皆さんの会社では、社内ポータルサイト(社内イントラネット)をどのタイミングで見直ししていますか?年に1回というところもあれば、中長期経営計画のタイミングで見直すという会社など、様々かと思います。
近年、テレワークなど働く環境が大きく変化したことで、インターナルコミュニケーションの必要性が増し、社内ポータルサイトの見直しの頻度も高まっています。
本稿では先日、弊社電算システム主催で開催したウェビナー「アナリティクスを活用した社内ポータルサイト改革」にご登壇いただいた、デジタルマーケティングを専門としてご活躍されております Aマーケティング合同会社 CEO 平岡 謙一 様に、アナリティクスを使った社内ポータルサイト改善についてお話を伺いました。
自社運営サイトにて徹底したテストを繰り返し、売るための仕組みを研究。そこで培ったノウハウを活かし、クライアント企業に提供し事業成果に貢献している。著書に「Yahoo!アクセス解析マスターガイド(共著)」「ウェブ解析士協会公式テキスト(共著)」など数冊。
「見られていない」「使われていない」その大きな原因は?
− 社内ポータルサイトを作成したけど、社員に「見られていない」「使われていない」といった課題を多く聞きます。その場合、どこからまず手をつけていけば良いでしょうか?
平岡:この場合、要因は大きく2つあります。「社員がサイトの存在を知っているか」と「社員に見せたいコンテンツを配信しているか」です。
以前、勤めていた会社で社内ポータルサイトがあったのですが、正直私を含めて周りのエンジニアのほとんどは、サイトの存在をあまり知りませんでした。出退勤や有給申請を行うための仕組みだと思っていたら、社長のメッセージ、社員が交流するための掲示板等も、実はあったということがあとからわかりました。私のようにサイトの存在を知らずに、新卒で入ってそのまま働いていれば、あとに続く後輩もその存在を知らずに働くことになります。そのため、サイトの社内周知はちゃんと徹底しているかは大事かと思います。
コロナウイルスの影響により取材は Google Meet のオンラインで実施しました。
(左)平岡 謙一 氏 /(右)LumAppsカスタマーサービス 本名 香織
二つ目のポイントは、「独りよがりの情報発信になっていないか」、という点です。社員の目線になって、本当にそのコンテンツを必要としているかどうか見直すのが大事です。コンテンツ自体、社員が見たいものでなければ、一生懸命サイトに配置してプッシュ型で情報発信しても、一瞬だけ見られて、すぐに見られなくなってしまいます。
その条件が整ったうえで、アナリティクスを使ってサイトのUIや更新頻度、情報のフォーマット(テキスト、動画等)をどうするのか、といった議論になります。
社内ポータルは「量」と「質」の両面から分析
− 実際にアナリティクスを使って、いよいよ社内ポータルサイトを改善していきたいのですが、見るべきポイントを教えて下さい。
平岡:特定のコンテンツを投稿したときに、「量」と「質」という観点から分析するのが良いかと思います。「従業員のうちどのくらいの人が見てくれているのか」「どの部門の人がよく見てくれているのか」という「量」的な側面と、「ちゃんと最後まで見てくれているのか」「それとも一瞬見ているだけなのか」といった「質」的な側面の両方を分析することで、次のアクションが具体的に見えてきます。
− 具体的に社内サイト運用のKPIは、どのように設定すれば良いでしょうか?
