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【課題・目的別】自治体DXの先進事例13選|
成功に導くためのポイントも解説!

 2026.06.08  株式会社電算システム

自治体や公共機関でDXを推進しようにも、「何から手を付けて良いかわからない」と悩んでしまうケースも多いのではないでしょうか。自治体DXは単なるデジタル技術の活用だけでなく、行政手続きのデジタル化やシステム改革、ペーパーレス化など、さまざまな取り組み方が存在するためです。

このような場合は、まず現状の課題を整理して明確な目的を定める必要がありますが、その際にほかの地方自治体や公共機関が行っている施策を参考にすることをおすすめします。成功事例を参考にすることで、課題の捉え方やその対処方法、デジタル技術の活用手段などを具体的にイメージしやすくなり、スムーズな戦略策定や施策の展開につなげられます。

本記事では、課題・目的別に分け、計13個の自治体DXの事例を紹介します。それをもとに自治体DXを成功に導くポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

自治体DXとはデジタル技術を駆使して行政サービスや業務プロセスを改革する取り組み

自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して行政サービスの質的向上と業務効率化を図る、地方自治体による一連の取り組みを指します。これは総務省が2020年に策定した「自治体DX推進計画」を指針として、全国規模で推進されています。

その本質は、単なるペーパーレス化やシステム導入にとどまりません。最も重要な特徴は、住民の視点に立ち、行政サービス利用時の利便性を抜本的に改革することにあります。同時に、AIなどのデジタル技術を用いて職員の業務プロセスを再設計し、限られた人的・財政的リソースのなかで持続可能な行政運営を確立することも目指しています。

近年の自治体では、少子高齢化や深刻な人手不足、激甚化する自然災害への対応といった数多くの課題を抱えています。一方で、住民のライフスタイルやニーズは多様化し、より高品質なサービスが求められています。こうした状況のなか、従来の手法だけでこれらすべての課題やニーズに対応することは現実的に不可能です。

このような背景から、総務省は「自治体DX推進計画」を通じて、デジタル技術を前提とした業務変革と住民サービスの高度化を各自治体に要請しました。自治体DXの推進は、将来にわたり安定した行政サービスを提供し続けるために不可欠な施策だといえるでしょう。

【行政手続きのデジタル化】自治体DXの先進事例3選

DXといっても、その取り組み方は地方自治体によってさまざまです。システム改革やペーパーレス化など、さまざまな施策があるなかで、ここではまず行政手続きのデジタル化に関する先進事例を紹介します。

岡山県鏡野町

岡山県鏡野町は、住民サービスの向上と行政事務の効率化、および新型コロナウイルス感染症対策を目的として、「鏡野町電子申請・届出システム」を導入しました。本システムは、スマートフォンとマイナンバーカードを活用し、各種証明書の郵送請求や補助金申請、ごみ処理の申請などをオンラインで完結させるものです。手数料のクレジットカード決済にも対応しており、「来庁不要・キャッシュレス・24時間申請可能」な環境を実現しました。

システムの特徴は、住民や職員が慣れ親しんだ従来の紙の申請書のレイアウトをそのままPDF形式で電子化し、マイナンバーカードによる公的個人認証を付与する仕組みを採用した点です。これにより導入のハードルを下げつつ、庁内ではグループウェアと連携した電子決裁フローを構築し、業務プロセスのデジタル化にもつながっています。

導入効果として、年間約500時間の業務時間削減を達成しました。また、証明書郵送請求の処理日数が約2日短縮されるなど住民の利便性も向上し、2024年12月時点で郵送請求における電子申請の割合は約35%に達しています。

参考:マイナンバーカードを利用した鏡野町電子申請・届出システム【岡山県鏡野町】|総務省

宮崎県串間市

宮崎県串間市は、電話対応とExcel管理による職員の業務負担を軽減し、市民の利便性を向上させるため、市の公式LINEアカウント上で公共施設(高松キャンプ公園)の予約・変更・キャンセルを完結できるシステムを導入しました。

同市では既に新型コロナワクチン接種の予約システムとしてLINEを活用しており、この既存の仕組み(株式会社Bot Expressの「GovTech Express」)を応用することで、初期導入コストをゼロに抑えることに成功しています。導入前は職員が電話対応や調整業務に追われたり、利用者も空き状況の確認に手間を要したりと、さまざまな課題を抱えていました。

導入後は、利用者が24時間リアルタイムで空き状況の確認から予約完了までを行えるようになり、利便性が大幅に向上しました。その結果、職員による電話対応の件数は従来の1割程度まで減り、大幅な業務効率化を実現しています。また、実用的な行政サービスの提供により、LINE公式アカウントの登録者数も増加しました。

