学校における働き方改革に、即効性のある特別な良い方法があるわけではありません。従来の働き方が長年に渡って身に染み付いている場合には、改革する意味さえも疑問に捉えられることも多いでしょう。しかしながら、昨今のGIGA スクール構想に伴って、学校の ICT 環境も大きく様変わりしました。共有がしやすかったり、調整がしやすかったり、やり直しが効くといったICTの特性をうまく生かすことで、時間短縮や業務の効率化を図ることができます。そこで今回は、教師の働き方の改善に役立つ Google Workspace for Education の利用方法についてご紹介します。
学校における働き方改革の糸口を探す
働き方改革が声高に叫ばれることになった背景には、常態化した教師の長時間労働があります。いくつかのデータを紐解いてみると、生徒たちに向き合う時間が取れずに書類の山と格闘したり、目的が曖昧な会議が積み重なって教材研究の時間が削がれたりなど、教師が本来行うべき業務とは別の作業に多くの時間が割かれている実態が浮き彫りになりました。
長時間労働によって、過労死が続出したり精神疾患者が多発するなど教師の健康に影響が出たり、疲れで上手に授業を展開できなかったり、クリエイティブな活動を充分に行えないなど教育活動そのものに悪影響が出ているほか、職業としての教師の魅力低下といった事態が引き起こされています。改善は喫緊の課題です。
まずは、日常業務を見直すことから始めることが何よりの第一歩です。とはいえ、一言で学校での日常業務といっても、授業や校務などさまざまな領域があります。どこから手をつけるのがよいのでしょうか?
先日、弊社主催のセミナーで登壇いただいた高知県の土佐塾中学校・高等学校の野崎浩平教諭は、完全にペーパーレス化が進んだ同校での日常を「ストレスレス」と表現し、以前に比べて「紙が溜まらない・紙と戦わない(PDF化する手間削減)・紙に待たされない・紙を世話しない(印刷やコピー機のトラブル対応の削減)」というメリットが生じていて、もう昔には戻れないと話してくれました。
■セミナー動画
「Google で変わった私の働き方改革・教え方」
https://youtu.be/rI6HSlBR5r8
振り返ってみれば、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で全国一斉休校になった際、多くの学校から家庭に向けて”プリント爆弾”が配られたといいます。学校から大量に持ち帰えられたプリントを目の前に途方に暮れたのは、生徒だけではありません。筆者をはじめ、多くの保護者も絶望したものです。
そして、さらに悲しくなるのは、大量に印刷して配付されたプリントは採点され、生徒たちに返却されたのでしょうか? あるいはその後、すべての配付物に対して学びのフィードバックがされたのでしょうか?
そう考えていけば、やはり紙との決別は、学校の日常を変える要素になるでしょう。なぜなら、子どもたちの手元には1人1台の端末があるからです。
働き方改革に寄与する Google のソリューション
1人1台の端末は政府が進めるGIGAスクール構想によって整備されました。この構想では、1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現すること。また、これまでの我が国の教育実践と最先端のベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出すことが求められています。
そして、政府が推し進めるクラウドバイデフォルトの原則に沿って、1人1台の端末を有効活用できる教育クラウドサービスが採用されています。多くの学校で採用された Google Workspace for Education もその1つになります。
Google は「誰でもどこからでも効果的に教育、学習できるようにする」という教育分野の大きな目標を掲げています。この目標達成の中核を担うのが、教育機関向けのグループウェア Google Workspace for Educationです。
教師同士、教師と生徒のコミュニケーションやコラボレーションを強化し業務の効率性を高める各種ツールを、安全なプラットフォーム上で提供しています。ドキュメント、スプレッドシート、スライド、フォームをはじめとした各種アプリは共同編集が可能で、教師の働き方を変革し、生徒同士の協働による豊かな学びをサポートしてくれます。
ICT活用と働き方改革を掛け合わせるのであれば、まずはペーパーレス化や省力化を実現し、教師の力を最大限に引き出すための方法を模索していくべきでしょう。
とはいえ、すべてを一気に変える必要はありません。少しずつ、スモールステップで進めていけば、じわりじわりとその効果が表れる領域になりますので、粘り強く校内での調整を進めていきたいものです。
Google アプリ を活用した働き方改革例
ここからは、Google Workspace for Education を活用した働き方改革例をご紹介していきます。
職員会議に Google ドキュメント を活用
Googleドキュメントはリアルタイムの共同編集や共有ができる文章作成ツールです。ファイルを他のユーザーに共有を行うことで、複数の人と同時にドキュメントにアクセスして、リアルタイムで編集を行えます。誰が作業をしているかも一目でわかるので、離れた場所に居ても役割分担して作業が進められます。また、確認や承認が必要な場合には、担当者宛にコメントする機能を使えばメールで自動通知が届くようになっているので、確認作業もスムーズです。
こうした機能を活かして、週1回の職員会議をペーパーレス化し、議題などを事前共有して進めることで、短時間に効率的な話し合いが展開できます。Google チャットのスペースと連携して運用すると、さらにスピーディーに問題解決に当たることができます。
【その他の利用シーン:生徒会活動や委員会活動、部活動といった教師と生徒との活動】
