2020年に正式に Google Cloud™ の一員となったデータプラットフォーム Looker は、これまでに存在した BI(ビジネス インテリジェンス) の機能を有しながらも、これまでにはない設計思想とデータ分析・活用のためのハイスペックなシステム連携機能を持ち合わせたソリューションです。大企業からスタートアップ企業まで、特定の業界や企業規模の区別なく導入されているクラウドサービスですが、Looker のようなデータプラットフォームは、必ずしもすべての企業にとって投資以上の効果が得られるという訳ではありません。そこで本稿では、BI ツール選定やデータ分析に悩めるご担当者様に向けて、Looker が解決できる課題をタイプ別に分類してみました。
本題に入る前に、まずは Looker というサービスをあまりよくご存知のない方のために、概要を以下にまとめましたのでご覧ください。
Looker の概要
いわゆるBIツールとして、ダッシュボードを作成したり、レポーティングを行ったり、ドリルダウンや軸を変えてダッシュボードを深い視点で分析するなど、エンドユーザーが直接操作する範囲においては、一般的なBIツールと同様のことができる機能を備えています。
しかし、それは全機能のほんの一部にしか過ぎず、Looker の真価は、その設計思想にあると言えます。従業員に使わせるデータを企業側が統制し、全社的に精度の高い数値結果を出すための設計、共有やコラボーレーションおよび連携を前提とした設計、分析担当者を再利用性の低いSQLから解放して生産性を高める設計など、データドリブン経営のためのデータプラットフォームとしての包括的な機能・仕組みを有しており、エンドユーザー目線の機能開発と並行して、システム管理者側・経営者側の視点に立った内容のアップデートが頻繁に行われています。
Looker の特長
1)言葉や指標の定義、計算式等が一元管理できる
各部門での表記ゆれや異なる指標の使用がなくなり、全社的に分析精度・信頼性が大きく向上します。参照先の項目名などもシステム上のID等ではなく、普段使っている項目名を利用できるため、分析に慣れていないエンドユーザーにも理解しやすいものとなります。
2)内部にデータベース・データマートを持たない
Looker 内部にはデータベース・データマートを持たず、データソースとなるDWH(データウェアハウス)へ直接データを参照します。エクスポート⇔インポートでデータを移動させる必要がなくなり、セキュリティやアクセス権に関する管理負荷が低減します。データマートがありませんので、常に変化・増減するデータマートのデータ項目のためのSQL編集に時間をとられていた人材を、より生産性の高い仕事に従事してもらうこともできるようになります。
3)100% クラウドネイティブ
Looker 導入時には専用のサーバは必要ありません。ブラウザだけで利用できるクラウドネイティブなサービスです。外部クラウドとの親和性も高く、チャットツールのSlackやクラウドのストレージサービス、GoogleDrive など多くのクラウドサービスと直接連携が出来ます。分析結果だけでなく、分析機能やレポーティング機能まで簡単に自社webサイトに埋め込むことができるため、社内での情報共有はもちろん、自社サービスの分析機能やレポートとして Looker を提供することが可能になります。
SFA、マーケティングツール、ECサイト、各種社内システムなど、可視化の後に行う業務フローへデータを引き渡す事ができる設計のため、既存の業務フローをスムーズに運用することができるようになり、生産性や収益性を向上させることができます。
4)SQL知識がなくても分析できる
専門的な知識がなくてもユーザー部門で分析ができるようになり、分析担当者のデータ抽出業務や、SQLのコーディング業務を削減し、重要で生産性の高い仕事に充てることができるようになります。
ちなみに、その裏側は可読性の高い言語:LookML により実現しています。LookMLはプログラム開発で使われるGit(ギット)というプログラムコード履歴管理と連携ができるため、ダッシュボードの変更履歴を追えるようになり、ダッシュボード属人化問題を解決します。
Looker の注意点
Looker はデータを内部に取り込まず、データソースとなるDWHに直接参照します。そのため、DWHが構築されていない場合は、データの収集・蓄積を先に検討する必要があります。
これからDWHを構築する、もしくは既存のDWHの保守切れ・パフォーマンス課題・ストレージ容量課題等により、移行の検討が必要という場合には、高速処理を特長とするクラウドのDWHがおすすめです。クラウドのDWHでメジャーなサービスは、Google Cloud Platform™ の BigQuery™ や Amazon Redshift 、Snowflake などです。
Looker が解決できる課題は?
データプラットフォームなどのデータ活用系ソリューションは、目的意識や効果を得るための道筋がはっきりし、データの収集・蓄積・クレンジングといったデータ活用のためのシステム構築や人材の登用など、ある程度の投資が行われていないと、導入してもなかなか効果が得られません。検討される際には自社の課題は何か、ニーズは何かを把握するとともに、足りないものは何なのかを再確認してみましょう。ここからは、Looker で解決できる課題を5つピックアップしました。ぜひ自社の課題と比較してみてください。
課題①:部門や人によって分析項目の定義が曖昧で、分析精度が異なる
【例】
- 定義が統一されないまま、ユーザー部門がダッシュボードを作成している
- 部署によって文化が異なる
- ホールディングス制をとっており、分社化している
- 過去にM&Aを行った
課題②:データ/情報が分断されている
【例】
- 組織文化やレガシーシステムにより、顧客データやマーケティングデータが閉鎖的に扱われており、会社全体のデータ活用が進んでいない
- 必要な情報へ、担当者がリアルタイムにアクセスできない
- 社員に向けて業績や各種数字をポータルサイトで発信しているが、見てもらえない(見てもらえているかどうか分からない)
課題③:データに強い人間が少ない
【例】
- 社内にデータ分析担当者が少ないため、分析に関連した多くの業務が一部の担当者に殺到している
- ダッシュボード管理が属人化してしまい、担当者が離職・異動となった後に、ダッシュボードの更新が止まってしまう
課題④:データ分析にかかる無駄な時間が多い
【例】
- データマートのメンテナンスやデータのエクスポート・インポートをIT部門に依頼しても、対応に時間がかかる
- 分析したいことが発生しても、データマートのメンテナンスが必要となり、タイムリーな打ち手を行えない
課題⑤:データでマネタイズしたいが、ツールがネックになっている
【例】
- 自社所有データを取引先に提供・販売したいが、既存の仕組みでは難しい
- 既存の可視化機能の運用コストを削減したい
- 地図情報や在庫情報、需給情報と連動させ、自社サービスにリアルタイムにデータを反映・変更させたい(旅行・宿泊・オークション・ダイナミックプライシング・宅配など)
[RELATED_POSTS]
まとめ
ここまでご覧頂いた5つの課題は、これまでに Looker を導入されてきたユーザー企業を基にしています。これらのタイプのどれかに当てはまるようでしたら、Looker をさらに詳しく知って頂くことで、お客様の抱える課題解決につながるかも知れません。
電算システムでは、データを収集、統合、可視化する様々なデータプラットフォームサービスを提供しています。Looker についてもっと詳しく知りたい方はこちらの資料もご覧ください。