社内での情報共有を促進し、円滑なコミュニケーションを実現するには、グループウェアと呼ばれるツールが役立ちます。しかし、グループウェアには数多くの種類があり、どの製品が自社に最適なのかがわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回紹介するG Suiteは、グループウェアのなかでも、Googleサービス(GmailやGoogleドライブなど)と親和性が高い点に特徴があります。各種Googleサービスが有料版にアップグレードされ、機能性やセキュリティが向上するのが利点です。そのため、普段からGoogleサービスをよく利用している場合は、G Suiteを導入することをおすすめします。
本記事では、G Suiteの特徴や機能、メリット、導入方法などを詳しく解説します。また、2020年10月に行われたGoogle Workspaceへのリブランディングについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
G Suite(現Google Workspace)とは豊富なコミュニケーション機能が整ったグループウェア
G Suite(現Google Workspace)とは、Google社が提供するクラウド型のグループウェアです。GmailやGoogleドライブ、Google Meetなど、同じくGoogle社が提供する数多くのコミュニケーションサービスが一つのプラットフォームに集約されています。本来、無料で利用できるこれらのサービスが有料版にアップグレードされ、より便利で安全性の高い機能を活用できるのが特徴です。
大きな強みとしては、社内コミュニケーションを円滑にするさまざまな機能を、ワンストップで利用できることがあげられます。また、管理コンソールによって、一人ひとりのユーザーのアカウント情報やアクセス権限、ログなどをまとめて管理できるのもポイントです。
そのため、G Suiteを導入することで、社内コミュニケーションの円滑化や活性化、業務効率の向上といったメリットが期待できます。
G Suiteに搭載されている機能(サービス)
G Suiteには、Google社が提供するGmailやGoogleドライブなどのサービスが含まれており、それらをコミュニケーション機能として活用できます。それぞれの機能の特徴と、G Suite内でできることを詳しく解説します。
Gmail
Gmailは、クラウド上でメールの送受信や管理、検索などが行えるメーラーです。Webブラウザとインターネット環境、Googleアカウントがあれば利用できるため、別途メールサーバーやネットワーク機器などを導入する必要がありません。受信トレイを整理できるアーカイブやフォルダ分けに役立つラベル、スムーズな検索が可能なフィルタなど、メール管理を効率化するための豊富な機能を備えている点も特徴です。
無料版のGmailは、「@gmail.com」のドメインが付いたフリーアドレスしか使えません。しかし、G Suiteの導入によって有料版にアップグレードされると、独自ドメインを利用できるようになります。また、管理画面内の広告も表示されなくなり、ストレスフリーなメール管理が実現します。
Googleドライブ
Googleドライブは、Webブラウザ上でデータの閲覧や編集、検索を行えるクラウドストレージです。Googleアカウントを保有していれば誰でもアクセスでき、複数人で同じ画面内のデータを参照できるため、スムーズな共同編集や情報共有が可能です。GoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントで作成したデータをそのまま保存できるほか、PDFファイルや画像、動画など、さまざまな形式のデータにも対応しています。
無料版のGoogleドライブには、1ユーザーあたり15GBまでのストレージ容量しか用意されていませんが、G Suiteを導入することで拡張が可能です。Enterpriseをはじめ、一部のプランではストレージ容量が無制限に設定されています。また、有料版では、チーム内での情報共有に便利な共有ドライブを利用できるのもポイントです。
※G SuiteがGoogle Workspaceにリブランディングされたことで、ストレージ容量の仕様が変更されています。詳しくは、後ほど紹介する見出しをご確認ください。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートは、クラウド上で利用できる表計算ツールです。Excelのような関数を使った表計算や図表作成、マクロ、分析などの作業を、Webブラウザ上で完結できる特徴があります。専用のソフトウェアをインストールする必要がなく、導入コストを抑えられるのも利点です。
Googleスプレッドシートでは、Googleアカウントを保有しているユーザーを招待でき、一人ひとりに細かく閲覧・編集権限を付与できます。また、一つひとつのセルにコメントを添付できるのも特徴です。このような点から、複数人で共同編集を行う場合でもスムーズに作業を進められます。
Googleドキュメント
Googleドキュメントは、クラウド上で利用できる文書作成ツールです。テキストの入力や装飾、図・画像挿入、スペルチェックなど、文書作成に必要な幅広い機能を基本無料で利用できます。作成したドキュメントはクラウド上(Googleドライブ)に保存されるほか、別のユーザーが編集した内容がリアルタイムで同期されるため、共同編集にも適しています。
