近年、少子高齢化に伴う労働力不足や地域課題の複雑化を背景に、自治体におけるDXの推進が急務となっています。その中核を担う技術として、現在多くの自治体で導入が進められているのが「AI」です。音声認識や画像認識を用いた従来のAIに加え、最近では文章作成やアイデア出しを得意とする生成AIの活用も進んでおり、業務効率化や住民サービスの向上に大きな期待が寄せられています。
本記事では、自治体におけるAI技術の導入状況を総務省の最新データをもとに解説するとともに、全国の先進的な活用事例10選を紹介します。さらに、AI導入によって得られるメリットや、導入時に直面しやすい課題とその対処法についても詳しく解説します。
数多くの自治体でAI技術が求められている背景
現在、日本全国の自治体が直面している大きな課題の一つが、少子高齢化による人手不足です。生産年齢人口が減少する一方で、社会保障関連の業務や多様化する住民ニーズへの対応など、自治体が担う業務は増加しています。限られた人員と予算のなかで、行政サービスの質を維持・向上させることは、ますます困難な状況です。
こうした背景から、定型業務の自動化や高度なデータ分析を可能にするAI技術に期待が寄せられています。AIを導入することで、職員は企画立案や住民との対話といったコア業務に注力できるようになるでしょう。また、新型コロナウイルスの流行を機に社会全体のデジタル化が加速したことも、自治体でのAI導入を後押しする要因となっています。
持続可能な行政運営を実現するため、AIはもはや「あると便利なツール」ではなく、「行政サービスを支える重要な基盤」へと位置付けが変わりつつあります。
自治体におけるAIの導入状況
自治体におけるAI導入の機運が高まるなか、実際にはどの程度普及が進んでいるのでしょうか。ここでは、総務省が公表しているデータをもとに、現在の導入状況を詳しく解説します。
識別AIの導入状況
総務省が公開する「自治体におけるAI・RPA活用促進(2024年7月5日版)」によると、「識別AI」とも呼ばれる従来のAIの導入は着実に進展しています。識別AIは、文字認識によるアンケートの読み取りや保育所入所マッチング、次年度予算額の最適値の予測など、情報の整理や分類といった作業を得意としています。
特に都道府県や指定都市といった大規模自治体では導入率が非常に高く、多くの団体で本格的な運用段階に入っています。一方、地方の市区町村においても、クラウドサービスの普及やほかの自治体での成功事例の共有が進んだことで、導入に向けたハードルは徐々に下がっています。
出典:自治体におけるAI・RPA活用促進(2024年7月5日版)|総務省
今後は、一部の部署でのテスト導入から、全庁的な展開へと移行する自治体がさらに増えると見込まれています。このした状況から、識別AIは自治体業務の効率化を支える基礎的な技術として定着しつつあります。
生成AIの導入状況
同じく総務省が公開する「自治体における生成AI導入状況(2024年7月5日版)」によれば、ChatGPTをはじめとする生成AIの導入は、徐々にではありますが着実に進展していることがうかがえます。文書の要約や作成、翻訳、アイデアのブレインストーミングなど、多岐にわたる業務に適用できる生成AIは、自治体業務とも相性が良い点が特徴です。
都道府県および指定都市では、すでに多くの団体が業務での利用を開始しているか、実証実験の段階にあります。一方、市区町村では、「導入済み」または「実証実験中」と回答した自治体は全体の4分の1程度で、検討段階でとどまっているケースがほとんどです。
出典:自治体における生成AI導入状況(2024年7月5日版)|総務省
とはいえ、セキュリティガイドラインの整備や専用システムの開発が進み、行政ネットワーク環境でも生成AIを安全に利用できる仕組みが整いつつあります。そのため、地方の市区町村でも、今後さらに生成AIの導入が広がると期待されています。
全国の自治体によるAI活用事例10選
AI技術を導入し、すでに具体的な成果を上げている自治体は全国に数多く存在します。ここでは、さまざまなアプローチで行政の課題解決や業務効率化に取り組んでいる、10の先進的な自治体事例をピックアップして紹介します。
大分県中津市
大分県中津市は「中津流DX」を掲げ、職員が主体的に取り組む組織文化の改革を進めています。以前はセキュリティ制約からインターネット接続端末が制限され、自席以外で業務ができず非効率でした。そのうえ、新たな環境への移行には高額なコストがかかることも課題となっていました。
