大規模なオウンドメディアやECサイト、Webアプリケーションを運用したい場合、問題となるのがサーバーのスケーラビリティ(規模増大に対応できる度合い)ではないでしょうか。レンタルサーバーを利用していると、トラフィックの増加にシステムが耐えられず、ユーザー満足度を低下させてしまう可能性が考えられます。
このような際に役立つのがGoogleサーバーをクラウドホスティングする方法です。Googleサーバーはレンタルサーバーに比べて処理能力が高く、スケーラビリティの問題を気にせずにWebサイトやWebアプリケーションを運用できます。また、可用性やセキュリティに優れるのも利点です。
本記事では、Googleサーバーをクラウドホスティングするメリットを徹底的に解説します。該当するGoogleのサービスも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
Googleサーバーでクラウドホスティングは可能?
クラウドホスティングとは、クラウド上で提供されているサーバーをレンタルすることです。Googleもこのクラウドホスティングのサービスを提供しています。Googleが保有する高品質なクラウドサーバーを必要な分だけ利用できるのがメリットです。
Googleサーバーをクラウドホスティングする目的
Googleサーバーの特徴は大容量のトラフィックにも対応できる点にあります。また、クラウド上でサービスが提供されているため、サーバーやネットワークといった物理的なITインフラを保有する必要がありません。
このような点からGoogleサーバーは、膨大な量のコンテンツが集積されたオウンドメディア、あるいは大規模なECサイトやWebアプリケーションを運用するのに向いています。「サーバーレスかつノンストレスでメディア運営やアプリケーション開発を行いたい」という方に最適です。
クラウドホスティングとレンタルサーバーの違い
クラウドホスティングとレンタルサーバーは、いずれも外部のサーバーを借り受けるという共通点を持っていることから、よく比較されます。ただし、両者には明確な違いがあります。
仮想化技術を用いたクラウドサーバーをレンタルするクラウドホスティングに対し、レンタルサーバーは物理的なサーバーをユーザー間で共有する仕組みです。クラウドホスティングに比べ、費用を抑えられるケースが多いものの、サーバーの性能がやや見劣りします。その分、大容量のトラフィックを処理するのには向いていないため、コーポレートサイトや小規模なWebサイトを運用する場合に適します。
Googleサーバーをクラウドホスティングする5つのメリット
Googleサーバーをクラウドホスティングするメリットは次の通りです。
- システムの可用性に優れる
- パフォーマンスの低下を防ぎつつ仮想マシンを移行できる
- 公開したサービスやコンテンツの死活監視を行える
- リージョンの最適化やリスク分散につながる
- ネットワークの処理性能が高い
世界で数多くのユーザーを抱えるGoogleサーバーだからこそ、数あるサービスのなかでも質が高く、さまざまな恩恵を得られます。
システムの可用性に優れる
Googleが提供するクラウドホスティングサービスは、稼働率99.99%を誇り、高い可用性に特徴があります。そのため、安定してサーバーを稼働できるのがメリットです。
仮に可用性の低いサービスを利用し、サーバーがダウンすれば、ユーザーは復旧までの間Webサイトにアクセスできません。これは顧客満足度の低下に直結する深刻な問題です。また、Googleなどの検索エンジンは、コンテンツの質やページ読み込み速度に加え、サーバーの可用性もチェックしているため、Webサイトの検索順位が低下する可能性も考えられます。
このようなトラブルを防ぐには、Googleのような可用性の高いサーバーを利用することが大切です。Googleの場合はさらに、万一サーバーがダウンしても、フェイルオーバーという仕組みでWebサイトが機能不全になるリスクを和らげられます。
パフォーマンスの低下を防ぎつつ仮想マシンを移行できる
Googleのクラウドホスティングサービスには、ライブマイグレーションと呼ばれる機能が搭載されています。ライブマイグレーションとは、パフォーマンスの低下を防ぎつつ仮想マシンを移行できる機能です。
本来、物理的なサーバーでホストOSのハードウェアやメンテナンス用パーツを増やす場合、システムを一時的に停止しなければなりません。ライブマイグレーションを活用すると、システムを停止することなく仮想マシンを移行できるのが特徴です。
加えて、仮想マシンの負荷を事前に察知し、バランスを調整できます。そのため、仮想マシンに対する負荷の一極集中を避けられるのもメリットの一つです。
公開したサービスやコンテンツの死活監視を行える
Googleのクラウドホスティングサービスには、Cloud Monitoringの機能が搭載されています。Cloud Monitoringを使うとアップタイムチェック(稼働時間チェック)が可能です。
その対象にはWebサイトの公開URLやIPアドレス、リリースしたアプリケーションなどが含まれています。これらの稼働状況をリアルタイムで可視化し死活監視できるのが特徴です。早いタイミングで問題を検出し、最適な対応策を立てられるため、WebサイトやECサイト、Webアプリケーションなどの安全性や可用性を向上できます。
リージョンの最適化やリスク分散につながる
