Google Cloudには、AIモデル開発やデータベース構築などに関する幅広いサービスが搭載されています。しかし、その分、導入するサービスの数が多くなるほど、管理工数が増えやすいデメリットもあります。
このような際におすすめなのが、今回紹介するGoogle Cloud コンソールです。Google Cloud コンソールでは、サービスごとの使用状況を可視化したり、アカウントやセキュリティを一括で設定したりできる機能があるため、管理業務の効率化やセキュリティレベルの向上といった効果が見込めます。
本記事では、Google Cloud コンソールの特徴や機能、使い方、料金などを詳しく解説します。これからGoogle Cloudを導入したいと考えている方はもちろん、すでに導入済みの方にもメリットがあるため、ぜひ参考にしてください。
Google Cloud コンソール(旧GCPコンソール)とは
Google Cloudではさまざまなクラウドコンピューティングサービスが提供されており、ベータ版で提供されているものも含めると、その数は122種類にも及びます。そのなかには、AIモデルの構築と機械学習、データ分析、データベース構築といったサービスが含まれています。
これらのカテゴリにある細かいサービス群をすべて一元的に管理するための管理インターフェースが Google Cloud コンソールです。Google Cloudには「プロジェクト」と呼ばれる概念があり、GCE(Google Computing Engine)やGAE(Google App Engine)などで利用するリソースは、GoogleカレンダーやGoogleマップなどで利用するGoogle APIはすべてプロジェクトと紐付けられ、プロジェクト単位での課金やユーザー管理を行うことができます。Google Cloud コンソールからはこのプロジェクトを統合的に可視化、管理することができるというわけです。
一見して管理インターフェースが複雑のように思えますが、プロジェクトごとに課金状況可視化やユーザー管理が個別に行えるため、複数のクライアント向けにプロジェクトを推進するような開発者にとっては、管理負担が大幅に軽減されます。
Google Cloud コンソールに搭載されている8つの機能
Google Cloud コンソールには、次の8つの機能が搭載されています。
- IAM
- Google Cloud Shell
- 請求情報の確認
- アクティビティストリーム
- マーケットプレイス
- 診断
- Cloud Hub
- 言語のローカライズ
それぞれの機能の特徴や仕組みを紹介しつつ、Google Cloud コンソールを使ってどのようなことができるのかを解説します。
IAM
IAMは「Identity Access Management」の略であり、プロジェクトにアクセスできるユーザーの定義と、ロール設定を行うことが可能です。AWS(Amazon Web Service)を使用したことがある方は、AWS IAMとほとんど同じものだと考えて良いでしょう。
ロールは標準で用意されているもののみが利用可能であり、カスタマイズはできません。大体の目的に必要十分なロールが事前に定義されています。
Google Cloud Shell
Google Cloud Shellでは、Google Cloud SDKやGoogle App Engine SDKなどがビルトインとして用意されたLinux環境を使用することができます。このGoogle Cloud Shellには、画面上部の起動アイコンをクリックすることでアクセス可能であり、5GBのストレージが使用できるLinuxマシンとなっています。
PythonやJavaなど、GAEでサポートされているランタイムも入っているので、Google Cloud Shellだけでコードを走らせることも可能です。
請求情報の確認
Google Cloud コンソールから直近の請求書明細を確認することができます。プロジェクトごとに細かく課金詳細が確認できるため、予算を組み直し、予定外の費用を削減することも可能です。
Google Cloudの各種サービスは、基本的に従量課金制となっています。利用した分だけ料金が請求されるため、ときには想定外の出費になってしまうことも考えられます。その点、定期的に料金の明細を確認しておけば、想定外に発生する高額請求のリスクを避けられるでしょう。
アクティビティストリーム
クラウドアプリケーションにて行われているすべての活動を1ヶ所で把握することができ、チームメンバーがプロジェクトに追加した内容を確認したり、問題を突き止めたり、アクセス履歴を確認したりもできます。
マーケットプレイス
数回のクリックだけで各種インフラ、OS、データベース、ブログ、CMS、デベロッパーツール、ごくシンプルに起動できるその他のソリューションなど、各種ソリューションの検索・連動・管理を実行することができます。
診断
本番環境の問題を素早く突き止めることができ、ログビューアではすべてのインスタンスから集めたログを素早く検索したり、絞り込んだりすることができます。Strackdriver Traceは詳細なレイテンシレポートを作成するため、アプリケーションの処理速度を高速にし、使用するリソースを削減するのに役立ちます。さらにStrackdriver Debuggerを使用することで、任意のソースや行番号でスタックトレースやローカル変数を表示できます。