そこで同市は、ゼロトラスト環境のChromebookとGoogle Workspace を全庁に導入します。全職員対象のきめ細かい研修を実施して定着を図りました。
これらのツールの導入により同市は、10年間で約7,800万円のコスト削減効果を試算しています。さらに、Googleの生成AI「Gemini」を職員の7割以上が活用し、GAS(Google Apps Script)を用いたアプリの内製化を実現できたのも成果の一つです。1週間かかっていた業務を3時間に短縮するなど、AI活用によって劇的な効率化を達成しました。
神奈川県横浜市
神奈川県横浜市は、行政サービスの向上と業務効率化を目指す「横浜DX戦略」の一環として、NTT東日本株式会社と連携し、生成AIおよびRAG(検索拡張生成)の導入検証を行いました。法令にもとづき正確な回答が求められる選挙管理委員会の問い合わせ業務にRAGを適用し、約4,500ページの専門書籍や、1971年から蓄積された約3,000件の質疑応答データをAIが参照できる環境を構築しました。
その結果、問い合わせの回答精度が約9割に達しています。経験の浅い職員でも該当条文や過去事例へ素早くアクセスできるようになり、若手・ベテラン双方の業務負担軽減に成功しました。今後は、効率化で生み出した時間を市民サービスの向上へ還元していく方針です。
参考:横浜市が挑む、行政サービスにおける生成AIとRAGの活用。積み重ねてきたドキュメントが成功のカギ|NTT EAST
神奈川県横須賀市
神奈川県横須賀市は2023年4月、全国の自治体で初めて生成AI(ChatGPT)の全庁導入を行いました。導入の契機は、市長からのトップダウンと、業務活用を模索していた現場職員のボトムアップの動きが一致したことです。
導入にあたっては、職員が日常的に利用するチャットツールからAIに直接アクセスできる仕組みを構築しました。これにより、新技術に対する心理的ハードルを下げ、日々の業務におけるユースケースの創出を促しています。
こうした工夫の結果、生成AIの利用状況は年齢層を問わず広がりを見せています。特に勤続15年以上のベテラン職員層でも高い使用率を記録しており、特定の世代に偏ることなく、市役所全体でAI活用が定着しつつあります。
参考:生成AIを日本で初めて全庁導入した横須賀市!前例のない取り組みを実現できたその理由とは?[インタビュー]|デジタル行政
神奈川県茅ヶ崎市
神奈川県茅ヶ崎市は、システム改修で直面した「約2,400万円の費用と数ヶ月の納期」という大きな壁を、生成AIの活用によって乗り越えています。具体的には、「プログラミングは専門家だけのもの」という固定観念を捨て、AIを活用しながら内製化を進めました。まず全24本のプログラムから必要なものを選定し、次にAIを用いて既存のJavaコードを日本語で解読させ、最後にExcel VBAへと書き換えています。
これにより、実質的な外注コストを0円に抑え、開発期間をわずか数日まで短縮しました。さらに、AIに処理内容の説明資料やコードへのコメント作成を指示することで、懸念事項であったマニュアル不足による業務の属人化も解消しています。
参考:【事例紹介】日本語で「自動化」を命じる時代。予算0から始めた「生成AI」と協働で、2400万円の改修費を解決した話|note(茅ヶ崎市デジタル推進課)
埼玉県志木市
埼玉県志木市は2023年5月に生成AIを本格導入し、デジタル推進課を中心に庁内で草の根的な啓蒙活動を進めています。導入当初は情報漏えいや活用への不安を抱く職員も多かったため、ガイドラインの早期策定や自主勉強会の開催、利用事例の周知などを地道に行ってきました。現在では、行政専用のセキュアなLGWAN環境で、文章要約やアンケート分析などに広く活用されており、利用率は約17%に達しています。
利用推進の鍵は、不安の丁寧な払拭と「使えば業務が楽になる」という成功体験の共有にあります。実際の業務で作業時間が大幅に短縮される様子を体感してもらうことで、職員の利用へのハードルを下げているのがポイントです。
今後は、職員数の自然減が見込まれるなか、生成AIに任せられる定型業務はAIへ任せ、相談業務など人が担うべき業務へ重点的に人員を配置できる体制づくりを目指しています。
参考:生成AIを業務の中で自然と使えるまで。埼玉県志木市の地道な挑戦[インタビュー]|デジタル行政
兵庫県神戸市
兵庫県神戸市では、2023年6月から約3ヶ月間、133名の職員を対象に独自環境でChatGPTの試行利用を実施しました。最終アンケートでは、ほぼ全利用者が「業務効率が向上する」と回答し、高い効果が確認されています。
