社内の最適なファイル共有スペースを構築するために、ファイルサーバーやNASの導入を検討している情報システム担当者の方も多いのではないでしょうか。
ファイルサーバーとNASは、いずれも社内に蓄積されたファイルをネットワーク上で保管・共有するためのツールです。両者は目的や役割がよく似ていますが、導入方法や機能性、カスタマイズ性などに大きな違いが存在します。
ファイルサーバーとNASの仕様上の違いや、メリット・デメリットを理解すれば、自社の要件に合わせて適切なファイル管理ツールを選択できます。結果として、社内でのよりスムーズな情報共有が可能になるでしょう。
本記事では、ファイルサーバーとNASの特徴を比較しながら、それぞれの仕組みやメリット・デメリットを解説します。社内での煩雑なファイル管理業務に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
ファイルサーバーとは?NASの違いや仕組みを解説
ファイルサーバーとは、社内にあるファイルをネットワーク上で管理できるツールです。
ファイルサーバーにアクセスすると、ネットワーク上にファイルを保存・バックアップできます。また、複数のパソコンを同一のネットワークにつなぎ、そのなかでファイルを共有できるため、メールでの転送やUSBメモリの受け渡しをせずに済むのがメリットです。
このようなファイル共有機能を持つツールには、ファイルサーバーのほかにもNASがあります。両者の違いは、ファイル管理を行う仕組みが異なる点です。
ファイルサーバーの場合、ファイルを管理するための単一のシステムを構築すれば、複数のパソコン間でのファイル共有を行えます。一方のNASは、ファイルを保管するためのHDDと、ネットワークを構築するためのルーター・ハブを接続し、無線によって各パソコンでのファイル共有を可能にします。
さらにファイルサーバーとNASには次のような違いがあります。
ファイルサーバー | NAS | |
---|---|---|
導入費用 | 比較的高額 | 比較的安価 |
導入方法 | 任意のサーバー専用機やソフトウェアを用いて自ら構築 | NASの機器を購入し社内ネットワークに接続 |
導入しやすさ | 手間がかかりやすい | 比較的簡単に導入できる |
複数端末でのファイル共有 | 可能 | 可能 |
サーバー上でのファイル編集 | 可能 | 不可 |
セキュリティレベル | 自社要件に合わせて高度なセキュリティ対策が可能 | セキュリティレベルが機種によって大きく左右される |
カスタマイズ性 | 容量や機能など広範囲の拡張が可能 | 基本的に拡張は不可 (標準搭載機能の簡易的なアレンジは可能) |
このように両者には、それぞれメリットとデメリットが存在します。高い機能性と柔軟性を兼ね備えたファイルサーバー、低コストで容易に導入できるNASといった特徴を押さえ、自社の特性に合わせて選び分けると良いでしょう。
ファイルサーバーで得られるメリット3選
ファイルサーバーを導入すると、ファイル管理において次のようなメリットが生まれます。
- ファイルの共有が容易
- セキュリティの向上
- 容量の増設やバックアップができる
ファイルを共有すべき従業員の数が多い、あるいは事業規模の拡大に合わせて柔軟にシステムをアップデートしたい場合、NASよりファイルサーバーが向いているでしょう。
ファイルの共有が容易
ファイルサーバーでは、ネットワーク上でファイルの受け渡しができるため、よりスムーズな共有が可能です。
サーバーを活用せずにファイル共有を行う場合は、メール転送やUSBメモリの受け渡しが必要となり、手間がかかります。また、外出先でUSBメモリを紛失すると、情報漏えいのリスクが高まってしまいます。
一方のファイルサーバーは、コピー&ペーストのみの簡単な操作でファイルを共有できるのが特徴です。多人数で頻繁にファイル共有を行う組織において、作業工程の大幅な短縮につながります。
セキュリティの向上
ファイルサーバーは、自社の要件に合わせて柔軟にセキュリティ対策を実施できるのが特徴です。万全なセキュリティ対策を講じることで、情報漏えいやデータの改ざんなどのリスクを最小限に抑えられます。
例えばファイルサーバーでは、保存した各ファイルに対してアクセス権限を設定できます。情報漏えいを未然に防げるよう、機密性の高いファイルには管理職や一部の従業員しか操作できない高度なアクセス権限を付与すると良いでしょう。また、「閲覧のみ可能」「閲覧・編集が可能」など、ユーザーごとに細かく条件を定められるので、より安全なファイル共有スペースが実現します。
