Google Cloudには、Compute EngineやCloud Storage、BigQueryなど、計150種類以上のサービスが含まれています。それぞれのサービスを自由に組み合わせて利用できるのが魅力ですが、「トータルコストがどの程度になるのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
Google Cloudを利用する際の正確な費用を計算するには、サービスごとの料金をしっかりと理解しておくことが重要です。一つひとつのサービスによって料金が発生する仕組みも異なれば、ストレージ料金やインスタンス料金といった費目にも違いがあるためです。
本記事では、Google Cloudの料金が発生する仕組みや、代表的なサービスの料金体系などを詳しく解説します。特にさまざまなサービスを複合的に利用する場合は、費用の計算が複雑になるため、本記事を参考にあらかじめシミュレーションを行っておくことをおすすめします。
Google Cloudの料金が発生する仕組み
まずは、Google Cloudの料金に関する仕組みを解説します。どのような形で料金が発生するのか、解約金は発生するのかといった点を押さえ、Google Cloudを正しく活用しましょう。
初期費用は不要
Google Cloudに契約する際、初期費用はいっさいかかりません。
オンプレミスのシステムやソフトウェアを導入する際は本来、サーバーやネットワーク環境といったハードウェアを構築するための費用がかかります。一方、Google Cloudで提供されているのは、すべてクラウドサービスなので、ハードウェアの構築コストは発生しません。また、ソフトウェアの購入費やライセンスの更新費なども不要です。
Google Cloudに登録する際は、Webブラウザ上で必要な情報を入力するだけで済みます。初期費用を最小限に抑えられるだけでなく、契約してすぐに使い始められるのも大きなメリットだといえるでしょう。
従量課金制で料金が発生する仕組み
Google Cloudでは、実際にサービスを利用し始めてから料金が発生します。その料金は1ヶ月や1年ごとに固定で発生するものではなく、サービス内で利用したリソース量に応じて費用が生じる「従量課金制」となっています。そのため、利用する分が少ないほど費用が少なく、利用する分が多くなれば費用が高額になる仕組みです。
従量課金制は、うまく活用すれば費用の最適化につながります。しかし、そのためには事前に入念な予算設定が必要で、見積もりが甘ければ思わぬ高額請求に発展する恐れもあります。
そこで、Google Cloudに用意されている予算アラートの機能を活用するのがおすすめです。予算アラートを設定すると、指定した利用料を超過したタイミングで通知が届くため、想定外のコスト増に発展するリスクを抑えられます。
解約金も不要
Google Cloudを利用する際は、解約金の心配をする必要もありません。サービスの利用を停止する際は、その機能を停止するだけで解約が完了し、そのタイミングで課金もストップする仕組みです。そのため、実質的に発生するのはサービスの従量課金料金のみとなります。
解約金が不要な点は、Google Cloudの導入ハードルを下げる要因にもなります。いつでも始められて、いつでも解約できるため、まずは気軽な気持ちでGoogle Cloudを導入してみてはいかがでしょうか。
Google Cloudの代表的なサービスごとの料金体系
Google Cloudには、Compute EngineやCloud Storageといった100種類以上のサービスが搭載されています。同じGoogle Cloudでも、サービスごとに料金体系が異なるため、それぞれの価格をしっかりと理解しておくことが重要です。代表的なサービスを例にあげ、それぞれの料金体系を解説します。
Compute Engine
Compute Engine(Google Compute Engine/GCE)とは、Google Cloud上で稼働できる仮想マシン(VM)です。Googleが提供するインフラ上に、WindowsやLinuxをベースとした仮想マシンを構築できます。
Compute Engineでは、利用時にインスタンス料金やネットワーク料金などが発生します。各料金の仕組みと価格の一例は次の通りです。
| 料金の種類 | 概要 | 料金の一例 |
| インスタンス料金 | 仮想マシンの稼働時間に応じて秒単位で加算される料金 | C4マシンのオンデマンド料金:$0.04449753/時間 |
| GPU料金 | GPUの稼働時間に応じて秒単位で加算される料金 | NVIDIA T4ののオンデマンド料金:$0.37/時間 |
| ネットワーク料金 | 仮想マシン同士やインターネット同士で転送されたデータ量に応じて発生する料金 | Google Cloudの同じリージョン内から別のゾーンへとデータを転送:$0.01 |
| ディスク料金 | 永続ディスクやHyperdisk、ローカルSSDなどの割り当てサイズ(GiB)に応じて加算される料金 | Hyperdiskの標準設定容量:$0.000071233/1GiB hour |
※すべて東京リージョンでの価格
Cloud Storage