参考:施設予約の申請、変更、キャンセルをLINE上で完結させ、職員の負担を大幅に軽減【宮崎県串間市】|総務省

岡山県総社市

岡山県総社市は、行政手続きを従来の「住民からの申請」型から、市からの「プッシュ通知+確認」型へと変革する「スマホ市役所」の取り組みを推進しています。具体的には、住民が市のLINE公式アカウントでマイナンバーカードを用いて事前登録を行うことで、給付金などの対象となった際に市からプッシュ通知が届きます。住民はスマホ上で通知内容を確認し、ボタンをタップするだけで手続きが完了するため、申請書の作成や郵送といった手間が一切不要となりました。

この仕組みにより、価格高騰重点支援給付金では全国最速での給付を実現し、利用者アンケートでは97%が「従来より便利」と回答するなど高い評価を得ています。当初は庁内のデジタル化への抵抗もありましたが、現在は就学援助申請へも活用を広げており、今後はATMでの給付金受け取りなど、さらなる利便性向上を検討しています。

参考:「スマホ市役所」の取組により、「掲示+申請」から「プッシュ通知+確認」へ変革【岡山県総社市】|総務省

【庁内コミュニケーションの促進】自治体DXの先進事例2選

自治体DXの推進によってグループウェアやコミュニケーションツールなどを導入すれば、庁内コミュニケーションの促進につながり、生産性向上といった大きな成果に結び付きます。ここでは、庁内コミュニケーションに関する先進事例を紹介します。

北海道網走市

北海道網走市は、2025年2月の新庁舎移転を契機に、「場所にとらわれないスマートワーク」の実現と業務効率化を目指し、Google WorkspaceとChromebookを全庁に導入しました。

導入前は、自治体特有のネットワーク分離によるデータ無害化の手間や、有線接続による執務場所の制約、ツール不統一によるスケジュール調整の煩雑さが課題となっていました。これらを解決するため、セキュリティの信頼性と強力なコラボレーション機能が決め手となりGoogle製品の採用に踏み切ります。電算システムの技術支援のもと、若手職員による実証実験を経て全職員440名へ展開しました。

導入効果として、チャットの活用で内線電話が減少し、コミュニケーションの円滑化につながっています。また、Googleカレンダーによるリアルタイムな設備予約や日程調整が定着し、業務効率が大幅に向上した点もポイントです。現在は生成AI「Gemini」の活用検証も進めており、創出した時間で新しいアイデアを生み出し、市民サービスの向上と職員のウェルビーイング実現を目指しています。

栃木県宇都宮市

栃木県宇都宮市は、コロナ禍におけるWeb会議ニーズの急増を受け、LGWAN(総合行政ネットワーク)環境で利用可能なWeb会議システム「LiveOn」を導入しました。

従来はインターネット接続系の専用端末を使用していましたが、端末不足や貸出管理の負担、および機密情報を取り扱う際の情報セキュリティ対策が課題となっていました。そこで、LGWAN内で完結するオンプレミス型のシステムを採用することで、職員が自席の業務用端末から手軽かつセキュアに会議へ参加できる環境を整備しています。

この導入により、広範囲に点在する出先機関の職員が会議のために本庁へ移動する必要がなくなり、最大で片道1時間以上かかっていた移動時間を削減することに成功しました。また、機密性の高い会議も安全に開催可能となり、専用端末の準備・管理といった事務負担も解消されました。現在は年間260回以上利用されており、通信帯域の調整などの工夫を重ねながら運用しています。

参考:Web会議で移動時間を大幅削減し行政サービスを向上【栃木県宇都宮市】|総務省

【システム改革】自治体DXの先進事例4選

自治体DXの対象となるデジタル技術は、ERPからRPA、電子契約システム、AIなど多岐にわたり、大規模なシステム改革を伴うケースも珍しくありません。ここでは、システム改革で成功した自治体DXの先進事例を紹介します。

京都府舞鶴市

京都府舞鶴市は、デジタル社会への対応と働き方改革を推進するため、950台のChromebookと1,100ライセンスのGoogle Workspaceを導入しました。従来の三層分離モデルでは業務効率化に限界があり、高度化するサイバー攻撃対策やコスト削減、災害時のBCP対策が課題となっていました。

そこで、シンプルで機動性や安全性、コストパフォーマンスに優れるGoogle製品を解決策として選定しています。導入支援には、自治体行政部門での実績と高度な技術力を持つ電算システムが選ばれ、既存環境からの円滑な移行を実現しています。

