事業規模が拡大すると、サーバーやネットワークなどのハードウェアリソースが不足しがちです。しかし、ハードウェアを拡張するには高額な費用や多大な労力が発生します。そこで効果を発揮するのが仮想化です。
仮想化とは、物理的なハードウェアを仮想サーバーや仮想ネットワークといった形で分割する技術です。単体の物理サーバーのなかに複数の仮想サーバーを構築するといった活用が可能なので、新しくハードウェアを導入する必要がなく、既存のリソースを有効活用できます。
本記事では、仮想化の仕組みや種類、メリット・デメリットを解説します。
仮想化とは仮想的なハードウェアを再現する技術
まずは、仮想化の概要や仕組み、クラウドとの違いを解説します。
仮想化の特徴と仕組み
仮想化とは、サーバーやネットワーク、ストレージといったハードウェアリソースを、ソフトウェアによって分割・統合する技術です。分割・統合するハードウェアリソースにより、「サーバー仮想化」や「ネットワーク仮想化」といった形で呼ばれています。
サーバー仮想化を例にあげると、一つの物理サーバーのなかに、複数の仮想サーバーを構築するイメージです。それぞれの仮想サーバーでは、物理サーバー単体のCPUやメモリを共有して利用します。これにより必要に応じて複数台の物理サーバーを用意せずに済むため、導入コストや設置スペースを最小限に抑えられます。
仮想化とクラウドとの違い
クラウドとは、ハードウェアやソフトウェアを自社で保有せず、ベンダーのサービスを利用する形態です。Webブラウザ上で利用できるメーラーやチャットツール、Web会議システムなどは、すべてクラウドサービスに該当します。また、サーバーやネットワーク、OSなどを一時的に借り受けられる、クラウドコンピューティングというサービスもあります。
一方の仮想化は、物理的なハードウェアのなかでサーバーやネットワークなどを分割・統合する技術です。そのため、クラウドとは役割や成り立ちが異なります。なかにはクラウドサービスを確立するうえで、仮想化の技術が用いられることもあります。それぞれの違いを理解して、適切な場面で活用することが大切です。
仮想化技術の4つの種類
仮想化には、サーバー仮想化やネットワーク仮想化などの種類があります。それぞれ利用するハードウェアリソースが異なるだけでなく、用途にも差があるため、目的や業務内容に合わせて選別しましょう。
サーバー仮想化
サーバー仮想化とは、一つの物理サーバーのなかで複数の仮想サーバーを稼働させる技術です。それに加えて、仮想的に複数のサーバーを組み合わせて処理能力を向上できます。
さまざまな種類のアプリケーションを運用する際は、一つのサーバーでは処理能力が不足するケースも珍しくありません。一方、サーバー仮想化では、一つひとつのアプリケーションにサーバーリソースを振り分けられます。結果、一度に多数の業務を処理できるほか、アプリケーションがサーバーを独占するような無駄を省けます。
ネットワーク仮想化
ネットワーク仮想化とは、通信回線やルーターといった物理ネットワークのなかに、複数の仮想ネットワークを構築する技術です。サーバー仮想化と組み合わせると、サーバーやユーザーごとにネットワークを分割したり、アクセス制御などの設定を変更したりと、より柔軟な運用を行えます。
また、複数の物理ネットワークを統合することも可能です。これによりネットワーク構成が簡略化されるため、一元管理や管理工数の削減につながります。
ストレージ仮想化
ストレージ仮想化とは、ハードディスクをはじめとするストレージ機器を仮想的に分割できる技術です。また、複数の物理ストレージを統合し、ネットワーク上に大容量の仮想ストレージを設置できます。
事業規模の拡大や縮小に合わせて柔軟に記憶領域を調整できるのがメリットです。また、複数の物理ストレージを一元管理することで、機器ごとに空き容量を管理せずに済みます。
デスクトップ仮想化
デスクトップ仮想化とは、サーバー上にクライアント端末のデスクトップ環境を構築する技術です。
クライアント端末とは、ユーザーが扱うパソコンやタブレットなどの端末を指します。ソフトウェアやアプリケーションを導入する際は、一つひとつのクライアント端末にインストールしなければなりません。しかし、デスクトップ仮想化であれば、メインのクライアント端末にさえインストールすると、そのソフトウェアやアプリケーションをほかの端末からでも利用できます。
結果、端末ごとのシステムアップデートやデータ監視といった作業の簡略化が可能です。また、オフィスのほか、外出先やテレワーク中でもクライアント端末にアクセスできるため、働き方改革の推進にも役立ちます。
仮想化技術を導入する3つのメリット
仮想化技術を導入するメリットは次の通りです。
- 効率良くリソースを活用できる
- ハードウェアの運用工数を抑えられる
- 耐障害性が高まる
仮想化にはメリットとデメリットが存在するため、両者を踏まえて導入可否を検討する必要があります。まずは仮想化のメリットを見てみましょう。
効率良くリソースを活用できる
仮想化技術を採り入れると、物理的なサーバーやネットワークなどの本来のポテンシャルを発揮できます。例えば、ファイルサーバーとWebサーバーの間で稼働量に大きな差が生まれている場合、一方のサーバーでは本来の性能を発揮できていないため、無駄が生じています。