WordやPDF、OpenDocumentなど、さまざまなファイル形式に対応しているのも特徴です。例えば、Wordで編集したドキュメントを読み込むことで、クラウド上で再編集・保存できるため、異なる文書作成ツールを使っている取引先ともスムーズにデータをやり取りできます。
Googleスライド
Googleスライドは、クラウド上で動作するプレゼンテーションツールです。Microsoft社のPowerPointのようなスライド作成やアニメーション設定、スライドショーなどの処理をWebブラウザ上で実行できます。画像・動画・音声の挿入やレビュー、バージョン管理、PDF出力など、豊富な機能を備えているのも特徴です。
また、GoogleスライドからワンクリックでGoogle Meetを起動することもできます。作成した資料を見ながら、すぐにメンバーを招待して会議を開けるので、紙の資料の配布や印刷といった手間を軽減できるのがメリットです。
Google Meet
Google Meetは、Google社が提供するWeb会議システムです。Web会議を開催する際、主催者は招待用リンクを発行するだけ、参加者はそのリンクをクリックするだけで済み、会議を開くまでの手間や工数を大幅に削減できます。画面共有や録画、チャットなど、スムーズに会議を進めるための機能も豊富です。
Google Meetは、G Suiteのみに搭載されている有料サービスです。そのため、サービスを利用するためにはG Suiteに契約する必要があります。
※G SuiteがGoogle Workspaceにリブランディングされたことで、無料ユーザーでもGoogle Meetを利用できるようになりました。有料版にアップグレードすると、会議の参加可能人数が拡張されます。
Googleチャット
Googleチャットは、クラウド上でチャットスペースを開設し、そのなかで1対1や複数人でチャットを行えるサービスです。ややタイムラグが発生するメールとは異なり、リアルタイムでメッセージを送受信できるため、スピーディーかつスムーズなコミュニケーションを行えます。また、複数のメンバーが参加して、それぞれ意見を言い合ったり、提案を行ったりできるのもポイントです。
チャットスペースには、メッセージの共有画面とともにファイル共有やToDo(タスク管理)の機能も用意されています。そのため、部署・プロジェクト単位でチャットスペースを作成することで、進捗管理やスケジュール管理として活用することも可能です。
Googleカレンダー
Googleカレンダーは、クラウド上で利用できるスケジュール管理ツールです。Webブラウザ上に表示されたカレンダーに出張の予定や会議の日程、タスクの作業時間などを自由に書き込めます。
ほかのユーザーを招待してスケジュールを共有できるのも特徴です。管理権限を設定することで、オーナーがほかのユーザーのスケジュールや共有設定を変更できます。そのため、管理者やプロジェクトマネージャーが、組織全体のスケジュール管理として活用することも可能です。
Googleフォーム
Googleフォームは、クラウド上でフォームを作成できるサービスです。フォームのレイアウトは自由に調整できるため、社内アンケートや顧客満足度調査、問い合わせフォーム、イベント参加フォームなど、さまざまな形で活用できます。
フォームを公開後、招待用リンクを共有することで、ほかのユーザーが回答できるようになります。回答結果は個別のフォームで自動集計されるので、手作業の手間を抑えられるのが利点です。また、回答結果がグラフや表で可視化されるほか、Googleスプレッドシートに出力して独自レポートを作成することも可能です。
管理コンソール
管理コンソールは、G Suiteにのみ搭載された管理者向けのサービスです。G Suite内のGmailやGoogleドライブといった各種サービスの環境設定や、ユーザー・グループをはじめとするアカウント情報を一括で変更できる特徴があります。また、ユーザーの利用状況を可視化するレポートや、外部システムからのデータ移行など、さまざまな便利機能が備わっているのも魅力です。
GmailやGoogleドライブといった各種サービスを個別に利用している場合、設定を変更するには、一つひとつの管理画面から作業を行う必要があります。その点、管理コンソールでは、サービスまたはアカウントごとにまとめて設定を変更できるため、管理工数の大幅な削減につながります。
G Suiteを導入する3つのメリット
G Suiteを導入すると次のようなメリットが生まれます。
- 業務効率化や属人化の抑制につながる
- より安全にGoogleサービスを利用できる
- 充実したサポートを受けられる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
業務効率化や属人化の抑制につながる
個別に無料のGoogleサービスを利用する場合に比べ、G Suiteを導入したほうが作業効率が高まります。
例えば、GoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントで作成したデータは、Googleドライブに自動で保存され、自由にユーザーを招待してスムーズな情報共有が可能です。組織内で共有するデータのみ共有フォルダに保存すれば、ほかのユーザーが必要なときに必要なデータにアクセスできるようになり、さらに検索性も高まります。
このように情報共有が円滑になることで、属人化を防ぎやすくなるのもメリットです。
