社内に蓄積された顧客情報や販売データ、在庫情報などを活用・分析することで、売上の向上や意思決定のスピードアップなどにつなげられます。しかし、一概にデータ分析といっても、その種類はさまざまです。種類ごとに役割が異なるため、効果的なデータ分析には適切な手法選択が欠かせません。
そこで本記事では、データ分析手法を9つに分け、それぞれの特徴や活用方法を解説します。また、各手法を効果的に使用するポイントやデータ分析の手順も紹介しています。社内のデータを最大限に活用したい方は、ぜひ参考にしてください。
データ分析の手法9選
データ分析の手法には次のような種類があります。
- 相関分析
- 因子分析
- 主成分分析
- 回帰分析
- クロス集計分析
- 決定木分析
- クラスター分析
- デシジョンツリー分析
- ABC分析
それぞれの特徴や活用方法について詳しく解説します。
相関分析
相関分析は、二つの量的変数間の相関係数をもとにした分析手法です。データ間の関係性を探ることで、これまで気付かなかった要素同士のつながりを発見できるほか、関連する要素をグループ化することでデータを解釈しやすくなります。
相関係数は-1から1の範囲を取り、1に近いほど強い正の相関、-1に近いほど強い負の相関を示す指標となります。相関係数の絶対値が0.8以上の場合、強い相関があると考えるのが一般的です。
ただし、相関係数は外れ値の影響を受けやすい点には注意しましょう。また、相関関係が必ずしも因果関係を示すわけではありません。このような注意点を理解したうえで適切なケースで活用することが大切です。
因子分析
因子分析は、複数の変数に影響を与える隠れた要素(共通因子)を特定するための手法です。因子とは、特定の結果を引き起こす原因となる要素を指します。そして、共通因子とは複数の変数に共通して影響を与える因子のことです。
例えば、学生の学力調査を行った結果、数学や英語のテスト得点、学習時間といったデータを取得できたとします。これらの変数は、学生の学力や学習態度に関連していると考えられます。
複数の変数(テスト得点や学習態度)が、共通の因子によって支配されていることがわかるため、結果としてデータを単純化して、背後にある要因を把握することができます。変数同士の関連性、あるいはそれらの背後に潜む共通の因子を明確にすることが因子分析の目的です。
主成分分析
主成分分析は、複数の変数を組み合わせて、少数の変数に縮約する手法です。この手法は因子分析と同様に、データを要約するための代表的な手法の一つです。変数を組み合わせることを「変数の合成」と呼び、その結果生まれた新しい変数を「主成分」といいます。
例えば、複数の学生がテストで以下のような点数を取ったとします。
- 学生A:数学90点、英語80点、科学85点
- 学生B:数学70点、英語60点、科学75点
- 学生C:数学85点、英語90点、科学95点
このデータには3つの変数(数学・英語・科学)があり、各学生の得点が示されています。主成分分析は、このデータから重要な特徴を抽出し、情報を失わずに次元を縮約します。
主成分分析を行う際は、まず各変数を標準化した後、各変数間の相関を示す共分散行列を計算します。そして、共分散行列から固有ベクトル(主成分)と固有値(それぞれの主成分の重要度)を算出することで、どの主成分が最も重要か、またどの方向にデータが広がっているかが明らかになる仕組みです。
上記の例でいえば、最初の主成分は「数学と科学のスコアに強く関連している」といった結果、2番目の主成分は「英語と数学のスコアに関連している」といった結果を得られる可能性があります。このようにして3つの科目のスコアを二つの主成分に縮約し、学生の成績を簡潔に表現できます。
回帰分析
回帰分析とは、分析対象のデータとほかのデータとの関連性を明らかにするための分析手法です。回帰分析には、単回帰分析と重回帰分析の2種類があります。
単回帰分析では、広告費と売上高、学習時間とテストの成績といった項目同士の関係を分析できます。これらはすべて、1つの独立変数(広告費、学習時間)が1つの従属変数(売上高、テストの成績)に与える影響を分析する単回帰分析の典型的な例です。
一方の重回帰分析では、住宅価格に対する場所や面積、従業員パフォーマンスに対する勤務時間や経験年数といった組み合わせで分析を行えます。これは複数の独立変数が1つの従属変数(住宅価格、従業員パフォーマンスなど)に与える影響を同時に分析する重回帰分析の例です。
デシジョンツリー分析
デシジョンツリー分析は、複数の要因と結果の関係を明らかにし、影響力の大きい要因を階層的に特定する手法です。この分析を通じて、どの要因が最も影響を与えているのかといった点や、要因同士の組み合わせを把握できます。