Cloud Storageとは、Google Cloud上で利用できるオブジェクトストレージサービスです。複数のデータをファイル単位で管理する一般的なストレージサービスとは異なり、Cloud Storageでは、階層構造ではなくIDとメタデータを用いるオブジェクト単位でデータを保存します。これにより、画像や動画、PDFといった非構造化データの一元管理が可能になります。
Cloud Storageでは、利用時にストレージ料金やオペレーション料金などが発生します。各料金の仕組みと価格の一例は次の通りです。
| 料金の種類 | 概要 | 料金の一例 |
| ストレージ料金 | オブジェクトデータを保存する際にデータ量に応じて発生する料金 | Standard Storageを利用する場合:$0.023/月 |
| オペレーション料金 | オブジェクトデータのコピーや削除、読み取りなどの処理を行った際に発生する料金 | Standard StorageでクラスAオペレーションを実行:$0.005/1,000オペレーション |
| ネットワーク料金 | ストレージ内からオブジェクトデータを転送した際に発生する料金 | Google Cloudの北米リージョンからアジアリージョンへと転送:$0.08/GB |
※すべて東京リージョンでの価格
Cloud SQL
Cloud SQLとは、Google Cloud上で利用できるフルマネージドRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)です。RDBMSは、リレーショナルデータベースの作成や削除などの構造を定義したり、アクセス権やデータの抽出範囲などを一元管理したりする役割があります。
Googleのインフラを活用できることから、OSのレイヤや物理基盤を構築することなく、PostgreSQLやMySQLなどのデータベースを利用できます。また、フルマネージドサービスなので、ハードウェアの監視や障害対応といった運用をGoogle側がすべて担ってくれるのもメリットです。
Cloud SQLでは、利用時にCPU・メモリの利用料やストレージ料金などが発生します。各料金の仕組みと価格の一例は次の通りです。
| 料金の種類 | 概要 | 料金の一例 |
| CPU・メモリの利用料 | vCPUやメモリを利用した際に発生する料金 | EnterpriseエディションのvCPUのオンデマンド料金:$0.0537/時間 |
| ストレージ料金 | データの保存量に応じて加算される料金 | SSDストレージ料金: $0.00030274/GiB hour |
| ネットワーク料金 | ストレージ内からデータを転送した際に発生する料金 | Google Cloudの別の大陸のリージョンへと転送:$0.12/GB |
| インスタンス料金 | 仮想マシンを構築する際に稼働時間に応じて加算される料金 | db-f1-microの仮想マシンを構築:$0.014/時間 |
※すべて東京リージョンでの価格
BigQuery
BigQueryとは、大容量データの解析や大規模クエリの処理に対応したデータ分析サービスです。TB(テラバイト)やPB(ペタバイト)などのデータ量でも高速で解析・処理できるため、ビッグデータの分析を行う際に役立ちます。また、SQLクエリを用いてデータの抽出や加工を行えるため、高度なプログラミング知識がなくても扱いやすいメリットがあります。
BigQueryでは、利用時にコンピューティング料金やストレージ料金などが発生します。各料金の仕組みと価格の一例は次の通りです。
| 料金の種類 | 概要 | 料金の一例 |
| オンデマンドコンピューティング料金 | クエリの処理数にもとづいてTiB単位で課金される料金 | $7.5/TiB |
| 容量ベースのコンピューティング料金 | クエリ処理にあたって容量を追加した際にスロット単位で課金される料金 | Standard Edition選択時:$0.051/slot hour |
| ストレージ料金 | BigQueryに読み込んだデータを保存する際に発生する料金 | Active logical storageを使用:$0.000031507/GiB hour |
※すべて東京リージョンでの価格
Looker
Lookerとは、さまざまなデータソースと連携可能なBI(ビジネスインテリジェンス)ツールです。Amazon RedshiftやOracle、PostgreSQLなどのさまざまなデータソースから直接データを取得し、複数のデータを組み合わせて分析を行ったり、独自のレポートを作成したりできます。
「LookML」と呼ばれる独自の言語を使用できるのも特徴です。例えば、各データソースで内部データの表記が異なる場合でも、LookMLを使って名寄せすることで、組織内での認識の齟齬を避けられます。
Lookerの料金は、StandardとEnterpriseのエディションごとに異なります。StandardエディションとEnterpriseエディションでは、APIの呼び出し件数にも違いがあります。それぞれの料金の目安は次の通りです。
| Standardエディション | Enterpriseエディション | |
| クエリベースのAPI呼び出し可能件数 | 1,000件/月 | 100,000件/月 |
