業務システムやアプリケーションを利用する際は、オンプレミスとクラウドの用語を目にする機会も多いのではないでしょうか。両者はシステムやアプリケーションの導入形態を指し、それぞれ明確な違いがあります。
導入形態次第でコストや運用工数、セキュリティなどが大きく変わるため、オンプレミスとクラウドの違いをしっかりと理解しておくことが重要です。両者の特徴や役割を押さえることで、適切な場面でそれぞれの利点を活かせます。
本記事では、オンプレミスとクラウドの違いについて、5つの比較ポイントを解説します。それぞれの特徴にもとづいた向き・不向きも紹介しているので、どちらの導入形態が最適か迷っている方は参考にしてください。
オンプレミスとクラウドの特徴
オンプレミスとクラウドの違いを理解するには、まずそれぞれの特徴を押さえることが大切です。オンプレミスとクラウドに分けて両者の特徴を詳しく解説します。
オンプレミスの特徴
オンプレミスとは、ハードウェアやソフトウェアを自社で保有・管理する形態です。自社で構築したサーバーやネットワーク機器、さらにはパソコンなどの端末にインストールしたソフトウェアやアプリケーションはオンプレミスに該当します。
自社でシステムの仕様を決め、それをもとに自社で構築作業を行う(開発や導入のみ外部に委託するケースもある)のが特徴です。そのため、システムの仕様を柔軟にカスタマイズできます。機能やセキュリティなどの仕様をシステムへと正確に反映するなら、オンプレミスの形態が向いています。
クラウドの特徴
クラウドとは、ハードウェアやソフトウェアをインターネット上で利用する形態です。ベンダーが運営するサーバーやミドルウェアなどを借り受けるクラウドコンピューティングや、インターネット環境さえあれば利用できるクラウドサービスなどの種類があります。
どのようなサービスを利用するにしても、自社でハードウェアやソフトウェアを構築・導入する必要がありません。基本的には、IDやパスワードがあればシステムにアクセスできます。そのため、導入費や開発費を最小限に抑えられます。
オンプレミスとクラウドの違い
オンプレミスとクラウドの違いについて、5つの観点から解説します。参考として、オンプレミス型の業務システムと、クラウド型の業務システムを比較しています。
業務の生産性
業務の生産性は、オンプレミスよりもクラウドが優れています。紙の業務に比べると、オンプレミスとクラウドは、どちらも業務効率化に寄与します。しかし、オンプレミスの場合は、クラウドに比べて何かと手間がかかりがちです。
例えば、オンプレミスの業務システムは、導入当初のバージョンが固定されます。最新状態のバージョンを保つには、手動でのアップデートが必要です。また、サーバー・ネットワーク導入の工数が発生するのも難点です。
一方、クラウドの業務システムは、常にインターネットに接続されているため、最新バージョンへと自動的にアップデートできます。ベンダーのサーバーやネットワークを基盤にサービスを利用できるので、ハードウェアを構築する必要もありません。
効率良くシステムを利用すれば、従業員がコア業務に注力できます。業務効率化だけでなく生産性向上にも力を入れるなら、オンプレミスよりもクラウドが向いているでしょう。
サーバーの管理方法
業務システムを運用するうえでサーバーの管理工数を削減する場合は、クラウドがおすすめです。
オンプレミスの業務システムは、自社でサーバーを構築する必要があります。保守管理も自社の責任で行います。すると、必然的に物理的な設置スペースが必要です。社内にサーバーを設置することもあれば、台数が多くなるとデータセンターに機器を格納するケースもあるでしょう。いずれにしても高額な予算を確保しなければなりません。
その点、クラウドの業務システムは、自前でサーバーを用意せずに済みます。業務システムに保存したデータは、ベンダーのサーバーに保管されるためです。保守管理もベンダーの責任範囲に含まれるため、導入から運用まで、ほとんど手間がかかりません。
以上の点から、オンプレミスよりもクラウドのほうがサーバーの管理工数を抑えられます。
アクセス方法
システムへのスムーズなアクセスを可能にするのは、オンプレミスではなくクラウドです。
