・部門・役職など)
- テーブル2:従業員の勤怠データ(従業員コード・出勤日数・有給付与日数など)
これら2つのデータから、各従業員の年間有給付与日数を割り出す場合は、テーブル1と2の「従業員コード」を紐付けたうえで、「従業員名・有給付与日数」のみのデータを抽出することが可能です。
RDBの仕組み
データの紐付けや抽出など、RDBの操作を行うためには、RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)というシステムが必要です。RDBはあくまでデータベースを構築する手法の一つであるのに対し、RDBMSは、RDB上のコマンドを実行するためのツールという点に違いがあります。
RDBMSでは、SQLと呼ばれるデータベース言語を用い、テーブル上のデータを管理する仕組みです。複雑な条件検索に対応しているSQLを活用するため、RDBはほかのデータベースに比べ、高度なデータ処理を行えます。
RDBを利用する4つのメリット
データベースの構築や運用を行う際は、RDBのメリットとデメリットを理解することが大切です。そのなかでも、まずはRDBのメリットをご紹介します。
- データを正規化できる
- 処理コストの削減につながる
- 学習コストが安い
- 複雑なデータ操作を行える
データを正規化できる
データの正規化とは、データベース上の重複や欠落を排除し、整合性を持たせることです。RDBは一貫性のあるデータ処理が可能なことから、データを正規化できるメリットがあります。
例えば、何らかのデータを処理する際は、機械が要件通りに正しく実行することもあれば、ときには誤った処理方法でエラーが起きてしまうこともあります。RDBは、正確な処理を行えばその結果を返し、エラー時には処理前の状態に戻すのが特徴です。この一連の流れを「データの一貫性」と呼びます。
結果として、RDBでデータ処理を行う場合は、データベースのなかで重複や欠落が起こり得ません。複数人が同じタイミングでデータベースにアクセスしても、利用者ごとに内容が異なったり、未更新のデータが表示されたりするリスクを回避できます。
処理コストの削減につながる
RDBのデータベースを作成する際は、テーブルの追加や削除といった作業が必要ありません。一度作成したテーブルの構成を、そのまま別のテーブルでも流用できるためです。フォーマットが統一されているからこそ、データの処理コストを最小限に抑えられます。
学習コストが安い
RDBのデータ処理基盤であるSQLは、ISO(国際標準化機構)によって規格が標準化されています。そのため、複数のサーバーで別々のRDBを運用する場合でも、一からデータベース言語を学ぶ必要がありません。また、RDBMSには、データ収集・処理の環境が整備されている製品も多く、データベース構築方法に関する情報収集の手間を抑えられます。
結果として、RDBの導入により学習コストの削減につながります。
複雑なデータ操作を行える
RDBはスキーマ(データの扱い方が定義されている設計図)が厳密で、複雑な構造のデータでも問題なく取り扱えます。また、それぞれのテーブルに含まれているデータに関連性を持たせ、複雑な条件で検索することも可能です。複雑なデータ操作を行えることから、RDBは顧客データ分析や商品開発、研究開発といった高度なデータ処理に向いています。
RDBを利用する3つのデメリット
RDBには数多くのメリットがある反面、いくつかのデメリットも存在します。自社独自のデータベースを構築する際は、特に以下のような点に注意が必要です。
- データの処理速度が遅い
- 分断耐性が低く拡張しにくい
- 非構造化データを扱えない
データの処理速度が遅い
RDBのデータ処理方法は、追加・削除・更新など、複数のデータ操作を一括で命令するトランザクション処理を行う点に特徴があります。ルールから外れた値が出力された場合、結果を反映せずデータ処理を破棄する形でデータの一貫性を保ちます。
データの一貫性を保つことで重複や欠落を排除できるメリットがあるものの、その分、処理速度が遅くなってしまうのが難点です。特に、膨大な量のデータを処理する場合、逐一データの整合性をチェックする必要があるため、完了までにかなりの時間を要します。そのためRDBは、複数のサーバーに大容量データを保存する、あるいは将来的にデータ拡張を見据えている企業には不向きです。
分断耐性が低く拡張しにくい
RDBは本来、データの一貫性を保証するために1台のサーバーでの運用が前提となっており、分断耐性が備わっていません。分断耐性とは、ネットワーク障害時に問題なくシステムが稼働できるよう、データを複数のサーバーに分散する柔軟力を表します。RDBは、別のサーバーへのデータ拡張が難しく、実現には高度な知識や技術に加え、高額なコストが必要です。
非構造化データを扱えない
RDBでは、表形式でデータ群を管理する以上、取り扱えるのはテキストデータのみです。画像や音声、動画といった非構造化データには対応していません。そのため、幅広い形式のデータを処理するビッグデータ分析には不向きだといえるでしょう。
近年はRDBよりデータ分析に適した「NoSQL」に注目が集まっている
IoTやAIをはじめ、大容量かつ多様な形式のデータ処理に対するニーズが高まる昨今では、「NoSQL」というデータベースに注目が集まっています。
NoSQL(Not Only SQL)とは、RDBのようなSQLを活用せずに構築するデータベースの総称です。表形式に限定せず、さまざまなフォーマットでデータを格納できることから、RDBの処理速度の遅さや低拡張性といったデメリットの解消につながります。
NoSQLでデータベースを構築する際は、次のようなフォーマットが活用されます。
- キー・バリュー型:
