Google Cloud™(旧 GCP:Google Cloud Platform)はGoogleが提供するクラウドコンピューティングサービスであり、Googleが世界中のユーザーに提供している大規模なインフラを、サービスとして利用することができます。
ちなみにクラウドコンピューティングサービスとは、インターネットを通じて利用するインフラの総称であり、種類によってIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などがあり、Google Cloud ではそのどちらも提供されています。
本稿では、このGoogle Cloud について基礎から解説していきます。
Google Cloud とは?
Googleが提供する一般利用者向けサービスといえばGoogle検索エンジンと動画配信プラットフォームのYouTubeが代表的です。検索エンジンでは瞬時に数十億もの検索結果を返しており、YouTubeでは月間60億時間もの動画再生がされています。これらのサービスを提供可能にし、かつセキュアな運用を実現しているGoogle独自のインフラを、サービスとして利用できるのがGoogle Cloudです。
ただし Google Cloud は特定のサービスを指しているのではなく、Google が提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。Google Cloud に含まれている1つひとつのサービスを一覧でご紹介します。
Google Cloud でできること
Google Cloudで何ができるのかを理解するには、実際にどのような使われ方をしているのかを知ることが効果的です。ここでは、Google Cloudで一般的によく使用されているユースケースについてご紹介します。
データ統合によるプロセスやサービスの最適化
小売業A社では、各担当者の参照しているデータが異なり、議論がかみ合わないといった課題を抱えていました。原因は、セクションごとに異なるデータを社内で連携できていなかったためです。その解決策として、「データの収集から統合までを自動化し、統合したデータを共有・活用していけるプラットフォーム」を探していたところ、行き当たったのがGoogle Cloudです。
Google Cloudを導入した結果、全員が統合された同一のデータを参照するようになり、社内で効果的な議論ができるようになりました。また、Google Cloud上でデータが分析され、わかりやすく可視化された結果、「購買プロセスを分析する・施策改善策を立案する」というサイクルが確立され、施策を効果的に最適化できるようになったことも大きなメリットです。
また、A社のマーケティングチームでは、顧客アンケートを用いるような従来のデータ収集方法では、必要な情報を十分に得られず、正確な顧客分析を行いづらいという課題に直面していました。そこで、アンケートの代わりに、「日々SNSに投稿される膨大な情報をお客様の声としてデータ収集し、処理・分析してマーケティングに役立てたい」と考えるようになり、この望みをかなえようと導入されたのがGoogle Cloudです。
Google Cloud導入により、自社商品などについてハッシュタグが付いた投稿内容や画像を元に、自社商品の購入場所やユーザーの感想など、さまざまなデータを取得・分析できるようになりました。この分析結果を「お客様の声」として活かすことで、自社の商品・サービスについての改善サイクルを作り出すことに成功しました。
以上のように、Google Cloudというひとつのプラットフォームさえあれば、散在する膨大なデータを統合でき、プロセスやサービスの最適化をはかれます。
システム構築時の脆弱性可視化や脅威検出
教育向けクラウドサービス開発会社B社では、2020年にセキュリティインシデントを経験しました。これによりセキュリティを強化する必要に迫られていました。
そこで、元々Google Cloudを利用していたこともあり、Google Cloudのセキュリティサービスとして知られるSecurity Command Centerを追加導入することに決めました。これを導入した結果、Google Cloud環境が常時スキャンされ、脆弱性や脅威の検出・可視化・通知も自動で行われるようになり、よりロバスト(頑健)なサービスの開発や運用の実現に貢献しています。
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Google Cloud のメリットとは?
企業の新しいインフラとしてクラウドコンピューティングサービスを選択することは、現代社会におけるデータ量の劇的な増加や、多様化するビジネスニーズ、日々変動する顧客ニーズへ対応するために欠かせないものと考えられています。その中でGoogle Cloud を選ぶメリットとはなんでしょうか?
