Google が提供するコラボレーションツールの“Google Workspace(旧 G Suite)”にはワークフロー機能がありません。
ご存知の方も多いと思いますが、グループウェアにおけるワークフロー機能とは主に社内の申請承認のプロセスを電子化するための機能です。申請者はシステムの申請フォームから必要なものを選んで情報を記入し、ファイルを添付すれば適切な決裁者に向けて自動的に承認フォームが送信されます。
承認プロセスがどこで止まっているか、誰が確認していないかが明確になりますし、今や当たり前になったテレワークでの申請も容易です。
Google Workspace を検討されていたり実際にご利用されていると、このワークフローが欲しい、もしくは「ワークフローさえあれば完璧なのに…」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は Google Workspace でどのようにワークフロー機能を実現するか?についてご紹介します。
Google Workspace でワークフローを実現する3つの方法
Google Workspaceでワークフローを実現するには3つの方法があります。
1つ目に、Googleスプレッドシートと Google App Script(GAS) を組み合わせたり、ドキュメントの承認機能を使用して簡易的なワークフローを作る方法。
2つ目に、Appsheetを利用してワークフローを作る方法。
3つ目に、サードパーティー製のアドオンでワークフローを利用する方法。
本稿ではこの3つの方法を順番にご説明いたします。
Googleドライブの機能で、どこまでワークフローは実現できる?
Google Workspace(旧 G Suite)を使用しているユーザーの中には Google スプレッドシート を活用したワークフローをカバーしている企業もあります。Google スプレッドシート とはオールクラウドで使用できる表計算ソフトであり、Excel®のような操作性で気軽にファイルを共有したり共同作業が行えるのがメリットです。また、Excel®におけるマクロのようなポジションの Google App Script(GAS) という作業自動化の機能も持っています。
利用されたことのある方も多いかと思いますが、Google Workspaceでは「Googleフォーム」というアンケートや問い合わせに利用出来るフォームを作成することができます。このフォームはGoogleスプレッドシートに連携しており、ユーザーによって回答が行われると、その閲覧や集計をGoogleスプレッドシート上で行うことができます。このアンケートフォームを申請用フォームと見立てて、Googleスプレッドシート上に回答が入って来たら先述のGoogle App Script(GAS) を利用して自動的にプログラムを動かす、という仕組みを活用します。これでひとまずは Google スプレッドシート を用いた簡易なワークフローが完成します。
また、2021年11月には、Googleドキュメント・スプレッドシート・スライドで正式な承認をリクエストしたり、レビューしたりする機能が正式機能としてリリースされました。(※)
ユーザーは、ファイルに対してレビュー担当者を設定することができます。レビュー担当者がファイルを承認すると、ファイルはロックされて他のユーザーがファイルを編集したり、コメントや提案も追加できないようになります。レビュー担当者は複数人設定することができ、その場合は全員が承認するまで承認完了とはならず、一人でも却下するとそのファイルはすべてのレビュー担当者から却下されたとみなされます。
ただし、こうしたワークフローは組織内で本格的に活用するというよりは、小さなチーム内でシンプルに利用する用途に向いています。例えば、部内の見積もり承認や、添付資料の不要な申請などです。
詳細な記載が必要な出張申請・交通費申請や、経路分岐のある申請などで本格的に活用するのは少し難しいかもしれません。Google Apps Script を利用する場合は、コードを書くための専門知識もある程度は必要になります。
Google Workspace アプリケーション の機能でもワークフローを実現することは出来ますが、実際には少々ハードルが高いかもしれません。
※ドキュメントの承認機能は、Google Workspace Essentials、Business Standard、Business Plus、Enterprise Essentials、Enterprise Standard、Enterprise Plus、Education Plus、Nonprofits、および G Suite Business、G Suite Enterprise、Drive Enterprise、G Suite for Education、G Suite Enterprise for Education、G Suite for Nonprofits にて利用可能です。
Appsheetでワークフローを作る
Google Workspace Enterprise Plus プランを利用されている方におすすめできるのがAppsheetです。AppsheetとはアジャイルでDXを実現できるノーコードプラットフォームです。現在アナログのまま残っている業務や簡易なワークフローなどは専門的な知識がなくてもこのAppsheetで代替させることができます。
Google Workspace Enterprise Plus プランはセキュリティ関連の機能が充実しているので、もし上位プランを検討されている場合、Appsheetが利用出来ることも一材料にして頂ければと思います。
Google Workspace(旧 G Suite)でワークフローを構築するためには?
