企業が長年に渡って事業を継続していくためには、目先の売上の拡大やコスト削減ばかりに気を取られてはいけません。将来起こりうるリスクに対して、企業として社会的要請に耐えうる仕組みを作ることも重要です。そのために、コーポレート・ガバナンス(企業統治)を制定したり、コンプライアンス(法令遵守)のための取り組みを積極的に行う必要があります。
Google が提供するコラボレーションツールの Google Workspace(旧 G Suite)には、このようなコーポレート・ガバナンスやコンプライアンスを支援するためのツールがあることをご存知でしょうか?その名前は「Google Vault」といいます。
今回はこの Google Vault について、その概要や機能をご紹介します。コラボレーション機能だけではなく、現代の企業に必要な守りの側面からも、Google Workspace(旧 G Suite)導入の判断材料の一つとしていただきたいと思います。
Google Vault とは?
まずはじめに、 Google Vault の概要についてご紹介します。Google Vault は次のような役割を持ちます。
①不祥事や裁判など、万が一の事態に備えて従業員同士のやり取りを完全に保持する
②裁判所の要請など必要に応じて必要な情報を引き出せるようにする
③従業員にメッセージや操作ログを記録していることを開示して不祥事の抑止力にする
もともと米国では民事訴訟の手続きとしてDiscovery(証拠開示制度)というものが制定されています。現在はそれらの情報が電子化されているため、「e」をつけてeDiscoveryと呼びます。Google Vault は内部的な運用や統制だけでなく、このeDiscoveryをサポートするツールでもあります。Google Workspaceで扱われるようなメールやドキュメントやコミュニケーションのログは、このような場合の証拠として開示されることが要求される場合があるため、グローバル企業に限らずこのような準備をしておくことは組織防衛上非常に重要なポイントになっているのです。
上記のような役割のために、Google Vault には次の機能が備わっています。
≪アーカイブ≫
会社にとって重要な情報を保持し、それを閲覧可能な状態にするのがアーカイブです。訴訟対応などに必要な情報を日常業務で使用することはありませんが、万が一の時には早急に提出できることが大切です。そのためにアーカイブを利用し、 Google Workspaceから日々生成される膨大な量の情報をひとまとめに保存します。
≪記録保持≫
アーカイブ機能で自動的に保存されていく情報をどれくらいの期間保持するかを設定するための機能です。コーポレート・ガバナンス制定やコンプライアンス維持のために保持すべき情報は、定期的に整理しなければなりません。Google Vault ではこの保持期間を管理者が自由に設定することができ、整理された情報データベースを実現します。企業のルールで、1年や2年といった期間が設定されていることも多いでしょう。
≪検索≫
保持している重要情報を必要に応じて素早く検索し閲覧できるようにする機能です。アーカイブはしたけれど、検索機能がいまいちであるために大量のデータの中から必要な情報をすぐ取り出せないというのは意外とよくある話です。情報はユーザーアカウントごとに紐づけられているので、必要な情報を必要な時に、瞬時に呼び出すことができます。ここでもGoogleが得意とする検索の機能が生きています。
≪監査レポート≫
ユーザーの Google Workspace利用において、不正なやり取りや情報漏えいをさせるような動きは無いかなどのレポートを出力する機能です。管理者は定期的に監査レポートを確認し、不正がないかをチェックできます。また、監査レポートに引っかかった時に管理者にアラートを通知するといった機能もあります。
≪エクスポート≫
検索結果や監査レポートの情報は必要に応じてダウンロードが可能です。データはMbox形式またはPST形式も選択可能です。またドライブのデータは圧縮ファイルで出力されます。
以上が Google Vault の概要です。これらの機能を活用することで、Google Vault は先述した①②③の役割を遂行します。
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Google Vault を理解するポイント
Google Vault の概要を知ったところで、次は Google Vault をより深く理解していただくためのポイントをご紹介します。
ポイント① Google Vault はなぜ必要?
コーポレート・ガバナンス制定やコンプライアンス維持に積極的に取り組んでいる会社でも、残念ながら問題が発生したり不祥事が発覚することはありえます。これらは人によって起こされることであり、特に悪意がある場合には100%防ぐことはできないものです。そこで問題が発生した際は自社が不利な状況に立たされないために、証拠となる情報の開示が大切になります。Google Vault はいわばそうした証拠を適切に管理するためのツールなので、企業に限らずすべての組織にとって重要なのです。
ポイント② Google Vault が保存できる情報は?
Google Vault が保存できる情報は多岐に渡ります。従業員が送受信したメール本文や添付ファイルの中身、従業員が個人のストレージ(Googleドライブ)で所持・編集したファイル、Google Vault 上の操作ログや検索クエリなどです。さらに、メールは下書き状態であっても一度保存されたデータは全てGoogle Vaultに残ります。チャットのログも履歴をオフにしていない限りは全て残りますので、従業員がGoogle Workspace上で行ったほぼ全てのログが残るといって差し支えないでしょう。
ポイント③ Google Vault を導入するためには何が必要?
Google Vault を導入するには、これが含まれているプランを契約する必要があります。Google Vault が含まれているプランはBusiness Plus以上のプラン(Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus)です。
ポイント④情報はどれくらいの期間保持できる?
Google Vault で情報を保持できる期間はユーザー次第です。情報の種類に応じて5年や10年など、必要な期間を自由に設定できます。
このように、Google Vault を使用すれば万が一の事態に備えて会社の信頼を守り、義務を果たすことができます。
他のeDiscoveryツールと比べた際の利点は?
コーポレート・ガバナンス制定やコンプライアンス維持が叫ばれるようになってから、eDiscoveryに対応するツールは急速に注目を集めました。多くのシステムベンダーがこの領域に参入し、現在では多数のeDiscovery対応ツールが選択可能です。では他のツールに比べて、Google Vault にはどういった利点があるのでしょうか?
利点① Google Workspace(旧 G Suite)のバンドルツールだから価格が安い
訴訟社会でもある欧米圏では特にeDiscovery対応ツールの導入が健全な経営を実現するための前提となっています。しかし、一般的なツールの価格はユーザーあたり月額250ドル(約2万7,500円)~とかなりの高額です。それに対し Google Vault は月額600円、もしくはプランに含まれているので安価にeDiscoveryへの対応が可能です。Google Workspace(旧 G Suite)のバンドルツールだからこそ実現できる価格です。
利点②とにかく使いやすい
Google が提供する各種サービスがユーザーにとってどれくらい使いやすいものかは皆さん既にご存知かと思います。シンプルに設計されたインターフェース、使いやすさを追求した機能によって他のeDiscovery対応ツールよりも圧倒的な操作性を実現しています。特に監査や法的な対応をする担当者のITスキルが十分ではない場合も問題なく組織全体の情報を管理できるでしょう。
このように Google Vault を使用すれば、安価かつシンプルに企業のコーポレート・ガバナンス制定やコンプライアンス維持が可能になります。もしも皆さんが訴訟問題などに対する備えが無い状況ならば、この機会に Google Vault および Google Workspace(旧 G Suite)の導入をご検討ください。
また、Google Vault は上記のような機能を提供していますが、重要なのはその運用です。膨大に蓄積するデータをどう管理するか、何か起きた際にはどのように対応するかなどは各組織の体制やポリシーも考え併せて検討する必要があります。運用の設計などについては、豊富な支援経験のあるDSKにぜひご相談ください。事例に基づいたベストプラクティスで皆さんを支援いたします。
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