経営分析や営業分析など、データ分析を行う際は何らかの解決策を見出すだけでなく、レポート上に可視化することが重要です。誰が見てもわかりやすい形に可視化することで、分析結果に対する理解が進み、他部門や取引先から協力を得られます。また、チーム一丸となって施策に取り組む際も、分析結果を可視化するのが効果的です。
このようなケースで活用できるのがLooker Studio(旧データポータル)です。Looker Studioを導入すると、ノーコードかつ簡易的な操作のみでレポートを作成できます。
本記事では、Looker Studioの仕組みや導入メリット、便利な使い方を詳しく解説します。レポート作成の工数や費用を削減したい方は、ぜひ参考にしてください。
Looker Studio(旧データポータル)とは簡単な操作でレポートを作成できるBIツール
Looker Studio(旧データポータル)とは、Googleが提供するBIツールの一種です。BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、社内に蓄積されたさまざまなデータを効率良く分析し、グラフや表などに可視化できるツールです。
Looker Studioの場合、レポート作成といった分析結果の可視化に特化しています。データの分析に関しては、同じくGoogleが提供するBigQueryなどのツールで行い、ツール同士のデータを連動させる仕組みです。Google CloudにはBigQueryとLooker Studioの両ツールが搭載されており、スムーズにデータ連携ができて使いやすい特徴があります。
データを活用するには分析結果があれば十分なようにも思えますが、そのままの状態では、実際に分析データを活用する従業員や取引先の担当者が把握しにくい可能性があります。そこで、Looker Studioでレポートとしてわかりやすく可視化することで、誰が見ても分析結果を把握できるようになります。
Looker Studioの代表的な機能3選
Looker Studioには分析に役立つさまざまな機能が搭載されています。
- 分析結果の可視化
- 外部システムとの連携
- レポートの共有
Looker Studioを最大限に活用するためにも、このような機能の特徴を押さえましょう。
分析結果の可視化
Looker Studioの代表的な機能は、分析結果を可視化することです。数値だけでは内容がわかりにくい分析結果を、グラフや表などのビジュアル要素に落とし込めます。
簡易的な操作でレポートを作成できるのも特徴です。
例えば、グラフを表示する際は、ディメンションや指標などの要素をドラッグ&ドラッグのみで操作できます。プルダウンリストやチェックボックスなど、任意の項目を自由に設置できるため、柔軟性に優れるのも一つの特徴だといえるでしょう。
外部システムとの連携
さまざまな外部システムと連携できるのもLooker Studioの特徴です。
連携可能な外部システムには次のような種類があります。
- BigQuery:SQL言語でクエリを実行できるDWH(データウェアハウス)
- Googleアナリティクス:Webサイト用のアクセス解析ツール
- Google広告:リスティング広告やディスプレイ広告を配信できる広告プラットフォーム
- Googleスプレッドシート:クラウド上で利用できる表計算ソフト
- AppSheet:ノーコードで使えるアプリ開発プラットフォーム
など
マーケティングや営業、アプリ開発など、さまざまな領域の分析結果を可視化できるのが特徴です。
例えば、Googleアナリティクスと連携すると、Webサイトのアクセス数やユーザーの属性などの情報を、最も見やすい形でレポート化できます。本来であればCSVファイルなどを取り込む必要がありますが、ほとんどの外部システムにおいてワンクリックで連携が完了します。
レポートの共有
Looker Studioでは、作成したレポートを特定のユーザーやグループと共有できます。レポートそのものの閲覧・編集権限を設定するか、Googleアカウントで新たなユーザーやグループを招待するか、いずれかの共有方法が選べます。難しい操作が必要なく、クラウド上で即座に共有できるのが利点です。
他者と共有したレポートは、Looker Studioの管理画面上に一覧形式で表示されます。また、レポート名や内容などをもとに、共有したレポートを簡単に探せるのも特徴です。
Looker Studioを導入する5つのメリット
Looker Studioを導入することで生まれるメリットは次の通りです。
- 簡易的なBIツールを無料で導入できる
- 特別な知識や技術がなくても扱える
- Googleが提供する豊富なデータソースを利用できる
- デザインの幅が広い
- 自動更新なので手間がかからない
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
簡易的なBIツールを無料で導入できる
BIツールにはさまざまな種類が存在しますが、無料で利用できる製品は多くありません。
無料だからといって有料製品に機能が見劣りするわけではなく、ユーザビリティに配慮した設計や共同編集環境など、競合製品に勝るとも劣らない使いやすさを備えています。また、Googleが提供しているクラウド環境で安定して稼働できるのもポイントです。
Looker Studioのような無料ツールは、有料のものに比べて導入ハードルが低い点から、利用者数が多い傾向にあります。その分、ツールの使い方がわかるWeb上の情報や関連書籍のレパートリーが豊富です。ツールを使用するうえで不明点があっても、従業員が自力で問題を解決しやすいため、教育コストを抑えられます。
特別な知識や技術がなくても扱える