その点、仮想化では、物理サーバーのリソースを個々の仮想サーバーへと自由に配分できます。これはネットワーク仮想化やストレージ仮想化でも同様です。そのため、利用中のサーバーやネットワークなどの無駄がなくなり、より効率的にリソースを活用できます。
ハードウェアの運用工数を抑えられる
仮想化はハードウェアを複数に分散するだけでなく、複数を一つに統合することも可能です。例えば、サーバー仮想化の場合、複数の物理サーバーを一つの仮想上に集約できるため、保有する機器そのものの台数が減ります。すると、おのずとメンテナンスやアップデートなどの運用工数も減少します。
企業規模が拡大すると、一度に数十台から数百台のサーバーを運用することも珍しくありません。このような場合でも、仮想化なら効率良くハードウェアを運用できます。
耐障害性が高まる
仮想化技術を利用すると、万が一障害が発生した場合でも、安定してハードウェアを稼働できます。サーバー仮想化を例にあげると、特定の仮想サーバーに障害が発生すると、それを別の物理サーバーへと移動します。すると、もともとの物理サーバーから問題箇所が排除されるため、そのまま処理作業を継続できる仕組みです。
業務停止のリスクを抑えられることから、仮想化はBCP対策としても効果を発揮します。BCP対策とは、業務が停止するようなトラブルが起きた際に備えて、適切な計画を立てておくことです。BCP対策の目的や役割、実施方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
仮想化技術を導入する3つのデメリット
仮想化技術を導入するデメリットは次の通りです。
- 物理的サーバーの処理能力に依存する
- 高度な運用ノウハウが求められる
それぞれのデメリットをもとに、仮想化技術を導入する前に適切な対策を立てておきましょう。
物理的サーバーの処理能力に依存する
仮想化技術を利用すると、物理的なハードウェアを仮想的に分散できますが、本来の処理能力が増えるわけではありません。例えば、仮想サーバーを複数に分散した場合でも、一つひとつのリソースは物理サーバーの処理能力に依存します。
そのため、もともとの性能次第で、仮想上のハードウェアのパフォーマンスが低下する可能性も考えられます。本来のハードウェアの性能に対して、それを超える大規模なシステムを構築すると、処理能力が低下する場合もあります。仮想化技術を導入する際は、既存のハードウェアの性能を見極めたうえで、適切な環境を構築することが重要です。
高度な運用ノウハウが求められる
仮想化技術を効果的に運用するには、保全性やセキュリティなど、さまざまな観点で高度なノウハウが求められます。
例えば、物理的なスペックに対して小規模なシステムを構築すると、かえって効率性が悪化する可能性があります。このようなケースでは、適切なリソースを見極めるのが困難です。
そのため、仮想化技術を導入する際は、適切な知識や技術を持つ人材が必要です。また、運用中は複雑で難解な課題が発生する可能性があるため、サポート体制に強みを持つベンダーを選びましょう。
Google Cloudでスムーズな仮想化を実現
仮想化にはサーバー仮想化やネットワーク仮想化など、さまざまな種類があります。それらを一括で利用したい場合は、Google Cloudを活用するのがおすすめです。Google Cloudは、100種類以上のサービスを搭載したクラウドプラットフォームで、仮想化に関する次のようなサービスが用意されています。
- サーバー仮想化:Compute Engine
- ネットワーク仮想化:Virtual Private Cloud
- ストレージ仮想化:Persistent Disk
- デスクトップ仮想化:仮想デスクトップ
ほかにも、ビッグデータ解析のBigQueryや、AIの機械学習用のAutoMLなどのサービスがあります。それぞれのサービスは単体だけでなく複数の組み合わせも可能です。また、従量課金制を採用しており、利用した分のみ請求される仕組みなので、予算の適正化につながります。
仮想化の仕組みを理解して適切なソリューションを選択しよう
仮想化はハードウェアを効率良く運用するための欠かせない技術です。サーバーやネットワーク、ストレージなどのハードウェアを仮想的に分散したり、仮想上に統合したりと、さまざまな形で活用できます。
ただし、仮想化にはサーバー仮想化やネットワーク仮想化などの種類があり、関連するソリューションも多岐にわたります。そのため、仮想化の仕組みをよく理解したうえで、導入目的や要件を検討することが大切です。
電算システムでは、環境構築やコンサルティングなど、Google Cloudの導入支援サービスを提供しています。専門領域に精通した数多くのエンジニアが在籍しているので、スピーディかつ質の高いサポートを行えるのが強みです。さらに、電算システムのリセールサービスを活用すれば、Google Cloudの利用料に関する請求書発行や割引などを利用できます。Google Cloudと電算システムについては以下の資料で詳細を紹介しているので、参考にしてください。
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