Googleサーバーは世界トップクラスのグローバルネットワークを形成しています。Googleのクラウドホスティングサービスで選択できるリージョンは40、ゾーンは121、利用可能な地域は200ヶ所以上と非常に豊富です。
リージョンとは、クラウドサービスの提供事業者がサーバーを設置・管理している地域です。そのなかにゾーンと呼ばれる複数の区画が用意されています。選択できるリージョンが多いほど、各地にサーバーが分散されているということです。つまり、災害やセキュリティトラブルで大規模な障害が発生した場合でも、別の地域でカバーできるため、リスク分散につながります。
また、サーバーとの地理的な距離は接続速度や通信の安定性に直結します。Googleサーバーは日本や米国、ドイツなどの主要地域をカバーしており、拠点から近いリージョンを選択することで、WebサイトやWebアプリケーションのより安定した運用が可能です。
ネットワークの処理性能が高い
WebサイトやWebアプリケーションの運用では、処理速度が重要な要素となります。ネットワークの安定性に欠けるサーバーを利用した場合、処理速度が低下し、ページの読み込みが遅くなります。
ネットワークの処理能力を評価する際は、スループットと呼ばれる基準を用いるのが一般的です。スループットとは、単位時間あたりのデータ転送速度を表します。
Googleのクラウドホスティングサービスは、競合製品を展開するAmazonやMicrosoftに比べ、スループットが世界トップクラスの水準を誇ります。その分、Googleサーバーを用いて運用される、WebサイトやWebアプリケーションの低パフォーマンス化を避けられるのがメリットです。トラフィックが急増する時間帯でも安定した稼働を実現します。
参考:「AWS」「Azure」「GCP」の処理性能を比較、Cockroach Labsが2021年版のレポートを公開|@IT
クラウドサーバーを構築する際にGoogle Cloudが役立つ理由
Googleサーバーをホスティングするなら、Google Cloudを活用するのがおすすめです。Google Cloudとは、100種類以上のサービスが統合されたクラウドプラットフォームです。そのなかにはクラウドホスティングサービスも含まれており、ほかのサービスと自由に組み合わせられるメリットがあります。
例えば、オンプレミス環境から脱却し、自社独自のクラウドサーバーを構築したい場合は、Google Cloudが役立つでしょう。その理由を3つのポイントに分けて解説します。GoogleのITインフラを低コストで活用できるため
Google Cloudにはさまざまなサービスがありますが、いずれも同社のITインフラが基盤になっています。特にGoogleのサーバーは稼働率と処理性能の高さに特徴があり、それを自社で有効活用できるのが利点です。
また、Google Cloudのサービスは従量課金制が採用されています。固定料金制と異なり、使用したリソース分のみ請求される仕組みなので、予算の最適化が可能です。クラウドホスティングサービスであれば、高性能なサーバーを最低限のコストで利用できます。
ハイレベルなセキュリティを維持できるため
世界的にサービスが展開されているGoogle Cloudだけあり、そのセキュリティ対策も一級品です。Google Cloudでは、次のようなセキュリティ対策が実施されています。
- データセンター内での物理的な対策:生体認証、侵入検知、入場者制限など
- 不正アクセス対策:ネットワークの多層防御、専属チームとシステムでの常時監視など
- 情報漏えい対策:SSL/TLSによる暗号化、多要素認証など
- インシデント対策:セキュリティチームによる内容の記録・優先順位設定など
- コンプライアンス管理:ISO・IEC認証取得、責任共有モデルの採用など
Google Cloudのようなクラウドサービスを利用する際は、自社で物理的なITインフラを保有・管理する機会が少なくなるため、おのずとサービス提供事業者のセキュリティに依存しがちです。仮にセキュリティレベルの低いクラウドサービスを利用した場合、自然災害やサイバー攻撃といったさまざまなリスクにさらされます。
その点、上記のような幅広いセキュリティ対策が施されているGoogle Cloudなら、安心してサービスを利用できるでしょう。サーバーやネットワークの安全性が向上すると、WebサイトやWebアプリケーションの安定的な稼働へとつながります。
最適化された運用環境や開発環境を柔軟に構築できるため
さまざまなサービスを柔軟に組み合わせて活用できるのは、Google Cloudの大きな特徴です。単にクラウドホスティングサービスとして利用するのではなく、複数のサービスを併用することで、最適化された運用環境や開発環境を構築できます。
例えば、クラウドストレージサービスのCloud Storageやビッグデータ解析のBigQuery、分析データを可視化できるLooker Studioなどを組み合わせると、独自のデータ分析基盤が完成します。そのほか、AI開発やコンテナ化、コンテンツ配信ネットワークなど、Webサイト・Webアプリケーション運用と相性が良いサービスが豊富です。一つのプラットフォームのみで多数の用途を生み出せるのは大きなメリットだといえるでしょう。
充実したサポートを受けられるため
クラウドホスティングでサーバーを構築する際は、ある程度の知識やノウハウが必要です。Google Cloudでは、クラウドサーバー構築時に不明点があっても、充実したサポートが用意されているので安心して運用できます。
