「もっと簡単にアプリ開発ができたら業務効率が上がるのに…」
そんな風に思っている方は多いのではないでしょうか。AppSheetはノーコードでアプリ開発ができる便利なツールですが、それでもアプリの設計や構築にはある程度の知識や時間がかかります。
そこで注目されているのが、AppSheetのGemini機能です。GeminiはGoogleが提供する生成AIサービスで、AppSheetと連携することで、チャットでの指示だけでアプリのたたき台を自動生成できるようになります。
この記事では、AppSheetのGemini機能の概要から使い方、メリットまで詳しく解説します。
Gemini in Appsheet とは?ノーコードツールの生成AI機能
Gemini in AppSheetは、AppSheetの開発をサポートする生成AI機能です。
チャット形式の会話だけで、アプリの設計や機能のアイデア出し、さらにはデータ構造の検討まで、アプリ開発の初期段階をスムーズに進めることができます。
Googleが提供する生成AI、Gemini。その力をノーコード開発ツールAppSheetに組み込んだのが「Gemini in AppSheet」です。
AppSheetは、プログラミングの知識がなくてもウェブアプリやモバイルアプリを開発できるGoogleのサービスです。2023年5月に発表されたGemini in AppSheetは、このAppSheetでの開発をさらに加速させることができます。
Gemini in AppSheetには、2つの異なるアクセス方法があります。
一つはAppSheetのサービス画面上で直接利用できるチャット形式、もう一つはGoogle Chat上で利用できる「Gemini in AppSheet Chatアプリ」です。どちらもチャットからアプリのたたき台を作成してくれる機能は同じですが、利用シーンに合わせて使い分けられるのがポイントです。
- AppSheetのサービス画面上で直接使うGemini
AppSheet画面から、アイデアや利用したいアプリの概要を入力することで、アプリのたたき台を生成してくれます。 - Gemini in AppSheet Chatアプリ
Google Chat上で、AppSheetの画面を開かなくても、チャット形式でGeminiにアプリのたたき台作成を依頼するチャットボットです。
どちらの方法を選んでも、Geminiの強力なサポートでアプリ開発を効率化できます。
今回は、AppSheetのサービス画面で利用できる「Gemini in AppSheet」に焦点を当てて解説します。Gemini in AppSheet Chatアプリについては、筆者の環境ではまだ展開されていないため、今回は割愛させていただきます。
しかし、基本的な機能は同じなので、この記事の内容はChatアプリを使う際にも役立ちます。
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Gemini in Appsheet の利用条件
Gemini in AppSheet を利用するには、特定の AppSheet 有償ライセンスまたは Google Workspace 有償エディションが必要です。また、AppSheet と Google Chat の設定を確認し、必要に応じて有効化しましょう。なお、Gemini in AppSheet は現在(2024年9月27日)段階的に展開中のため、利用できない場合もありますので、ご注意ください。
Gemini in Appsheet の契約
Gemini in AppSheet 機能を利用するには、特定の AppSheet 有償ライセンスまたは Google Workspace 有償エディションが必要です。
Gemini in AppSheet の利用のためには、下記の AppSheet の有償ライセンスが必要です。
<AppSheet>
・Core/Enterprise Standard/Enterprise Plus
2023年7月のアップデートにより、多くのGoogle Workspace エディションに AppSheet Coreライセンスが含まれるようになりました。
対象になる Google Workspace の契約がある場合、新たに AppSheet の有料版の契約をする必要はありません。
<上記のAppSheet Coreライセンスが含まれるGoogle Workspace のエディション>
カテゴリ | エディション |
Business | Google Workspace Business Starter Google Workspace Business Standard Google Workspace Business Plus |
Enterprise | Google Workspace Enterprise Standard Google Workspace Enterprise Plus |
Education | Google Workspace for Education Standard Google Workspace for Education Plus |
Essentials | Google Workspace Enterprise Essentials Plus |
Frontline | Google Workspace Frontline Starter Google Workspace Frontline Standard |
Nonprofits | Google Workspace for Nonprofits |
ご自身の契約内容が Gemini in AppSheet の利用要件を満たしているか、ぜひご確認ください。
AppSheetの設定
AppSheetの管理者がAppSheetの組織またはチームのユーザーに対してGemini in AppSheetを制御することができます。
デフォルトではGemini in AppSheetは有効化されているため、利用できない場合はご確認ください。
Gemini in AppSheet を「有効または無効にする」には、次の操作を行います。
①AppSheet にログインして、アカウント プロファイルのプルダウンで [My team] を選択します。
②[Settings] をクリックします。