平岡:社内ポータルサイトの段階によってKPIを変更して良いと思っています。例えば、従業員に社内ポータルサイトを周知徹底して、ポータルサイトを育てていく段階であれば、「ページビュー数」や「ユニークユーザー数」がKPIになりますし、もうすでに十分な数の人が見ていて、あとは行動の質の部分が課題であれば、「滞在時間」や「精読率」がKPIとなります。
そして、最終的には各企業ごとに社内ポータルサイトを構築した目的があるかと思います。例えば従業員の満足度であったり、社内の合意形成、経営理念の浸透など、何かしらゴールと目的を設定しているはずです。その目的とサイトの閲覧数と質がどのように相関しているのか。最終的には、目的と相関のある要素をみつけて、KPIに定める。ECサイト等と同じ考え方です。
社内ポータルサイトを始めた段階では、いきなり従業員の満足度と相関を探そうとすると、不確定要素が大きくなって分からなくなるでしょう。各企業の社内ポータルサイトの段階や課題に合わせて、KPIを変えて運用していくのが良いです。まだ誰も社内ポータルを見ていなく存在を知らないのであれば、「ユニークユーザー数」をKPIとして、まず多くの人に見てもらいましょう。そして、もう十分にサイトを見られているようであれば、次に「滞在時間」や「読了率」といったKPIが良さそうです。
− よく社内ポータルサイトに、「社長のメッセージ」を掲載している企業が多いですが、こういった社長メッセージを届けたいといった場合も、同じ考え方でしょうか?
平岡:そうですね。基本は同じ考え方になります。社長のメッセージを掲載した目的に合わせてKPIを設定していきます。例えば、全社員に向けたメッセージであれば「ユニークユーザー数」で見ますし、実際に読んだあとの行動を大事にするならば、社長のメッセージの下に社長や経営陣に向けた意見欄を設けて、その送信数をKPIにするのも良いかもしれません。
継続的にアナリティクスを使ってサイト改善するポイント
− KPIについてどのくらいの頻度でウォッチしていけばよいでしょうか?
平岡:まず会社の規模感によって違ってきますね。従業員数が何千という規模で日々のデータ量が多い場合は、1日単位でも気づきが得られるので、毎日定点観測で見ても気づきが得られるでしょうし、従業員が100人くらいでデータ量が少ないようであれば、1週間単位で見ていくように調整すれば良いと思います。
また、役割によっても違ってきます。社内ポータルサイトの担当者で現場に近い方であれば、短い単位でKPIを確認し、施策をどんどん積み重ねる必要があるでしょう。、またマネジメントレベルには月に1回、サイトの傾向を提示し、KPIを達成できるよう一緒にアクションを決めていくというやり方でしょうか。
−継続的に改善を進めていくうで、平岡さんが大事だと感じる点について教えて下さい。
平岡:一番重要なのは、改善を実施して1〜2ヶ月で、すぐに改善の効果を期待しないことです。一般的にWebサイトでちょっとの変化があっても、そんなに影響は感じられないと言われています。最低でも半年、長ければ1年くらいのプロジェクトというつもりで、継続して改善を進めていくことが良いと思います。例えば、サイトのKPIとして「ユニークユーザー数」を設定することになったら、朝礼のときにサイトを告知して「ユニークユーザー数」が増えたのか、増えなかったのか。会社の全従業員に対して社内通信を送って、数が増えたのか、増えなかったのか。と日々記録を取りながら、どの施策をしたらKPIにどのような反応があったのか、焦って効果を追わずにコツコツやりきる、その覚悟が重要になってきます。
まとめ
前編では、社内ポータルサイト改善の考え方を中心にお話いただきました。もし、「見られていない」、「使われていない」といった課題がありましたら、まずは現状把握からスタートしてみてはいかがでしょうか?
Google が提供している Google Analytics のような無償のアクセス解析サービスをありますし、Webサイトに関して初心者であれば、簡単に使いこなせるツールとして、、Google Workspaceや Microsoft 365 と連携できる社内ポータルサイトツール LumApps のように、管理者画面にアナリティクスのダッシュボードが埋め込まれたものもあります。埋め込まれているタイプは、特に複雑な設定が不要なため、社内コミュニケーションを担当される部署の方でも、簡単にアナリティクスの集計結果を把握いただけます。ぜひ気になる方はご確認ください!
LumApps アナリティクスダッシュボード画面
後編では、実際にアナリティクスを使って、サイトを改善するときに陥いりやすい落とし穴や、ぜひ気をつけていただきたいポイントについてお話する予定です。後編も是非お楽しみください。