近年、膨大な情報を瞬時に整理・要約できるAIツールとして、Googleの「NotebookLM」が大きな注目を集めています。この優れた要約機能を活用して、「図解やインフォグラフィックを作成し、プレゼン資料やSNSでの発信に役立てたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ここで必ず壁となるのが著作権の問題です。「他人の書いたWeb記事やPDFをNotebookLMに読み込ませても法律違反にならないのか」、そして「AIが出力したテキストを使って作成したインフォグラフィックは商用利用できるのか」など、不安を抱えるケースも少なくありません。
本記事では、NotebookLMをインフォグラフィック作成に活用する際の著作権に関する基本的な考え方から、具体的なリスク回避のステップ、商用利用時の注意点までを徹底的に解説します。安全にAIを活用し、魅力的なコンテンツを生み出すためのガイドとして、ぜひ役立ててください。
NotebookLMとインフォグラフィック作成の基礎知識
ここではまず、NotebookLMというAIツールの特徴と、インフォグラフィックが持つ情報伝達の力、そしてこの2つをかけ合わせることで生まれる強力な相乗効果について基礎知識を解説します。
NotebookLMとは文章処理と情報整理に特化した生成AIツール
NotebookLMは、Googleが提供する、情報整理や要約を得意とするAIノートブックです。最大の特徴は、ユーザーがアップロードした特定の文書や画像、Webページなどの情報源(ソース)のみにもとづいて、質問への回答や要約、アイデアの生成を行う点にあります。

一般的な生成AIサービスが、インターネット上の広範な情報をもとに回答を生成するのに対し、NotebookLMでは、「グラウンディング(根拠付け)」と呼ばれる技術を用いて、指定された情報源のみを参照します。これにより、AI特有のハルシネーション(事実にもとづかないもっともらしい嘘)のリスクを最小限に抑えられます。
専門性の高い長文資料や複雑な論文であっても、高い精度で文脈を理解し、正確な要約や構造化された情報抽出が可能です。
ビジネスシーンにおけるインフォグラフィックの役割
インフォグラフィックとは、複雑な情報やデータ、知識などを視覚的に表現する手法です。文字だけの説明では理解に時間がかかる内容でも、イラストや図表、グラフを組み合わせることで、直感的に全体像を把握できるようになります。
現代は情報過多の時代であり、企業や情報発信者がユーザーの可処分時間を奪い合う状況にあるため、「一目で伝わる」インフォグラフィックは非常に強力な武器となります。ビジネスの現場では、企画書やプレゼン資料の説得力を飛躍的に高める役割を果たします。また、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSにおいては、ユーザーの目に留まりやすく、シェアや拡散を誘発しやすいエンゲージメントの高いコンテンツとして重宝されています。
NotebookLMはインフォグラフィック作成にどう役立つのか?
インフォグラフィックを作成する際、最も時間と労力を要するのが「情報収集」と「要点整理(構成作り)」のプロセスです。ここにNotebookLMを導入することで、作業効率は大幅に向上します。
例えば、数十ページに及ぶ業界レポートのPDFを読み込ませ、「この記事の重要なデータを3つ抽出し、インフォグラフィック用の短い見出しと解説文を作成して」と指示を出すだけで、AIが瞬時に骨組みとなるテキストデータを生成します。その後、Studio機能の[インフォグラフィック]をワンクリックするだけで、ソースと指示に沿った独自のインフォグラフィックが完成します(カスタムプロンプトで詳細な指示も可能)。

結果、膨大なテキストを読み解く作業から解放されるだけでなく、インフォグラフィックを作成するデザイン業務の工数も大幅に削減できます。
NotebookLMが生成するインフォグラフィック原案の著作権について
NotebookLMを利用してインフォグラフィックの原案を作成する場合、「AIが生成したテキスト自体に著作権は発生するのか」、そして「誰に権利が帰属するのか」を正しく理解しておく必要があります。基本的な考え方や権利関係などを解説します。
日本の法律における「AI生成物の著作権」の基本的な考え方
日本の著作権法において、著作物とは、「思想や感情を創作的に表現したもの」と定義されています。つまり、人間の創作的な意図や寄与がなければ著作物とは認められません。
文化庁のガイドラインによれば、AIに対して指示(プロンプト)を与え、AIが自律的に生成した出力物については、原則として著作権は発生しないと考えられています(※)。ただし、プロンプトの入力過程において、人間が詳細な構成を指示したり、生成されたテキストに対して大幅な加筆修正や取捨選択を行ったりした場合など、人間の「創作的寄与」が認められる場合には、その成果物に対して人間の著作権が発生する可能性があります。この線引きはケースバイケースで判断されます。
※参考:AIと著作権Ⅱ|文化庁
Googleの利用規約にもとづくNotebookLMの権利関係
NotebookLMを運営するGoogleの利用規約において、出力されたコンテンツの権利は基本的にユーザーに帰属するとされています(※)。ユーザーが生成したコンテンツに対して、Googleが著作権を主張することはありません。したがって、規約上はNotebookLMが出力した要約テキストを、ユーザーが自由に利用・公開することが認められています。
ただし、これはあくまで「Googleとの間」の規約の話であり、出力されたテキストが第三者の著作権を侵害していないことをGoogleが保証するものではありません。情報源の権利関係については、ユーザー自身が責任を持って確認し、適切に扱う必要があります。
※参考:Googleポリシーと規約(利用規約)|Google
NotebookLMが出力した要約テキストの著作権は誰のもの?