紙やローカルストレージでデータを保存していた場合に比べ、G Suiteでは、ユーザーを追加するだけで誰でも必要なデータを閲覧できます。そのため、一人の担当者が特定の情報を抱えているブラックボックス化された状態から解放され、属人化による業務の停止や遅延、コンプライアンス違反といったリスクも抑えられます。
より安全にGoogleサービスを利用できる
G Suiteの導入によってGoogleの各種サービスが有料版にアップグレードされることで、セキュリティ機能が拡張されます。無料版のGoogleサービスでも、2段階認証やアクセス制御といった機能を利用できますが、有料版では、さらに高度なセキュリティ機能が解放されます。
例えば、ユーザー一人ひとりの端末の利用状況やログを可視化できるエンドポイント管理や、電子情報開示に備えて重要データを管理できるGoogle Vault、ユーザーの個人情報を保護するDLPなどの機能が代表的です。
また、管理コンソールで複数のアカウントやアクセス権限を一元管理することで、ユーザーごとの利用状況や問題発生時の原因などを把握しやすくなります。これにより、なりすましや不正アクセスといった社内の不正行為を抑制できるため、セキュリティだけでなくコンプライアンスの強化にもつながります。
充実したサポートを受けられる
G Suiteを導入することで、無料ユーザーには提供されていない充実したサポートを受けられるようになります。24時間365日に対応した電話・メールでの問い合わせや優先度の向上など、問題が発生した際によりスムーズかつスピーディーに解決を図れるのが利点です。
G Suiteをはじめとするグループウェアには数多くの機能が搭載されており、できることが多いため、設定手順や使い方がわからず悩んでしまうケースも珍しくありません。その点、G Suiteなら困ったときにいつでもサポートを受けられるため、初めてグループウェアを導入する方でも安心です。
G SuiteはGoogle Workspaceに名称変更!何が変わる?
G Suiteは、2020年10月6日に「Google Workspace」へと名称が変わりました。いままで使っていたGmailやGoogleドライブ、Google Meetといったサービスは継続して利用できますが、リブランディングに伴い、料金体系や最大利用人数、ストレージ容量など、さまざまな要素が変更となっています。
ここでは、リブランディングによる変更点について詳しく解説します。
変更点①料金体系と価格
G Suiteは、Basic・Business・Enterpriseの3つのシンプルな料金体系となっていましたが、Google Workspaceでは大幅に種類が増えています。3つのエディションが含まれるBusinessプランと、4つのエディションに分かれるEnterpriseプランに加え、3つのエディションがあるFrontlineプランが新たに追加されました。
Frontlineとは、飲食店や小売店、サービス業などの現場担当者向けに用意されたプランです。ストレージ容量が1ユーザーあたり5GBまでに制限されているものの、ユーザー数に制限がなく、ほかのプランよりも低コストで利用できるメリットがあります。
Google Workspaceにおける各エディションの価格は次の通りです。
| プラン名 | エディションと価格(年間契約時) |
| Business |
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| Enterprise |
|
| Frontline |
|
※2025年9月1日時点
変更点②最大利用人数
G Suiteの場合、最大利用人数に制限はなく、何名でもサービスに登録することができました。しかし、Google Workspaceでは、Businessプランに限り、最大300名までのユーザー数制限が設けられています。
なお、EnterpriseプランとFrontlineプランにはユーザー数の制限はありません。そのため、301名以上のユーザーを登録したい場合は、EnterpriseプランかFrontlineプランに契約する必要があります。
変更点③ストレージ容量
G Suiteでは、ストレージ容量を無制限で利用できるプランがありましたが、Google Workspaceでは、すべてのプラン・エディションにおいて制限が設けられています。Businessプランの場合は1ユーザーあたり30GB~5TB、Enterpriseプランでは1ユーザーあたり5TB、Frontlineプランは1ユーザーあたり5GBが上限です。
また、ストレージ容量がプール単位で算出されるようになったのも大きな変更点です。これまでG Suiteでは、ユーザー個別にストレージ容量が換算されていましたが、Google Workspaceでは、組織全体の総容量(プール)で計算が行われます。
例えば、1ユーザーあたり2TBのストレージ容量が用意されているBusiness Standardを10名で契約した場合、「2TB × 10名 = 20TB」のプールを組織全体で使用できるようになります。そのため、ある人物が大きな容量を消費した場合、その分、ほかのユーザーが使用できる容量が少なくなることを意味します(例:1名が5TBを消費すると残り9名で15TBしか使えない)。
ただし、従業員ごとに使用容量が大きく異なる組織では、プール換算のほうが無駄なくストレージを活用できるでしょう。
変更点④機能