Google Workspace(旧 G Suite)でワークフローを構築する場合に一番現実的なのが、Google Workspace と連携可能なサードパーティ製アドオンのワークフローシステムを導入することです。
ここでは、クラウドサービスのワークフローシステムを2つご紹介します。「Gluegent Flow(グルージェントフロー)」と「rakumo(ラクモ)」です。どちらもGoogle Workspace同様にインターネット経由で利用でき、シームレスに連携するサービスです。
Gluegent Flow には次のようなポイントがあります。
Gluegent Flowの最大の特長は、Google Workspaceと組み合わせて利用することを視野に開発されているため、Google Workspaceとの豊富な連携機能を持っていることです。Google Workspaceのユーザアカウントをそのまま利用できるアカウント連携機能はもちろん、Google グループの組織階層も取得できるため、異動や組織変更があってもGluegent Flowにも自動的に反映されます。アカウントや組織管理の煩雑さを回避できることで、ユーザー側だけでなく管理者側の負担も軽減できるところがポイントです。また、Google Workspace との連携により、確認や承認をトリガーにしてさまざまな処理を自動で行うことが可能です。例えば、承認ボタンをトリガーに、申請データをスプレッドシートシートに自動転記させ、管理簿を自動更新する等に活用できます。単体でも十分に活用できますが、Google Workspaceと組み合わせることで真価を発揮すると言える製品です。
Gluegent Flow には次のようなポイントがあります。
1. 紙の申請書をそっくり電子化
もともと60種類以上もの豊富なテンプレートも準備されていますが、さまざまに定義された入力項目を利用して、誰でも簡単に、紙の申請書のイメージをそっくりそのまま画面上に再現することが可能です。HTMLレイアウトエディターやGoogle ドキュメントレイアウトを利用すれば、さらに自由自在に申請フォームを作成できます。
2. 柔軟な経路設定
Google Workspaceで定義した組織構造とお客様が設定した社員情報を利用することで、簡単にワークフローの承認経路を設定できます。組織階層がわかりやすく、役割や役職による経路設定も可能なため、企業独自のルールにも柔軟にカスタマイズできます。
3. 強力な自動処理
Googleドライブ上のデータをGluegent Flowのマスターデータとして活用したり、逆にGluegent Flowで入力されたデータをGoogle スプレッドシートに自動出力するなど、さまざまな処理の自動化を実現します。Gluegent Flowの確認や承認をトリガーに、自動処理設定で Gmail 通知や Googleドキュメント作成、Googleスプレッドシートでの管理表作成を自動で行うことが可能です。Google Workspace とGluegent Flowを組み合わせれば、業務効率をさらに向上させることができるでしょう。
rakumoの特徴は Google Workspaceのアカウントと紐づけて運用できる点にあります。Google Workspaceのログイン認証を利用することができるため、ワークフローのためだけにアカウント管理やセキュリティ対策をする必要はありません。一方、ユーザは Google Workspaceにログインすれば社内ワークフローにアクセスできるため、別IDやパスワードを設定することなく、Google Workspaceからワークフロー機能を呼び出すだけで使用できます。通常、別途ワークフローを構築すると Google Workspaceとは異なる運用が必要なので、その点rakumoは運用を効率化しつつ構築できるワークフローになります。
さらに、rakumoには次のようなポイントもあります。
1. 直感で操作できる、細部まで配慮されたデザイン
見やすく、使いやすいユーザーインターフェースが特徴です。マニュアル不要な操作性を実現し、多様化するワークスタイルに対応するため、スマートフォンにも最適化。ブラウザからすぐに利用できます。
2. Google Workspace をより便利に、より高機能にパワーアップ
Google Workspace だけでは実現できないワークフローや経費精算など、より生産性を向上させるサービスを用意しています。他のサービス同様、Google Workspace との高い親和性でアカウントやデータ管理が可能です。
3. Google が提供する無限の可能性に最適化
組織もビジネスも成長とともにその姿を変えるもの。Google Workspace のイノベーションとともに進化し、ユーザーニーズの変化に対応すべく、開発&サポート体制を構築しています。
rakumoワークフローの場合、1アカウントあたり年額3,600円(月額換算300円)で使用できますので、大幅なコストアップもありません。
Google Workspace(旧 G Suite)ユーザがワークフローを導入することのメリットとは?