Cloud Hub
Cloud Hubとは、Google Cloudの各種サービスをアプリケーションとして登録することで、アプリケーションそれぞれの状態を一目で確認できる機能です。また、アプリケーション内で実行した処理に関してチャットで質問したり、失敗の原因に関してアドバイスを得たりすることもできます。
例えば、アプリケーションのデプロイに失敗した場合、App Design Centerにデプロイの状況が一覧表示されるため、その情報から原因の特定や対応策の検討を行えます。また、エラーの発生状況がアプリケーション単位で表示されるため、サービスごとにログビューアを何度も遷移する必要がありません。複数の事象同士の関連性を見出しやすいのもメリットだといえるでしょう。
言語のローカライズ
日本語、英語、ポルトガル語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、韓国語、中国語(繁体字)でGoogle Cloud コンソールを使用できます。
Google Cloud コンソールを利用する3つのメリット
Google Cloud コンソールを利用すると、次のようなメリットが生まれます。
- Google Cloudを安全かつ適正に運用できる
- 幅広い種類のサービスを効率良く管理できる
- 開発環境を整えやすい
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
Google Cloudを安全かつ適正に運用できる
Google Cloudに搭載されているサービスはすべてクラウド形式なので、場所や端末を問わずに利用できる利便性に特徴があります。その反面、常にインターネットに接続された状態でサービスを利用することから、不正アクセスや情報漏洩といったセキュリティリスクが存在するのも事実です。
このような状態でも、Google Cloud コンソールを活用することで、各種サービスを安全かつ適正に利用できます。
例えば、Google Cloud コンソールに搭載されているIAMでは、サービスごとのユーザーのロールやアクセス権を設定できるため、不正アクセスや内部不正のリスクを抑えられます。また、アクティビティストリームに蓄積されたログを定期的に監視することで、怪しい動きがあった場合でも即座に検知することが可能です。
幅広い種類のサービスを効率良く管理できる
Google Cloudには100種類以上のサービスが搭載されています。特に、さまざまなサービスを活用する大企業の場合、一つひとつ環境設定を行ったり、アクセス権限を調整したりするのは、膨大な手間がかかる点から現実的とはいえません。
その点、Google Cloud コンソールであれば、幅広い種類のサービスを利用する場合でも一元管理できるメリットがあります。プロジェクト単位で各種サービスを登録したうえで、アカウントやアクセス権限、セキュリティはもちろん、支払情報やAPIなども一括で設定可能です。Google Cloudの各種サービスを一元的に管理することで、属人化の抑制や業務効率化といった効果につながります。
開発環境を整えやすい
本来、自社独自のシステムやアプリケーションを開発する際は、ハードウェアやミドルウェア、ソフトウェアといった環境を整えなければならず、手間やコストがかかります。一方、Google Cloud コンソールに搭載されたGoogle Cloud Shellを利用すれば、Google Cloud上で手軽に開発環境を構築できます。
Google Cloud Shellは、普段使っているWebブラウザからアクセス可能なLinux開発環境です。システムやアプリケーションの開発者がよく使用するプログラミング言語(PythonやNode.jsなど)や、コマンドラインツール(DockerやMinikubeなど)が標準搭載されています。
Google Cloud コンソールを利用すると、このGoogle Cloud Shellにワンクリックでアクセス可能です。難しい操作が必要なく、かつ手軽に開発環境を整えられるのは、Google Cloud コンソールを利用する大きなメリットだといえるでしょう。
Google Cloud コンソールの使い方
Google Cloud コンソールを利用する手順は次の通りです。
- プロジェクト作成
- プロジェクト情報の確認
- 各種機能の利用
手順ごとの進め方やポイントを詳しく解説します。
1. プロジェクト作成
Google Cloud コンソールの管理画面にアクセスします。すでにGoogleアカウントにログイン済みの場合は、即座に管理画面が表示されます。未ログイン状態の場合、Googleアカウントのログイン画面が表示されるので、ログインID(Gmailアドレス)とパスワードを入力しましょう。
管理画面にアクセスすると、まずはプロジェクトを作成します。ウェルカムページに表示されている[プロジェクトを作成または選択]をクリックしてください。