Google 検索、YouTubeと同一のインフラが使える
少し古いデータになりますが、Googleでは最低でも年間2兆回(*)もの検索がされており、1秒あたり6万3,000回の検索がされています。しかしこれも最小値であり、調査にあたった人物は「おそらく実際は数兆回~20兆回ではないか」と推測しています。これほどまでのデータ量を瞬時に処理するGoogleのインフラを企業で利用することができます。これによって、企業が如何なるシステムを構築しようと、如何なるサービスを提供しようと安心して使用できます。
*「米メディアのSearch Engine Landで、2016年のGoogle検索回数の推計」より
高速かつ安定したパフォーマンスとスケール
数千マイルにもおよぶ光ファイバーケーブルと、先進的なSDN(Software Defined Network)、エッジキャッシングサービスなどの様々な技術によって、高速かつ安定したパフォーマンスを実現しています。
第三者認証取得の高度なセキュリティ
クラウドコンピューティングサービスを利用するにあたって気がかりなのが、やはりセキュリティです。「第三者による不正アクセスは発生しないか?」「情報漏えいは起きないか?」など心配は尽きないでしょう。しかしIT企業のトップとも言えるGoogleによって提供されているGoogle Cloudならば、その点も安心です。
加えてGoogle Cloudは、独立した第三者機関による定期的な監査を受けるとともに、世界的な基準の各種認証を取得することに努めています。こうした客観的な観点・基準も適切に導入することで、Google Cloudは常に高度なセキュリティを維持しています。
開発ニーズごとに対応した価格設定
継続利用でのディスカウントやカスタムマシンタイプ、特殊用途向けの特別価格設定などの多種多様な価格設定を組み合わせることで、企業ごとの開発ニーズに対応した、効率的で高い費用対効果が期待できます。
充実のデータ分析ツール
BigQuery・Dataflow・Lookerなど、データ分析に優れたツールが提供されており、データサイエンティストだけでなく、社内全体でデータの有効活用が行えます。
あらゆるクラウドコンピューティングサービスの提供
前述のように、Google Cloudにはあらゆるクラウドコンピューティングサービスが内包されているため、開発ニーズやビジネスニーズ、顧客ニーズに沿ったサービスが必ず見つかります。
AWSとの違いは?
Google CloudとAWSは、ともに開発環境として利用されることが多いクラウドサービス群ですが、どのような違いがあるのでしょうか。なお、Google CloudはGoogle、AWSはAmazonが提供しています。
Google CloudはAWSと比べ、シンプルでわかりやすくて使いやすいという特長を持ち、基本的にビッグデータの扱いに長けています。そのため、ビッグデータの分析や管理を行ったり、AIや機械学習を利用した開発を行ったりする予定があれば、AWSよりもGoogle Cloudを利用する方が有利でしょう。
一方、AWSはGoogle Cloudよりも先にサービスを開始しており、クラウドサービス群でトップシェアをキープしています。AWSは提供しているサービスの数も多く、機能がとても豊富なので、複雑なシステムを開発するのに向いています。Google Cloudとは違って日本語によるサポート対応が受けられるのも強みです。
※AWSとの違いについてより詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
「2大クラウドサービスを徹底比較。Google Cloud (GCP)とAWSの特長や違いとは?」
https://www.dsk-cloud.com/blog/google-cloud-and-aws
Google Cloudに含まれる12のサービス一覧
Google Cloudでは150種類以上のサービスを提供していますが、その中でも主要なものを表にまとめました。
サービス名 | 概要 | |
コンピューティング | Compute Engine | Googleのインフラを利用できるIaaS(Infrastructure-as-a-Service)であり、用途に応じて仮想マシンを選択でき、負荷の大きな処理を実行できます。 |
App Engine | GoogleによるPaaS(Platform-as-a-Service)であり、提供される組み込みサービスを用いて、アプリケーションの開発・運用が容易にできます。 | |
Kubernetes Engine | クラウド上で利用できるDocker コンテナの実行環境であり、ユーザー定義要件に基づいて複数のコンテナを簡単に管理できます。 | |
ストレージ | Cloud Storage | 容量無制限で堅牢なオブジェクトストレージ サービスであり、いつでもどこでも迅速にアプリデータへのアクセスが可能です。 |
Cloud SQL | PostgreSQL、MySQL、SQL Server用のフルマネージドデータベースサービスであり、高いパフォーマンス、スケーラビリティ、利便性を実現します。 | |
Cloud Datastore | 必要に応じて自動拡張するフルマネージドNoSQLデータベースサービスであり、非リレーショナルデータの保存が可能です。 | |
ビッグデータ | BigQuery | クラウド上でビッグ データを 保管し、高速で処理してリアルタイムで解析できるスケーラブルなデータウェアハウスです。 |
Cloud Dataflow | データの取得、変換、分析、分類などのデータ処理パターンを統合したプログラミングモデルをクラウド上で提供するフルマネージドのデータ処理サービスです。 | |