技術的な支援を得るには、有償サポートを活用するのがおすすめです。Google Cloudの有償サポートは、スタンダード・エンハンスト・プレミアムの3種類に分かれており、回答時間や対応範囲が異なります。
そのほか、ユーザー同士で質問・回答を行えるFAQフォーラムやトラブルシューティングなど、さまざまなユーザーサポートが用意されています。また、Google Cloudの導入・運用サポートを受けられる、パートナー企業に依頼するのも方法の一つです。
Googleサーバーをクラウドホスティングできる主なサービス
クラウドホスティングに関連するGoogle Cloudの主なサービスは次の通りです。
- Google Compute Engine(GCE)
- Google App Engine(GAE)
- Cloud Run
- Firebase Hosting
各サービスの特徴や役割を詳しく解説します。
Google Compute Engine(GCE)
Google Compute Engineとは、クラウド上のサーバーやネットワーク、OSなどを借り受けて、独自のインフラ環境を構築できるサービスです。要件に沿って必要な機能を自由に選択できます。
大きな特徴は自動スケーリングに対応していることです。仮想マシンのインスタンスサイズを決める際にレコメンド機能が使えるため、自動的に適切なサイズを選択してくれます。トラフィックの増減にあわせて負荷を分散できるのも利点です。
また、障害が発生した際でも別のサーバーに自動で移行できるため、仮想マシンを再起動する必要がありません。これはシステムメンテナンスを行う際も同様です。結果、システム全体の可用性が高くなり、より安定したWebサイトやWebアプリケーションの運用が可能です。
Google App Engine(GAE)
Google App Engineとは、Googleサーバー上でアプリケーションの実行から公開までの作業ができるサービスです。先ほど紹介したGoogle Compute Engineの、アプリケーション開発用のサービスだといえます。そのため、自動スケーリングや稼働率などのメリットはGoogle Compute Engineと変わりません。
独自の特徴としては、スタンダード環境とフレキシブル環境の2種類の開発環境が用意されている点があげられます。スタンダード環境では、特定のプログラミング言語を指定するだけでアプリケーションを仮想マシン上で実行できるため、細かく設定がいらず、すぐに利用を開始できます。フレキシブル環境はコンテナを使ってアプリケーションを実行することから、よりカスタマイズ性に優れるのが強みです。
Cloud Run
Cloud Runとは、クラウド上でコンテナのデプロイ環境を構築できるサービスです。コンテナは、アプリケーション・ミドルウェア・OSファイルなどのパッケージを指します。
従来であれば、アプリケーションやミドルウェアをデプロイするためには、Kubernetesというソフトウェアを活用していました。そのKubernetesを動作させるためには高度な知識や技術が必要です。
一方、Cloud Runなら、簡易的な操作のみでアプリケーションやミドルウェアなどを一つのコンテナに集約できるため、導入ハードルが大幅に下がります。また、フルマネージドサービス(ITインフラの運用管理をサービス提供事業者が担うサービス)なので、インフラやクラスタを自社で管理する必要がありません。
Firebase Hosting
Firebase Hostingとは、WebサイトやWebアプリケーションのバックエンド機能を利用できるサービスです。WebサイトやWebアプリケーションにログイン機能を付与したり、分析に必要なデータベースを構築したりと、さまざまなバックエンド機能が搭載されています。
厳密にはクラウドホスティングサービスではありませんが、Webサイト・Webアプリケーション運用と関連性が高いサービスだといえるでしょう。例えば、Webサイト運用でFirebase Hostingを活用すると、静的コンテンツを一つのコマンドのみでCDN(Content Delivery Network)にデプロイできます。
可用性やセキュリティ性能に優れるGoogleサーバーを使いこなそう
Googleサーバーは、可用性やセキュリティ、処理能力に優れているのが特徴です。クラウドホスティングサービスを利用すれば、このGoogleサーバーを用いて、より安定したWebサイト・Webアプリケーション運用を行えます。
Googleのクラウドホスティングサービスは、Google Cloudに複数種類搭載されています。ITインフラ環境を自由にレンタルできるGoogle Compute Engineや、アプリケーション開発に便利なGoogle App Engineが代表的です。そのほか、100種類以上のサービスを組み合わせられるため、要件に合わせて独自の運用・開発環境を構築できます。
電算システムでは、環境構築やコンサルティングなど、Google Cloudの導入支援サービスを提供しています。専門領域に精通した数多くのエンジニアが在籍しているので、スピーディかつ質の高いサポートを行えるのが強みです。さらに、電算システムのリセールサービスを活用すれば、Google Cloudの利用料に関する請求書発行や割引などを利用できます。Google Cloudと電算システムについては以下の資料で詳細を紹介しているので、参考にしてください。
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