画面右上の[新しいプロジェクト]をクリックします。

プロジェクト名と保存場所(組織やフォルダなど)を設定し、[作成]をクリックします。

プロジェクトを作成すると、今後はプロジェクト単位でアカウントやアクセス権限、サービスの利用状況などを設定・確認できます。プロジェクトは複数作成でき、管理画面上部の[プロジェクトを選択]から切り替えられます。

2. プロジェクト情報の確認
プロジェクトを選択した状態で、ウェルカムページから[ダッシュボード]をクリックします。

すると、プロジェクトの情報や各種サービスの稼働状況、APIのリクエスト数などを確認できます。

[リソース]の項目内に表示されたサービス名をクリックすると、サービスごとの使用状況を確認できます。例えば、Compute Engineであれば、作成したVM(仮想マシン)の数やVMごとのCPU使用率、ディスク使用率、インスタンスグループの数などが表示される仕組みです。

また、[モニタリング]の項目では、オリジナルダッシュボードの作成やアラートポリシーの設定を行えるほか、各種サービスのログやアラートの表示件数などの情報を確認できます。

3. 各種機能の利用
Google Cloud コンソールには、Cloud HubやIAMといったさまざまな機能があります。Cloud Hubの機能を利用する際は、ウェルカムページから[Cloud Hub]をクリックします。

「Cloud Hubへようこそ」という画面が表示されるので、まずはアプリケーション管理用のフォルダとアプリケーションを作成しましょう。

そのほかの機能は、Google Cloud コンソールのナビゲーションメニュー内に表示されています。

[IAM]や[APIとサービス]、[課金]など、目的に応じて項目をクリックしましょう。また、ナビゲーションメニュー内には、[Compute Engine]や[Kubernetes Engine]など、Google Cloudの各種サービスも表示されています。それぞれのサービス名をクリックすると、概要や使用状況、設定内容などを確認できます。
Google Cloud コンソールの料金
Google Cloud コンソールはそもそもGoogle Cloudに付属している管理インターフェースなので、Google Cloud コンソールを利用するにあたって費用を支払う必要はありません。ただし、Google Cloud を利用するための費用はもちろん必要です。そこで朗報なのが、Googleでは現在、これから Google Cloud を使ってみたいと考えているユーザーに対して、無料トライアルを提供しています。
その内容が12ヵ月間、300ドルの無料クレジットであらゆるGoogle Cloudプロダクトを試用できるというものです。しかも、無料トライアルが終わってもAlways Freeプロダクトによって、トライアル期間終了後でも次のようなサービスは無料で使用できます。
- GAE(Google App Engine):
スケーラブルなウェブアプリケーションと、モバイルバックエンドを構築するためのプラットフォーム - Google Cloud Firestore:
スケーラビリティの高いNoSQLデータベース - GCE(Google Computing Engine):
スケーラブルかつ高いパフォーマンスを提供する仮想マシン - Google Cloud Storage:
高性能かつ高信頼性のストレージを手頃な価格体系で、あらゆるストレージ要件に対応できる - Google Kubernetes Engine:
Googleが管理するKubernetesクラスタを使用し、ワンクリックでコンテナオーケストレーションを実現
Google Cloudの特徴や機能、使い方などに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
Google Cloud コンソールを使って効率的な運用を
Google Cloudの各種サービスを利用する際は、あわせてGoogle Cloud コンソールを活用することをおすすめします。Google Cloud コンソールには、利用環境を可視化したり、アカウントを一元管理したりできる機能が含まれているため、管理工数を大幅に削減することが可能です。
Google Cloud コンソールは、Google Cloudのアカウントを保有していれば無料で利用できます。手軽にアクセスできるメリットがあるにもかかわらず、利用すれば業務効率化や属人化の抑制、安全性の向上といったさまざまな利点をもたらすのが魅力です。普段からGoogle Cloudを業務で利用している方は、この機会にGoogle Cloud コンソールにも着目してみてはいかがでしょうか。
電算システムでは、Google Cloudのスターターパックサービスや技術コンサルティングサービスなどを提供しています。Google Cloudを活用したデータ分析基盤の構築方法や、データの活用方法などに関して、プロの観点からアドバイスを行っています。「Google Cloudを活用したいが具体的なイメージが湧かない」といったお悩みを抱える方は、ぜひ電算システムへと気軽にお問い合わせください。
監修者
<保有資格>
・Professional Data Engineer
- カテゴリ:
- Google Cloud(GCP)
- キーワード:
- gcp コンソール(gcp console)