加えて、ファイルサーバーでは次のようなセキュリティ対策が可能です。
- ユーザーIDとパスワードの管理:
サーバーにアクセスするためのIDとパスワードを設定 - アクセスログの監視:
特定のファイルにアクセスしたユーザー名や日時を特定 - ファイルのダウンロード制限:
ユーザーごとにダウンロード可否の制限を設定し、ファイルの外部持ち出しを防止
ファイル共有のセキュリティ対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
容量の増設やバックアップができる
必要に応じて柔軟にストレージ容量を増設できるのも、ファイルサーバーのメリットです。
ファイルサーバーを導入する際は、どの程度のストレージ容量を確保すれば良いのか、判断が難しいケースも珍しくありません。さらに、サーバーを使用中、気づかないうちに容量を超過してしまう場合もあるでしょう。その点、サーバーの導入後であっても、自由にファイルの保存領域を拡張できるのは、ファイルサーバーの大きな利点だといえます。
また、ネットワークに保存したファイルは、従業員同士で共有するだけではなく、バックアップデータとしても活用できます。例えば、個人用のパソコンに保存しているデータを定期的にファイルサーバーに保存すれば、万が一端末が故障してもファイルが消えないので安心です。
ファイルサーバーのデメリットは「コストや手間がかかりやすい」
ファイルサーバーを活用する際は、ある程度のイニシャルコストとランニングコストがかかります。ファイルサーバーの導入・運用に必要なコストは次の通りです。
- システム機器やソフトウェアの購入費
- サーバー設置の工事費
- ソフトウェアの更新費
- 運用・保守費
- 管理責任者や担当者の人件費
また、ファイルサーバーは、NASに比べて手間がかかりやすいのもデメリットのひとつです。システムの構築や初期設定、OSのアップデートなど、ファイルサーバーの導入・運用には専門知識が求められます。社内インフラに詳しいエンジニアがいなければ、新たな人材を採用するか、システム構築や運用作業を外部に委託する必要があるでしょう。
特に大規模なファイルサーバーを導入したり、従業員の人数が多かったりすると、高額なコストが必要になるほか、導入から運用までの工数が増えてしまうので注意が必要です。
クラウド型ファイルサーバーで従来のデメリットを解消!
ファイルサーバーには、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2つの種類があります。クラウド型ファイルサーバーを活用すれば、前述したファイルサーバーのデメリットを解消できます。
オンプレミス型とは、社内にファイルサーバーを設置し、企業自ら運用を行うタイプです。一方のクラウド型は、物理的なサーバーを保有することなく、インターネット上でファイルの保管や共有を行えます。
そのほか、オンプレミス型とクラウド型の違いは次の通りです。
オンプレミス型 | クラウド型 | |
---|---|---|
サーバーの設置場所 | 社内 | ベンダーが契約するデータセンターなど |
イニシャルコスト | サーバーの設置費やシステム機器・ソフトウェアの購入費など | 不要な場合が多い |
ランニングコスト | ソフトウェアの更新費や 運用・保守費など | 月額利用料やオプション利用料 |
運用・保守 | 自社で実施 | ベンダーが実施 |
アップデートの対応 | 自社で実施 | ベンダーが実施 |
セキュリティ | 自社サーバーの仕様に依存 | ベンダーが保有するサーバーの仕様に依存 |
カスタマイズ性 | 自社要件に合わせて柔軟に変更可能 | 別途オプション契約が必要な場合がある |
両者にはどちらにもメリットとデメリットがありますが、イニシャルコストや手間を抑えられるのは、クラウド型ファイルサーバーの大きな利点だといえます。クラウド型ファイルサーバーの導入により、次のような恩恵が生まれるでしょう。
- コストが高額になりがちなオンプレミス型のデメリットを解消できる
- 場所を問わずシステムにアクセスできるため、テレワークにも対応しやすい
- 自動バックアップにより作業効率を高められる
- アップデートが自動的に行われるので、常に高いセキュリティレベルを維持できる
大がかりな構築作業や高額な費用が気になる企業にとって、クラウド型ファイルサーバーは心強い存在になり得ます。
