Google が提供する「Google Workspace(旧 G Suite)」が提供するプランは3種類あります。Basic と Business、そして Enterprise です。各プランの違いについて簡単に説明すると、Basic は基本プランとしてビジネスに最低限必要な機能を提供し、Business は保存容量無制限や電子情報開示を、Enterprise はさらにデータ損失防止など高度なセキュリティ機能を備えています。
この中で今回焦点を当てるのは Basic です。ユーザー1人あたり月額500円※<とリーズナブルに導入できるため、多くの方が最初に検討するプランでしょう。一方で「機能面はBasicで本当に大丈夫だろうか?」と不安に感じる方も多いかと思います。
(※年間プランの場合)
果たして 旧 G Suite Basic はビジネスシーンで使えるのか?各機能を紹介すると共にその有用性についてご紹介します。
旧 G Suite Basic で使用できる機能について
まず前提として言えることは、Basicでも Google Workspace(旧 G Suite)で提供されるすべてのサービスを利用できつということです。ただし、細かい機能については Business や Enterprise といくつか違いがありますので、そこが判断のポイントとなります。ここではその中でも重要な違いについてご紹介します。
≪ Google Vault による運用管理≫
まず大きなポイントとして挙げられるのは、Basic では Google Vault が使用できないことです。Google Vault は、メールやチャットなどを対象に、データのアーカイブや記録保持など社内だけでなく、社外からの要請に基づく要件に対応する必要がある場合に有効です。データの保持や検索、書き出し、レポートなどの機能により、組織に求められる情報記録や開示の要件に対応することができます。
旧 G Suite Basic ではこの機能が提供されませんが、別途 Google Vault を購入することも可能です。
≪ Gmail ≫
メールによるビジネスコミュニケーションの起点になるのが Gmail です。Basic で提供されない機能はデータ損失防止(DLP)とS/MIME暗号化、それとサードパーティ製アーカイブサービスとの統合の3つです。これは Enterprise のみで提供される機能です。
≪ GoogleハングアウトMeet ≫
GoogleハングアウトMeet は Google Workspace(旧 G Suite)でビジネス向けに提供されているオンライン会議サービスです。この中で Basic は会議の録画とドライブへの保存、それと電話での会議参加が使用できません。これは Enterprise のみで提供される機能です。
≪ドキュメント、スプレッドシート、スライド≫
Google Workspace(旧 G Suite)においてファイル作成機能にあたるのがドキュメント、スプレッドシート、スライドです。それぞれWord、Excel、PowerPointとの互換性と同様の機能を持ちます。Basic では各プランの中で唯一Information Rights Management(IRM)という機能が使用できません。これは、コメント権や閲覧権だけを持つユーザーが機密情報を含むファイルをダウンロード、印刷、コピーできないように設定し、情報の流通を制限する機能です。
≪ Googleドライブ ≫
Googleドライブ は Gmail や ドキュメント などを統合管理するプラットフォームです。Googleドライブ の保存容量は各サービス全体の容量として使用します。Basic の保存容量は30GB、Business と Enterprise の保存容量は無制限です。ただし、契約ユーザー数が5人未満の場合は上限がユーザーあたり1TBとなります。また、Basic では監査ログによる使用状況分析やドライブファイルの電子情報開示などが使用できません。
≪管理コンソール≫
Google Workspace(旧 G Suite)では組織内のユーザーを全体管理するための管理コンソールが備わっています。Basic では次のような管理機能が使用できません。
- ドメイン全体で管理者が管理するセキュリティキー
- サービスにアクセスする際のセキュリティキーの使用を必須に設定
- セキュリティセンター
- モバイル監査レポートとAPI
- ドライブの詳細な監査レポートとAPI
- ユーザーグループ単位でのモバイルアプリケーションの管理
- Googleドライブ の高度な管理機能
- Gmail と Google ドライブのデータ損失防止
- 会社所有のAndroid搭載端末の管理
- 端末管理ルール
以上が Google Workspace(旧 G Suite)各サービスにおいて Basic では使用できない機能です。Googleカレンダー、Google+、Googleサイト、フォーム、Googleグループ に関しては、Google Vault で提供される機能を除き、他のプランと同じ機能を使用できます。
旧 G Suite Basic はビジネスに有用か?