小売業やECサイトでは、顧客が商品を購入するかどうかを予測するためにデシジョンツリー分析を使用できます。例えば、顧客の年齢や性別、購入履歴、商品の価格、サイトでの滞在時間などを入力変数として、最終的に「購入する」または「購入しない」といった意思決定を予測します。デシジョンツリーは、どの要因が購買決定に最も影響を与えるかを示せるのが特徴です。
そのほか、既存顧客の解約予測や製品の不良判定、ローン審査などでもデシジョンツリー分析が活用されています。
クロス集計分析
クロス集計分析は、収集したデータを属性別に分類して集計する分析方法です。アンケート結果を回答者の年齢や性別、居住地などにもとづいて集計する際によく使用されています。クロス集計を行うことで、属性ごとの習慣や好みが明確になり、分析結果をプロモーション施策などに活用できます。
クロス集計の結果は曲線グラフで表現するのが一般的です。例えば、特定のアンケートを年代別に集計した場合、縦軸に時間、横軸に年代といった形で設定します。
決定木分析
決定木分析とは、クロス集計を繰り返すことによって複数の要因を考慮し、データを分類して関連性を明らかにする手法です。主にマーケティング分野で、ターゲット層を特定するために活用されます。
顧客の購買行動を予測するために決定木分析を使用する場合、要因として年齢や収入、職業、購買履歴などが考慮されます。分析によって、「30代以上の高収入の顧客が特定の製品を購入する確率が高い」といった予測が導き出される仕組みです。
そのほか、サービスの利用料金や利用頻度から既存顧客の解約予測へと発展することもできます。仮に高い利用料金を支払っているものの、サービスの利用頻度が低い場合は、将来的に解約する可能性が高いと判断できます。
クラスター分析
クラスター分析とは、データ間の近接度を数値化し、その数値に基づいてデータをグループ化することで、大量のデータにおける関係性を明らかにする手法です。この分析方法には、大きく分けて階層クラスター分析と非階層クラスター分析の2つの種類があります。これらを活用することで、データをグループ化し、組織のマーケティング戦略に有益な方向性を導き出せます。
例えば、顧客データをもとに購入頻度や購入金額、製品の種類などから顧客グループを分類する方法が代表的です。これにより各グループに対して異なるマーケティング戦略を適用し、効果的にターゲティングすることが可能になります。頻繁に購入する高額な顧客と少額でたまに購入する顧客を分けて、異なるプロモーションを展開できます。
ABC分析
ABC分析とは、顧客や商品を重要度に応じて、A・B・Cの3つのカテゴリに分類する分析手法です。この手法は「重点分析」とも呼ばれ、主に在庫管理や販促活動において活用されます。重要度や優先度を明確にすることで、より効果的な施策を立案することが可能です。
例えば、企業が販売している商品やサービスを、売上金額にもとづいてA(最も重要)、B(中程度)、C(最も重要でない)という3つのカテゴリーに分類できます。Aカテゴリーには売上の80%を占めるトップ20%の製品を、Bカテゴリーには中程度の売上を持つ製品を、Cカテゴリーには売上が少ない製品をといった形で分類を行います。重要な商品やサービスにリソースを集中できるのがメリットです。
データ分析手法を効果的に活用する際の4つのポイント
ここまでに紹介した分析手法を最大限に活かすには、いくつか押さえておくべきポイントが存在します。それぞれのポイントについて詳しく解説します。
データ分析の目的を明確にする
データ分析を始める前に、まず解決すべき課題を明確にし、目的をはっきりさせましょう。社内には商品の販売履歴や顧客情報など、さまざまなデータが蓄積されています。しかし、解決したい課題が明確でなければ、せっかくデータを分析しても、その結果を有効に活用できない可能性があります。
データ分析は、意思決定や戦略立案を支援する手段の一つであり、それ自体が目的ではありません。まずは取り組むべき課題を特定したうえで、どのような分析が必要か、対象となるデータが十分にそろっているか、得られた結果をどう活用するかといった点を事前に決めることが重要です。
データ分析に客観性を持たせる
データ分析を行う際には、データ内の因果関係や規則性を正確に見極めることが重要です。主観的な仮説や特定の分析手法に頼りすぎると、かえってその後の判断や結果に偏りが生じる可能性があります。また、偏った仮説や分析手法を用いると、可視化されていない課題や問題を見落とすリスクも高まります。
そのため、分析対象となる問題への理解を事前に深め、目的に適した手法を選択することが不可欠です。適切な手法を選択することで分析結果の精度が高まり、方向転換を求められた場合でもスムーズに対応できるでしょう。
分析後に適正な評価を行う
分析が完了した後は結果の評価を行いましょう。評価が必要なのは、その時点では導き出された結論が正しいかどうか判断できないためです。