個別の組みを識別するための情報「キー」と、それに関連付く情報「バリュー」の2つの情報をワンセットで管理する方式。キーには顧客ID、バリューには氏名・年齢・住所などの情報を格納するイメージ。構造がシンプルで高速処理が可能。 - カラム指向型:
キー・バリュー型のバリュー項目に列情報を追加した方式。例えば、「住所」の列を追加した場合は、キーの情報に関連付く「東京都・大阪府」などの値を格納する。列の名前を指定できるため、検索性を付与したうえで素早いデータ処理も可能。 - ドキュメント指向型:
「キー」と「ドキュメント」によって構成される方式。ドキュメントには、「Age:20」や「Address:Tokyo」といった形で、XML・JSONなどのプログラミング言語を設定できる。複雑なデータ設計が不要で、データ形式を柔軟に変更しやすいメリットがある。
NoSQLは、大量のデータを高速で処理できる利点があります。そのため、以下のような分野で活用されています。
- ECサイトやSNSのアクセス解析
- 不正検知システムのデータ処理
- ゲーム・アプリ開発
NoSQLを利用する3つのメリット
RDBとNoSQLには、それぞれメリットとデメリットが存在します。そのため、両者の長短を比較し、自社の目的や業務内容に合わせて適切なデータベースの構築方法を模索することが大切です。NoSQLのメリットには以下のようなものがあります。
- 非構造化データを格納できる
- 処理が高速
- 可用性が高い
RDBとの違いを把握する際に参考にしてください。
非構造化データを格納できる
RDBのデータ構造は表形式で統一されています。これは、テーブル同士の関連付けによって処理コストを抑えられる一方で、自由なデータ形式を取り扱えない、利点と欠点の両面を持ちあわせているということです。そのため、RDBではテキストデータ以外の情報を格納できません。
対して、NoSQLは、テキストデータ以外に画像や音声、動画などのデータ形式にも対応しています。半構造化・非構造化データでも問題なく取り扱えるため、複数形式のデータ処理が必要なビッグデータ分析に適しています。
処理が高速
RDBでは、個別のテーブルに膨大な情報を格納することもあり、構造が複雑になりがちです。そのため、データ間の整合性を維持しつつ処理を実施するトランザクション処理が必要です。常にデータ処理の成否を確認しながら命令を実行する必要があるため、データ容量が大きくなるほど処理速度が低下します。
一方のNoSQLは、構造そのものがシンプルに構成されています。複数のデータ同士を参照する場合でも、トランザクション処理を実施する必要がありません。そのため、データ処理を素早く実行できるのが利点です。また、サーバー増設にも対応しており、取り扱うデータ容量に応じて柔軟に処理能力を強化できます。
ただし、データ処理後の整合性を確保すべきケースでは、NoSQLよりもRDBのほうが向いています。
可用性が高い
NoSQLは、複数のサーバーにデータを複製した状態で保存できます。万一、複数サーバーのいずれかに障害が発生しても、別のサーバーを使ってデータ処理を行えるのがメリットです。また、サーバーの破損によるデータ消失のリスクを軽減できるのも利点だといえるでしょう。データの水平分散が可能で、可用性(継続稼働できる能力)に優れているのがNoSQLの特徴です。
データ分析を始めるなら「Google Cloud Platform」がおすすめ
データベースの構築やそのデータを活用した分析を行う場合は、さまざまなツールが統合された「Google Cloud Platform」を活用してみてはいかがでしょうか。
Google Cloud Platformには、「Cloud SQL」や「Cloud Spanner」などのRDBMSに加え、「MongoDB Atlas」をはじめとするNoSQLが内包されています。クラウド型のデータベース構築ツールやフルマネージドサービス(サービス会社側がサーバー管理の包括的な業務を代行)などがあり、ニーズに合わせて選び分けられるのがポイントです。
また、大容量データを高速処理できる「BigQuery」や、データの流れに沿ったデータ分析が可能な「Dataflow」などのツールも搭載されています。このような複数のツールを組み合わせることで、単なるデータの蓄積にとどまらず、高度なデータ分析に基づいた意思決定や戦略策定につながるでしょう。
本格的にデータベース構築やデータ分析に取り組みたい方は、ぜひ以下の資料をご覧ください。
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RDBやNoSQLを活用してデータベースを運用しよう
本記事では、表形式でデータ同士の関連性を付与できるRDBと、より柔軟なデータベース構築が可能なNoSQLのそれぞれの特徴をご紹介しました。両者はどちらか一方が優れているわけではなく、それぞれメリットとデメリットがあります。そのため、正確性が求められるデータ処理にはRDB、大容量データの高速処理を実現したい場合にはNoSQLといったように、両者の利点を踏まえて適切な方法を選択しましょう。
また、スムーズなデータベース構築や分析を行いたい場合は、「Google Cloud Platform」の導入をご検討ください。Google Cloud Platformには、RDBやNoSQL、分析ツールなどが豊富に搭載されており、データベース構築から分析までの一連の流れを一気通貫で実現できます。Googleの各種ツールを使ったデータ活用方法を知りたい方は、ぜひ以下の資料をご覧ください。
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