先述した Basic の機能から言えることは、Business と Enterprise に比べて管理機能が少ないという点です。ユーザーから見た差はデータ容量などが大きなポイントですが、機能的には大きな差はありません。しかし、管理機能ではより多くの違いがあるため、大規模な組織で Google Workspace(旧 G Suite)を使用する場合や、小規模でも厳格なセキュリティが管理が求められる業種などにおいては、セキュリティ要件やコンプライアンス要件にマッチしない可能性があります。
しかし、だからといって Basic がビジネスにまったく有用ではないというわけではありません。いくつかの高度な管理機能が使用できなくても Basic にはユーザーにとっては必要十分でビジネスを支える機能が多数備わっています。
まず Gmail では、無料 Googleアカウント では使用できないビジネス向け機能が魅力です。たとえばキャッチオールアドレスという機能は組織ドメイン内の実在しないメールアドレスに送信されたメールも受信できます。口頭で伝えたメールアドレスが間違っていたり、相手先が誤ったメールアドレスを入力した送信したりすると社外とのコミュニケーションが円滑に進まないことがあります。それによってビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。キャッチオールアドレスを設定すればそうした機会損失を防止できます。
Googleサイト も無料 Googleアカウント にはない Google Workspace(旧 G Suite)独自のサービスです。Googleサイト ではプログラミングやデザインの専門知識がなくても簡単にサイト作成ができ、組織の情報掲示板やチームのハブ、さらには外部公開用サイトの作成もできます。
さらに、管理機能が少ないといっても Business と Enterprise に比べた場合の話であり、一般的な組織に必要な基本的な管理機能については提供しています。ユーザーごとにアクセス権限を設定したりサービスのオンオフを切り替えたり、監査ログを表示したりと、基本的な管理ができます。
このように Basic でも使用できる機能に着目し、組織の管理要件とすり合わせることから検討を始めることは極めて合理的でしょう。シンプルなコラボレーションにおいては、Basic は十分に有用です。
高度な管理機能が必要なら
高度な管理機能を有していない Basic は一般的には小規模事業者やベンチャー企業など、従業員数が少ない環境やシンプルな運用が求められる環境での導入をおすすめします。ただし、小規模環境でも高度な管理機能を必要とするなら Business や Enterprise の導入も積極的に検討しましょう。Business や Enterprise なら次のような管理機能を有しています。
- 電子情報開示…訴訟問題などが起きて裁判所からメールやインスタントメッセージの電子データ開示を求められた場合、特定のやり取りだけを抽出して開示できる
- データ損失防止…重要メールの損失を防止したり個人情報が内容として含まれるメールの送受信を制限する
- S/MIME暗号化…電子署名を使用してメールを暗号化しセキュリティを高める
- 使用状況分析…Googleドライブ 内 での使用状況を分析してユーザーがドライブのコンテンツを閲覧、作成、プレビュー、印刷、更新、削除、ダウンロード、共有した操作がすべて一覧で表示される
以上のように Business と Enterprise では高度な管理機能を備えており、たとえ小規模環境であっても公共性や気密性が高い事業など、セキュリティやコンプライアンスの維持・強化を重点に置くのであれば必要なプランになるでしょう。
とはいえ、プラン選定を前提にした要件の定義などは、場合によっては Google Workspace(旧 G Suite)の関連ソリューションの知識も必要になる場合があります。 Google Workspace(旧 G Suite)の上位プランの機能がよいのか、実績のあるサードパーティーソリューションがよいのかなど、いくつも選択肢が出てきます。DSKではこれまで多くのお客様へのご支援の実績があり、お客様の環境やご要件に最適なプランをご提案いたします。ぜひご相談ください。