具体的な活用事例として、1つ目に「市公式X(旧Twitter)の投稿文作成」が挙げられます。専門的なプレスリリースを140字のわかりやすい文章に自動要約することで、作成時間の短縮と投稿品質の向上を両立しました。
2つ目の活用事例「市民向けアンケートの作成」では、目的や条件を指示するだけで適切な設問が生成され、数日かかっていた作業を大幅に短縮しています。さらに「解体工事現場の立入検査先の選定」では、数千件の届出情報から条件に合う現場を数秒で抽出し、担当者の負担を軽減しました。
このように、文章生成からデータ抽出まで、ChatGPTの多角的な活用が行政業務の効率化と質向上に大きく寄与することが実証されました。
参考:神戸市におけるChatGPT施行利用検証報告書|神戸市企画調整局デジタル戦略部
香川県高松市
香川県高松市は、市民課での電話応対の効率化と市民サービス向上を目的に、AI電話サービスの1ヶ月間の実証事業を行いました。繁忙期に受電が急増し、「電話がつながらない」という課題を解消するのが導入の主な目的です。
本事業では、定型的な問い合わせはAIが自動音声で対応を完結させ、専門的な判断が必要な用件のみ職員へ取り次ぐ「ハイブリッド型」を採用しました。結果として、期間中の総受電595件のうち65%をAIが担当し、残り35%を職員へ取り次いでいます。職員への取次時にはAIが用件を要約するため、スムーズな対応が可能となりました。事後アンケートでは7割の職員が運用継続を希望しており、市民からのクレームもほとんどなく受け入れられているようです。
今後はAIの参照情報を工夫して回答精度をさらに高めるとともに、福祉や子ども関連など他部署への展開も検討し、AIと人の適切な役割分担による業務効率化を進めようとしています。
参考:AI電話の完結率だけではなく市民が安心できる「正確性」を。高松市がAI電話でたどり着いた、市民が迷わないための最適解|Graffer
宮崎県都城市
宮崎県都城市は、人口減少や業務の多様化に伴う労働力不足を背景に、自治体業務の効率化を目指して生成AIを導入しました。同市は民間企業と共同で、LGWAN上で安全に利用できる自治体専用生成AIプラットフォーム「zevo」を開発しました。マニュアルを学習して根拠とともに回答する「職員ナレッジ専用AI」の活用や、ビジネスチャットとの連携により、年間約1,000万円のコスト削減を実現しています。
迅速な導入の背景には、市長をトップに4部署が連携する独自の推進体制と、柔軟な実証事業枠の存在があります。さらに、全国の自治体に無償トライアルを提供して利用を拡大させることで、システムの改良やコスト低下という好循環を生み出しました。
参考:都城市が切り拓く自治体DXの未来:全国初の専用生成AIプラットフォーム「zevo」で実現する業務革新|経革広場
広島県
広島県では、職員不足や多様化する住民ニーズに対応するため、生成AIの活用を積極的に推進しています。独自の取り組みとして、企業が無料で効果検証できる「ひろしまAIサンドボックス」や、職員自ら活用法を研究する「広島AIラボ」、産学官連携による高校生向け教育「ひろしまAI部」などを展開し、全県的な社会実装を進めています。
県庁内の業務においては、2024年7月より高いセキュリティと充実した支援体制を備えた「exaBase 生成AI for 自治体」を本格導入しました。現在、全職員の半数以上(約3,000人)が利用しており、行政文書の作成・校正からアンケート集計、アイデア出しまで幅広く活用されています。結果として、月間64〜104時間の業務時間削減という大きな成果を上げています。
参考:【セミナーレポート】自治体DXの最前線!〜広島県の生成AI活用事例とAI時代の人材戦略を探る〜|自治体通信ONLINE
群馬県
群馬県は、セキュアな環境で利用できる行政向け生成AIサービスを全庁に導入しました。同県では、2~3年ごとの人事異動に伴う引き継ぎの負担や、専門部署における膨大な資料の活用、限られた予算内での運用といった課題を抱えていました。そこで、独自データを安全に読み込めるRAG機能の使いやすさと精度、柔軟なライセンス管理が決め手となり、ツールの導入に至りました。
導入後、各部署の引き継ぎ資料やマニュアルをAIが参照できるようにしたことで、新任職員の疑問解決や業務習熟にかかる時間を短縮しています。また、プログラミング知識のない職員がAIのコード生成支援を活用して業務改善アプリを自作するなど、多様な場面で活用が進んでいます。結果として、利用者の86%が業務改善を実感し、平均で約3割の業務時間削減を達成しました。