ここまでにお伝えした通り、NotebookLMが自動生成した要約テキスト自体には、原則として誰の著作権も発生しません。AIはあくまでツールであり、法的な権利主体にはなれないためです。
しかし、だからといって生成されたテキストを完全に自由に使えるとは限りません。仮に、NotebookLMに読み込ませた元の文書(他人の著作物)の表現が、AIの要約テキストのなかにそのまま、あるいは極めて似た形で残っている場合、著作権を侵害するリスクがあります。インフォグラフィックのテキストとして使用する際は、「元の文章の表現と類似していないか」「あくまでアイデアや事実だけを抽出した状態になっているか」を確認することが重要です。
NotebookLMのソース読み込み時の著作権リスクと回避法
NotebookLMでは、インフォグラフィックの原案を出力する際だけでなく、ソースを読み込む際にも著作権リスクが発生することがあります。著作権リスクの詳細と回避法について詳しく解説します。
他人のWeb記事や書籍のPDFをソースとして読み込ませるリスク
他人が作成したWebメディアの記事や書籍のPDF、有料レポートなどを、著作者に無断でNotebookLMのソースとしてアップロードする行為には不安が伴います。著作権法では、他人の著作物を無断でコピーする複製権の侵害が禁じられているためです。
クラウド上のAIツールにデータをアップロードする行為は、サーバー上にデータをコピーすることになるため、原則として著作権者の許諾が必要です。しかし、あらゆるデータの読み込みを禁止してしまうとAI技術の発展を阻害するため、日本の著作権法には一定の条件下で無断学習やデータ利用を認める「権利制限規定(私的使用のための複製/著作権法第三十条)」が設けられており、これが重要な判断基準となります。
著作権法における「私的使用のための複製」と「情報解析」の境界線
個人が家庭内で楽しむ目的であれば、「私的使用のための複製」として他人の著作物をAIに読み込ませることは適法です。また、著作権法第三十条の四では、情報解析を目的とする場合、著作権者の利益を不当に害しない限り、他人の著作物をAIの学習データとして無断で利用できるとされています。
NotebookLMに情報を読み込ませ、要約や構成案を作成させる行為は、一般的にこの情報解析の範疇に含まれると解釈される傾向にあります。ただし、この法律は現在も議論が続いており、「享受目的(著作物本来の表現を味わう目的)」が併存していると判断された場合は権利侵害となるリスクがあるため、商用利用においては慎重な判断が求められます。
インフォグラフィック内で合法的に「引用」として扱うための条件
他人の著作物のデータや文章を、インフォグラフィックの一部として使用したい場合は、著作権法第三十二条で定められた引用の要件を満たす必要があります。適法な引用として認められるには、主に以下の条件をクリアしなければなりません。
- 公表された著作物であること
- インフォグラフィックが「主」であり、引用部分が「従」であるという明確な主従関係があること
- 引用部分がカギ括弧などで明確に区別されていること
- 引用する必然性があること
- 出所(出典)を明記すること
NotebookLMが抽出した他人の文章をそのまま使う場合は、これらの引用ルールを厳格に守ってデザインに落とし込みましょう。
著作権トラブルを防ぐフリー素材・パブリックドメインの活用術
他人の著作権を侵害するリスクを根底からなくす最も安全な方法は、権利関係がクリアな情報源のみをNotebookLMに読み込ませることです。
例えば、自社で過去に作成したプレスリリースやブログ記事、社内マニュアルなどは著作権を自社で保有しているため、自由に読み込ませてインフォグラフィック化できます。また、政府や官公庁が発表している統計データや白書、あるいはCC0(シー・シー・ゼロ)が付与されたフリー素材や論文などは、権利者の許諾なしで自由に利用可能です。
これら安全な一次情報をソースとして選定することが、著作権トラブルを防ぐ最大の防御策となります。
NotebookLMの著作権リスクをクリアしたインフォグラフィックの作成ステップ
著作権の基本的なルールを理解したうえで、実際にNotebookLMを活用して、安全かつ高品質なインフォグラフィックを作成する手順は次の通りです。
- 信頼できる一次情報の収集とクリーンなソース選定
- 要約生成と視覚化のための構成案作成
- ハルシネーションのファクトチェック
- デザイン作成と正しい出典(クレジット)明記
それぞれのポイントや具体的な進め方を解説します。
1. 信頼できる一次情報の収集とクリーンなソース選定
最初のステップは、インフォグラフィックの土台となる安全なソースを集めることです。
他社の有料コンテンツや無断転載が疑われる怪しいWebサイトは避け、官公庁の統計データや大学の研究機関が発表した論文、企業の公式プレスリリースなど、信頼性の高い一次情報を収集しましょう。そして、それらのデータが商用利用可能か、あるいは引用の範囲内で利用できるかを事前に確認します。
NotebookLMにアップロードする「クリーンな情報源」のパッケージを用意するのも一つです。PDFファイルやWebページのURLをリストアップしたり、自社で権利を持つテキストデータと組み合わせたりすることで、独自のパッケージを構築できます。