ノーコードで質の高いレポートを作成できるのもLooker Studioのメリットです。そのため、社内にエンジニアが不足している環境下でも、問題なくツールを利用できます。
Looker Studioでレポートを作成する手順は次の通りです。
- データソースを選択する
- テンプレートを選ぶ、またはいちからレポートを作成する
- ドラッグ&ドロップなどの操作でレポートの体裁を整える
- 作成したレポートを特定のユーザーやグループと共有する
このように特別な知識や技術がなくても扱えるのが特徴です。エクセルやGoogleスプレッドシートなどでデータを整理した経験があれば、より短時間で操作に慣れるでしょう。
Googleが提供する豊富なデータソースを利用できる
Looker Studioでは、さまざまなデータソースから分析データを抽出できます。Googleが開発しているデータソース(Google Connectors)だけでも20種類を超えます。また、パートナー企業が提供しているデータソース(Partner Connectors)は約900種類にも及びます。
Google Connectorsは、BigQueryやGoogleアナリティクス(GA4)、Google広告などが代表的です。
Partner Connectorsには次のようなツールの種類があります。
- Facebook Ads(Meta Ads)
- TikTok Ads
- Shopify
- WooCommerce
- Mailchimp
など
このような点から、Googleはもちろん、Google以外のサービスから取得した解析データを、自分の思うままにレポート化できます。各レポートのフォーマットを統一することで、誰が見ても即座に分析結果を把握できるでしょう。
デザインの幅が広い
レポートを可視化する際は、グラフや表などのさまざまな要素を配置します。視覚要素があれば、テキストのみのレポートに比べ視認性が高まるため、グラフや表などの種類の多さはBIツールを選ぶうえで重要なポイントとなります。
Looker Studioは数あるBIツールのなかでも視覚要素が充実しています。
代表的なものは次の通りです。
- グラフ(棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフ、面グラフなど)
- 表(装飾なしの表、棒付きデータ表、ヒートマップ付きデータ表など)
- スコアカード
- ピボットテーブル
- ツリーマップ
- Googleマップ・マップチャート
など
視覚要素が多いほど、分析データの内容に応じて柔軟にレイアウトを設計できます。
自動更新なので手間がかからない
作成したレポートの内部データは、データソースの情報と紐付いています。データソースの情報が更新されると、レポートのデータも更新されるため、手動で内容を書き換える必要がありません。常にレポートを最新の状態に保てるのがメリットです。
ただし、使用するデータソースによって更新頻度が設定されているため、ときには手動でデータを更新する場面も出てきます。
4つのステップからわかるLooker Studioの使い方
Looker Studioの導入から活用までの流れは次の通りです。
- Googleアカウントでログイン
- データソースの選択
- レポート作成
- レポートの共有
それぞれの流れに沿って使い方のポイントを解説します。
1. Googleアカウントでログイン
Looker Studioの公式サイトにアクセスし、[使ってみる]のボタンをクリックします。すると、Googleアカウントのログイン画面が表示されるので、メールアドレスとパスワードを入力してLooker Studioにログインします。
2. データソースの選択
レポートを作成するには、Looker Studioの管理画面から[空のレポート]をクリックします。
タソース)を選びましょう。また、独自のデータソースを保有している場合は、[マイデータソース]のタブから任意のデータを選ぶことも可能です。
データソースを選択すると、レポートの編集画面に該当するデータが表示されます。
3. レポート作成
編集画面に表示されたデータをクリックすると、グラフの表示形式や設定内容を変更できます。ディメンションや指標、行数などの細かい要素を設定しましょう。
データを追加したり、グラフを追加したりする場合は、画面の上部のメニューをクリックします。
その横にあるメニュー欄では、任意のテキストや画像、折れ線などを挿入できます。このようなさまざまな機能を活用し、独自のレポートを作成しましょう。
4. レポートの共有
作成したレポートは、編集画面右上の[共有]をクリックすると、特定のユーザーやグループと共有できます。
[ユーザーやグループとの共有]の欄に共有したいユーザーのGoogleアカウントを入力しましょう。[送信]をクリックすると、そのGmailアドレスにメールが届きます。
また、レポートそのもののアクセス権限を設定することも可能です。鍵のマークが付いた[制限付き]をクリックすると、レポートの公開内容を変更できます。
共有するユーザー数が多い場合は、レポートごとに権限を設定するのがおすすめです。
Looker Studioをより便利に利用するための方法3選
ここまではLooker Studioの基本的な使い方を紹介しましたが、より便利に活用する方法も存在します。以下でLooker Studioの利便性を高める使い方を、3つのポイントに分けて解説します。
レポートの期間を設定
レポート内にグラフや表などを複数表示する際は、一括で分析期間を設定するのがおすすめです。これにより、グラフや表などの視覚要素ごとに分析期間を設定する手間が省けます。