参考:群馬県が行政向け生成AIサービス「ChatSense」を全庁導入。自治体「ならでは」の業務を生成AIで効率化|ChatSense
自治体がAIを導入する3つのメリット
行政の現場にAIを導入することで次のようなメリットが生まれます。
- 事務作業の大幅な効率化につながる
- 住民サービスの利便性や満足度が高まる
- データドリブンな政策策定が可能になる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
事務作業の大幅な効率化につながる
行政の現場では、データ入力や議事録の作成、各種申請書のチェック、報告書の作成など、時間と手間のかかる定型業務が数多くあります。これらの業務にAIを適用することで、作業時間の削減が可能です。
例えば、音声認識AIによる議事録の自動テキスト化や、生成AIを活用した文章の要約・草案作成は、職員の負担を大きく軽減します。これまで数時間から数日かかっていた作業が、わずか数分で完了するケースも珍しくありません。こうして生まれた時間を、新たな政策の企画立案や、住民へのきめ細かな対応など、より付加価値の高い業務(コア業務)に充てられるようになります。
住民サービスの利便性や満足度が高まる
AIの導入は、行政の内部業務だけでなく、住民に対するサービスの品質向上にも大きく貢献します。もっともわかりやすい例が、AIチャットボットやAI電話応答システムの導入です。これらを自治体のWebサイトや問い合わせ窓口に設置することで、住民は24時間365日、時間や場所を問わずに疑問を解決できるようになります。
ゴミの分別方法や各種手続きの案内など、よくある質問にAIが即座に回答することで、市役所の窓口で長時間待ったり、電話がつながらなかったりといった住民のストレスが解消されます。また、多言語翻訳機能を備えたAIを活用すれば、外国人住民へのスムーズな情報提供も可能です。利便性の高い行政サービスを提供することで、結果として自治体に対する住民の満足度と信頼感の向上につながります。
データドリブンな政策策定が可能になる
自治体には、人口動態や福祉、教育、インフラ設備などに関する膨大なデータが蓄積されています。しかし、これらのデータを横断的に分析し、将来予測や政策立案に活かすことは容易ではありません。
その点、AI技術、特に機械学習や高度なデータ分析機能を活用することで、人だけでは見落としてしまうようなデータの相関関係や隠れた傾向を瞬時に見つけ出せます。例えば、交通データや過去の災害データをAIに分析させることで、より安全で効率的な都市計画の立案や、精度の高い防災・減災対策の策定が可能です。経験や勘に頼るのではなく、データという客観的根拠にもとづく意思決定は、行政の透明性と説得力を大きく高めるでしょう。
自治体がAIを導入する際のよくある課題と対処法
さまざまなメリットをもたらすAIですが、導入時に次のような課題に直面することもあります。
- 専門的な人材やノウハウの不足
- 適正な予算を確保するのが困難
- LGWAN環境下での適合性や安全性の確保
- 情報漏えいリスク
- 各職員のITリテラシーの格差
そのため、事前にこのような課題を想定し、それぞれ適切な対応策を検討しておくことが大切です。ここでは、自治体がAIを導入する際によく見られる5つの課題と、それらを乗り越えるための具体的な対処法について解説します。
専門的な人材やノウハウの不足
自治体がAIを導入する際の課題の一つが、AIやデジタル技術に精通した専門人材の不足です。最新のAI技術を適切に評価し、庁内のシステムに組み込んで運用していくためのノウハウを持った職員は、多くの自治体で不足しています。
この課題への対処法としては、外部リソースの積極的な活用が有効です。民間のIT企業やコンサルタントと連携し、技術的な支援や伴走型のサポートを受けることで、ノウハウ不足を補えます。
例えば、Googleの公認パートナーである電算システムは、自治体・公共機関向けのGoogleサービス導入・活用支援サービスを提供しています。Google Workspace や Google Cloud だけでなく、Gemini や NotebookLM といったAI関連サービスのサポートを受けられるのも特徴です。要件にもとづいた移行計画の提案や既存環境からの移行支援のほか、管理者・ユーザー向けの勉強会・トレーニングも提供しているため、内部人材の育成にも役立ちます。
適正な予算を確保するのが困難