では、ワークフローとはそこまで必要なものなのか?導入しないと困ることはあるのか?さらに、Google Workspace と連携するワークフローのメリットを考えてみましょう
業務プロセスの可視化
ワークフローを構築すると対象となる業務に関わる人物や組織の範囲、そこに流れる情報がシステム上で可視化されます。これは業務プロセスを改善するきっかけにもなり、業務効率をアップすることに繋がります。さらに、申請が今誰のところで止まっているのかなど進捗状況を常に確認できるので承認プロセスの停滞を防げます。
意思決定の迅速化
ワークフローが導入されていない環境では申請書をメールに添付して送信したり、直接手渡すことで承認プロセスを回します。一方ワークフローがある環境では申請と承認の回付、並びに承認ルートの判別が自動で行われますので意思決定までの時間が大幅に短縮されるでしょう。クラウドサービスとして提供されているものなら、外出先や自宅からでも使用できるので決裁者の作業する場所を問いません。テレワークが当たり前になった現代では必須とも言えるでしょう。
ペーパーレスによるコスト削減
ワークフローによって承認プロセスを電子化するということは、申請書や資料を印刷する必要はないため紙代、プリント代、FAXの通信費、郵送費を抑えてコスト削減に繋げられます。申請書や資料のファイリングも保管スペースも不要ですので、検索性もアップして生産性が向上するでしょう。
ガバナンス強化
ワークフローでは承認プロセスの証跡や決済情報の可視化を行い、コンプライアンスの維持に努めることができます。これは企業ガバナンスの強化にも繋がり、社会的信用を維持することにもなります。
継続的な業務効率化
申請ごとに過去データを流用したり他システムとデータ連携することで、無駄なデータ入力が無くなり人為的なミスも無くなります。導入時はもちろん定期的に業務を見直すきっかけになるので業務効率化にも貢献するでしょう。
ニューノーマル時代の働き方の実現
Google Workspace(旧 G Suite)は働き方改革に大きく貢献するコラボレーションツールですが、Google Workspace(旧 G Suite)に連携したワークフローがあると社外にいても申請承認業務を進められるため、ハンコ一つのために出社をする、といった無駄はなくなります。
以上がワークフローのメリットであり、思っていた以上に多くの利点があると感じた方が多いのではないでしょうか?これらのメリットを考慮すると、やはりワークフローは企業に欠かせないシステムと言ってよいでしょう。従業員数が一定数以上いたり、決裁者の外出が多い企業では必ず構築しておきたいものです。
Google Workspace(旧 G Suite)にワークフローを
Google Workspace は組織やチームのコミュニケーションを活発化させるにあたって、大変優れたコラボレーションツールです。インターフェースや操作はシンプルで誰もが理解しやすく、如何なる環境にもフィットします。
これに加えて Google Workspace と連携可能なワークフローがあれば、その効果を最大限引き出すことが可能です。Google Workspace にワークフローが欲しい、そんなときはぜひ弊社にご相談ください。
※ Excelは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
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