オンプレミスの業務システムは、社内ネットワーク内でのみアクセスが認められています。例えば、社内にあるシステムがインストールされた端末からはアクセスが可能ですが、取引先や顧客、外部の専門家が同システムにアクセスすることはできません。外部にデータを送る際は、データのエクスポートやメールでの送信といった作業が必要です。
クラウドの業務システムの場合、使用する端末や人物、場所にかかわらず、IDやパスワードがあればアクセスが可能です。取引先や顧客、テレワーク中の従業員も対象に含まれます。しかし、この状態では不正アクセスを招く恐れがあるため、アクセス可能なユーザーやアクセス権を設定するのが一般的です。
このような違いから、情報共有や働き方改革を促進するならクラウドが向いているでしょう。オンプレミスの場合でも、外部との共有環境を構築できますが、VPN(仮想プライベートネットワーク)や仮想デスクトップなどを用意する必要があり、コストや手間がかかります。
データの保全方法
オンプレミスとクラウドの業務システムを比較した場合、どちらもデータのバックアップが必要です。バックアップがなければ、万が一データが消失した際に復元できません。結果、一からデータを作り直したり、取引先に迷惑をかけたりと、さまざまなリスクが生じます。
ただし、オンプレミスとクラウドではバックアップの方法がやや異なります。オンプレミスの業務システムでは、手作業でバックアップを取るのが基本です。一方、クラウドの業務システムは自動バックアップに対応しているケースが多く、オンプレミスよりも手間を抑えられます。
セキュリティ
システムのセキュリティ面を重視する場合は、オンプレミスが向いています。
セキュリティはサーバーやデータセンターの堅牢度に依拠します。オンプレミスの業務システムでは、自社でサーバーやデータセンターを構築するため、厳格な要件でも柔軟に反映できるのが特徴です。
一方、ベンダーがサーバーやデータセンターを運営しているクラウドの業務システムは、自社でセキュリティをコントロールできません。つまり、ベンダーが実施しているセキュリティ対策に依存するということです。多要素認証やアクセス制限など、システム内ではセキュリティ対策を行えるものの、サーバーの監視や侵入検知システムといった根本的な部分を変更できない点に注意が必要です。
ただし最近では、非常に堅牢なデータセンターを備えたクラウドサービスも数多く登場しています。そのため、安全性の高いクラウドサービスを選び分ければ、セキュアな環境でシステムを利用することも可能です。
オンプレミスとクラウドはどのように選び分けるべきか?
オンプレミスとクラウドには明確な違いがあるため、向き・不向きも異なります。事業内容や目的などをもとに、どちらが自社にとって最適かを見極めましょう。
オンプレミスが向いているケース
オンプレミスは、システムの仕様を自由にカスタマイズできるのが特徴です。既製品にはない機能やセキュリティ対策でも、オンプレミスなら柔軟に自社の要件を反映できます。そのため、「自社独自の機能を盛り込みたい」「セキュリティ要件が厳しくて既製品では対応が難しい」といったケースに最適です。
また、可用性に優れるのもポイントです。クラウドの場合、自然災害やサイバー攻撃などでシステム障害が発生すると、復旧するまでサービスを利用できません。しかし、オンプレミスであれば、自社でサーバーを管理しているため、速やかに問題の特定や復旧につなげられる可能性があります。
クラウドが向いているケース
クラウドは、自社でサーバーやネットワーク機器などを用意する必要がありません。導入や開発の手間を抑えられるほか、保管スペースを確保せずに済むのも利点です。そのため、「導入コストを最小限に抑えたい」「物理的なスペースを確保するのが困難」といったケースに最適です。
また、アクセス性に優れるのも、クラウドならではのメリットだといえるでしょう。社内の従業員だけでなく、権限を持つ取引先担当者や顧客、テレワーク中の従業員でも、同じシステム内にアクセスできます。そのため、社内外を含めたコミュニケーションを円滑にしたり、部門間連携を深めたりする場合に、クラウドが効果を発揮します。
オンプレミスからクラウドに移行するメリット3選
オンプレミスからクラウドに移行するメリットは次の通りです。
- コスト削減につながりやすい
- 導入や運用の工数を削減できる
- BCP対策を強化できる