今後は「日本一働きやすい市役所」を目指し、人口減少下でも市民サービスを維持・向上させるため、新たなシステムの定着を図ろうとしています。さらに、生成AI「Gemini」の活用や、Google Apps Scriptによる開発の内製化を推進し、市役所全体の行政DXを強力に加速させていく方針です。

佐賀県武雄市

佐賀県武雄市は、デジタル田園都市国家構想交付金を活用し、地元ケーブルテレビ事業者の株式会社ケーブルワンと連携して、公共施設予約システム「まちかぎリモート」とスマートロック「RemoteLOCK」を導入しました。同市ではこれまで、窓口での紙申請や物理鍵の受け渡し、職員による早朝の開錠対応といったアナログな運用が大きな負担となっていました。また、過去の豪雨災害や能登半島地震の教訓から、災害発生時に管理人を待たずに安全かつ迅速に避難所を開設できる体制づくりも急務でした。

導入の結果、利用者はスマートフォンの画面上で予約・支払い・解錠までを完結できるようになり、利便性が飛躍的に向上しています。職員側も電話対応や鍵の貸出管理が激減し、業務効率化と働き方改革が実現しました。特にスマートロックは停電時でも稼働する乾電池式で、災害時には遠隔解錠も可能なため、避難所の迅速な開設にも寄与します。

現在は市内全スポーツ施設と一部小学校で稼働しており、今後は公民館やほかの学校施設への展開も検討されています。

参考:地元ケーブルテレビと連携した、施設予約システム+スマートロック導入|自治体通信ONLINE

静岡県

静岡県は、2021年の熱海土石流災害や2023年の国の盛土規制法の施行を受け、盛土規制の厳格化と急増する審査業務の効率化を目的に、地元システムベンダーの有限会社アークが開発した「盛土等情報管理システム」を導入しました。同県では、規制対象の拡大に伴い、審査事項の複雑化や職員の業務負担増が課題となっていました。

システムの導入により、県内の盛土に関する許可情報や違法盛土情報を一元管理する体制を確立しています。また、出先機関で受け付けた紙の申請情報をシステムが自動で取り込むことで、本庁とのリアルタイムな情報共有を実現できた点も大きなポイントです。

加えて、県ホームページのGIS(地理情報システム)を通じた住民への情報公開作業も自動化されました。従来は手作業で月1回程度の更新でしたが、導入後は許可の翌日に情報が公開されるようになり、情報の即時性と正確性が飛躍的に向上しています。今後は、事業者からの定期報告等の提出期限を知らせるアラート機能を実装するなど、さらなる管理体制の強化を図り、災害防止に努める方針です。

参考:【自治体DX・盛土管理】業務の実情に合ったシステム導入で、盛土の管理体制をさらに強化できた|自治体通史ONLINE

岩手県一戸町

岩手県一戸町立図書館は、利用者用パソコンコーナーの運用において、従来のWindows端末やシンクライアント端末の管理負担とコストに課題を抱えていました。セキュリティ確保のための初期化設定や、端末の老朽化に伴う入れ替え費用が重荷となり、一時はコーナー廃止も議論されましたが、デジタルデバイド(情報格差)解消の観点からサービスの維持を決断しました。

解決策として、安価かつ管理が容易なChromeOSの導入を検討しました。高齢の利用者が多い背景を考慮し、画面が小さいノート型のChromebookではなく、大型モニターを接続できるデスクトップ型の「Chromebox」を採用しています。導入にあたっては電算システムの支援を受け、Chrome Enterprise Upgradeによる数百項目のセキュリティ設定を適切に実装しました。

その結果、OSの自動更新やウイルス対策ソフト不要といった特性により、職員の保守管理業務はほぼゼロになりました。直感的な操作性は利用者にも好評で、問い合わせも激減しています。低コストで持続可能な公衆端末環境を実現したこの成功体験をモデルケースとして、教育現場におけるWindows端末の課題解決に向け、Chromebookの導入も視野に入れています。

【ペーパーレス化】自治体DXの先進事例2選

DX推進によってペーパーレス化が実現すれば、紙の削減によるコスト削減や検索性向上による業務効率化だけでなく、テレワーク対応といったスマートワークの推進にも効果を発揮します。ここでは、自治体DXによってペーパーレス化を促進する先進事例を紹介します。

北海道富良野市

北海道富良野市は、従来の三層分離環境によるクラウド利用の制約や通信環境の課題、および少人数体制での運用管理の難しさを解消するため、庁内ネットワーク基盤を抜本的に刷新しました。アライドテレシス株式会社のソリューションを採用し、インターネット接続を主軸とする「β'モデル」への移行を実現しています。