職員会議の調整に Google カレンダーを利用する
会議や研修の日程調整は、思いのほかスムーズにいかないものです。この課題はGoogle カレンダーを活用することで簡単に解決できます。教師間でカレンダーを共有しておけば、相手のスケジュールを確認するだけで空き時間が把握でき、メンバーのスケジュールを聞いて回る必要がなくなります。
また、全員の空き時間を素早く探し、候補日を教えてくれる機能も便利です。予定を作成する際に [その他オプション]→[ゲストを追加]→ [メンバーを選択]→[おすすめの時間]と操作するだけで、すぐに都合のよい日時が確認できます。
またファイル添付機能があるため、あらかじめ会議に必要な資料を関連付けることができ、その日に必要な資料を探す手間も削減できる上に、当日参加するメンバーに事前に会議資料やアジェンダを共有することによって、事前に当日の内容を把握できるので、会議の効率もより一層高まります。
【その他の利用シーン:生徒会活動や委員会活動、部活動といった教師と生徒との活動】
欠席連絡に Google フォームを活用
調査項目を設定してアンケートを作成し、教職員・生徒・保護者の意見を集約できる Google フォーム は、これまで手作業で入力していた手間を大幅に解消できます
。集計もリアルタイムで行われ、結果が自動的にグラフで表示されます。設問数が多い場合やより複雑なグラフを作りたいときには、Google スプレッドシートと連携することで、より効率よくデータの集計・編集作業が行えます。
こうした機能を生かして、日常的な連絡のやり取りをデータ化するために生徒の欠席・遅刻連絡フォームを作成して保護者に共有しておくのが便利です。朝、電話が
集中しがちな時間帯の業務削減につなげることができます。
また、Google フォーム はテストの作成にも活用できます。設問と回答を設定して生徒に共有すれば、自動採点が可能となり、採点業務に割り当てていた時間も大幅に削減できます。
【その他の利用シーン:毎朝の検温結果の確認】
Google チャットのスペースを教師向けに作成
Google チャットは、個別やスペース(グループ)でリアルタイムにコミュニケーションを取りたいときに便利なアプリです。教師同士のやり取りをすべてオンラインで行うようにすれば、席を移動することなくメッセージが確認でき、作業効率のアップにつながります。
“質問”“雑談”などの目的別でグループを作っておけば、コミュニケーションの活性化にも役立ちます。情報洪水を回避するための対策として、同じ話題にはスレッドで返信するなどのルールを設けておけば、後からの見直しに困ることもありません。いくつかの組織に分けてスペースを作成しておくことで、情報共有がよりスムーズになるでしょう。全校、学年別、校務分掌、部活動などはその一例です。管理組織内で融通が利くようなら、他校で同じような担務を担当している者同士のスペースを作成しておくと、地域内での情報共有の活性化につなげることができます。
【その他の利用シーン:生徒会活動や委員会活動、部活動といった教師と生徒との活動】
すべてのプラットフォームに Google Classroom を採用する
Google Classroom はそのネーミングの通り、オンライン上に Classroom =クラスを作成することで、教師と生徒との間のコミュニケーションを便利にできるアプリです。教師は作成したクラス上から、課題の作成・配付・回収・採点・フィードバックまでを一元的に行うことができます。
生徒は参加しているクラスにアクセスして、課題を把握し、学習を済ませて提出し、採点された返却物を確認しながら復習したり、さらに学習を進めることができます。これらはすべてクラウド上で完結しているため、教師も生徒もいつでもどこでもデータにアクセスして作業をできます。
クラス作成に工夫をすることで教師が作成した課題を他の教師と簡単に共有できるほか、成績などのデータを蓄積して活用したり、分析したりすることもできます。
Google Classroom を使えば、教師は作成した課題を簡単にデジタルで生徒に配付することができます。授業中に配付をするだけでなく、事前に配付したい場合は予約して投稿することも可能です。生徒は Classroom にアクセスすれば、配布された課題を確認できます。そして、課題に取り組み、オンライン上で提出を行います。教師は再び Classroom にアクセスし、生徒による提出状況を確認します。何名の生徒が提出したか、誰が提出していないかなどはデータ表示されるので、すぐに確認できます。提出された課題に対して個別にコメントも入れることができるので、必要に応じてシームレスに生徒の学びを支援することができます。
Classroomを活用することで、圧倒的にスピーディーに一連の作業を進めることができます。また、準備に掛かる手間も大幅に削減され、大量の紙を扱わなくてもよくなります。さらに、確認漏れなどといった人為的なミスも軽減でき、業務を効率的に進めることができます。
まとめ
今回は、働き方改革で使える Google の活用例をご紹介しました。
シンプルな使い方ですが、効果は抜群です。そして、効率化や省力化によって生み出された時間は、教師の本来業務である生徒と向き合う時間に費やすことができます。ぜひ最初の一歩にお試しいただければと思います。
電算システムでは、 Google for Education のソリューションを中心に学校現場におけるDXを支援しています。学校現場における豊富な導入実績を誇る弊社ならではのご提案も可能です。Classroom はもちろん、Chromebook や Google Workspace for Education などの導入や活用についてお困りごとなどございましたら、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
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