オンプレミスにもメリットはありますが、時代背景を考えるとクラウドのほうが享受できる恩恵は大きいでしょう。それぞれのメリットについて詳しく解説します。
コスト削減につながりやすい
クラウドでは、ハードウェアの導入費やソフトウェアのライセンス料が不要です。サービス利用開始時の初期費用が無料に設定されているケースも珍しくありません。また、クラウドサービスの多くはサブスクリプション型の料金体系で、利用料を月・年単位で分割できます。
このようなメリットがあることから、クラウドはオンプレミスよりもコストを抑えやすい傾向にあります。予算が不足しがちな中小企業や個人事業主でも、手軽に導入できるのが利点です。
導入や運用の工数を削減できる
サーバーやネットワーク機器を自前で用意する必要がないクラウドの特徴は、導入時や運用中の工数削減へと帰結します。クラウドであれば、サーバーの設置工事やスペック向上のための増設、定期的なメンテナンスといった作業はすべて不要です。そのため、ハードウェア運用のノウハウだけでなく、エンジニアや保守管理責任者といった人的リソースの削減にもつながります。
BCP対策を強化できる
BCP対策とは、災害やサイバー攻撃、システム障害といった緊急事態時にスピーディな復旧や事業継続ができるよう、適切な計画を立てておくことです。クラウドの場合はベンダーにもよりますが、複数の拠点にデータセンターがあり、保管するデータが分散されているケースも少なくありません。このような場合は、さまざまなセキュリティ対策のもと、データセンターが運営されています。
オンプレミスの環境下で、データの分散や高セキュリティレベルのデータセンター構築を行おうとすると、高額なコストと多大な手間がかかります。そのため、BCP対策を重視するなら、クラウドを選択するのがおすすめです。クラウドを選ぶ場合でも、安全性の観点から適切なものを選別することが重要です。
Google Cloudでスムーズなクラウド移行を
オンプレミスからクラウドへと移行する際は、Google Cloudの導入を検討してみてはいかがでしょうか。Google Cloudとは、100種類以上のサービスが搭載されたクラウドプラットフォームです。クラウド移行する際は、次のようなサービスを活用できます。
- Compute Engine:Googleが持つハードウェアやネットワークを仮想マシンとして利用可能
- App Engine:アプリケーションの開発・実行環境をクラウド上で構築できる
- Cloud Storage:社内に蓄積されたあらゆるデータを1ヶ所に集約できる
- BigQuery:ビッグデータのリアルタイム分析が可能
など
それぞれのサービスは従量課金制なので、利用した分しか料金が発生しません。また、単体でサービスを利用できるのはもちろん、複数を組み合わせて独自の環境を構築できるのも特徴です。クラウドサービスといってもさまざまな種類がありますが、Google Cloudなら必要なサービスを一括で利用できます。
オンプレミスとクラウドの違いを理解して適切な環境を構築しよう
業務システムやアプリケーションなどを導入する際は、オンプレミスとクラウドの違いを理解することが重要です。基本的にオンプレミスはカスタマイズ性に優れ、クラウドはコストの低さや業務効率性に強みを持ちます。
両者にはメリット・デメリットの両面があるものの、多様な働き方やDXといった視点が求められる現代のビジネスでは、クラウドのほうが導入メリットは大きいといえます。そのため、この機会にオンプレミスからクラウドへと移行するのも一案です。
電算システムでは、環境構築やコンサルティングなど、Google Cloudの導入支援サービスを提供しています。専門領域に精通した数多くのエンジニアが在籍しているので、スピーディかつ質の高いサポートを行えるのが強みです。さらに、電算システムのリセールサービスを活用すれば、Google Cloudの利用料に関する請求書発行や割引などを利用できます。Google Cloudと電算システムについては以下の資料で詳細を紹介しているので、参考にしてください。
- カテゴリ:
- Google Cloud(GCP)
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- オンプレミス クラウド