具体的な施策として、自律型無線LANソリューション「AWC」や統合管理ソリューション「AMF」、ネットワーク管理ソフト「Vista Manager EX」を導入しました。これにより、セキュリティを担保しつつクラウドサービスを柔軟に活用できる高速・安定した通信環境と、有線・無線の統合管理による運用負荷の軽減を両立させました。

この基盤整備の結果、電子決裁や無線LAN活用が進み、ペーパーレス化によって紙の使用量を2021年度比で約36%削減することに成功しています。さらに、RPAやAI議事録作成などのDXソリューション活用も加速し、年間6,000時間を超える業務時間の削減にもつながっています。

参考:【導入事例】北海道富良野市 <自治体DX>ペーパーレス化で約36%の紙の削減を達成!β’モデルの採用でクラウド活用と業務効率化を加速|Digital PR Platform

香川県土庄町

香川県土庄町は、新庁舎建設に合わせて、職員の出退勤管理および庁舎内の入退室管理にマイナンバーカードを活用するシステムを導入しました。旧庁舎では、書庫やサーバー室の鍵を都度管理者から借りる必要があり、休日出勤や毎日の出退勤記録も紙の帳簿で行っていたため、管理の手間やセキュリティ面での課題が発生していました。

導入したシステムでは、マイナンバーカードの空き領域を利用し、カードリーダーにかざすだけで入退室と出退勤の記録が可能です。庶務事務システムと連携し、時間外勤務や休日出勤の情報を一元管理できる点も特徴です。

その結果、鍵の貸し借りや紙の記録簿が不要となり、月次の集計作業や書類作成などの事務負担が年間約13日分削減されました。また、権限を持つ職員のみが入室できる仕組みにより、セキュリティも向上しています。客観的な勤務時間の把握が可能となったことで、職員の時間管理意識が高まり、超過勤務の縮減につながった点も大きな成果です。

参考:出退勤、入退室の管理にマイナンバーカードを活用し紙の記録簿や鍵の管理を廃止【香川県土庄町】|総務省

【人材確保・育成】自治体DXの先進事例2選

地方自治体における人材確保は慢性的かつ緊急性の高い課題です。なかでもデジタル人材の確保や育成は急務で、数多くの自治体が専門人材の採用・活用の枠組みを構築したり、独自事業を展開したりとさまざまな取り組みを進めています。

愛媛県

愛媛県は、県内すべての市町が個別に高度なデジタル人材を確保することが困難であるという課題に対し、県と市町が連携して人材をシェアする仕組み「愛媛県・市町DX推進会議」を構築しました。

本事業では、一般社団法人官民共創未来コンソーシアムと連携し、DX推進に精通した「愛媛県・市町DX推進専門官」や技術顧問などの高度人材を確保しています。これら複数の人材がチームとなり、オンライン相談や現地訪問を通じて各市町の課題解決やプロジェクトに伴走支援を行う仕組みです。さらに、合同研修や成果共有会の開催に加え、市町職員が気軽に情報交換できるオンラインコミュニティを運営することで、ノウハウの共有と職員のDXリテラシー向上を図っています。

この取り組みにより、財政的・人的リソースが限られる自治体でも質の高いDX推進が可能となりました。各市町では窓口業務のオンライン化などのプロジェクトが効果的に進み、住民サービスの利便性が向上するとともに、組織の垣根を越えたDXの機運醸成という成果もあげています。

参考:県と県内市町による高度デジタル人材シェアリング事業【愛媛県】|総務省

奈良県三宅町

奈良県三宅町は、多様化する住民ニーズへの対応と予算制約の課題を解決するため、民間事業者と「まちづくり包括連携協定」を締結し、複業人材(プロフェッショナル人材)を積極的に活用しています。コストを抑えつつ外部の専門知見を取り入れるため、DXアドバイザーや業務効率化アドバイザーなどを4ヶ月間の任期で登用しました。

具体的な成果としては、業務効率化アドバイザーとの連携による徹底した書類整理があげられます。これにより、担当外の業務であっても書類検索が30秒以内に完了するなど、劇的な効率化を実現しています。また、DXアドバイザーと連携し、ワークショップなどを通じて173個の解決アイデアを創出したことで、将来的なデジタル文書管理システム導入に向けた基盤整備や、全庁的な公文書管理意識の向上にもつながりました。

人材募集や採用プロセスにおいては提携企業の支援を受けることで、職員の事務負担を最小限に抑制しています。任期終了後も業務委託契約へと発展するケースが生まれるなど、単発のプロジェクトにとどまらず、継続的な協力関係や他事業への波及効果を生み出した点も大きな成果です。