地方自治体は、限られた予算のなかで新たなシステムやAIツールを導入しなければならず、十分な予算を確保できないケースもあります。特に最先端のAI技術は導入コストが高額になることもあり、費用対効果を厳しく問われます。
この予算の壁を乗り越えるためには、まず小規模な実証実験(PoC)からスタートすることが有効です。一部の部署や特定の業務に限定して無料ツールや比較的低コストなサービス・プランをテスト導入し、「どれだけ業務時間を削減できたか」といった具体的な成果を定量的に検証します。明確な費用対効果の根拠を提示できれば、次年度以降の本格導入に向けた予算を獲得しやすくなるでしょう。
LGWAN環境下での適合性や安全性の確保
自治体のネットワークは、インターネットから分離された高度なセキュリティ環境であるLGWAN(総合行政ネットワーク)をベースとしています。そのため、クラウドベースで提供されることが多い最新のAIサービスを、LGWAN環境下でいかに安全に利用するかが大きな課題となります。
この課題に対しては、各ITベンダーが提供する「LGWAN対応の自治体向けAIサービス」を選定することが最も確実な対処法です。これらのサービスは、LGWANとインターネットを安全に中継する仕組みを備えており、セキュリティリスクを抑えながらAIを利用できます。
また、利用できるネットワーク領域を切り分けるのも一つの方法です。機密情報を含まないオープンな情報の処理にはインターネット接続系端末のAIを利用するなど、情報の性質に応じた使い分けのルールを策定することも重要です。
情報漏えいリスク
生成AIでは、入力したデータがモデル学習に利用され、外部に機密情報や個人情報が漏えいしてしまうリスクがあります。行政が扱うデータには機微な情報が多く含まれるため、厳格な情報管理が求められます。
このリスクを防ぐためには、「入力データが学習に利用されない(オプトアウト設定が可能な)エンタープライズ向けのAIサービス」を利用することが重要です。無料版のAIサービスは入力内容が学習に利用されるケースが多いため、業務での利用は原則禁止にすることが推奨されます。
さらに、「個人情報や未公開の機密情報をAIに入力しない」といった明確なガイドラインを策定し、全職員に対して徹底したセキュリティ研修を実施するなど、ルールの整備と意識づけの両面からのアプローチが必要です。
各職員のITリテラシーの格差
新しいツールを導入した際、デジタル技術に慣れた一部の職員だけが使いこなし、苦手意識を持つ職員が使わないという、「利用の二極化」が起こる可能性があります。ITリテラシーの格差を放置すると、組織全体としての業務効率化の効果は限定的になってしまいます。
この課題を解決するためには、AIの利用ハードルを下げる工夫が必要です。例えば、プロンプト(指示文)をゼロから作成するのではなく、「文章要約」「議事録作成」「翻訳」といった用途別のテンプレートを用意し、必要事項を入力するだけで利用できる仕組みを整える方法があります。
また、各部署に推進リーダーを配置し、身近な同僚が使い方を教え合える環境を整えることも効果的です。小さな成功体験を積み重ねることで、全庁的なAI利用促進へとつなげられます。
自治体の未来を創る強力なパートナーとしてAIを活用しよう
少子高齢化に伴う人材不足が深刻化するなか、行政サービスの質を維持・向上させるために、AI技術の活用はますます重要になっています。
確かに、予算の確保やセキュリティへの懸念、人材不足といった課題は存在します。しかし、本記事で紹介した各自治体の事例が示すように、明確なルールづくりと職員の意識改革、そしてスモールスタートによる効果検証を繰り返すことで、これらの壁は十分に乗り越えられます。AIを「業務を奪う脅威」ではなく、「人と協働する頼もしいパートナー」として迎え入れ、住民に寄り添う新しい自治体の形を築いていきましょう。
電算システムでは、Google Workspace や Chromebook などを活用し、単なるツール導入にとどまらない本格的な行政DXをサポートしています。Gemini や NotebookLM など、生成AIツールの導入・活用支援にも対応しています。Googleサービスに精通したエンジニアによる伴走サポートやアップデート情報の提供、勉強会の開催など、スピーディかつ質の高いサポートを行えるのが強みです。興味のある方は、以下のページから詳細をご確認ください。
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