※画像は画像はGoogle Workspace Enterprise Plusに含まれるCoreライセンス環境のため[Core Settings]を選択しています。
③[Disable Gemini app creation] を有効または無効にします。
※チェックを入れると、Gemini in AppSheet が利用できなくなります。
④[Save] をクリックします。
上記の手順で、Gemini in AppSheet機能を簡単に制御できます。必要に応じて設定を変更し、組織のニーズに合わせて活用してください。
また、現時点(2024年9月27日)では段階的に展開されている機能のため利用できない場合があります。
Gemini in AppSheet の一般提供(GA)リリースは、AppSheet Core および AppSheet Enterprise Plus をご利用の Google Workspace のお客様、および AppSheet Publisher Pro、AppSheet Starter、AppSheet Core、AppSheet Enterprise Plus をご利用の個人アカウントを含む、すべての AppSheet 有料アカウントに提供されます。 Gemini in AppSheet を使用してアプリを作成する - AppSheet ヘルプ |
Google チャットの設定
Gemini in AppSheet Chat アプリを活用する前に、管理コンソールでいくつかの設定を確認しておきましょう。
まず、Google Chat が利用可能であることを確認してください。Google Chat は Gemini in AppSheet Chat アプリの基盤となるため、利用できない場合はアプリ自体も利用できません。
・管理コンソール>アプリ>Google Workspace>サービスのステータス
Googleチャットが「オン」にっていることを確認
次に、Google Chat の設定を確認しましょう。「Chat 用アプリのアクセス設定」で、ユーザーが Chat 用アプリを利用できるようになっているかを確認してください。この設定が有効になっていない場合、Gemini in AppSheet Chat アプリを含む Chat 用アプリを利用することができません。
・管理コンソール>アプリ>Google Workspace>Googleチャットの設定>Chat用アプリ
Chat用アプリのアクセス設定が「オン」になっていることを確認
最後に、Google Workspace でアプリケーションをホワイトリスト方式で管理している場合は注意が必要です。Gemini in AppSheet Chat アプリを個別で許可する必要があります。ホワイトリストに登録されていないアプリは利用できないため、この手順を見落とさないようにしましょう。
・管理コンソール>アプリ>Google Workspace Marketplaceアプリ>アプリを許可リストに登録
「Gemini in AppSheet」 Chatアプリを登録
これらの設定を確認することで、Gemini in AppSheet Chat アプリをスムーズに利用開始できます。
Gemini in Appsheet のはじめ方
Gemini in AppSheet を始めるための具体的な手順を詳しく解説します。
<AppSheetでの始め方>
1. AppSheet へアクセス: まず、AppSheet にログインします。
2. ライブラリのインストール新規アプリ作成: 画面上部の [+ Create] ボタンをクリックし、
[App] -> [Start with Gemini] の順に選択します。
3. 利用規約への同意: 表示される利用規約を確認し、同意できる場合は [Continue] ボタンをクリックします。
4. チャット画面の表示: チャット画面が表示されたら、AppSheet で Gemini を利用する準備が完了です。
Google Chat からの利用の場合、以下の手順で Chatbot をインストールしましょう。
1. Google Chat を開く: Google Chat (https://mail.google.com/chat)を起動します。
2. 新規チャット作成: [チャットを新規作成] ボタンをクリックし、 [アプリを検索]を選択します。
3. Gemini in AppSheet を検索: 検索フィールドに「Gemini in AppSheet」と入力し、表示された Chatアプリの「Gemini in AppSheet」をクリックします。
4.「インストール」をクリックします。
5. インストール完了のポップアップが表示されるので、「完了」をクリックして、Marketplaceを閉じます。
6. Google Chat にGemini in AppSheetが表示されたら、Chatアプリ のインストールは完了です。
Gemini in AppSheet Chat アプリは、現時点では Google Workspace を利用している一部のお客様にのみ提供されています。
注: Gemini in AppSheet Chat アプリは、Google Workspace をご利用のお客様のみが使用できます。当初、この製品は一部のお客様のみに提供されますが、順次対象となるすべてのお客様に提供していきます。アクセス権をリクエストされる場合は AppSheet セールスの担当者にお問い合わせください。 Gemini in AppSheet Chat アプリを使用してアプリを作成する - AppSheet ヘルプ https://support.google.com/appsheet/answer/13785572 |
まだ Gemini in AppSheet が展開されていない環境では、チャットを試みると「Gemini in AppSheet Chat アプリは現在、一部のお客様のみに提供されています。」というメッセージが表示されます。
Gemini in Appsheet の使い方
Gemini in AppSheet を活用すれば、コーディングなしでアプリのたたき台を作成できます。さらに、必要に応じてカスタマイズすることで、より実用的なアプリへと進化させることが可能です。
Chat Bot に入力する
アプリ作成の第一歩として、Geminiにテキスト形式で指示(プロンプト)を与えましょう。
今回は勤務時間と場所を入力する打刻アプリの作成をしてみます。