Cloud Pub/Sub | 信頼性の高い多対多の非同期メッセージングを用いてサービスとサービスをつなげる、スケーラブルなバックエンド・メッセージングサービスです。 | |
サービス | Cloud DNS | 信頼性と回復力に優れた、低遅延のDNSサービスです。コマンドラインインターフェースを用いて、簡単にDNSレコードなどを作成して管理できます。 |
Cloud Endpoints | 一つのソースコードを用いて、複数のクライアントに対応できるAPI 管理サービスです。 | |
Translate API | Google 翻訳が対応している言語であれば、動的に迅速に翻訳を行う翻訳APIです。 |
代表的なサービスの概略は表のとおりですが、より具体的に理解することで、Google Cloudの利用ケースを明確にイメージできるようになるでしょう。そこでここからは、Google Cloudに含まれる主なサービスを、12のカテゴリーに分けて順に紹介します。
1. コンピューティング
コンピューティングという言葉は、コンピュータを使った計算や処理などを指しますが、「コンピュータの使い方や運用形態」といった意味も含んでいます。
クラウドコンピューティングといった場合には、「インターネットを介して、コンピューティングを行っていく」という意味合いになります。クラウド上で動くソフトウェアだけでなく、それを実行するためのサーバー・CPU・メモリ・仮想マシンなど、コンピュータリソースをサービス利用者に提供することも、クラウドコンピューティングサービスの一環です。
Google Cloudでは、主に以下のクラウドコンピューティングサービスを提供しています。
- Compute Engine
処理中に大事なデータを暗号化して守れるという安全性を備えた、スケーラブルで高性能な仮想マシンです。仮想マシンは使用目的に応じてカスタマイズできます。 - Google Kubernetes Engine
コンテナが2つ以上あっても、コンテナを自動で管理できる仕組みを提供し、コンテナ化されたアプリケーションを実行します。 - Cloud Run
自分が使いたいプログラミング言語を選んでプログラムを書き、コンテナのイメージをデプロイすることで、アプリケーションを実行します。
2. AIと機械学習
Google Cloudで提供される以下のサービスでは、AI・機械学習についてGoogleが日々培っている高度な技術が、十全に活かされています。
- Vertex AI
トレーニングされたカスタムツールを含む、あらゆる機械学習ツールを統合した機械学習用プラットフォームです。BigQueryからデータセットをエクスポートして利用でき、人工知能モデルの構築・デプロイ・スケーリングが効率的に行えます。 - Contact Center AI
顧客の声を高い精度で瞬時に認識できるSpeech-to-Textを用いることで、あたかも人間が話しているように対応する人工知能を活用した会話型ソリューションです。 - Speech-to-Text
人工知能を用いて、人間が発した声をテキストへと正確に変換するAPIです。音声入りのコンテンツに字幕を付けるのに役立ちます。 - Natural Language AI
機械学習カスタムモデルのトレーニングを行ったり、自然言語理解(NLU)をアプリに適用したりするためのサービスです。感情分析やエンティティ分析などの結果を元に、顧客の声を拾い上げられます。 - Vision AI
機械学習によって、画像に含まれる特定の対象や文字を検出し、有益な情報を引き出します。
3. API管理
APIとは、各ソフトウェア間をつなぐインターフェースです。このAPIをコントロールするプロセスや、そのためのソフトウェアなどを一括してAPI管理と呼びます。Google Cloudで提供されている主なAPI管理サービスは以下の2つです。
- Apigee
APIを社外にプロダクトとして公開するために必要な全機能が統合されています。例えばAPIの保護や使用状況分析・レガシーアプリケーションの活用・ビジネスチャネルの収益化などについての機能が含まれています。また、Google Cloud以外でも使えるAPI管理プラットフォームです。 - API ゲートウェイ
API管理プラットフォームのサブセットです。REST APIを経由してGoogle Cloud内の各種サービスに対するアクセスや公開を安全に行えるようにします。
4. データ分析
Google Cloudで提供されている主なデータ分析サービスは、以下の通りです。
- BigQuery
機械学習機能を搭載した、フルマネージドでスケーラビリティの高いデータウェアハウスです。 - Dataflow
バッチデータやストリーミングデータをリアルタイムに処理できるETLツールです。 - Looker
LookMLと呼ばれる、SQL ベースのモデリング言語によってデータロジックを一元的に管理し、データの分析・可視化などまで行える、データアプリケーションプラットフォームです。
5. データベース
Google Cloudで提供されている主なデータベースサービスは、以下の通りです。
- MySQL
機能がシンプルなリレーショナルデータベースです。オープンソースで基本無料かつさまざまなOSで利用可能です。Cloud SQL for MySQLを利用することで、クラウド内にあるMySQLを保護できます。 - PostgreSQL
オープンソースで改変や再配布が自由にでき、多様なOSで利用可能、かつ機能も豊富なオブジェクトリレーショナルデータベースです。Cloud SQL for PostgreSQLを利用することで、データベースのオペレーションにかかる時間を短縮できます。 - Database Migration Service