| 管理APIの呼び出し可能件数 | 1,000件/月 | 10,000件/月 |
| 料金の目安 | 10万円前後/月 | 30万円~/月 |
Google Kubernetes Engine
Google Kubernetes Engine(GKE)とは、コンテナ化されたアプリケーションを管理する際の一連のプロセスを自動化できるサービスです。コンテナのデプロイやスケーリング、アプリケーションの管理といった作業を自動的に処理できます。オープンソースプラットフォームであるKubernetesがベースとなっており、セットアップなしでその仕組みをすぐに利用できるのがメリットです。
Google Kubernetes Engineでは、StandardモードとAutopilotモードによって利用料が異なります。また、クラスタを管理するための手数料も発生します。各料金の仕組みと価格の一例は次の通りです。
| 料金の種類 | 概要 | 料金の一例 |
| クラスタ管理手数料 | Google Kubernetes Engineの各クラスタに適用される管理用の費用 | 1クラスタあたり$0.10/時間 |
| Standardモード | 標準的な機能が実装されたStandardモードを利用する際の料金 | Compute Engineのインスタンスに対して料金が発生 |
| Autopilotモード | フルマネージドでノードが提供されているAutopilotモードを利用する際の料金 | ・vCPU:$0.0571/1,000hour ・メモリ:$0.0063215/GiB hour ・ストレージ:$0.0001784/GiB hour |
※すべて東京リージョンでの価格
AutoML
AutoMLとは、Vertex AI上で利用できるAIモデルを構築するためのサービスです。Vertex AIには、AIモデルの開発からトレーニング、パフォーマンスの検証などが可能な、AI開発プラットフォームとしての役割があります。
AIモデルを開発するには、与えられたデータの特徴や関連性をコンピュータが自ら習得する、機械学習の仕組みが欠かせません。機械学習を行うには、課題と仮説の定義、データ収集、予測、ルール作成といった作業が必要ですが、AutoMLを使うことでこれらの一連のプロセスを自動化できます。
AutoMLでは、利用時にトレーニング料金やデプロイ料金などが発生します。各料金の仕組みと価格の一例は次の通りです。
| 料金の種類 | 概要 | 料金の一例 |
| トレーニング料金 | コンピュータにデータを取り込み機械学習を行わせるために必要な料金 | 画像データの分類に関するトレーニング:$3.465 |
| バッチ予測料金 | 一度に大規模なデータを処理して予測を行うバッチ予測でAIモデルを開発する際の料金 | 画像データの分類に関するトレーニング:$2.222 |
| デプロイ料金 | AIモデルをエンドポイントにデプロイするために必要な料金 | 画像データ分類の学習を終えたAIモデルのデプロイ:$1.375 |
Speech-to-Text
Speech-to-Textとは、音声データをテキストデータへと自動変換できる機械学習サービスです。APIを活用しているため、プログラミングを使ってモデルを自由にカスタマイズできるほか、クラウド環境やオンプレミス環境に合わせて音声認識の仕組みを柔軟にデプロイできます。動画や議事録データなどから音声を抽出できるため、ビジネスシーンでも幅広い活用が可能です。
Speech-to-Textでは、利用するAPIの種類やモデルによって料金が異なります。2025年6月時点における最新のAPIである「Speech-to-Text V2 API」を利用した場合、次のような料金が発生します。
| 料金の種類 | 概要 | 料金の一例 |
| 標準認識モデル(認知) | 分野を問わず標準的に活用できる標準認識モデルを利用する際の料金 |
1ヶ月の総利用量50万分以内:$0.016/分 |
| 医療モデル |
医療分野に特化した医療モデルを利用する際の料金 |
1ヶ月の総利用量60分以上:$0.078/分 |
| 動的一括認識モデル(認知) | 高レイテンシでの音声認識が可能な動的一括認識モデルを利用する際の料金 | 1分あたり$0.003/月 |
Google Cloudの料金の支払方法
Google Cloudの料金を支払う際は、Googleと直接契約を交わすか、パートナー企業経由で契約するかによって方法が異なります。
Googleと直接契約を交わす場合は、クレジットカード決済(ドル建て)が基本です。一方、パートナー企業を経由してGoogle Cloudに契約すると、支払代行サービスを利用できることがあります。支払代行サービスでは、日本円での請求書を使った決済ができるため、「クレジットカードでの支払いが難しい」「円建てで決済を行いたい」などの要望がある方におすすめです。
また、一部のパートナー企業は、Google Cloudの利用料割引に対応しています。そのほか、専門家による技術コンサルティングやメールサポートなど、さまざまな支援を受けられるため、特に初めてGoogle Cloudを利用する方は、パートナー企業経由で契約するのが良いでしょう。
Google Cloudの料金を最小限に抑える4つのポイント