Google Workspaceには、G Suiteには搭載されていなかったAppSheetのサービスが追加されています。
AppSheetとは、ノーコードでアプリケーション開発ができるサービスです。ドラッグ&ドロップの操作だけで、アプリケーションのUIやデザイン、機能などを自由に組み合わせて開発できます。豊富なテンプレートが用意されており、プログラミングの知識がなくても扱えるのが利点です。
変更点⑤AIサービス
Google Workspaceでは、Google社が開発した生成AI技術であるGeminiを利用できます。Geminiでは、プロンプト(テキストによる指示)を入力することで、情報収集や文章の要約といった指示通りのアクションを行ってくれます。
さらに、各種サービスと連携することで、ドキュメントやスライドの自動生成、Googleドライブ内のファイルの分析、Google Meet用の議事録作成などが可能になります。それぞれのサービスでは、画面右側にGeminiサイドパネルが追加され、Googleドキュメントの編集画面やGmailの管理画面などを見ながらGeminiに指示を与えることが可能です。
そのほか、Geminiを利用する際に詳細なデータソースを指定できるNotebookLMや、自然言語の指示だけで動画生成を行えるGoogle Vidsといったサービスも利用できます。このようなAIサービスを活用することで、リサーチの工数削減やクリエイティブ業務の均質化のメリットが生まれます。
変更点⑥サービス間連携
G SuiteからGoogle Workspaceにリブランディングされたことで、そのなかに含まれているサービス同士の連携が強化されました。
例えば、GmailとGoogle Meet、Googleチャットが一つの画面上に統一され、同じ画面内で操作できるようになったのは大きなポイントです。そのほか、ドキュメントやToDoリストをリアルタイムに共同編集したり、チャット上でファイルやタスクを共有したりと、できることが増えています。
変更点⑦セキュリティ
Google WorkspaceはG Suiteに比べ、Google MeetおよびGoogleチャットのセキュリティが強化されています。
Google Meetでは、参加者の発言やチャットの利用を主催者側で制限できるようになりました。また、主催者側で特定の参加者を会議から退出させると、その参加者は自分から再入室できないようになったのもポイントです。
Googleチャットにおいては、チャットのリンクをクリックした際、自動でスキャンが実行され、悪質なリンクの場合はブロックされる仕様になっています。
G Suite(Google Workspace)の導入方法
G SuiteはGoogle Workspaceにリブランディングされたため、導入するには、Google Workspaceの公式サイトにアクセスする必要があります。
なお、導入する前に契約プランやアカウント数、ドメイン名、支払方法などを決めておくことをおすすめします。14日間の無料トライアルが用意されており、期間中はすべての機能を費用をかけずに利用できるため、この間に操作性や機能性、セキュリティの内容などを検証すると良いでしょう。
実際にG Suiteを導入するには、次の手順で手続きを進めます。
- 公式サイトから利用開始のボタンをクリック
- 会社名や従業員数、地域などの情報を入力
- 管理者の氏名やメールアドレスなどの情報を入力
- 既存のドメインを使用するか、新たにドメインを購入するかを決定
- 支払方法を入力
ここまでの作業を終えると、G Suiteの管理コンソールにログインできるようになります。その後は、ユーザーの追加や権限設定、データ移行などの初期設定を行います。
G Suite(Google Workspace)の導入方法に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
G Suiteを活用して社内コミュニケーションを円滑にしよう
G Suiteは、社内コミュニケーションを円滑化・活性化するための欠かせないツールです。そのなかに含まれたGmailやGoogleドライブ、Google Meetといったサービスを利用したり、それぞれを組み合わせたりすることで、スムーズな情報共有や業務効率化につながります。
また、2025年9月時点においては、G SuiteはGoogle Workspaceとして利用でき、旧来よりも機能性やセキュリティ、サポート内容などが大幅に拡充されています。幅広い種類のプランから要望に近いものを選べるほか、生成AIの仕組みも搭載されているため、より利便性が向上しているのが魅力です。この機会にさっそくG Suite(Google Workspace)を導入してみてはいかがでしょうか。
電算システムでは、環境構築やコンサルティングなど、Googleサービスの導入支援サービスを提供しています。GmailやGoogleドライブといった個別のサービスはもちろん、Google Workspaceのサポートにも対応しています。専門領域に精通した数多くのエンジニアが在籍しているので、スピーディかつ質の高いサポートを行えるのが強みです。「Googleサービスを活用したいが具体的なイメージが湧かない」といったお悩みを抱える方は、ぜひ電算システムへと気軽にお問い合わせください。
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