クラウド上でファイル共有を行うメリットや効果を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
NASのメリット3選
「もう少し手間をかけずにファイル共有スペースを構築したい」「ファイルの保管や共有といった最低限の機能で十分」という場合は、ファイルサーバーよりもNASのほうが向いています。なぜなら、NASを導入することで次のようなメリットが生まれるからです。
- システム導入が比較的簡単
- コストが安く抑えられる
- 本体がコンパクトで設置しやすい
システムの導入や運用が比較的簡単
NASを導入する際は、専用機器を購入し、ルーターやハブなどの社内ネットワークに接続するだけで作業が完了します。ファイルサーバーの大がかりな設置工事や複雑な初期設定のような作業が不要な点が、NASのメリットです。
また、NASはファイルの保管・共有に特化しており、必要最低限の機能のみが搭載されています。運用中はファームウェア(システム制御用のソフト)の更新が求められるものの、ベンダーへの問い合わせで簡単に解決できるケースも少なくありません。このようにシンプルな仕様だからこそ、社内インフラに詳しいエンジニアがいなくても、比較的容易にシステムを運用できます。
コストが安く抑えられる
ファイルサーバーに比べ、NASはイニシャルコストやランニングコストを安く抑えられるメリットがあります。
システムを構築するためのOSやアプリケーションは、NASの本体に標準搭載されています。いちからサーバーを構築したり、システム機器やソフトウェアを別途購入したりするファイルサーバーよりも、比較的安価な製品価格で済むのが利点です。
さらに、NASは運用負担が少なく、管理者を常駐させる必要がありません。システムの保守・点検などにかかる人件費を抑えられるのも、NASのメリットだといえるでしょう。
本体がコンパクトで設置しやすい
NASの専用機器は、ファイルサーバーに比べてコンパクトなサイズにおさまっています。筐体が小さいため、小規模なオフィスでも設置場所に困らず、オフィス内のレイアウト変更の手間を削減できるのがメリットです。
NASは、保存できるデータ容量が増えるほどサイズが大きくなります。膨大なデータを保管できるストレージを用意するには、本体内部に広範囲のドライブベイ(複数のHDDを設置するスペース)が必要になるからです。容量によって異なりますが、法人向けNASの本体サイズは、「幅10~20 × 高さ15~25 × 奥行20~25cm程度」が一般的です。
NASのデメリットは「カスタマイズ性や利便性に劣る」
NASはデータの保管・共有機能に特化しているため、ファイルサーバーに比べてカスタマイズ性や利便性が見劣りします。
例えば、容量や機能などを自社要件に合わせて拡張できる、ファイルサーバーのような使い方はできません。製品によっては、アクセス権限やフォルダ同期の内容を設定できるものもありますが、あくまで標準搭載された機能を簡易的にアレンジできる程度にとどまります。
また、ネットワーク上にアップロードしたファイルは、ローカル環境にダウンロードし直さないと編集できない点には注意が必要です。ネットワーク上で直接ファイルを編集できるファイルサーバーに比べ、やや利便性に欠けるといえるでしょう。
ファイルサーバーとNASの違いを理解したうえで導入を検討しよう
ファイルサーバーとNASは、いずれもファイルの保管や共有が可能なツールです。目的や役割こそ似ている両者ですが、細部の仕様が異なるため、メリットやデメリットにも違いがあります。そのため、自社の組織体制や導入する目的に合わせて、ファイルサーバーとNASのいずれかを選び分けると良いでしょう。
柔軟なカスタマイズ性や利便性を求めるなら、機能の拡張やネットワーク上でのファイル編集ができるファイルサーバーがおすすめです。一方、シンプルな操作性や価格の安さを重視する場合は、必要最低限の機能のみを搭載したNASが向いているでしょう。それぞれの特徴を理解し、どちらが自社にとって相性が良いのかを検討してみてください。
なお、以下の資料では、オンプレミス型のファイルサーバーからクラウド型のGoogleドライブに移行するメリットやその方法をご紹介しています。無料でダウンロードできますので、「ファイルサーバーのクラウド化をはかりたい」「Google Workspaceを利用中で共有ドライブを使用していない」という方は、ぜひご覧ください。
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