期間を設定するには、編集画面メニューから[コントロールを追加]をクリックします。プルダウンリストのなかから[期間設定]を選択してください。
任意の画面をクリックすると、[期間を選択]という項目が表示されます。
その状態で画面右側の[期間設定のプロパティ]から、[デフォルトの日付範囲(自動期間)]をクリックすると、カレンダーが表示されます。このなかで任意の期間を指定しましょう。
後は、期間を適用させたいグラフや表をクリックし、右側のプロパティ欄から[デフォルトの日付範囲 > 自動]を選択しましょう。
これで先ほど設定した期間が自動的にグラフや表に反映されます。
フィルタの活用
特定の条件を指定して分析結果を表示させる場合は、フィルタ機能を活用しましょう。例えば、Webサイトの特定のページに絞り込んでアクセス数を表示させたいなら、条件として「ページURL」を指定します。
フィルタを使用する際は、特定のグラフや表をクリックし、右側のプロパティ欄から[フィルタ > フィルタを追加]をクリックします。
フィルタをかける条件や値を設定します。
設定後は指定した条件や値のみを表すグラフ・表に変更されます。
Googleスプレッドシートとの連携
Looker Studioは、Googleサービスや外部サービスからデータを取得するだけでなく、Googleスプレッドシートに保存されたデータをインポートすることも可能です。売上データや在庫情報などをGoogleスプレッドシート上で管理している場合は、Looker Studioとデータを紐付けてレポート化すると良いでしょう。
Googleスプレッドシートのデータを読み込むには、レポートの新規作成時に表示されるデータソース選択画面で、[Googleスプレッドシート]を選びます。
後は、ほかのデータソースと同様にレポート画面を編集できます。
Looker Studioで問題が発生した際の3つの対処法
Looker Studioに不慣れな場合は、何らかのトラブルが発生する可能性も考えられます。そこで、問題発生時の対処法を2つの観点から解説します。
最新の情報が表示されない
レポートが自動更新されるLooker Studioですが、すべての情報がリアルタイムで更新されるわけではありません。そのため、必要に応じて手動で更新する必要があります。
手動更新の手順は次の通りです。
- Looker Studioのレポート一覧画面で更新したいレポートを開く
- 画面右上の3点リーダをクリックし、[データを更新]を選択する
Looker Studioでは、データソースごとに更新頻度が異なります。即座にデータを更新したいレポートがあれば、上記の手順で最新の状態にしましょう。
データセットの設定エラーが表示される
Googleスプレッドシートからデータを読み込む際は、画面上に[データセットの接続エラー]と表示されることがあります。この場合は、次のような手順で解決が可能です。
- データソースの横にある鉛筆マークをクリックする
- [接続を編集]を選択する
- 画面右上にある[再接続]をクリックする
再接続しても問題が解消しない場合は、Googleスプレッドシートのデータ上で問題が発生している可能性があります。ヘッダーの記載方法が正しいか、データの入力規則に反していないかといった点を確認すると良いでしょう。
Looker Studioを利用するなら Google Cloud の導入を検討しよう
Looker StudioはGoogle Cloudに搭載されているプロダクトの一種です。
Google Cloudとは、大規模なデータ分析基盤やAIを用いたシステムを構築できるクラウドプラットフォームです。100種類以上のプロダクトをクラウド上で利用できます。
データ分析基盤を構築するためには、収集したデータを格納するためのデータレイクや、分析データへと加工・抽出・格納するDWH(データウェアハウス)などが必要です。Google Cloudには、基盤構築に必要なほぼすべてのプロダクトが搭載されています。
Looker Studioは、データ分析基盤の最終プロセスである、分析データの可視化の役割を担います。とはいえ、データを可視化するためには、まずデータを収集し、それを分析する必要があるため、Google Cloudのような一気通貫のサービスが必要です。
すでに何らかの分析ツールを使用しているのであれば、Looker Studio単体でも利用できます。ただし、組織全体で大規模な基盤を構築し、全社的にデータを活用するような場面では、Google Cloudの導入を検討するのがおすすめです。
Looker Studioを導入して社内に蓄積されたデータを最大限に活用しよう
Looker Studioを活用すれば、数値が中心となる分析データをわかりやすく可視化できます。グラフや表、地図といった形で、さまざまな視覚要素を盛り込めるため、チーム内のメンバーや取引先の担当者が見ても、即座に分析データを把握できるでしょう。
Looker Studioは単体製品として無料で利用できるほか、Google Cloudを導入し、そのなかの一製品として活用することも可能です。ただし、Looker StudioのようなBIツールを使いこなすには慣れが必要なので、まずはGoogleアナリティクスやGoogleスプレッドシートと連携しつつ、操作に馴染むことから始めましょう。
また、Looker Studioとあわせて、可視化したレポートからインサイトを得られるLookerを活用するのもおすすめです。LookerとLooker Studioの違いについては、以下の資料で詳しく解説しています。両者の違いをしっかりと理解することで、分析データを効果的に活用できます。
- カテゴリ:
- Google Cloud(GCP)
- キーワード:
- データポータル