皆さんの会社ではどういった形式でファイル共有を行っているでしょうか?一般的にはファイルサーバーを設置するかと思いますが、中小企業ではNASを設置したりローカルに保存したファイルをメール等で共有しているというケースもあるでしょう。
実は、このファイル共有の方法一つで組織の労働生産性が左右されてしまいます。その理由の一つが管理すべき情報の増大です。企業では常に情報が生成されており、これを長期的に管理する必要性が高く、かつ組織内外で共有すべきファイルも年々増加しています。
今までファイル共有からの労働生産性向上について考えていなかった場合、今一度その環境について考え直すタイミングではないでしょうか。今回は、従来のファイル共有方法について整理しつつ、現在主流となっているクラウドによるファイル共有についてご紹介します。
従来のファイル共有方法
まずは従来のファイル共有方法について確認していきましょう。
ファイルサーバー
ファイルサーバーとは社内ネットワーク(LAN)に設置され、組織全体あるいは部門ごとのファイル共有スペースとして機能するコンピューターのことを指します。意外と知られていないことですが、必ずしも専用に設置したサーバーがファイルサーバーではないということです。
たとえばファイル共有システムを構築するためのソフトウェアをパソコンにインストールし、ファイル共有スペースとして利用すればそれもファイルサーバーになります。あくまで「ファイル共有スペースの提供者(サーバー)となるコンピューター」がファイルサーバーです。
ファイルサーバーは組織全体あるいは部門ごとに細かなユーザー管理が可能であり、アクセス権限を管理することでセキュリティを強化できる特徴があります。ただし導入費用や運用費用、電気代等のコストがかかる方法でもあります。
パソコンベース
ファイルサーバーを設置せずとも社内ネットワークで接続されたパソコン同士でファイル共有を行うことも可能です。たとえばWindows 10を搭載しているパソコンでファイル共有を行う場合、ファイルエクスプローラーを起動して共有したいファイルで右クリックをします。
表示されたメニューの中からプロパティを選択し、共有タブに移動してネットワークのファイルとフォルダの共有欄にある共有をクリックします。「共有する相手を選んでください」という画面が表示されるので、共有したい相手のユーザー名を入力して共有をクリックします。
その際に「すべてのパブリックネットワークにネットワークの探索とファイル共有を有効にしますか?」と表示されるので、はい か いいえを選択します。
このようにパソコンとそれを繋ぐネットワークさえあれば設定によってファイル共有は可能です。ただしファイルサーバーのように一ヵ所の共有スペースが存在しているわけではないため、共有に手間がかかります。小規模事業者等では問題なく機能するとは思いますが、ある程度従業員数が増えると非効率な方法になります。
メールベース
パソコン同士でファイル共有設定をせずにメールだけでファイル共有を行うという方法もあります。設定も不要でコストもかからない方法ですが、ファイル共有の度にメールを送信しなければならなく、一番手間がかかる方法です。
NAS(Network Attached Storage)
NASとは社内ネットワーク上に設置されたストレージ装置のことであり、ファイルサーバーと違う点はNAS単体でファイル共有スペースとして機能することです。NASの形態は様々ですが一般的には小さな箱の形をしており、これを有線もしくは無線でネットワークに接続し、ネットワーク上にあるすべてのパソコンからアクセス可能な状態にします。
一般的なNASはユーザー管理機能等は無く、単なるファイル保存・共有スペースとして存在するだけです。ただし近年ではNASも高度化し、ユーザー管理機能やアクセス権限を設定できるものも登場しており、ファイルサーバーとしての役割を果たす製品もあります。
難点としては拡張性が低く、ファイルサーバーのように必要に応じてストレージを追加することが難しいという点です。ただしRAID構成を持つNASならばストレージの拡張が比較的容易に行えます。
クラウドストレージとは?
ここまでご紹介したのが従来のファイル共有方法です。いずれの方法にもメリットとデメリットがあり、シーンによって使い分けることで円滑なファイル共有を実現してきました。しかし近年では情報量の劇的な増加や、働き方改革へのニーズ向上によって従来のファイル共有方法では対応し切れないケースが増えています。
そこで多くの企業が採用しているファイル共有方法が“クラウドストレージ”です。これは、従来ローカルネットワークで行ってきたファイル共有スペースの構築をクラウド(インターネット)上に構築するという方法であり、一般的にはクラウドストレージ専用サービスを利用します。
ファイルサーバーやNASならば社内ネットワークに専用機器を設置する必要がありますが、クラウドサービスの場合は違います。必要なのはインターネット接続環境とパソコン、サービスから発行されるIDとパスワード、そして継続的な契約料金の支払いです。これさえあれば今すぐにでも組織全体で利用できる大規模なファイル共有スペースを構築できます。
総務省が発表した「平成29年版 情報通信白書」によると一部でもクラウドサービスを利用していると回答した46.9%の企業のうち、半数以上がクラウドサービスを利用してファイル共有を行っています。クラウドストレージがここまで浸透している理由として以下の5つが考えられます。
情報量の劇的な増加
近年、企業ごとの情報量が劇的に増加していることは日々肌で実感されていることかと思います。そうした情報は企業にとっての資産であり、中長期的に保管すべき対象になります。しかし、従来のファイル共有方式では情報量の劇的な増加に耐えられず、対応しようとすればコストばかり肥大化します。クラウドサービスはストレージ容量を自由に増減できるため、こうした時代の変化にも対応できます。
働き方改革への挑戦
政府が推進する働き方改革は、日本のあらゆる企業の課題となっており、新しいワークスタイルの提案に取り組む企業が増えています。特にリモートワークへのニーズが高く、インターネット経由で利用できるクラウドストレージが高く評価されているのです。
スマートデバイスの普及
スマートフォンやタブレットがビジネスで積極的に利用されるようになるなか、社内システムへのアクセシビリティ(アクセスの容易性)向上に着目する企業が増えました。クラウドストレージはそのニーズが完全に満たしています。
セキュリティの強化
セキュリティ体制が堅牢なプロバイダ(提供事業者)のクラウドストレージを利用すると、それ自体がセキュリティの強化に繋がると気づき始めた企業が増えています。独自のセキュリティ体制を構築するよりも安価に、強力なセキュリティが講じられます。
BCP対策の一環
火災や自然災害によっていつ社内システムがダメージを受け、重要情報が損失するか分からない時代です。そのためBCP(事業継続計画)対策の一環として、クラウドストレージをファイル共有スペースとして利用したり、バックアップ先として選択する企業が増えています。
以上のように、クラウドストレージを利用することで、企業は様々なメリットを享受し、情報利活用の促進、組織内コミュニケーションの活性化につなげることができます。今一度自社のファイル共有方法について見つめ直し、クラウドサービスの利用をぜひご検討ください。
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