2. 要約生成と視覚化のための構成案作成
NotebookLMにプロンプトを入力し、インフォグラフィックを作成するための構成案を生成します。その際、最初からインフォグラフィック用の情報を求めるのではなく、段階的に指示を出すことがポイントです。
例えば、最初に「読み込んだ情報の要点を箇条書きで5つ抽出して」と指示し、大枠を捉えます。そして、「抽出した要点を、それぞれ「タイトル」と「30文字以内の解説文」に変換し、インフォグラフィックの構成案として出力して」と具体的な指示を与えるようなイメージです。
また、AIが元の文章の表現をそのままコピーするのを防ぐため、「必ず自分の言葉で要約して」「簡潔な表現に書き換えて」といった指示をプロンプトに加えることで、権利侵害のリスクを低減できます。
3. ハルシネーションのファクトチェック
出力された構成案はそのまま利用するのではなく、必ずファクトチェックを行いましょう。NotebookLMでは、指定ソースのみを参照するのでハルシネーションは起きにくいものの、文脈の読み違えや数字の抽出ミスが発生する可能性はゼロではありません。インフォグラフィックに記載された数値や事実関係が間違っていると、発信者の信頼を大きく損ないます。
NotebookLMでは、出力された情報に引用元リンクが付与されます。それにより、「生成されたテキスト内の重要なキーワードや数字が、元のソースのどの部分から抽出されたものか」が一目でわかります。この機能を活用して一つひとつの情報を丁寧に確認しましょう。
4. デザイン作成と正しい出典(クレジット)明記
チェック済みの構成案に沿ってインフォグラフィックのデザインを作成します。デザインはNotebookLM内でそのまま作成することも可能ですが、より自由度高く制作を行いたい場合は、CanvaやAdobe Illustratorなどの外部ツールを活用するのも一案です。
デザイン工程で最も重要な著作権的配慮は、出典(クレジット)の明記です。インフォグラフィックの下部や引用したデータの直下に、「出典:令和〇年版〇〇白書|〇〇省」といった形で、情報元を正確に記載しましょう。これにより、引用の要件を満たすだけでなく、データに対する信頼性や客観性を外部にアピールでき、コンテンツとしての価値が高まります。
NotebookLMのインフォグラフィックを安全に活用する2つのポイント
著作権侵害のリスクを抑えたうえで、安全にNotebookLMのインフォグラフィックを活用するには、次のポイントを意識することが重要です。
- コンテンツ制作フローの見直し
- AI・著作権に関する社内ガイドライン策定
それぞれ以下で詳細を解説します。
コンテンツ制作フローの見直し
商用利用において著作権侵害や盗用を指摘されないためには、AIの出力結果を鵜呑みにしないという徹底した姿勢が欠かせません。NotebookLMが出力したテキストはあくまで下書きとして扱い、企業の担当者が独自の視点や考察、追加のデータを加筆することで、オリジナルの著作物へとブラッシュアップさせましょう。
また、複数の異なるソースを読み込ませ、それらを比較・統合するようなプロンプトを組むことで、特定の著作物に依存しない構成案を作ることも可能です。さらに、SNSで発信する際は、出典へのリンクを投稿文にも明記するなど、権利者への敬意を示す運用がトラブル回避につながります。
AI・著作権に関する社内ガイドライン策定
従業員が許可なく個人の判断でAIツールを使用する「シャドーAI」が問題視されるなか、企業としてリスクを管理するためには、明確な社内ガイドラインの策定が急務です。
ガイドラインには、NotebookLMのような生成AIツールを業務で利用する際のルールを明記します。特に、次のような内容は必須です。
- 他社の有料記事や機密情報の読み込み禁止
- 生成されたテキストをそのまま流用しないこと
- 最終的な事実確認と著作権侵害のチェックは人間が行うこと
著作権やAIに関する法整備は日々アップデートされています。定期的な社内研修を実施し、現場のクリエイターやマーケティング担当者のリテラシーを向上させることが、企業イメージや信用力を守る強力な盾となるでしょう。
法的リスクを十分に理解したうえでNotebookLMをうまく活用しよう
NotebookLMは、膨大なテキスト情報を瞬時に読み解き、インフォグラフィックの骨格となる要点や構成案を抽出してくれる非常に強力なツールです。このAIの力を借りることで、情報整理やデザイン制作にかかっていた膨大な時間を削減できます。
一方で、他人の著作物をソースとして扱う以上、著作権法の複製権や引用ルールを正しく理解し、遵守することが不可欠です。AIが生成したテキストをそのまま使うのではなく、人間によるファクトチェックと独自の視点(創作的寄与)を加えることで、はじめて安全で価値のあるコンテンツが完成します。最新のテクノロジーと法律の知識をバランス良く持ち合わせ、正しいステップを踏んで、ビジネスやSNS発信に役立つ魅力的なインフォグラフィックを作成していきましょう。
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