分析後の評価では、選択した手法に問題がなかったか、収集したデータが適切だったかといった点を確認します。ただし、分析を担当した人がそのまま評価を行うと、主観が入り客観的な判断が難しくなる可能性があります。そのため、分析に直接関わっていない第三者に評価を依頼するのも有効な方法の一つです。
分析に役立つツールを活用する
ツールやシステムを活用すると、分析効率や精度の向上といったメリットが生まれます。分析に役立つツールには次のような種類があります。
- BIツール:データソースから抽出したデータを分析・可視化するためのツール
- データレイク:Webやアプリケーションから収集したローデータを一元管理できるツール
- データウェアハウス:加工済みのさまざまなデータを一元管理できるツール
- ETL:収集したローデータを分析用に加工するためのツール
どのようなツールを導入すべきかは現状の課題や分析の目的によって異なります。例えば、すでにデータ収集の環境や仕組みが整っている場合は、分析や可視化に特化したBIツールが向いています。一方でビッグデータを取り扱う必要があり、データの活用範囲も複数の部門やプロジェクトにまたがるようだと、さまざまなツールを導入してより大規模な分析基盤を構築することが重要です。
データ分析を行う際の手順
データ分析を行う手順は次の通りです。
- 目的の明確化:分析の方向性を定める
- 仮説の設定:検証すべき仮説を立てる
- 分析手法の決定:最適な手法を選択する
- データの収集・整形:必要なデータを集め、整理する
- 分析の実施:収集データをもとに分析を行う
なかでも仮説設定は、データ分析を的確に進めるための重要なステップです。ただし、仮説は無数に考えられるため、すべてを検証するのは現実的ではありません。そのため、優先順位を付け、より問題解決に直結する仮説を選定することが重要です。経験や過去の実績を基に仮説を設定することも有効ですが、自信がない場合はデータ分析の過程で精査しながら優先順位を決定すると良いでしょう。
また、必要なデータの種類や量は分析手法や目的によって異なるため、効率的なデータ収集が求められます。正確な分析結果を得るためにはデータ整形が欠かせないため、使用できないデータの精査や重複統合、フォーマットの標準化、古いデータの更新などを行い、分析に適した状態に整えることが大切です。
効率的なデータ分析にはGoogle Cloudが役立つ
さまざまな手法を使って効率良くデータ分析を行うには、ツールやシステムを活用するのがおすすめです。なかでも、さまざまなGoogleサービスが搭載されたGoogle Cloudの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Google Cloudとは、Googleが提供するクラウドサービスのことです。Googleの各種サービスで使用されているデータセンターやサーバー基盤といったインフラ、さらには分析・AI技術などをクラウド上で手軽に活用できます。
例えば、ストレージサービスのCloud StorageやデータウェアハウスのBigQuery、データの統合に役立つCloud Data Fusionといったサービスが代表的です。それぞれのサービスを組み合わせて活用できるため、大規模な分析基盤の構築に対応できるのもメリットです。
それぞれの特徴を押さえてデータ分析手法を最大限に活用しよう
データ分析手法にはさまざまな種類がありますが、それぞれ特徴や役割が異なります。そのため、まずは現状の課題や目的を明らかにしたうえで、自社にとって最適な手法を選択することが重要です。最適な手法をもとにデータ分析を行うことで、意思決定のスピードや質の向上といった恩恵を受けられるでしょう。
電算システムでは、Google Cloudのスターターパックサービスや技術コンサルティングサービスなどを提供しています。Google Cloudを活用したデータ分析基盤の構築方法や、データの活用方法などに関して、プロの観点からアドバイスを行っています。
本格的なデータの活用や分析を考えている方は、まず以下の資料に目を通してみてください。データ分析の手法や手順、Googleサービスを用いた分析のポイントなどを紹介しているので、慣れない方でも素早くデータ活用方法を理解できます。資料は無料でダウンロードできるため、さっそく取得してみてはいかがでしょうか。
監修者

<保有資格>
・Professional Data Engineer

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- Google Cloud(GCP)
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- データ 分析 手法