参考:民間事業者との包括連携協定に基づく複業人材の活用【奈良県三宅町】|総務省

事例から読み解く自治体DXを成功させるための4つのポイント

さまざまな事例を参考にするほど自治体DXの成功パターンが見えてきます。ここまでに紹介した事例を見ても、自治体DXを成功させるには次の4つのポイントが重要なことがわかります。

  • 明確なビジョンの提示と強力なリーダーシップ
  • 徹底したBPR
  • ユーザー中心のデザイン設計
  • デジタル人材の確保と組織文化の変革

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

明確なビジョンの提示と強力なリーダーシップ

DXは組織全体の文化や働き方を変える取り組みであるため、首長や幹部によるトップダウンの強力なコミットメントが不可欠です。そのため、例えば「AIを導入すること」自体を目的とするのではなく、「デジタル技術を使ってどのような自治体を目指すのか」といった明確なビジョンを組織全体で共有する必要があります。

また、縦割り行政の弊害を打破し、部局を横断してデータを連携させるには、CIO(最高情報統括責任者)やCDO(最高デジタル責任者)のような司令塔に対し、現場を動かす強い権限を有した体制づくりが求められます。

徹底したBPR

自治体DXで最も陥りやすい失敗は、既存の非効率なアナログ業務をそのままデジタルに置き換えてしまうことです。これでは業務効率化やコスト削減といった自治体DXの効果は限定的となります。システム導入の前に、BPR(Business Process Reengineering)を行い、業務そのものを根本から見直すことが重要です。

どのようにBPRを進めるかは地方自治体ごとに異なりますが、次のようなポイントを検討するのが一般的です。

  • 「その業務は本当に必要か」
  • 「押印や対面申請を廃止できないか」
  • 「国が推進する「自治体情報システムの標準化・共通化」に合わせて独自の業務手順を捨てられるか(Fit to Standard)」

業務を標準に合わせて変えるという痛みを伴う改革こそが、将来的な保守コストの削減とスムーズな連携を生み出します。

ユーザー中心のデザイン設計

独自のシステムを構築したとしても、住民にとって使いにくければ利用率はあがりません。そのため、高齢者を含むあらゆる住民が直感的に操作できるUIとUXの設計が必須で、行政視点の「申請させる仕組み」ではなく、住民視点の「迷わず手続きが終わるサービス」を目指す必要があります。

ユーザー中心のデザイン設計を行うには、サービス開始前に住民テストを行ったり、利用者の声を即座に反映して改善し続けたりするアジャイルな開発姿勢が効果的です。また、デジタル活用が難しい住民への「アナログな支援(窓口でのスマホ操作補助など)」をセットで提供することも、自治体DXの信頼性を高める鍵となります。

デジタル人材の確保と組織文化の変革

DXを推進するのは最終的に「人」です。外部の専門人材(CIO補佐官など)を登用するだけでなく、内部職員のデジタルリテラシー向上とマインドセットの変革が必要です。

すべてをベンダー任せにするのではなく、職員自らが課題を発見し、ノーコードツールなどで小規模な改善を行えるような「自走できる組織」を目指すことをおすすめします。失敗を許容し、小さな成功体験を積み重ねる文化を醸成することで、現場からの自発的な改善案が生まれるようになります。研修制度の充実や、意欲ある職員を登用する人事評価制度の見直しもセットで考える必要があります。

さまざまな成功事例をもとに自治体DXの最適な推進体制を整えよう

強力な内部改革を促すDXは、企業だけでなく地方自治体・公共機関でも積極的に取り組まれており、すでにさまざまな成功事例が存在します。そのため、ケーススタディを実施することで、課題への向き合い方やデジタル技術の活用方法などを具体的にイメージしつつ、成功パターンをつかみやすくなるでしょう。

自治体DXは単なるデジタル技術の導入・活用だけでなく、行政手続きのデジタル化やシステム改革、ペーパーレス化など、課題・目的ごとにさまざまな施策があります。まずは庁内の課題を棚卸ししたうえで自治体DXの目的を明確にし、どのような取り組みが最も効果的かを検討してみてはいかがでしょうか。

電算システムでは、Google WorkspaceやChromebookといったGoogle製品を活用し、地方自治体・公共機関向けのDX支援を提供しています。ここまでに紹介した北海道網走市や京都府舞鶴市、岩手県一戸町のほか、以下の資料では群馬県前橋市や岐阜県高山市といった事例も取りあげています。DXのなかでもGoogle製品に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。