MySQLワークロードとPostgreSQLワークロードを、Google CloudのデータベースサービスであるCloud SQLへ移行するサービスです。
6. デベロッパーツール
Google Cloudで提供される主なデベロッパーツールは、以下の通りです。
- Cloud Code
クラウド上だけでなく、インターネットに接続していない環境であっても、クラウドネイティブアプリケーションの作成・デバッグ・実行などがスムーズにできるIDEプラグインのセットです。 - Cloud Build
ソフトウェア開発において、どのようなプログラミング言語を用いてコードを作成しても、継続的なビルド・テスト・デプロイを実現するCI/CDプラットフォームです。 - GKE、Cloud Runを含むGoogle Cloudプロダクト
Google Kubernetes Engine(GKE)はKubernetesを用いて、コンテナ化されたアプリケーションを実行したり、オーケストレーションしたりできるプラットフォームです。一方、Cloud Runはコンテナ化されたアプリケーションを構築してデプロイできるフルマネージドサーバーレスプラットフォームです。
7. 管理ツール
Google Cloudで提供される主な管理ツールは、以下の通りです。
- Cloud Endpoints
APIの保護やモニタリングなど、API関連のさまざまな機能が搭載された開発者用のAPI管理ツールです - Google Cloud アプリ
AndroidやiOS端末を用いて、Google Cloudで実行中のさまざまなサービスについて確認できるモバイルアプリケーションです。 - コスト管理
Google Cloudにかかる費用や使用量をモニタリングし、コストの管理や改善を行うためのツールです。 - Active Assist
コストの削減、パフォーマンスや信頼性の向上、セキュリティリスクの軽減などを通して、Google Cloudにおけるオペレーションの最適化を図るためのツール集です。
8. メディア
Google Cloudの代表的なメディアサービスとしては、Media CDNがあります。
- Media CDN
世界中の視聴者に対して大規模なメディア配信を効率的に行える、拡張性に優れた配信プラットフォームです。
9. データ移行
Google Cloud内外でデータを移行するための代表的なサービスとしては、以下です。
- Storage Transfer Service
Google Cloud以外のクラウドストレージプロバイダなどからのデータ移行、Cloud Storage間やファイルシステム間のデータ転送を行うサービスです。 - Transfer Appliance
大量のデータをGoogle Cloudに転送するためのラックマウント可能なストレージサーバーです。
10. ネットワーキング
Google Cloudの代表的なネットワーキングサービスは以下の3つです。
- Cloud Armor
DDoS攻撃などを検出・防御し、サービスを守ります。 - Cloud CDN
Googleのグローバルネットワークでコンテンツを配信します。 - Google Cloud ハイブリッド接続
オンプレミスで運用中の設備を、閉域網を利用してGoogle Cloudに接続できるサービスです。ワークロードなどの条件に応じて接続方法を選べます。
11. セキュリティ
Google Cloudの代表的なセキュリティソリューションは以下の5つです。
- セキュリティ基盤
推奨するプロダクトとガイダンスによって、堅牢なセキュリティ対策を施します。 - リスク・コンプライアンス管理のコード化(RCaC)
インフラストラクチャおよびポリシーのコード化により、コンプライアンス違反のチェックを自動で定期的に行います。 - Chronicle
最新の脅威を調査してすばやく検知し、検出された脅威に対応するために必要な情報を迅速に知らせるSIEMプラットフォームです。 - セキュリティと耐障害性のフレームワーク
アセットを保護して、サイバー攻撃を受けたときでも数分以内にアセットを復元することで、ビジネスへの悪影響を少なくする包括的なソリューションです。 - ウェブアプリとAPIの保護(WAAP)
多種多様なサイバー攻撃や不正行為からアプリケーションとAPIを保護します。
12. ストレージ
Google Cloudの代表的なストレージサービスは以下の2つです。
- Cloud Storage
グローバルなエッジキャッシュを備えたオブジェクトストレージです。 - Persistent Disk ブロック ストレージ
VM(仮想マシン)インスタンス用のブロックストレージです。
なお「9.データ移行」で紹介したStorage Transfer ServiceやTransfer Applianceは、ストレージへのデータ書き込み機能を含んでいるため、このストレージサービスの一種としても考えられます。
まとめ
いかがでしょうか?企業の新しいインフラとしてクラウドコンピューティングの選択は欠かせないものとなっています。Google Cloud は、Google自身のサービスに必要なプラットホームとして、迅速かつ柔軟なインフラ環境によってあらゆるニーズに対応した基盤であり、強固でスケーラブルなサービスを提供しています。
電算システムでは、国内随一のGoogle認定パートナーとして、Google Cloud ならびに関連サービスを提供しています。Google Cloud の検討と併せて、「DSKの提供するGoogle Cloud 関連サービス」をご利用いただくことで、お客様の様々なご要望にお答えしています。
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