画面下部のプロンプト入力画面に下記の内容を入力します。
Please provide instructions on how to create a time clock app in AppSheet. The app should allow users to input their work hours and the location where they worked. |
※日本語でも入力することができ、結果も出力されますが、現在日本語はサポート対象外となります。(2024年9月30日時点)
Chat Bot と対話する
指示を受け取った Gemini は、必要なデータベースのテーブルとその項目を自動で提案します。
今回は下記のように、「Users(利用者)」テーブル、「Reports(レポート)」テーブル、「Work Records(勤務時間)」テーブルが自動提案されました。それぞれのテーブルに含まれる列情報も提案されています。
内容を確認して、必要に応じて手動でカスタマイズすることもできます。
アプリの作成(Create App)をクリックする
提案されたデータ構造に問題がなければ、「+Create app」をクリックします。
新しいタブが開く:アプリ作成中の画面が表示されます。
アプリのたたき台が生成:編集画面に遷移し、「Customize with AppSheet」をクリックします。
既にダミーデータが含まれたアプリのたたき台が完成しています。
アプリがレンダリングされる
AppSheet の編集画面に入力された内容を反映したアプリのたたき台がレンダリングされます。
この際、アプリケーションのデフォルトデータベースとなる AppSheet データベースも生成されます。 アプリケーションはプレビュー画面で動作イメージを確認することができます。
必要に応じて調整、保存する
データ項目名や表示形式など、変更が必要な場合はユーザー自身で調整できます。
作成したアプリケーションは AppSheet の編集画面で右上の「保存(Save)」ボタンで保存し、デモとして確認できます。
今回は、下記の点を修正してみました。
・画面に表示されるデータの見せ方の変更
・画面下部のアイコンの変更
これにより各ユーザーの時間が一目で確認できるようになりました。
実際の利用までにはもう少し調整が必要になりますが、ここまでコーディングを行わず、プロンプトのみでアプリのたたき台の作成ができました。
※注意事項
・Gemini in AppSheetを利用してアプリを作成すると、 AppSheetデータベースが作成されます
・AppSheet CoreではAppSheetデータベースは10個までしか作成できない為、すぐに上限に達してしまう可能性があるので、スプレッドシートに接続し直すなど、工夫して利用しましょう
制限事項と既知の問題 - AppSheet ヘルプ
https://support.google.com/appsheet/answer/12653576?hl=ja
1つのアプリを作成するたびに1つのデータベースが作成されます。
Gemini in Appsheet を利用するメリット2選
AppSheet に Gemini 機能が搭載されたことで、アプリのたたき台が簡単に作成できるようになります。多様なデバイスや OS に対応したアプリをエンジニアではない方でも簡単に構築できるようになった点は、Gemini in Appsheet の大きなメリットと言えるでしょう。
本章では2つのメリットについて詳しく説明します。
非エンジニアだけでアプリ構築できる
コードを書けないエンジニアではない方にとって、Gemini in Appsheet は非常に便利な機能です。
今までできなかった「ちょっとした便利になるアプリの構築」を Gemini for AppSheet に任せることで、エンジニアの手を煩わせることなく実現できます。
これにより、本来の業務を妨げる「ちょっとした開発」の回数を大幅に減らすことが可能です。
Gemini in AppSheetは便利な機能ですが、データ構造などを事前に学んでおくことで、より的確なチャット指示ができ、期待通りのアプリに近づきやすくなります。データ構造の仕組みなどについては、AppSheet のヘルプ「データ: 基本情報」で簡単に説明されているので、一度目を通してからアプリ作成に取り掛かることをおすすめします。
データ:基本情報 - AppSheet ヘルプ
https://support.google.com/appsheet/answer/10106580?hl=ja
差異を補完した自動レンダリング
AppSheet はアプリの作成の際、自動的にパソコン・モバイル・タブレットの全てに対応するようにレンダリングを行います。
デバイスのみならず、モバイルにおいても iOS と Android のようにOSが異なる場合もフォローしています。アプリの利用環境が一様でない場合においても柔軟に対応できるアプリを構築することが可能です。 AppSheet 自体に多くの機能が組み込まれています。
また、カメラを使うアプリなどは、通常であればデバイスやOSごとに調整する必要がありますが、AppSheet においてはその対応は必要ありません。それぞれのデバイスに適した機能・表示を簡単にアプリに盛り込むことができます。
ちょっとしたルーティンワークにはAppsheetがおすすめ!
AppSheet の Gemini 機能は、まだ進化の途上にあります。今後のアップデートや提案するアプリケーションの精度の向上により、その可能性はさらに広がっていくでしょう。
ノーコード開発と生成AIの融合により、チャット形式のプロンプトだけでアプリケーション、データベースを作成することができるようになり、アプリ開発における時間と労力を大幅に削減します。
エンジニアの方にとっては、従来の複雑なコーディング作業から解放され、アイデアを形にすることに集中できるようになります。
また、エンジニアではない方にとっても、専門知識なしに簡単にアプリ開発を行うことで、業務効率化を自らの手で行うことができます。
新しい機能が続々と追加される前に、AppSheet について深く学んでおくことで、その可能性を最大限に活用するための準備を始めることをお勧めします。
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