Google Cloudの料金をできるだけ安く抑えるには、次のポイントを意識することが大切です。
- 無料トライアルを活用する
- 各サービスの無料使用枠を活用する
- 確約利用割引の制度を利用する
- パートナー企業の利用料割引サービスを利用する
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
無料トライアルを活用する
Google Cloudには、90日間の無料トライアルが用意されています。期間中は$300分の無料クレジットが付与され、枠内での利用には費用がかかりません。そのため、期間中に各サービスの機能性や操作性を検証し、Google Cloudを最大限に活用しましょう。
過去に無料トライアルを使用したことがなく、あわせて有料版のGoogle CloudやGoogle Maps Platformなどに契約したことがなければ、無料トライアルは誰でも利用できます。90日が経過すると無料トライアルは自動的に終了しますが、決済手続きを完了しないうちは料金が発生しない仕組みです。
各サービスの無料使用枠を活用する
Google Cloudでは、30種類近くのサービスに無料使用枠が設けられています。無料使用枠とは、1ヶ月間隔で提供されるサービスを無料で使用できる範囲のことです。
例えば、データ分析ツールのBigQueryの場合、1ヶ月あたり1TBのクエリと10GBのストレージが無料枠として設定されています。実際に、1TBのクエリと10GBのストレージを使い切ると料金が発生する仕組みです。
なお、無料トライアル期間中に無料使用枠を利用した場合、無料トライアルのクレジットからそのリソースが差し引かれることはありません。例えば、BigQueryで5GBのストレージを利用したとすると、無料使用枠の枠内におさまっているため、$300分の無料クレジットはいっさい消費されません。一方、10GB以上のストレージを利用すると料金が発生し、その料金が無料クレジットから差し引かれます。
確約利用割引の制度を利用する
確約利用割引とは、1年分または3年分の利用料を一括で支払うことで割引を受けられる制度です。1ヶ月ごとに利用料を支払うケースと比べ、利用するサービスによっては、トータル費用が50%以上割り引きになることもあります。
制度を利用する際は、Google Cloudを導入する前に「Google Cloud's pricing calculator」を活用するのがおすすめです。ツールを活用することで、各サービスを利用した際の費用や、確約利用割引を活用した際の割引額などをシミュレーションできます。
パートナー企業の利用料割引サービスを利用する
Google社が認定しているパートナー企業を経由してGoogle Cloudを導入すると、利用料割引サービスが適用されることがあります。例えば、電算システムの場合は、Google Cloudの利用料が3%割り引きとなります。それに加え、IT保険やメールサポートの無償提供、技術コンサルティングといった恩恵を受けられるのもポイントです。
料金体系や仕組みを理解してGoogle Cloudの費用を最適化しよう
Google Cloudには従量課金制が採用されていますが、サービスごとに料金が大きく異なります。そのため、まずは利用したいサービスの種類を絞り込んだうえで、それぞれの料金体系をよく確認することが大切です。
Google Cloudと同じようなプラットフォームとしては、ほかにもAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureがあります。AWSやMicrosoft AzureにもGoogle Cloudと同種のサービスがあるため、それぞれの料金体系や仕組みを比較して選び分けるのも良いでしょう。以下の資料で3大クラウドサービスの比較情報を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
電算システムでは、Google Cloudのスターターパックサービスや技術コンサルティングサービスなどを提供しています。Google Cloudを活用したデータ分析基盤の構築方法や、データの活用方法などに関して、プロの観点からアドバイスを行っています。「Google Cloudを活用したいが具体的なイメージが湧かない」といったお悩みを抱える方は、ぜひ電算システムへと気軽にお問い合わせください。
監修者
<保有資格>
・Associate Cloud Engineer
・Professional Cloud Architect
・Professional Data Engineer
・Professional Cloud Database Engineer
・Professional Cloud DevOps Engineer
・Professional Cloud Developer
・Professional Cloud Security Engineer
・Professional Cloud Network Engineer
・Professional Workspace Administrator
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